[インデックス 12058] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の公式ドキュメント、具体的にはGo 1リリースノートの一部であるdoc/go1.html
およびそのテンプレートファイルdoc/go1.tmpl
における型変換の誤りを修正するものです。FormatFloat
関数の引数の型に関する記述が誤っていたため、これを正しい形式に修正し、ドキュメントの正確性を向上させています。
コミット
commit 72fb81eeb6a58a781ccfd3092f3657bddaa8cae3
Author: Marcel van Lohuizen <mpvl@golang.org>
Date: Sun Feb 19 19:26:05 2012 +0100
doc: Fixed type in documentation for FormatFloat.
R=r, r, rsc
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5656108
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/72fb81eeb6a58a781ccfd3092f3657bddaa8cae3
元コミット内容
doc: Fixed type in documentation for FormatFloat.
R=r, r, rsc
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5656108
変更の背景
このコミットは、Go言語の初期バージョンであるGo 1のリリースノート(go1.html
)に記載されていたFormatFloat
関数の使用例における型変換の誤りを修正するために行われました。FormatFloat
関数は浮動小数点数を文字列に変換するための重要な関数であり、そのドキュメントは正確である必要があります。
当時のドキュメントでは、Ftoa32
という概念的な関数がFormatFloat
にどのようにマッピングされるかを示す際に、引数の型変換が誤っていました。具体的には、変換対象の数値x
ではなく、フォーマット指定子f
をfloat64
にキャストするという誤りがありました。この誤りは、読者がFormatFloat
の正しい使い方を理解する上で混乱を招く可能性があったため、修正が必要とされました。
Go言語は、その設計思想として「シンプルさ」と「明確さ」を重視しており、ドキュメントの正確性もその重要な一部です。特にGo 1は言語の安定版としての最初のリリースであり、そのドキュメントは今後のGo言語の標準となるため、このような細かな誤りも早期に修正される必要がありました。
前提知識の解説
Go言語の浮動小数点数型
Go言語には、浮動小数点数型としてfloat32
とfloat64
があります。
float32
: IEEE 754 単精度浮動小数点数(32ビット)float64
: IEEE 754 倍精度浮動小数点数(64ビット)
Go言語では、異なる数値型間での暗黙的な型変換は行われません。そのため、例えばfloat32
の値をfloat64
を引数に取る関数に渡す場合、明示的な型変換(キャスト)が必要です。
strconv.FormatFloat
関数
strconv
パッケージは、基本的なデータ型と文字列との間の変換を提供するGoの標準ライブラリです。strconv.FormatFloat
関数は、浮動小数点数を文字列形式に変換するために使用されます。そのシグネチャは以下の通りです。
func FormatFloat(f float64, fmt byte, prec, bitSize int) string
各引数の意味は以下の通りです。
f
: 変換する浮動小数点数。この引数は必ずfloat64
型である必要があります。float32
の値を渡す場合は、float64(value)
のように明示的にキャストする必要があります。fmt
: フォーマット指定子。'b'
,'e'
,'E'
,'f'
,'g'
,'G'
,'x'
,'X'
などの文字で、出力される文字列の形式(指数表記、固定小数点表記など)を指定します。prec
: 精度。fmt
の種類によって意味が異なります。'e'
,'E'
,'f'
,'x'
,'X'
の場合:小数点以下の桁数。'g'
,'G'
の場合:有効数字の最大桁数。-1
の場合:ParseFloat
で元の値に正確に戻せる最小の桁数。
bitSize
: 元の浮動小数点数のビットサイズ。32
はfloat32
、64
はfloat64
に対応します。これは、変換元の数値がfloat32
であったかfloat64
であったかを示す情報であり、FormatFloat
関数自体は常にfloat64
を受け取ります。
doc/go1.html
とdoc/go1.tmpl
doc/go1.html
は、Go 1のリリースノートのHTMLドキュメントです。Go 1はGo言語の最初の安定版リリースであり、このドキュメントはGo言語の互換性保証の基礎となる重要な情報を含んでいます。
doc/go1.tmpl
は、go1.html
を生成するためのテンプレートファイルです。Go言語のドキュメントは、多くの場合、Goのテンプレートエンジンを使用して生成されます。
Ftoa32
について
コミットの差分に登場するFtoa32
は、現在のGo標準ライブラリには存在しない関数名です。これは、Go 1リリース当時の内部的な関数名、あるいはfloat32
を文字列に変換する概念的な操作を示すためにドキュメント内で使用されていた可能性が高いです。このコミットの目的は、このFtoa32
がstrconv.FormatFloat
にどのようにマッピングされるかという説明の誤りを修正することにあります。
技術的詳細
このコミットの技術的な核心は、strconv.FormatFloat
関数の第一引数に渡されるべき値の型に関する理解の修正です。
元のドキュメントの記述は以下の通りでした。
Ftoa32(x, f, p)</td> <td>FormatFloat(x, float64(f), p, 32)
ここで、Ftoa32
の引数x
は変換対象の数値、f
はフォーマット指定子、p
は精度をそれぞれ表していると推測されます。
FormatFloat
のシグネチャはfunc FormatFloat(f float64, fmt byte, prec, bitSize int) string
です。
元のドキュメントでは、FormatFloat
の第一引数にx
がそのまま渡され、第二引数(fmt
)に当たるf
がfloat64(f)
と誤ってキャストされていました。しかし、FormatFloat
の第一引数f
はfloat64
型を期待しており、第二引数fmt
はbyte
型を期待しています。
正しい記述は、変換対象の数値x
をfloat64
にキャストしてFormatFloat
の第一引数に渡し、フォーマット指定子f
をそのまま第二引数に渡すことです。
修正後の記述は以下の通りです。
Ftoa32(x, f, p)</td> <td>FormatFloat(float64(x), f, p, 32)
この修正により、x
がfloat32
型であったとしても、FormatFloat
に渡される前にfloat64
に正しく型変換されることが明示され、FormatFloat
の第二引数にはbyte
型のf
がそのまま渡されるようになりました。これにより、ドキュメントがstrconv.FormatFloat
の実際の動作と引数の型要件に合致するようになりました。
この変更は、Go言語の型システムにおける厳密な型チェックと、異なる型間での明示的な型変換の必要性を反映しています。ドキュメントの誤りは、Go言語の基本的な型変換ルールを理解していない読者にとって混乱の原因となり得たため、この修正はドキュメントの品質と正確性を高める上で重要でした。
コアとなるコードの変更箇所
変更はdoc/go1.html
とdoc/go1.tmpl
の2つのファイルにわたっています。両ファイルで同じ行が修正されています。
--- a/doc/go1.html
+++ b/doc/go1.html
@@ -1705,7 +1705,7 @@ for full details.
