[インデックス 12220] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の標準ライブラリである html/template
パッケージのドキュメントファイル src/pkg/html/template/doc.go
における、Execute
メソッドの使用例の誤りを修正するものです。具体的には、Execute
メソッドの引数リストが、実際のメソッドシグネチャと一致するように修正されています。
コミット
commit 4762e9d98c6f9970f22f5ae897079b281445283f
Author: Mike Rosset <mike.rosset@gmail.com>
Date: Mon Feb 27 11:31:38 2012 +1100
html/template: use correct method signature, in introduction example.
R=golang-dev, nigeltao
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5695067
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/4762e9d98c6f9970f22f5ae897079b281445283f
元コミット内容
このコミットは、html/template
パッケージのドキュメント内のコード例を修正しています。元のコード例では、tmpl.Execute
メソッドが out
(出力先)、"Foo"
(余分な文字列)、data
(テンプレートに渡すデータ) の3つの引数で呼び出されていました。
変更の背景
Go言語の html/template
パッケージは、HTMLテンプレートを安全にパースし、実行するための機能を提供します。このパッケージの主要な機能の一つが、テンプレートを実行して結果を書き出す Execute
メソッドです。
このコミットが行われた当時、html/template
パッケージの導入部分のドキュメントに記載されていた Execute
メソッドの呼び出し例が、実際のメソッドシグネチャと異なっていました。具体的には、Execute
メソッドは io.Writer
と interface{}
(データ) の2つの引数を期待するにもかかわらず、ドキュメントの例では余分な文字列リテラル "Foo"
が3番目の引数として渡されていました。
このような誤ったコード例は、パッケージの利用者が混乱する原因となり、正しい使い方を学ぶ上で障害となります。特に、Go言語のドキュメントはコード例を通じて機能の利用方法を示すことが多いため、その正確性は非常に重要です。このコミットは、このドキュメントの誤りを修正し、利用者が正確な情報を得られるようにすることを目的としています。
前提知識の解説
Go言語の html/template
パッケージ
html/template
パッケージは、Go言語でウェブアプリケーションを開発する際に、HTMLコンテンツを動的に生成するためのテンプレートエンジンです。このパッケージの最大の特徴は、クロスサイトスクリプティング (XSS) などのセキュリティ脆弱性からアプリケーションを保護するために、自動的にエスケープ処理を行う「コンテキストアウェアなエスケープ」機能を提供することです。これにより、開発者は安全なHTML出力を簡単に生成できます。
template.Template
型と Execute
メソッド
html/template
パッケージの中心となるのが template.Template
型です。これはパースされたテンプレートを表し、Parse
メソッドなどでテンプレート文字列を読み込むことで作成されます。
Execute
メソッドは、template.Template
型のインスタンスが持つ最も重要なメソッドの一つです。その役割は、パースされたテンプレートを実行し、指定されたデータを使って最終的な出力を生成することです。
Execute
メソッドの実際のシグネチャは以下のようになっています(Go 1.0の時点での一般的な形式):
func (t *Template) Execute(wr io.Writer, data interface{}) error
wr io.Writer
: テンプレートの実行結果を書き込むための出力先です。os.Stdout
、http.ResponseWriter
、bytes.Buffer
など、io.Writer
インターフェースを満たす任意の型を指定できます。data interface{}
: テンプレート内で利用されるデータです。Goの任意の型(構造体、マップ、スライス、プリミティブ型など)を渡すことができます。テンプレート内では、このデータ構造にアクセスして値を表示したり、条件分岐やループ処理を行ったりします。
Execute
メソッドは、テンプレートの実行中にエラーが発生した場合に error
を返します。
ドキュメンテーションの重要性
プログラミング言語やライブラリにおいて、公式ドキュメンテーションは非常に重要です。特に、コード例は利用者がその機能の使い方を素早く理解するための主要な手段となります。コード例が誤っていると、利用者は誤った方法で機能を実装してしまったり、不必要なデバッグ時間を費やしたりする可能性があります。このため、ドキュメンテーションの正確性は、ライブラリの使いやすさと信頼性に直結します。
技術的詳細
このコミットは、src/pkg/html/template/doc.go
ファイル内の Execute
