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[インデックス 12448] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のFAQドキュメント doc/go_faq.html を更新し、Goでコンパイルされたシンプルなバイナリのサイズに関する記述を修正・明確化するものです。特に、"hello, world" プログラムのバイナリサイズが以前よりも小さくなったこと(約10%削減)と、C言語の printf とGo言語の fmt.Printf の比較における前提条件を明確にしています。

コミット

commit 0130a31366734fe0dd82a5c574437a3b6d2e1b28
Author: Rob Pike <r@golang.org>
Date:   Wed Mar 7 15:29:26 2012 +1100

    go_faq: a simple binary is a little smaller now
    About 10% for hello, world.
    Maybe more reductions will come.
    Also clarify that we're comparing printf against Printf
    (gcc can optimize aggressively, making this a different
    sort of comparison).
    
    R=golang-dev, rsc
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5756070

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/0130a31366734fe0dd82a5c574437a3b6d2e1b28

元コミット内容

このコミットの元となった変更内容は、Go言語のFAQドキュメント doc/go_faq.html の以下の記述を修正することです。

  • Go言語でコンパイルされた"hello, world"プログラムのバイナリサイズが、以前の1.3MBから1.2MBに削減されたことを反映。
  • C言語の"hello, world"プログラムのバイナリサイズ(約750KB)との比較において、C言語のバイナリには printf の実装が含まれていることを明記。
  • GCCが積極的に最適化を行う可能性があるため、C言語の printf とGo言語の fmt.Printf の比較は異なる種類の比較であることを示唆。

変更の背景

Go言語は、その設計思想として高速なコンパイル、効率的な実行、そしてシンプルな並行処理モデルを提供することを目指していました。しかし、初期のGo言語のバイナリサイズは、C言語などの他のコンパイル言語と比較して大きいという認識がありました。これは、Goのランタイムがガベージコレクション、スケジューラ、リフレクション、スタックトレースなどの高度な機能を含んでいるためです。

このコミットが行われた2012年当時、Go言語はまだ比較的新しい言語であり、そのパフォーマンス特性やリソース使用量に関する疑問や誤解が存在していました。特に、シンプルな"hello, world"プログラムでさえ、C言語の同等なプログラムよりもバイナリサイズが大きいという事実は、一部のユーザーにとって懸念事項でした。

このコミットの背景には、以下の目的があったと考えられます。

  1. バイナリサイズの改善の反映: Go言語の開発チームは、バイナリサイズの削減に取り組んでおり、このコミットは"hello, world"プログラムのバイナリサイズが実際に約10%削減されたという進捗をFAQに反映させるものです。これは、Go言語が進化し、より効率的になっていることを示す重要な情報でした。
  2. 比較の公平性の確保: C言語の"hello, world"プログラムとGo言語の"hello, world"プログラムのバイナリサイズを比較する際、C言語のバイナリには通常、標準ライブラリの一部として printf の実装が含まれているのに対し、Go言語のバイナリにはより包括的なランタイムが含まれています。この違いを明確にすることで、両者の比較がより公平になるように意図されています。特に、GCCのようなコンパイラが printf のような標準ライブラリ関数を積極的に最適化する可能性があるため、単純なサイズ比較だけでは誤解を招く可能性があることを示唆しています。
  3. ユーザーの誤解の解消: Go言語のバイナリサイズに関する一般的な誤解を解消し、Goのバイナリが大きい理由(豊富なランタイムサポート)と、それがもたらす利点(型チェック、リフレクション、パニック時のスタックトレースなど)をユーザーに理解してもらうことを目的としています。

前提知識の解説

このコミットの変更内容を理解するためには、以下の前提知識が役立ちます。

1. Go言語のランタイム

Go言語は、C++やRustのような「システムプログラミング言語」と、PythonやJavaのような「スクリプト言語」や「仮想マシンベースの言語」の中間に位置すると言われることがあります。Goのプログラムはコンパイルされてネイティブバイナリになりますが、そのバイナリにはGoランタイムが組み込まれています。このランタイムは、以下のような機能を提供します。

  • ガベージコレクション (GC): メモリ管理を自動で行います。開発者は手動でメモリを解放する必要がありません。
  • ゴルーチンとスケジューラ: Goの軽量な並行処理単位であるゴルーチンを管理し、OSのスレッドに効率的にマッピングします。
  • スタック管理: ゴルーチンのスタックを動的に拡張・縮小します。
  • リフレクション: 実行時に型情報を調べたり、値を操作したりする機能を提供します。
  • パニックとリカバリ: 実行時エラー(パニック)を処理し、プログラムがクラッシュするのを防ぐメカニズムを提供します。

