[インデックス 12314] ファイルの概要
このコミットは、Go言語のビルドツール cmd/dist
における、macOS (旧称 OS X) 環境でのデバッガのインストールに関するメッセージの文法的な修正です。具体的には、デバッガの権限設定に関する説明文中の「setgrp procmod」という誤った記述を「setgid procmod」に修正しています。
コミット
commit 3c3c5f38a057d76ebdf5424ba7b595aca886b6a9
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date: Thu Mar 1 13:38:05 2012 -0500
cmd/dist: Unix grammar fix
Fixes #3165.
R=golang-dev, iant
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5712051
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/3c3c5f38a057d76ebdf5424ba7b595aca886b6a9
元コミット内容
このコミットは、src/cmd/dist/build.c
ファイル内の1行の変更を含んでいます。
--- a/src/cmd/dist/build.c
+++ b/src/cmd/dist/build.c
@@ -1491,7 +1491,7 @@ cmdbanner(int argc, char **argv)
if(streq(gohostos, "darwin")) {
xprintf("\n"
- "On OS X the debuggers must be installed setgrp procmod.\n"
+ "On OS X the debuggers must be installed setgid procmod.\n"
"Read and run ./sudo.bash to install the debuggers.\n");
}
変更の背景
この変更は、Go言語のビルドプロセスの一部である cmd/dist
が、macOS環境でデバッガのインストールに関する指示を表示する際に、誤った用語を使用していた問題を修正するためのものです。元のメッセージでは「setgrp procmod」と記述されていましたが、これはUnix系のシステムにおける権限管理の文脈では不正確でした。正しい用語は「setgid procmod」であり、この修正によってユーザーへの指示がより正確になりました。
コミットメッセージにある Fixes #3165
は、Goプロジェクトの内部課題追跡システムにおける特定の課題番号を指していると考えられます。この課題は、おそらくこの文法的な誤りを報告し、修正を促すものであったと推測されます。
前提知識の解説
このコミットを理解するためには、以下のUnix系システムにおける権限管理の概念が重要です。
- setuid/setgidビット:
- Unix系ファイルシステムでは、実行可能ファイルに特殊なパーミッションビットを設定できます。これがsetuid (Set User ID) とsetgid (Set Group ID) ビットです。
- setuidビット: このビットが設定された実行可能ファイルは、そのファイルの所有者のUID (User ID) で実行されます。例えば、
passwd
コマンドはsetuidビットが設定されており、一般ユーザーが実行しても一時的にroot権限で動作し、/etc/shadow
ファイルを更新できます。 - setgidビット: このビットが設定された実行可能ファイルは、そのファイルの所有グループのGID (Group ID) で実行されます。これにより、実行ユーザーがそのグループのメンバーでなくても、そのグループの権限でファイルやリソースにアクセスできるようになります。
- procmodグループ:
- macOSでは、デバッグやプロセス制御に関連する特定の操作を行うために、特別な権限が必要となる場合があります。
procmod
は、そのような操作を許可するために使用されるグループ名であると推測されます。デバッガが他のプロセスのメモリを読み取ったり、実行を制御したりするためには、通常のユーザー権限では不十分であり、procmod
グループの権限が必要となることがあります。 - デバッガが正しく機能するためには、
procmod
グループの権限で実行される必要があり、そのためには実行可能ファイルにsetgid procmod
を設定することが適切な方法となります。
- macOSでは、デバッグやプロセス制御に関連する特定の操作を行うために、特別な権限が必要となる場合があります。
技術的詳細
src/cmd/dist/build.c
は、Go言語のビルドシステムの一部であり、Goのツールチェインを構築する際に様々なプラットフォーム固有の処理を行います。このファイルには、特定のオペレーティングシステム(この場合はmacOS)向けに、デバッガのインストールに関するユーザーへの指示を表示するロジックが含まれています。
問題のコードは、cmdbanner
関数内にあります。この関数は、Goのビルドが完了した際に、ユーザーに役立つ情報や次のステップに関する指示を表示するために使用されます。
元のコードでは、macOS (darwin) 環境の場合に以下のメッセージを表示していました。
"On OS X the debuggers must be installed setgrp procmod.\n"
ここで、「setgrp」という記述は、Unix系の権限管理において一般的な「setgid」の誤記であると考えられます。setgrp
という直接的なコマンドや概念は存在せず、グループIDを設定して実行する権限は setgid
ビットによって実現されます。
このコミットでは、この誤りを修正し、メッセージを以下のように変更しました。
"On OS X the debuggers must be installed setgid procmod.\n"
この修正により、ユーザーはデバッガを正しくインストールするために、setgid
ビットを procmod
グループに対して設定する必要があることを正確に理解できるようになります。これは通常、sudo chgrp procmod <debugger_executable>
と sudo chmod g+s <debugger_executable>
のようなコマンドを組み合わせることで実現されます。
コアとなるコードの変更箇所
変更は src/cmd/dist/build.c
ファイルの1491行目付近にあります。
if(streq(gohostos, "darwin")) {
xprintf("\n"
- "On OS X the debuggers must be installed setgrp procmod.\\n"\n"
+ "On OS X the debuggers must be installed setgid procmod.\\n"\n"
"Read and run ./sudo.bash to install the debuggers.\\n");
}
具体的には、"setgrp procmod"
という文字列が "setgid procmod"
に変更されています。
コアとなるコードの解説
このコードスニペットは、Goのビルドプロセスが実行されているホストOSが「darwin」(macOS)であるかどうかを streq(gohostos, "darwin")
でチェックしています。もしmacOSであれば、xprintf
関数を使って標準出力にメッセージを出力します。
xprintf
は、Goのビルドツール内で使用されるカスタムのprintfのような関数です。出力されるメッセージは、macOS上でデバッガを正しく機能させるために必要な権限設定についてユーザーに指示するものです。
修正前は「setgrp procmod」と誤って記述されており、これは文法的に不正確であり、ユーザーに混乱を招く可能性がありました。修正後は「setgid procmod」となり、これはUnix系システムにおける正しい権限設定の概念を反映しています。このメッセージは、ユーザーがデバッガをインストールする際に、付属の ./sudo.bash
スクリプトを実行して必要な権限(setgid procmod
)を設定する必要があることを示唆しています。
関連リンク
- Go言語の公式ウェブサイト: https://golang.org/
- Go言語のIssue Tracker (おそらく #3165 が参照しているもの): https://github.com/golang/go/issues (ただし、この特定のIssueは非常に古いため、直接参照できない可能性があります)
参考にした情報源リンク
- コミット情報:
/home/orange/Project/comemo/commit_data/12314.txt
- GitHubコミットページ: https://github.com/golang/go/commit/3c3c5f38a057d76ebdf5424ba7b595aca886b6a9
- Unixパーミッション (setuid/setgid): 一般的なUnix/Linuxのドキュメントやmanページ (
chmod
コマンドなど) - macOSのデバッグとセキュリティに関する情報: Apple Developer Documentation (過去のバージョンを含む)