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[インデックス 12243] ファイルの概要

このコミットは、Goプロジェクトのダッシュボードシステムの一部である misc/dashboard/builder/http.go ファイルに対する変更です。このファイルは、gobuilder と呼ばれるシステムがコミット情報をHTTP経由で送信する際のロジックを扱っています。具体的には、コミットのタイムスタンプのフォーマット方法が変更されています。

コミット

commit 2f4e5f79a67c7efffc7b85c16774f251a1a07e5c
Author: Andrew Gerrand <adg@golang.org>
Date:   Tue Feb 28 11:21:56 2012 +1100

    gobuilder: send commit time in RFC3339 format
    
    R=golang-dev, gri
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5701063

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/2f4e5f79a67c7efffc7b85c16774f251a1a07e5c

元コミット内容

このコミットの目的は、gobuilder がコミットのタイムスタンプを送信する際に、従来のUnixエポックからのマイクロ秒単位の数値形式から、標準的なRFC3339形式の文字列に変更することです。コミットメッセージには「gobuilder: send commit time in RFC3339 format」と明確に記されており、変更の意図が示されています。

変更の背景

変更の背景には、既存のタイムスタンプ形式である「Unixエポックからのマイクロ秒」が「yuck!」(嫌だ!)とコメントされていることから、その形式が扱いにくい、または問題があるという認識があったことが伺えます。

具体的な問題点としては以下が考えられます。

  1. 可読性の低さ: マイクロ秒単位のUnixタイムスタンプは、人間が直接読んで理解するのが困難です。デバッグやログの解析時に不便が生じます。
  2. 相互運用性の問題: Unixタイムスタンプは広く使われていますが、特定の精度(マイクロ秒)での数値形式は、異なるシステムやプログラミング言語間でのデータの受け渡しにおいて、解釈のずれや変換の手間が発生する可能性があります。特に、タイムゾーン情報が含まれないため、異なるタイムゾーンで動作するシステム間での時刻の同期や表示に問題が生じやすいです。
  3. 標準形式への準拠: RFC3339は、インターネット標準として広く採用されている日付と時刻の表現形式です。この形式に準拠することで、データの相互運用性が向上し、他のシステムとの連携が容易になります。

これらの理由から、より標準的で扱いやすいRFC3339形式への移行が決定されました。

前提知識の解説

gobuilder

gobuilder は、Go言語プロジェクトにおける自動ビルドおよびテストシステムの一部です。Go言語のソースコードリポジトリへのコミットが行われるたびに、gobuilder はそのコミットを取得し、様々な環境(異なるOS、アーキテクチャなど)でビルドとテストを実行します。その結果をダッシュボードに報告することで、Go言語の安定性と品質を維持する役割を担っています。このシステムは、継続的インテグレーション(CI)/継続的デリバリー(CD)パイプラインの重要な要素です。

RFC3339

RFC3339は、「Date and Time on the Internet: Timestamps」というIETF標準ドキュメントで定義されている、日付と時刻の文字列表現形式です。ISO 8601のプロファイルを基にしており、インターネット上での日付と時刻の交換に適した形式を提供します。

RFC3339形式の例: 2012-02-28T11:21:56+11:00 または 2012-02-28T00:21:56Z

特徴:

  • 明確なタイムゾーン情報: UTCオフセット(例: +11:00)またはUTCを示す Z が含まれるため、タイムゾーンの解釈の曖昧さがありません。
  • 人間と機械の両方に優しい: 人間が読みやすく、かつ機械が容易にパースできる構造を持っています。
  • 相互運用性: 多くのプログラミング言語やシステムでサポートされており、異なるシステム間での日付/時刻データの交換に非常に適しています。

Unix Time (Unixエポックからの秒数/マイクロ秒数)

Unix Time(またはPOSIX時間)は、協定世界時(UTC)の1970年1月1日00:00:00(Unixエポック)からの経過秒数を表す数値です。このコミットで言及されているのは、その秒数をさらにマイクロ秒単位に変換したものです。

特徴:

  • 数値表現: 単一の数値で時間を表現するため、計算には便利です。
  • タイムゾーンの欠如: Unixタイムスタンプ自体にはタイムゾーン情報が含まれていません。そのため、特定のタイムゾーンでの表示や、異なるタイムゾーン間での比較には、別途タイムゾーン情報を考慮する必要があります。
  • 精度: 秒単位が一般的ですが、ミリ秒、マイクロ秒、ナノ秒といった高精度で表現されることもあります。

Go言語の time パッケージ

Go言語の標準ライブラリには、日付と時刻を扱うための強力な time パッケージがあります。

  • time.Time 型: 日付と時刻の値を表現するための構造体です。
  • t.Unix(): time.Time 型の変数 t から、Unixエポックからの秒数を int64 で返します。
  • t.Format(layout string): time.Time 型の変数 t を、指定されたレイアウト文字列に基づいてフォーマットされた文字列として返します。
  • time.RFC3339: time パッケージが提供する定数の一つで、RFC3339形式のレイアウト文字列 "2006-01-02T15:04:05Z07:00" を表します。Go言語の time.Format メソッドでは、特定の参照時刻(2006年1月2日15時4分5秒、タイムゾーンは-0700)を使ってレイアウトを定義するというユニークな方法が取られています。

