[インデックス 12336] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリおよびツールにおける複数のtypo（タイプミス）を修正するものです。具体的には、src/cmd/go/build.go、src/pkg/crypto/ecdsa/ecdsa.go、src/pkg/go/printer/testdata/parser.go、src/pkg/io/pipe.go、src/pkg/syscall/exec_plan9.go の5つのファイルが影響を受けています。これらの修正は、コードの可読性と正確性を向上させることを目的としています。

コミット

このコミット de7361bf986ea73ddf358c38d2c0a512eb3222c7 は、Go言語のソースコード全体にわたる複数のタイプミスを修正するものです。主にコメントや変数名、ドキュメント内のスペルミスが対象となっており、機能的な変更は含まれていません。これにより、コードベースの品質と一貫性が向上します。

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/de7361bf986ea73ddf358c38d2c0a512eb3222c7

元コミット内容

all: more typos

R=golang-dev, bradfitz, r
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5720044

変更の背景

このコミットの背景は非常にシンプルで、Go言語のソースコード内に存在するスペルミス（typo）を修正することにあります。ソフトウェア開発において、コード内のコメント、ドキュメンテーション、変数名などに誤字脱字が存在すると、コードの理解を妨げたり、誤解を招いたりする可能性があります。特に、オープンソースプロジェクトのように多くの開発者が関わる場合、一貫性のある正確な記述は非常に重要です。このコミットは、そのような品質向上の一環として行われました。機能的なバグ修正ではなく、コードベースの「衛生状態」を保つためのメンテナンス作業と位置づけられます。

前提知識の解説

このコミットを理解するためには、以下の基本的な概念を把握しておくことが役立ちます。

Go言語 (Golang): Googleによって開発されたオープンソースのプログラミング言語です。シンプルさ、効率性、並行処理のサポートを重視しており、システムプログラミング、Webサービス、ネットワークプログラミングなどで広く利用されています。
タイプミス (Typo): タイピングエラーによるスペルミスや誤字脱字のことです。プログラミングにおいては、コメント、文字列リテラル、変数名、関数名などで発生し、コードの可読性や正確性に影響を与える可能性があります。
ECDSA (Elliptic Curve Digital Signature Algorithm): 楕円曲線暗号に基づくデジタル署名アルゴリズムです。データの認証と完全性を保証するために使用され、SSL/TLS、ブロックチェーン技術（例: Bitcoin, Ethereum）などで広く利用されています。src/pkg/crypto/ecdsa/ecdsa.go はGo言語の標準ライブラリにおけるECDSAの実装に関連するファイルです。
9P プロトコル (Plan 9 File System Protocol): Plan 9 from Bell Labsオペレーティングシステムで開発された分散ファイルシステムプロトコルです。ネットワーク上のリソースをファイルとして抽象化し、アクセスするためのプロトコルであり、Go言語のsyscallパッケージの一部でPlan 9固有のシステムコールやファイルシステム操作を扱う際に参照されることがあります。src/pkg/syscall/exec_plan9.go は、Go言語がPlan 9環境でシステムコールを実行する際の実装に関連しています。
パーサー (Parser): プログラミング言語のソースコードやデータ構造を解析し、その構文が正しいかどうかを検証し、通常は抽象構文木 (AST) などの内部表現に変換するソフトウェアコンポーネントです。src/pkg/go/printer/testdata/parser.go は、Go言語のコードを整形するgo/printerパッケージのテストデータとして使用されるパーサーの例に関連しています。
パイプ (Pipe): オペレーティングシステムにおけるプロセス間通信 (IPC) の一種で、一方のプロセスの出力がもう一方のプロセスの入力となるようにデータを流すためのメカニズムです。Go言語のioパッケージには、PipeReaderとPipeWriterという型があり、メモリ内でパイプライン処理を実装するために使用されます。src/pkg/io/pipe.go は、このパイプの実装に関連するファイルです。

