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[インデックス 12273] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の仕様書(doc/go_spec.html)における文章の修正と整理を目的としています。特に、「修飾識別子(Qualified identifiers)」に関する記述の明確化と、「range」キーワードの文脈における用語の正確化、そして古いTODOコメントの削除が行われています。

コミット

Author: Robert Griesemer gri@golang.org Date: Wed Feb 29 09:06:05 2012 -0800

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/da633714fd14bbb52ef10bad8bc4c354305118ab

元コミット内容

spec: fix sentence

R=golang-dev, rsc
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5706065

変更の背景

このコミットの主な背景は、Go言語の公式仕様書における記述の正確性と明確性を向上させることです。具体的には、以下の点が挙げられます。

  1. 修飾識別子に関する誤解の解消: 以前の記述では、修飾識別子が単に「別のパッケージの識別子にアクセスする」とされていましたが、Go言語のセマンティクスでは、そのパッケージがインポートされていることが前提となります。この重要な前提条件が明示されていなかったため、誤解を招く可能性がありました。
  2. 用語の正確化: for ... rangeループにおける「range」は、単なるキーワードではなく「range clause(レンジ節)」という文法的な構成要素です。この用語を正確に記述することで、仕様書の厳密性を高めています。
  3. 仕様書内のTODOコメントの整理: 開発中に一時的に追加されたTODOコメントが、仕様書の公開バージョンに含まれているのは適切ではありません。これらのコメントを削除することで、仕様書の内容をクリーンに保ち、読者にとって不要な情報を排除しています。
  4. 日付の更新: 仕様書のバージョン日付をコミット日に合わせて更新することで、常に最新の状態を反映させています。

これらの変更は、Go言語の仕様書が、開発者にとってより正確で理解しやすい公式ドキュメントとなることを目指しています。

前提知識の解説

このコミットの変更内容を理解するためには、以下のGo言語の基本的な概念と仕様書に関する知識が必要です。

  • Go言語仕様書 (The Go Programming Language Specification): Go言語の文法、セマンティクス、標準ライブラリの動作などを厳密に定義した公式ドキュメントです。Go言語の「真実の源」として機能し、コンパイラの実装や開発者の理解の基盤となります。
  • 修飾識別子 (Qualified identifiers): Go言語において、別のパッケージで定義された識別子(変数、関数、型など)を参照する際に使用される構文です。パッケージ名.識別子 の形式で記述されます。例えば、fmt.Printlnfmt がパッケージ名、Println が識別子です。
  • パッケージ (Packages): Go言語のコードを整理し、再利用性を高めるための基本的な単位です。関連する機能や型をまとめる役割を持ちます。
  • インポート宣言 (Import declarations): 別のパッケージで定義された識別子を使用するために、そのパッケージを現在のファイルに読み込むための宣言です。import "パッケージパス" の形式で記述されます。インポートされていないパッケージの識別子には、修飾識別子を使ってもアクセスできません。
  • エクスポートされた識別子 (Exported identifiers): Go言語では、識別子(変数、関数、型など)の名前が大文字で始まる場合、その識別子はパッケージの外部からアクセス可能(エクスポートされている)になります。小文字で始まる識別子は、そのパッケージ内でのみアクセス可能です。
  • for ... range ループ: Go言語におけるイテレーション(繰り返し)のための構文です。配列、スライス、文字列、マップ、チャネルなどのコレクション要素を順番に処理する際に使用されます。for index, value := range collection { ... } のように記述され、range collection の部分が「range clause(レンジ節)」と呼ばれます。
  • 短縮変数宣言 (Short variable declaration): := 演算子を使用して、変数の宣言と初期化を同時に行うGo言語の構文です。型推論が行われるため、明示的な型指定は不要です。

技術的詳細

このコミットは、doc/go_spec.html ファイルに対して以下の具体的な変更を加えています。

  1. 仕様書の日付更新:

    • 変更前: \"Subtitle\": \"Version of February 28, 2012\"
    • 変更後: \"Subtitle\": \"Version of February 29, 2012\" これは、コミットが行われた日付(2012年2月29日)に合わせて、仕様書のバージョン日付を更新したものです。閏年である2月29日への更新は、このコミットがその日に作成されたことを示しています。
  2. 修飾識別子に関する記述の明確化:

    • 変更前: <p>A qualified identifier accesses an identifier in a separate package.</p>
    • 変更後: <p>A qualified identifier accesses an identifier in a different package, which<br>+must be <a href=\"#Import_declarations\">imported</a>.</p> この変更は、修飾識別子が別のパッケージの識別子にアクセスする際に、そのパッケージがインポートされている必要があるという重要な前提条件を明示的に追加しています。これにより、Go言語のパッケージシステムにおける修飾識別子の動作がより正確に記述され、読者の誤解を防ぎます。different への変更は separate と意味的に大きな違いはありませんが、文脈上より自然な表現として選択された可能性があります。
  3. TODOコメントの削除:

    • 以下のHTMLコメントブロックが削除されました。
      <!--
      <p>
      <span class="alert">TODO: Unify this section with Selectors - it's the same syntax.</span>
      </p>
      -->
      