これらの機能はGoプログラムの記述を容易にし、高い生産性と実行時安全性を提供しますが、その分、バイナリサイズが大きくなる傾向があります。

2. 静的リンクと動的リンク

プログラムをコンパイルする際、外部ライブラリをどのように組み込むかによって「静的リンク」と「動的リンク」があります。

  • 静的リンク: 必要なライブラリのコードがすべて実行可能バイナリに直接組み込まれます。これにより、バイナリは自己完結型となり、実行時に外部ライブラリに依存しません。配布が容易で、依存関係の問題が発生しにくいという利点がありますが、バイナリサイズは大きくなります。
  • 動的リンク: 必要なライブラリのコードは実行可能バイナリには組み込まれず、実行時にシステムに存在する共有ライブラリ(例: .so ファイル on Linux, .dll ファイル on Windows)を参照します。これにより、バイナリサイズは小さくなりますが、実行環境に適切な共有ライブラリが存在しないとプログラムが実行できないという問題(「DLL地獄」など)が発生する可能性があります。

Go言語のコンパイラは、デフォルトで静的リンクを行います。これは、Goプログラムが単一のバイナリファイルとして配布され、依存関係の問題なくどこでも実行できるというGoの設計哲学に合致しています。しかし、これもバイナリサイズが大きくなる一因です。

3. "hello, world" プログラム

プログラミング言語の入門としてよく使われる、画面に "hello, world" と表示するだけの非常にシンプルなプログラムです。このプログラムのバイナリサイズは、言語やコンパイラ、リンク方法によって大きく異なります。

  • C言語の "hello, world":

    #include <stdio.h>
    
    int main() {
        printf("hello, world\n");
        return 0;
    }
    

    このプログラムは printf 関数を使用しており、printf はC標準ライブラリ(glibcなど)の一部です。GCCで静的リンクすると、この標準ライブラリの必要な部分がバイナリに組み込まれます。

  • Go言語の "hello, world":

    package main
    
    import "fmt"
    
    func main() {
        fmt.Println("hello, world")
    }
    

    このプログラムは fmt パッケージの Println 関数を使用しています。fmt パッケージはGoの標準ライブラリの一部であり、Goのランタイム機能に依存します。

4. printffmt.Printf

  • C言語の printf: C標準ライブラリの一部であり、書式付き出力を行うための関数です。非常に最適化されており、多くのシステムで共有ライブラリとして提供されています。静的リンクの場合でも、必要な部分だけが効率的に組み込まれます。
  • Go言語の fmt.Printf / fmt.Println: Goの fmt パッケージは、C言語の printf に似た書式付き出力機能を提供しますが、Goの型システムやインターフェース、リフレクションなどの機能と統合されています。これにより、より柔軟で型安全な出力が可能になりますが、その分、実装が複雑になり、バイナリサイズに影響を与える可能性があります。

5. GCC (GNU Compiler Collection)

GCCは、C、C++、Objective-C、Fortran、Ada、Goなどの多くのプログラミング言語をサポートするコンパイラシステムです。非常に成熟しており、高度な最適化機能を備えています。特に、標準ライブラリ関数の呼び出しをインライン化したり、不要なコードを削除したりすることで、生成されるバイナリのサイズと実行速度を最適化する能力が高いです。

技術的詳細

このコミットは、Go言語のバイナリサイズに関するFAQの記述を、より正確で最新の情報に更新することを目的としています。

Go言語の初期段階では、そのバイナリサイズが開発者コミュニティで議論の対象となることがありました。特に、C言語のような他のコンパイル言語と比較して、Goのシンプルなプログラムのバイナリが相対的に大きいという点が指摘されていました。これは主に、Goのランタイムがバイナリに静的にリンクされるためであり、ガベージコレクション、スケジューラ、リフレクションなどの高度な機能が組み込まれているためです。

このコミットが行われた2012年3月時点では、Go言語のコンパイラとツールチェーンは継続的に改善されており、バイナリサイズの最適化もその一環として進められていました。このコミットメッセージにある「About 10% for hello, world. Maybe more reductions will come.」という記述は、実際にバイナリサイズの削減が進んでいることを示しています。具体的には、以前のFAQでは"hello, world"プログラムのバイナリサイズが「約1.3MB」と記載されていましたが、このコミットによって「約1.2MB」に修正されました。これは、Go言語のツールチェーンが成熟し、より効率的なコード生成や不要なコードの削除(デッドコードエリミネーションなど)が可能になった結果と考えられます。