メソッドの呼び出し例を修正しています。
元のコード:
err = tmpl.Execute(out, "Foo", data)
修正後のコード:
err = tmpl.Execute(out, data)
この変更は、html/template
パッケージの Execute
メソッドが、io.Writer
と data
の2つの引数のみを受け取るという事実に基づいています。元の例では、"Foo"
という文字列リテラルが余分な引数として渡されており、これはコンパイルエラーを引き起こすか、あるいはGoのバージョンによっては実行時に予期せぬ挙動を引き起こす可能性がありました。
Go言語の関数呼び出しでは、引数の数と型が厳密に一致する必要があります。Execute
メソッドのシグネチャが func (t *Template) Execute(wr io.Writer, data interface{}) error
である以上、3つの引数を渡すことは不正です。この修正により、ドキュメントのコード例が実際のAPIと完全に一致するようになり、利用者が混乱することなく正しい方法で Execute
メソッドを使用できるようになります。
この修正は、Go言語のドキュメントの品質と正確性を維持するための継続的な取り組みの一環です。小さな変更に見えますが、新規ユーザーがGoのテンプレートシステムを学ぶ際の障壁を取り除く上で重要な意味を持ちます。
コアとなるコードの変更箇所
変更は src/pkg/html/template/doc.go
ファイルの1箇所のみです。
--- a/src/pkg/html/template/doc.go
+++ b/src/pkg/html/template/doc.go
@@ -19,7 +19,7 @@ to parse and execute HTML templates safely.
tmpl, err := template.New("name").Parse(...)
// Error checking elided
- err = tmpl.Execute(out, "Foo", data)
+ err = tmpl.Execute(out, data)
If successful, tmpl will now be injection-safe. Otherwise, err is an error
defined in the docs for ErrorCode.
コアとなるコードの解説
変更された行は、html/template
パッケージのドキュメントの導入部分にあるコードスニペットの一部です。このスニペットは、template.Template
オブジェクトを作成し、その Execute
メソッドを呼び出す基本的な流れを示しています。
元のコード err = tmpl.Execute(out, "Foo", data)
は、Execute
メソッドに3つの引数を渡そうとしていました。
out
: これはio.Writer
型の変数で、テンプレートの出力先です。"Foo"
: これは文字列リテラルで、本来Execute
メソッドが受け取るべき引数ではありません。data
: これはinterface{}
型の変数で、テンプレートに渡されるデータです。
正しい Execute
メソッドのシグネチャは func (t *Template) Execute(wr io.Writer, data interface{}) error
であるため、out
と data
の2つの引数のみが必要です。
修正後のコード err = tmpl.Execute(out, data)
は、このシグネチャに完全に合致しており、Execute
メソッドの正しい呼び出し方を示しています。これにより、ドキュメントのコード例が正確になり、Go言語の html/template
パッケージを学習する開発者が正しいAPIの使用方法を理解できるようになります。
この修正は、機能的な変更ではなく、ドキュメンテーションの正確性を高めるためのものです。しかし、ドキュメントの正確性は、ライブラリの採用と正しい利用を促進する上で極めて重要です。
関連リンク
- Go言語の
html/template
パッケージの公式ドキュメント: https://pkg.go.dev/html/template (コミット当時のバージョンとは異なる可能性がありますが、現在のドキュメントも参照できます) - Go言語の
text/template
パッケージの公式ドキュメント: https://pkg.go.dev/text/template (html/template
はtext/template
をベースにしています)
参考にした情報源リンク
- Go言語の公式ソースコードリポジトリ (GitHub): https://github.com/golang/go
- Go Code Review Comments (Goのコードレビューガイドライン): https://go.dev/doc/effective_go#commentary (ドキュメントの正確性の重要性について間接的に関連)
- Go言語の
io.Writer
インターフェースに関する情報: https://pkg.go.dev/io#Writer - Go言語の
interface{}
(空インターフェース) に関する情報: https://go.dev/tour/methods/11 (Go Tourの該当セクション) - Go言語の
template
パッケージの歴史と進化に関する情報 (一般的な知識として): Go言語のリリースノートやブログ記事など。