<tr>
<td colspan="2"><hr></td>
</tr>
-<tr><td>Ftoa32(x, f, p)</td> <td>FormatFloat(x, float64(f), p, 32)</td></tr>
+<tr><td>Ftoa32(x, f, p)</td> <td>FormatFloat(float64(x), f, p, 32)</td></tr>
<tr><td>Ftoa64(x, f, p)</td> <td>FormatFloat(x, f, p, 64)</td></tr>
<tr><td>FtoaN(x, f, p, n)</td> <td>FormatFloat(x, f, p, n)</td></tr>
<tr>
--- a/doc/go1.tmpl
+++ b/doc/go1.tmpl
@@ -1590,7 +1590,7 @@ for full details.
<tr>
<td colspan="2"><hr></td>
</tr>
-<tr><td>Ftoa32(x, f, p)</td> <td>FormatFloat(x, float64(f), p, 32)</td></tr>
+<tr><td>Ftoa32(x, f, p)</td> <td>FormatFloat(float64(x), f, p, 32)</td></tr>
<tr><td>Ftoa64(x, f, p)</td> <td>FormatFloat(x, f, p, 64)</td></tr>
<tr><td>FtoaN(x, f, p, n)</td> <td>FormatFloat(x, f, p, n)</td></tr>
<tr>
コアとなるコードの解説
変更された行は、Ftoa32
という概念的な関数がstrconv.FormatFloat
関数にどのように対応するかを説明するテーブルの一部です。
-
変更前:
<tr><td>Ftoa32(x, f, p)</td> <td>FormatFloat(x, float64(f), p, 32)</td></tr>
- この行では、
FormatFloat
の第一引数にx
がそのまま渡され、第二引数にfloat64(f)
が渡されています。これは、FormatFloat
のシグネチャfunc FormatFloat(f float64, fmt byte, prec, bitSize int) string
と矛盾します。FormatFloat
の第一引数(変換対象の数値)はfloat64
である必要があり、第二引数(フォーマット指定子)はbyte
である必要があります。f
はフォーマット指定子であるため、float64
にキャストされるべきではありません。
- この行では、
-
変更後:
<tr><td>Ftoa32(x, f, p)</td> <td>FormatFloat(float64(x), f, p, 32)</td></tr>
- この行では、
FormatFloat
の第一引数にfloat64(x)
が渡され、第二引数にf
がそのまま渡されています。float64(x)
:x
がfloat32
であった場合でも、FormatFloat
が期待するfloat64
型に明示的に変換されます。これはGo言語の型変換のルールに則った正しい記述です。f
: フォーマット指定子f
はbyte
型としてそのまま渡されます。これはFormatFloat
の第二引数の型要件に合致します。p
: 精度p
はそのまま第三引数に渡されます。32
:bitSize
として32
が渡されます。これは、元のFtoa32
がfloat32
を扱っていたことを示唆しています。
- この行では、
この修正は、ドキュメントの記述を実際の関数のシグネチャとGo言語の型システムに完全に一致させることで、読者の誤解を防ぎ、正確な情報を提供する上で非常に重要です。
関連リンク
- Go言語の公式ドキュメント: https://go.dev/doc/
strconv
パッケージのドキュメント: https://pkg.go.dev/strconv- Go 1リリースノート: https://go.dev/doc/go1
参考にした情報源リンク
strconv.FormatFloat
のドキュメント (Go公式): https://pkg.go.dev/strconv#FormatFloat- Go言語の型変換に関する情報 (Go公式): https://go.dev/tour/basics/13
- Go 1 Release Notes (go.dev): https://go.dev/doc/go1
- Web検索結果 (FormatFloat, Ftoa32, go1.htmlに関する情報)