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[インデックス 12115] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のドキュメンテーションツールである godoc において、パッケージリストの表示方法に関する変更を加えています。具体的には、ディレクトリ構造をフラットに表示する機能("flat directory view")を再度サポートするように修正されています。これにより、ユーザーはパッケージの階層構造を維持した表示と、全てのパッケージをフラットなリストとして表示するオプションを切り替えられるようになります。

コミット

commit 89fd4dd766780214ebe7b3074da0c58d2565281d
Author: Andrew Gerrand <adg@golang.org>
Date:   Wed Feb 22 09:25:56 2012 +1100

    godoc: support flat directory view again

    R=bradfitz
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5690058

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/89fd4dd766780214ebe7b3074da0c58d2565281d

元コミット内容

godoc: support flat directory view again

このコミットは、godoc ツールがパッケージのディレクトリ表示において、フラットな(階層構造を持たない)ビューを再びサポートするようにするものです。

変更の背景

godoc はGo言語のソースコードからドキュメンテーションを生成し、Webブラウザで閲覧可能にするツールです。通常、パッケージはファイルシステムのディレクトリ構造を反映した階層的なビューで表示されます。しかし、特定の状況やユーザーの好みに応じて、この階層を無視して全てのパッケージを単一のリストとして表示する「フラットディレクトリビュー」が求められることがあります。

このコミットメッセージにある「again(再び)」という言葉は、以前は存在したこの機能が何らかの理由で失われたか、一時的に無効になっていたことを示唆しています。おそらく、以前の変更でこの機能が意図せず削除されたか、または新しいデザインや機能の導入に伴い一時的に非推奨とされていたものを、ユーザーからの要望や開発者の判断により再導入することになったと考えられます。この変更により、godoc のユーザーは、パッケージの表示方法に関してより柔軟な選択肢を得られるようになります。

前提知識の解説

godoc

godoc は、Go言語の公式ドキュメンテーションツールです。Goのソースコードに記述されたコメントや宣言から自動的にドキュメンテーションを生成し、Webサーバーとして提供します。開発者は godoc を実行することで、ローカル環境でGoの標準ライブラリや自身のプロジェクトのドキュメンテーションをブラウザで閲覧できます。

godoc は以下の特徴を持ちます。

  • 自動生成: ソースコードのコメント(特にエクスポートされた識別子に対するコメント)を解析し、ドキュメンテーションを生成します。
  • Webインターフェース: 生成されたドキュメンテーションはWebブラウザを通じてアクセスでき、パッケージ、関数、型、変数などの情報を簡単に検索・閲覧できます。
  • コードとの統合: ドキュメンテーションは常に最新のコードベースと同期しており、コードの変更が即座にドキュメンテーションに反映されます。
  • クロスリファレンス: ドキュメンテーション内で他のパッケージや識別子へのリンクが自動的に生成され、関連する情報を簡単に辿ることができます。

Goの text/template パッケージ

Go言語の標準ライブラリには、テキストベースのテンプレートを扱うための text/template パッケージがあります。これは、HTML、XML、プレーンテキストなどの出力に動的なコンテンツを埋め込むために使用されます。godoc のWebインターフェースも、このテンプレートエンジンを使用してHTMLページを生成しています。

text/template の基本的な概念は以下の通りです。

  • テンプレート: プレースホルダーや制御構造(条件分岐、ループなど)を含むテキストファイル。
  • データ: テンプレートに渡されるGoの構造体、マップ、スライスなどのデータ。
  • アクション: テンプレート内で {{...}} の形式で記述される命令。これには、データの表示、条件分岐、ループ、関数の呼び出しなどが含まれます。

このコミットで変更されている lib/godoc/package.html は、godoc がパッケージリストを表示する際に使用するHTMLテンプレートの一部です。

フラットディレクトリビュー (Flat Directory View)

通常、godoc はパッケージをファイルシステムの階層構造(例: github.com/user/repo/subpackage)に従って表示します。これは、パッケージ間の関係性を視覚的に理解するのに役立ちます。

一方、「フラットディレクトリビュー」とは、この階層構造を無視し、全てのパッケージを単一のリストとして表示する形式を指します。例えば、github.com/user/repo/subpackage1github.com/user/repo/subpackage2 があった場合、通常の階層ビューでは repo の下に subpackage1subpackage2 が表示されますが、フラットビューでは github.com/user/repo/subpackage1github.com/user/repo/subpackage2 が同じレベルでリストアップされます。

このビューは、特定のパッケージを素早く見つけたい場合や、プロジェクト内の全てのパッケージを一覧したい場合に便利です。

技術的詳細

この変更は、godoc がWebインターフェースでパッケージリストをレンダリングする際に使用するHTMLテンプレート lib/godoc/package.html に加えられています。

godoc は、パッケージのリストを生成する際に、各パッケージの情報を List という名前のデータ構造(おそらくスライス)としてテンプレートに渡します。この List の各要素は、パッケージの Path(フルパス)、Name(ディレクトリ名)、Depth(階層の深さ)、Synopsis(概要)などの情報を持っていると推測されます。