技術的詳細

この変更の技術的な詳細は、gobuilder がコミット情報をバックエンドシステムに送信する際のデータ形式の変更に集約されます。

変更前は、コミットのタイムスタンプが t.Unix() * 1e6 という形で送信されていました。これは、time.Time オブジェクト t からUnixエポックからの秒数 (t.Unix()) を取得し、それを100万倍 (1e6) することでマイクロ秒単位の整数値に変換していました。この数値は、JSONなどのデータ形式で送信される際に、数値型として扱われます。

変更後は、t.Format(time.RFC3339) という形で送信されます。これは、time.Time オブジェクト t を、time.RFC3339 定数で定義されたレイアウト("2006-01-02T15:04:05Z07:00")に従ってフォーマットされた文字列に変換します。この文字列は、JSONなどのデータ形式で送信される際に、文字列型として扱われます。

この変更による技術的な影響は以下の通りです。

  1. データ型の変更: タイムスタンプのデータ型が数値(int64)から文字列(string)に変わります。これにより、受信側のシステムは、タイムスタンプをパースする際に数値としてではなく、RFC3339形式の文字列として処理するように変更する必要があります。
  2. タイムゾーン情報の組み込み: RFC3339形式はタイムゾーン情報(UTCオフセットまたは Z)を直接含みます。これにより、受信側システムはタイムスタンプを正確なタイムゾーンで解釈し、表示することができます。従来のUnixタイムスタンプでは、タイムゾーン情報は別途管理する必要がありました。
  3. 精度の変更: マイクロ秒単位の数値から、RFC3339で表現される秒単位(またはミリ秒単位まで)の文字列に変わります。Goの time.RFC3339 は秒までを表現し、必要に応じて小数点以下の秒も表現できますが、この変更では明示的にマイクロ秒の精度を維持するようには見えません。ただし、RFC3339はナノ秒までの精度をサポートしており、Goの time.Format もそれに対応できます。この特定の変更では、秒単位の精度で十分と判断された可能性があります。
  4. デバッグと可読性の向上: ログやAPIレスポンスでタイムスタンプがRFC3339形式で表示されるようになるため、人間が直接読んで理解しやすくなります。これは、システムのデバッグや監視において大きな利点となります。
  5. APIの安定性: 外部に公開されるAPIや内部サービス間の通信において、標準的な形式を使用することで、APIの安定性と互換性が向上します。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/misc/dashboard/builder/http.go
+++ b/misc/dashboard/builder/http.go
@@ -169,7 +169,7 @@ func postCommit(key, pkg string, l *HgLog) error {
 		"PackagePath": pkg,
 		"Hash":        l.Hash,
 		"ParentHash":  l.Parent,
-		"Time":        t.Unix() * 1e6, // in microseconds, yuck!
+		"Time":        t.Format(time.RFC3339),
 		"User":        l.Author,
 		"Desc":        l.Desc,
 	}, nil)

コアとなるコードの解説

変更は misc/dashboard/builder/http.go ファイルの postCommit 関数内で行われています。この関数は、コミット情報をHTTP POSTリクエストのペイロードとして構築している部分です。

具体的には、map[string]interface{} 型のリテラルでHTTPリクエストのボディを構成しており、その中の "Time" キーに対応する値が変更されています。

  • 変更前:

    "Time":        t.Unix() * 1e6, // in microseconds, yuck!
    

    ここでは、t という time.Time 型の変数(おそらくコミット時刻を表す)に対して Unix() メソッドを呼び出し、Unixエポックからの秒数(int64)を取得しています。その結果を 1e6(100万)倍することで、マイクロ秒単位の数値に変換しています。コメントにある「yuck!」は、この数値形式が扱いにくいことへの開発者の不満を示しています。

  • 変更後:

    "Time":        t.Format(time.RFC3339),
    

    変更後も同じ time.Time 型の変数 t を使用していますが、今度は Format() メソッドを呼び出し、引数に time.RFC3339 定数を渡しています。これにより、t の時刻がRFC3339形式の文字列に変換されます。この文字列は、HTTPリクエストのペイロードの一部として送信されます。

この変更により、gobuilder が送信するコミットのタイムスタンプは、数値のマイクロ秒から、標準的で人間にも読みやすいRFC3339形式の文字列へと変わりました。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語 time.RFC3339 定数に関する情報: Web search results for "RFC3339 format Go time.RFC3339": The time.RFC3339 constant in Go represents the RFC3339 format string, which is "2006-01-02T15:04:05Z07:00".
  • RFC3339 (IETF): https://datatracker.ietf.org/doc/html/rfc3339 (一般的な情報源として)
  • Go言語 time パッケージのドキュメント: https://pkg.go.dev/time (一般的な情報源として)