[インデックス 12108] ファイルの概要
このコミットは、Go言語のコマンドラインツールgo
におけるgo test
コマンドのヘルプドキュメントから、未完成であった-file
フラグに関する記述を削除するものです。これにより、ユーザーが誤って未実装の機能を使用しようとすることを防ぎ、ドキュメントの正確性を保ちます。
コミット
commit 7507f3f2578241b2f8f9be59cd7acb5cea3151fb
Author: Mike Rosset <mike.rosset@gmail.com>
Date: Tue Feb 21 13:23:33 2012 -0500
cmd/go: 'go help test' remove documentation for incomplete -file flag
R=golang-dev, rsc, r, r
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5673093
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/7507f3f2578241b2f8f9be59cd7acb5cea3151fb
元コミット内容
cmd/go: 'go help test' remove documentation for incomplete -file flag
このコミットメッセージは、go
コマンドのtest
サブコマンドのヘルプ(go help test
で表示される内容)から、未完成の-file
フラグに関するドキュメントを削除したことを明確に示しています。
変更の背景
Go言語の開発プロセスでは、新しい機能が提案され、実装されることがあります。しかし、すべての提案や初期実装が最終的に安定版としてリリースされるわけではありません。このコミットの背景には、go test
コマンドに特定のテストファイルのみを実行するための-file
フラグを導入する試みがあったものの、その機能が完全に実装されるか、あるいは設計が固まる前に開発が中断された、または別の方法で同様の機能が提供されることになった、といった経緯が考えられます。
未完成の機能に関するドキュメントが残っていると、ユーザーは存在しない、あるいは正しく動作しない機能を期待してしまい、混乱を招く可能性があります。そのため、ドキュメントの正確性を保ち、ユーザーエクスペリエンスを向上させる目的で、この未完成な-file
フラグのドキュメントが削除されました。これは、Goプロジェクトがドキュメントの品質とユーザーへの情報提供の正確性を重視していることの表れと言えます。
前提知識の解説
go test
コマンド: Go言語の標準的なテスト実行ツールです。Goプロジェクトのテストコード(通常は_test.go
で終わるファイルに記述される)をコンパイルし、実行します。パッケージ全体、特定のテスト関数、ベンチマーク関数などを実行する機能を提供します。- コマンドラインフラグ: コマンドラインツールに特定の動作を指示するために使用されるオプションです。例えば、
go test -v
の-v
は詳細な出力を有効にするフラグです。 go help
コマンド:go
コマンドのサブコマンドに関するヘルプ情報を表示するために使用されます。例えば、go help test
はgo test
コマンドの利用方法、フラグ、および詳細な説明を表示します。- ドキュメンテーションの重要性: ソフトウェア開発において、ドキュメンテーションは非常に重要です。特にコマンドラインツールの場合、ユーザーはドキュメントを読んでそのツールの使い方を理解します。ドキュメントが不正確であると、ユーザーは誤った使い方をしたり、存在しない機能を期待したりする可能性があります。
- Go言語のソースコード構造: Go言語のツールチェインのソースコードは、通常、
src/cmd/go
ディレクトリ以下にgo
コマンド本体のコードが含まれています。test.go
ファイルは、go test
コマンドのロジックとヘルプドキュメントの定義を含んでいます。
技術的詳細
このコミットは、Go言語のツールチェインの一部であるsrc/cmd/go/test.go
ファイルを変更しています。このファイルは、go test
コマンドの動作を定義し、そのヘルプメッセージを生成するための構造体と文字列を含んでいます。
具体的には、cmdTest
というCommand
構造体の定義が変更されています。この構造体には、コマンドの利用方法を示すUsageLine
フィールドと、詳細な説明を提供するLong
フィールドがあります。
変更の核心は、UsageLine
から-file a.go -file b.go ...
という記述が削除され、Long
フィールドから-file
フラグに関する詳細な説明ブロックが削除された点です。
-
UsageLine
の変更: 変更前:test [-c] [-file a.go -file b.go ...] [-i] [-p n] [-x] [importpath...] [flags for test binary]
変更後:test [-c] [-i] [-p n] [-x] [importpath...] [flags for test binary]
これにより、go test
コマンドの簡潔な使用方法の概要から、-file
フラグの存在が消えました。 -
Long
フィールドの変更:Long
フィールドは、go help test
を実行した際に表示される詳細な説明文です。このコミットでは、以下の-file
フラグに関する説明ブロックが完全に削除されています。If file names are given (with flag -file=test.go, one per extra test source file), only those test files are added to the package. (The non-test files are always compiled.)
および、フラグのリストから以下の記述が削除されています。
-file a.go Use only the tests in the source file a.go. Multiple -file flags may be provided.