変更前のコードでは、常に {{repeat       .Depth}} を使用して、パッケージの Depth に応じてインデント(&nbsp; はHTMLの非改行スペース)を追加し、階層的な表示を実現していました。

今回の変更では、{{if $.DirFlat}} という条件分岐が導入されています。これは、テンプレートに渡されるデータの中に DirFlat というブール値のフィールドが存在し、それが true の場合にフラットビュー用の表示ロジックを適用し、false の場合に従来の階層ビュー用のロジックを適用することを示しています。

  • $.DirFlat は、テンプレートのルートコンテキスト($)から DirFlat フィールドにアクセスしていることを意味します。これは、DirFlatpackage.html テンプレートに渡されるメインのデータ構造(おそらく godocPackage または関連する構造体)のフィールドであることを示唆しています。
  • {{html .Path}} は、現在のリスト要素(パッケージ)のフルパスをHTMLエスケープして表示します。
  • {{html .Name}} は、現在のリスト要素(パッケージ)のディレクトリ名をHTMLエスケープして表示します。

フラットビューが有効な場合 ($.DirFlattrue)、インデントは適用されず、パッケージのフルパス (.Path) が直接表示されます。これにより、全てのパッケージが同じインデントレベルで、そのフルパスによって識別されるフラットなリストとしてレンダリングされます。

従来の階層ビューが有効な場合 ($.DirFlatfalse)、repeat 関数と .Depth を使用してインデントが適用され、パッケージのディレクトリ名 (.Name) が表示されます。これにより、パッケージの階層構造が視覚的に表現されます。

repeat 関数は、Goの text/template パッケージの標準関数ではありません。これは godoc 内部でカスタム関数としてテンプレートエンジンに登録されているものと推測されます。その機能は、指定された文字列を引数で指定された回数繰り返すことでしょう。

コアとなるコードの変更箇所

変更は lib/godoc/package.html ファイルの168行目から171行目にかけて行われています。

--- a/lib/godoc/package.html
+++ b/lib/godoc/package.html
@@ -168,7 +168,11 @@
  	{{range .List}}
  	<tr>
  		<td>
-		{{repeat `&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;` .Depth}}<a href=\"{{html .Path}}\">{{html .Name}}</a>
+		{{if $.DirFlat}}
+		<a href=\"{{html .Path}}\">{{html .Path}}</a>
+		{{else}}
+		{{repeat `&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;` .Depth}}<a href=\"{{html .Path}}\">{{html .Name}}</a>
+		{{end}}
  		</td>
  		<td>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;</td>
  		<td style=\"width: auto\">{{html .Synopsis}}</td>

コアとなるコードの解説

この変更は、godoc のパッケージリスト表示ロジックに条件分岐を追加しています。

元のコード:

{{repeat `&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;` .Depth}}<a href=\"{{html .Path}}\">{{html .Name}}</a>

これは、List 内の各パッケージに対して、その階層の深さ (.Depth) に応じてインデント (&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; を繰り返す) を適用し、パッケージ名 (.Name) を表示するリンクを生成していました。これにより、ツリーのような階層表示が実現されていました。

変更後のコード:

{{if $.DirFlat}}
<a href=\"{{html .Path}}\">{{html .Path}}</a>
{{else}}
{{repeat `&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;` .Depth}}<a href=\"{{html .Path}}\">{{html .Name}}</a>
{{end}}

この新しいコードブロックは、$.DirFlat というテンプレート変数(おそらくブール値)の真偽によって表示を切り替えます。

  • {{if $.DirFlat}}true の場合:

    • <a href=\"{{html .Path}}\">{{html .Path}}</a> がレンダリングされます。
    • これは、インデントを一切適用せず、パッケージのフルパス (.Path) をそのままリンクテキストとして表示します。これにより、全てのパッケージが同じレベルで、そのフルパスによって識別される「フラットな」リストが生成されます。
  • {{else}} (つまり $.DirFlatfalse の場合):

    • 元のコードと同じ {{repeat       .Depth}}<a href=\"{{html .Path}}\">{{html .Name}}</a> がレンダリングされます。
    • これは、パッケージの階層の深さに応じたインデントを適用し、パッケージ名 (.Name) を表示する従来の階層ビューを維持します。

この変更により、godocDirFlat という内部フラグ(おそらくURLパラメータや設定によって制御される)に基づいて、パッケージリストの表示形式を動的に切り替えることができるようになりました。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメンテーションおよび godoc の使用方法に関する一般的な知識。
  • Goの text/template パッケージの動作に関する一般的な知識。
  • コミットメッセージと差分から読み取れる情報。
  • godoc flat directory view でのWeb検索 (一般的な概念理解のため)。
  • golang text/template repeat function でのWeb検索 (カスタム関数の可能性の確認のため)。