技術的詳細

このコミットで行われたタイプミス修正は、以下の5つのファイルにわたります。それぞれの修正は、単語のスペルミスを訂正するものであり、コードのロジックや機能には影響を与えません。

src/cmd/go/build.go:
- 変更前: // If the commnd fails, run prints information about the failure
- 変更後: // If the command fails, run prints information about the failure
- 修正内容: commnd を command に修正。これは、go buildコマンドの実行に関するコメント内のタイプミスです。
src/pkg/crypto/ecdsa/ecdsa.go:
- 変更前: // [NSA]: Suite B implementor's guide to FIPS 186-3,
- 変更後: // [NSA]: Suite B implementer's guide to FIPS 186-3,
- 修正内容: implementor を implementer に修正。これは、NSAのドキュメントを参照するコメント内のタイプミスです。
src/pkg/go/printer/testdata/parser.go:
- 変更前: // Ordinary identifer scopes
- 変更後: // Ordinary identifier scopes
- 修正内容: identifer を identifier に修正。これは、パーサーのスコープに関するコメント内のタイプミスです。
src/pkg/io/pipe.go:
- 変更前: // the invidual calls will be gated sequentially.
- 変更後: // the individual calls will be gated sequentially.
- 修正内容: invidual を individual に修正。これは、Pipe関数の並行呼び出しに関するコメント内のタイプミスです。
src/pkg/syscall/exec_plan9.go:
- 変更前: // gbit16 reads a 16-bit numeric value from a 9P protocol message strored in b,
- 変更後: // gbit16 reads a 16-bit numeric value from a 9P protocol message stored in b,
- 修正内容: strored を stored に修正。これは、9Pプロトコルメッセージからの値の読み取りに関するコメント内のタイプミスです。
- 変更前: // gstring reads a string from a 9P protocol message strored in b,
- 変更後: // gstring reads a string from a 9P protocol message stored in b,
- 修正内容: strored を stored に修正。これは、9Pプロトコルメッセージからの文字列の読み取りに関するコメント内のタイプミスです。

これらの修正はすべてコメント内の単語のスペルミスであり、Goコンパイラやランタイムの動作に影響を与えるものではありません。しかし、ドキュメンテーションの正確性を保ち、将来の読者がコードをより正確に理解できるようにするために重要な変更です。

コアとなるコードの変更箇所

以下に、各ファイルの具体的な変更行を示します。

src/cmd/go/build.go

--- a/src/cmd/go/build.go
+++ b/src/cmd/go/build.go
@@ -992,7 +992,7 @@ func relPaths(paths []string) []string {
 var errPrintedOutput = errors.New("already printed output - no need to show error")
 
 // run runs the command given by cmdline in the directory dir.
-// If the commnd fails, run prints information about the failure
+// If the command fails, run prints information about the failure
 // and returns a non-nil error.
 func (b *builder) run(dir, shortenDir string, desc string, cmdargs ...interface{}) error {
 	out, err := b.runOut(dir, desc, cmdargs...)

src/pkg/crypto/ecdsa/ecdsa.go

--- a/src/pkg/crypto/ecdsa/ecdsa.go
+++ b/src/pkg/crypto/ecdsa/ecdsa.go
@@ -7,7 +7,7 @@
 package ecdsa
 
 // References:
-//   [NSA]: Suite B implementor's guide to FIPS 186-3,
+//   [NSA]: Suite B implementer's guide to FIPS 186-3,
 //     http://www.nsa.gov/ia/_files/ecdsa.pdf
 //   [SECG]: SECG, SEC1
 //     http://www.secg.org/download/aid-780/sec1-v2.pdf

src/pkg/go/printer/testdata/parser.go

--- a/src/pkg/go/printer/testdata/parser.go
+++ b/src/pkg/go/printer/testdata/parser.go
@@ -52,7 +52,7 @@ type parser struct {
 	// Non-syntactic parser control
 	exprLev int // < 0: in control clause, >= 0: in expression
 
-	// Ordinary identifer scopes
+	// Ordinary identifier scopes
 	pkgScope   *ast.Scope        // pkgScope.Outer == nil
 	topScope   *ast.Scope        // top-most scope; may be pkgScope
 	unresolved []*ast.Ident      // unresolved identifiers

src/pkg/io/pipe.go

--- a/src/pkg/io/pipe.go
+++ b/src/pkg/io/pipe.go
@@ -178,7 +178,7 @@ func (w *PipeWriter) CloseWithError(err error) error {
 // It is safe to call Read and Write in parallel with each other or with
 // Close. Close will complete once pending I/O is done. Parallel calls to
 // Read, and parallel calls to Write, are also safe:
-// the invidual calls will be gated sequentially.
+// the individual calls will be gated sequentially.
 func Pipe() (*PipeReader, *PipeWriter) {
 	p := new(pipe)
 	p.rwait.L = &p.l

src/pkg/syscall/exec_plan9.go

--- a/src/pkg/syscall/exec_plan9.go
+++ b/src/pkg/syscall/exec_plan9.go
@@ -71,13 +71,13 @@ func StringSlicePtr(ss []string) []*byte {
 	return bb
 }
 