これらの変更は、単にドキュメントを更新するだけでなく、未完成の機能に関する誤解を招く情報をコードベースから完全に排除することを目的としています。Go言語のツールチェインは、そのドキュメントがコードと同期していることを非常に重視しており、このような変更はその原則に基づいています。
コアとなるコードの変更箇所
変更はsrc/cmd/go/test.go
ファイルに集中しています。
--- a/src/cmd/go/test.go
+++ b/src/cmd/go/test.go
@@ -32,7 +32,7 @@ func init() {
var cmdTest = &Command{
CustomFlags: true,
- UsageLine: "test [-c] [-file a.go -file b.go ...] [-i] [-p n] [-x] [importpath...] [flags for test binary]",
+ UsageLine: "test [-c] [-i] [-p n] [-x] [importpath...] [flags for test binary]",
Short: "test packages",
Long: `
'Go test' automates testing the packages named by the import paths.
@@ -51,9 +51,6 @@ benchmark functions, and example functions. See 'go help testfunc' for more.
By default, go test needs no arguments. It compiles and tests the package
with source in the current directory, including tests, and runs the tests.
-If file names are given (with flag -file=test.go, one per extra test source file),
-only those test files are added to the package. (The non-test files are always
-compiled.)
The package is built in a temporary directory so it does not interfere with the
non-test installation.
@@ -62,10 +59,6 @@ The flags handled by 'go test' itself are:\n \n -c Compile the test binary to pkg.test but do not run it.\n \n-\t-file a.go\n-\t Use only the tests in the source file a.go.\n-\t Multiple -file flags may be provided.\n-\n \t-i\n \t Install packages that are dependencies of the test.\n \t Do not run the test.\n@@ -147,7 +140,7 @@ For convenience, each of these -test.X flags of the test binary is\n also available as the flag -X in 'go test' itself. Flags not listed\n here are passed through unaltered. For instance, the command\n \n-\tgo test -x -v -cpuprofile=prof.out -dir=testdata -update -file x_test.go\n+\tgo test -x -v -cpuprofile=prof.out -dir=testdata -update\n \n will compile the test binary using x_test.go and then run it as\n \n```
## コアとなるコードの解説
このコミットは、`src/cmd/go/test.go`ファイル内の`cmdTest`という`Command`構造体の定義を変更しています。
1. **`UsageLine`の変更**:
`UsageLine`は、`go help test`の出力の冒頭に表示される、コマンドの簡潔な使用方法の概要です。ここから`-file a.go -file b.go ...`という部分が削除されました。これは、このフラグがもはやサポートされていないことをユーザーに明確に伝えるための変更です。
2. **`Long`フィールドからの説明削除**:
`Long`フィールドは、`go help test`の出力の大部分を占める詳細な説明文です。このコミットでは、`-file`フラグの機能に関する段落と、フラグのリスト内の`-file`エントリが削除されました。これにより、ユーザーがこのフラグに関する詳細な情報を探しても見つからないようになり、未実装の機能に関する混乱が完全に排除されます。
3. **使用例からの削除**:
`Long`フィールドの最後にある使用例からも、`-file x_test.go`という部分が削除されています。これにより、具体的なコマンド例においても、存在しないフラグが示されることがなくなりました。
これらの変更は、Go言語のドキュメンテーションが常に最新かつ正確であることを保証するための、保守作業の一環です。未完成または廃止された機能のドキュメントを削除することは、ユーザーエクスペリエンスを向上させ、混乱を避ける上で非常に重要です。
## 関連リンク
* Go言語の公式ドキュメント: [https://golang.org/doc/](https://golang.org/doc/)
* `go test`コマンドの現在のドキュメント: [https://golang.org/cmd/go/#hdr-Test_packages](https://golang.org/cmd/go/#hdr-Test_packages) (このコミットが適用された後の状態)
* Go言語のコードレビューシステム (Gerrit): [https://go-review.googlesource.com/](https://go-review.googlesource.com/) (コミットメッセージに記載されている`https://golang.org/cl/5673093`はこのGerritの変更リストへのリンクです)
## 参考にした情報源リンク
* GitHubのコミットページ: [https://github.com/golang/go/commit/7507f3f2578241b2f8f9be59cd7acb5cea3151fb](https://github.com/golang/go/commit/7507f3f2578241b2f8f9be59cd7acb5cea3151fb)
* Go言語の公式ドキュメント(`go test`コマンドに関するセクション)
* Go言語のソースコード(`src/cmd/go/test.go`)
* 一般的なソフトウェア開発におけるドキュメンテーションのベストプラクティスに関する知識
* Go言語のツールチェインの設計原則に関する一般的な理解