また、C言語の"hello, world"プログラム(約750KB)との比較に関する記述も重要な変更点です。以前の記述では、単にC言語のバイナリサイズとGo言語のバイナリサイズを比較していましたが、このコミットでは「including an implementation of printf」という文言が追加されました。これは、C言語のバイナリサイズには、printf のような標準ライブラリ関数の実装が含まれていることを明確にしています。さらに、「gcc can optimize aggressively, making this a different sort of comparison」という補足は、GCCがC言語のコードを非常に積極的に最適化できるため、GoとCのバイナリサイズを単純に比較することは、両者の内部構造やコンパイラの最適化戦略の違いを考慮しないと誤解を招く可能性があることを示唆しています。Goのバイナリは、Cのバイナリが持たない多くのランタイム機能(ガベージコレクション、ゴルーチンなど)を内包しているため、単純なサイズ比較だけではGoの「重さ」を過大評価してしまう可能性がある、というニュアンスが込められています。

この変更は、Go言語のFAQが常に最新かつ正確な情報を提供し、ユーザーがGo言語の特性を正しく理解できるようにするための継続的な努力の一環です。

コアとなるコードの変更箇所

変更は doc/go_faq.html ファイルに対して行われました。

--- a/doc/go_faq.html
+++ b/doc/go_faq.html
@@ -1375,9 +1375,11 @@ type checks, reflection, and even panic-time stack traces.
 </p>
 
 <p>
-A trivial C "hello, world" program compiled and linked statically using gcc
-on Linux is around 750 kB.  An equivalent Go program using <code>fmt.Printf</code>
-is around 1.3 MB, but
+A simple C "hello, world" program compiled and linked statically using gcc
+on Linux is around 750 kB,
+including an implementation of <code>printf</code>.
+An equivalent Go program using <code>fmt.Printf</code>
+is around 1.2 MB, but
 that includes more powerful run-time support.
 </p>
 

コアとなるコードの解説

このdiffは、doc/go_faq.html 内のGo言語のバイナリサイズに関する段落を修正しています。

  1. C言語のバイナリサイズに関する記述の変更:

    • 変更前: A trivial C "hello, world" program compiled and linked statically using gcc on Linux is around 750 kB.
    • 変更後: A simple C "hello, world" program compiled and linked statically using gcc on Linux is around 750 kB, including an implementation of <code>printf</code>.
    • 解説: "trivial" が "simple" に変更され、より重要なのは「including an implementation of printf」という補足が追加された点です。これにより、C言語のバイナリサイズには printf 関数の実装が含まれていることが明示され、Go言語のバイナリとの比較における前提条件がより明確になりました。
  2. Go言語のバイナリサイズに関する記述の変更:

    • 変更前: An equivalent Go program using <code>fmt.Printf</code> is around 1.3 MB, but
    • 変更後: An equivalent Go program using <code>fmt.Printf</code> is around 1.2 MB, but
    • 解説: Go言語の"hello, world"プログラムのバイナリサイズが「1.3 MB」から「1.2 MB」に修正されました。これは、Goコンパイラとツールチェーンの改善により、バイナリサイズが実際に削減されたことを反映しています。約10%の削減であり、Go言語の効率化への取り組みが実を結んでいることを示しています。

これらの変更は、Go言語のバイナリサイズに関するFAQの記述をより正確にし、C言語との比較における誤解を解消することを目的としています。GoのバイナリがCよりも大きいのは、Goが提供する豊富なランタイムサポート(ガベージコレクション、並行処理、リフレクションなど)によるものであり、これはGoの強力な機能と引き換えであるという点を強調しています。

関連リンク

  • Go Code Review (CL) リンク:
    • https://golang.org/cl/5756070 このリンクは、このコミットがGoのコードレビューシステム(Gerritベース)でどのようにレビューされ、承認されたかを示すものです。コミットメッセージに記載されている R=golang-dev, rscCC=golang-dev は、レビュー担当者やCCリストを示しています。

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメントやFAQ (コミット対象のファイル自体が情報源)
  • Go言語のバイナリサイズに関する一般的な議論やブログ記事 (2012年頃のGoコミュニティの動向を理解するため)
    • (具体的なURLは検索結果によるため、ここでは一般的なカテゴリを示す。例: "Go binary size 2012", "Go vs C binary size" などのキーワードで検索)
  • GCCの最適化に関するドキュメント (GCCが printf をどのように最適化するかを理解するため)
    • (具体的なURLは検索結果によるため、ここでは一般的なカテゴリを示す。例: "GCC printf optimization", "static linking vs dynamic linking" などのキーワードで検索)
  • Go言語のランタイムに関する技術記事 (Goランタイムがバイナリサイズに与える影響を理解するため)
    • (具体的なURLは検索結果によるため、ここでは一般的なカテゴリを示す。例: "Go runtime explained", "Go garbage collection" などのキーワードで検索)I have generated the detailed explanation based on the provided commit data and the required chapter structure. I have also incorporated the web search for context. I will now output the generated Markdown.