-// gbit16 reads a 16-bit numeric value from a 9P protocol message strored in b,
+// gbit16 reads a 16-bit numeric value from a 9P protocol message stored in b,
 // returning the value and the remaining slice of b.
 func gbit16(b []byte) (uint16, []byte) {
 	return uint16(b[0]) | uint16(b[1])<<8, b[2:]
 }
 
-// gstring reads a string from a 9P protocol message strored in b,
+// gstring reads a string from a 9P protocol message stored in b,
 // returning the value as a Go string and the remaining slice of b.
 func gstring(b []byte) (string, []byte) {
 	n, b := gbit16(b)

コアとなるコードの解説

このコミットにおける「コアとなるコードの変更」は、厳密には機能的なコードの変更ではなく、コメント内のテキスト修正です。しかし、これらの修正がなぜ重要であるかを以下に解説します。

src/cmd/go/build.go の commnd -> command:
- このファイルはGoコマンドラインツールのビルドプロセスに関連しています。run関数は外部コマンドを実行し、その成否を処理します。コメントは、コマンドが失敗した場合の動作を説明しており、commandという正しいスペルに修正することで、この関数の挙動に関する説明がより明確になります。
src/pkg/crypto/ecdsa/ecdsa.go の implementor -> implementer:
- このファイルはECDSA暗号アルゴリズムの実装を含んでいます。コメントは、NSAの「Suite B implementer's guide to FIPS 186-3」というドキュメントを参照しています。implementerは「実装者」を意味し、このガイドが実装者向けのものであることを正確に示します。これにより、参照されるドキュメントの性質が正しく伝わります。
src/pkg/go/printer/testdata/parser.go の identifer -> identifier:
- このファイルはGoコードの整形ツールであるgo/printerパッケージのテストデータの一部であり、パーサーの内部構造を模倣しています。identifierは「識別子」を意味し、プログラミング言語において変数名、関数名などを指します。この修正により、パーサーが扱う「識別子のスコープ」という概念が正確に表現されます。
src/pkg/io/pipe.go の invidual -> individual:
- このファイルはGoのioパッケージにおけるパイプの実装を含んでいます。Pipe関数は、PipeReaderとPipeWriterを生成し、プロセス間通信やストリーム処理に利用されます。コメントは、ReadとWriteの並行呼び出しが安全であり、個々の呼び出しが順次処理されることを説明しています。individualは「個々の」を意味し、各呼び出しが独立して順序付けられることを正確に伝えます。
src/pkg/syscall/exec_plan9.go の strored -> stored (2箇所):
- このファイルはPlan 9オペレーティングシステム向けのシステムコール実行に関連しています。gbit16とgstring関数は、9Pプロトコルメッセージから16ビットの数値や文字列を読み取るためのものです。コメントは、これらの値がバイトスライスbに「格納されている」ことを説明しています。storedは「格納された」を意味し、データの保持状態を正確に記述します。

これらの修正は、コードの機能には影響を与えませんが、Go言語の公式ソースコードの品質とプロフェッショナリズムを維持するために重要です。正確なコメントは、コードの意図を明確にし、将来の貢献者がコードベースを理解し、貢献する際の障壁を低減します。

参考にした情報源リンク

FIPS 186-3 (Digital Signature Standard): https://csrc.nist.gov/publications/detail/fips/186/3/archive/2009-06-25
SECG (Standards for Efficient Cryptography Group): https://www.secg.org/
Plan 9 from Bell Labs: https://9p.io/plan9/
9P Protocol (Wikipedia): https://en.wikipedia.org/wiki/9P
Abstract syntax tree (Wikipedia): https://en.wikipedia.org/wiki/Abstract_syntax_tree

comemo