    このコメントは、修飾識別子のセクションとセレクタ(構造体のフィールドやインターフェースのメソッドにアクセスする構文)のセクションが同じ構文を持つため、将来的に統合すべきであるという開発者向けのメモでした。仕様書の公開バージョンには不要な情報であるため、削除されました。これは、仕様書のクリーンアップと保守の一環です。

  4. range キーワードの用語修正:

    • 変更前: <p>The iteration variables may be declared by the "range" using a form of</p>
    • 変更後: <p>The iteration variables may be declared by the "range" clause using a form of</p> この変更では、「range」の後に「clause」という単語が追加されました。Go言語の文法において、for ... range ループの range 部分は「range clause(レンジ節)」として正式に定義されています。この修正により、仕様書内の用語がより正確かつ一貫したものになりました。

これらの変更は全体として、Go言語の仕様書がより正確で、理解しやすく、かつ保守しやすいドキュメントとなることに貢献しています。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/doc/go_spec.html
+++ b/doc/go_spec.html
@@ -1,6 +1,6 @@
 <!--{
 	"Title": "The Go Programming Language Specification",
-	"Subtitle": "Version of February 28, 2012"
+	"Subtitle": "Version of February 29, 2012"
 }-->
 
 <!--
@@ -2011,7 +2011,8 @@ BasicLit   = int_lit | float_lit | imaginary_lit | char_lit | string_lit .
 <h3 id="Qualified_identifiers">Qualified identifiers</h3>
 
 <p>
-A qualified identifier is a non-<a href="#Blank_identifier">blank</a> identifier qualified by a package name prefix.
+A qualified identifier is a non-<a href="#Blank_identifier">blank</a> identifier
+qualified by a package name prefix.
 </p>
 
 <pre class="ebnf">
@@ -2019,7 +2020,8 @@ QualifiedIdent = [ PackageName "." ] identifier .
 </pre>
 
 <p>
-A qualified identifier accesses an identifier in a separate package.
+A qualified identifier accesses an identifier in a different package, which
+must be <a href="#Import_declarations">imported</a>.
 The identifier must be <a href="#Exported_identifiers">exported</a> by that
 package, which means that it must begin with a Unicode upper case letter.
 </p>
@@ -2028,12 +2030,6 @@ package, which means that it must begin with a Unicode upper case letter.
 math.Sin
 </pre>
 
-<!--
-<p>
-<span class="alert">TODO: Unify this section with Selectors - it's the same syntax.</span>
-</p>
--->
-
 <h3 id="Composite_literals">Composite literals</h3>
 
 <p>
@@ -4245,7 +4241,7 @@ iteration variables as in an <a href="#Assignments">assignment statement</a>.
 </p>
 
 <p>
-The iteration variables may be declared by the "range" using a form of
+The iteration variables may be declared by the "range" clause using a form of
 <a href="#Short_variable_declarations">short variable declaration</a>
 (<code>:=</code>).
 In this case their types are set to the types of the respective iteration values

コアとなるコードの解説

上記の差分は、Go言語の仕様書(HTML形式)に対する具体的な修正を示しています。

  1. 日付の更新: "Subtitle": "Version of February 28, 2012""Subtitle": "Version of February 29, 2012" に変更されています。これは、仕様書のバージョン日付をコミット日に合わせて更新したもので、ドキュメントの鮮度を保つための一般的な慣行です。

  2. 修飾識別子の説明の改善:

    • 元の行 A qualified identifier is a non-<a href="#Blank_identifier">blank</a> identifier qualified by a package name prefix. は、HTMLの改行を考慮して整形されていますが、意味的な変更はありません。
    • 最も重要な変更は、A qualified identifier accesses an identifier in a separate package.A qualified identifier accesses an identifier in a different package, which must be <a href="#Import_declarations">imported</a>. に修正された点です。
      • separate から different への変更は、意味合いはほぼ同じですが、文脈により適した単語への微調整と考えられます。
      • which must be <a href="#Import_declarations">imported</a>. という追記が非常に重要です。これにより、修飾識別子を使って別のパッケージの識別子にアクセスするためには、そのパッケージが事前にインポートされている必要があるという、Go言語の基本的なルールが明確に示されました。これは、仕様書の正確性を大幅に向上させる変更です。
  3. TODOコメントの削除: HTMLコメントブロック <!-- ... TODO: Unify this section with Selectors ... --> が完全に削除されています。これは、仕様書の内容とは直接関係のない開発者向けのメモであり、公開されるドキュメントからは取り除くべきと判断されたためです。ドキュメントのクリーンアップと読者体験の向上に寄与します。

  4. range キーワードの用語修正: The iteration variables may be declared by the "range" using a form ofThe iteration variables may be declared by the "range" clause using a form of に変更されています。 「range」の後に「clause」という単語が追加されたことで、for ... range 構文における「range clause(レンジ節)」という正式な文法用語が使用されるようになりました。これにより、仕様書全体の用語の一貫性と正確性が向上しています。

これらの変更は、Go言語の仕様書がより正確で、理解しやすく、かつ保守しやすいドキュメントとなることに貢献しています。

関連リンク

参考にした情報源リンク