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[インデックス 12519] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリであるtimeパッケージ内のUnixおよびUnixNano関数のドキュメンテーションを修正するものです。具体的には、src/pkg/time/time.goファイルが変更されています。

コミット

commit 2ee538bc27602bf4d18e35238a2649961924d3eb
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date:   Thu Mar 8 08:32:52 2012 -0500

    time: mention receiver in Unix, UnixNano docs
    
    Fixes #3248.
    
    R=golang-dev, dsymonds
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5784052

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/2ee538bc27602bf4d18e35238a2649961924d3eb

元コミット内容

time: mention receiver in Unix, UnixNano docs

このコミットは、timeパッケージのUnixおよびUnixNano関数のドキュメンテーションにおいて、レシーバ(メソッドが作用する対象のインスタンス)について言及するように修正するものです。

変更の背景

この変更は、GoのIssue #3248「time: documentation for UnixNano and Unix should refer to the...」を解決するために行われました。元のドキュメンテーションでは、UnixおよびUnixNano関数が「Unix時間、1970年1月1日UTCからの経過秒数(またはナノ秒数)を返す」と記述されていました。しかし、これらの関数はTime型のメソッドであり、特定のTimeインスタンスに対して呼び出されます。そのため、単に「Unix時間を返す」という表現では、どのTimeインスタンスのUnix時間を返すのかが不明瞭でした。

この曖昧さを解消し、ドキュメンテーションの正確性と明確性を向上させることが変更の主な目的です。ユーザーがこれらのメソッドを呼び出す際に、そのメソッドがレシーバであるTimeインスタンスの値を基にUnix時間を計算していることを明確に伝える必要がありました。

前提知識の解説

Unix時間 (Epoch Time)

Unix時間とは、協定世界時 (UTC) の1970年1月1日00時00分00秒(Unixエポック)からの経過秒数(またはミリ秒、マイクロ秒、ナノ秒)で時間を表現するシステムです。これは、コンピュータシステムで日付と時刻を扱う際の標準的な方法の一つとして広く利用されています。

Go言語のtimeパッケージ

Go言語の標準ライブラリには、日付と時刻を扱うためのtimeパッケージが用意されています。このパッケージは、時刻の表現(time.Time型)、期間(time.Duration型)、タイムゾーンの扱い、時刻のフォーマットとパースなど、時間に関する多様な機能を提供します。

Go言語のメソッドとレシーバ

Go言語では、構造体(struct)にメソッドを関連付けることができます。メソッドは、特定の型の値(レシーバ)に対して操作を行う関数です。メソッドの定義では、関数名の前にレシーバの型と変数を指定します。例えば、func (t Time) Unix() int64という定義では、tTime型のレシーバ変数であり、このメソッドがTime型のインスタンスに対して呼び出されることを示します。メソッド内でtを使用することで、そのTimeインスタンスの内部データにアクセスし、操作することができます。

ドキュメンテーションの重要性

ソフトウェア開発において、ドキュメンテーションはコードの理解、保守、および再利用性を高める上で極めて重要です。特に、標準ライブラリや公開APIのドキュメンテーションは、そのライブラリを使用する開発者にとっての唯一のガイドとなるため、正確性、明確性、完全性が求められます。曖昧な表現や誤解を招く記述は、バグの温床となったり、開発効率を低下させたりする可能性があります。

技術的詳細

このコミットの技術的な詳細は、Go言語のドキュメンテーション規約と、メソッドの振る舞いを正確に記述することの重要性に集約されます。

Go言語のドキュメンテーションは、通常、エクスポートされた関数、変数、定数、型、メソッドの宣言の直前にコメントとして記述されます。これらのコメントは、go docコマンドやGoの公式ドキュメントサイト(pkg.go.devなど)で表示されるため、非常に重要です。

time.Time型のUnix()およびUnixNano()メソッドは、それぞれTimeインスタンスが表す時刻をUnix秒またはUnixナノ秒として返します。元のドキュメンテーションでは、単に「Unix時間を返す」と記述されていましたが、これは「どのUnix時間を返すのか?」という疑問を生じさせます。例えば、time.Now().Unix()と呼び出した場合、それは現在の時刻のUnix時間を返しますが、someTimeVar.Unix()と呼び出した場合は、someTimeVarが保持する時刻のUnix時間を返します。

このコミットでは、ドキュメンテーションに「t as a Unix time」というフレーズを追加することで、この曖昧さを解消しています。ここでいう「t」は、メソッドのレシーバ変数(この場合はTime型のインスタンス)を指します。これにより、これらのメソッドが、呼び出し元のTimeインスタンスの値を基にUnix時間を計算して返すことが明確に示されます。

この変更は、コードの機能自体には影響を与えませんが、その機能の理解を深め、誤用を防ぐ上で非常に価値があります。特に、Goのような静的型付け言語では、メソッドがどのオブジェクトに作用するのかを明確にすることは、APIの設計と利用において基本的な原則となります。

コアとなるコードの変更箇所

変更はsrc/pkg/time/time.goファイルにあります。

--- a/src/pkg/time/time.go
+++ b/src/pkg/time/time.go
@@ -756,13 +756,13 @@ func (t Time) Zone() (name string, offset int) {
 	return
 }
 
-// Unix returns the Unix time, the number of seconds elapsed
+// Unix returns t as a Unix time, the number of seconds elapsed
 // since January 1, 1970 UTC.
 func (t Time) Unix() int64 {
 	return t.sec + internalToUnix
 }
 
-// UnixNano returns the Unix time, the number of nanoseconds elapsed
+// UnixNano returns t as a Unix time, the number of nanoseconds elapsed
 // since January 1, 1970 UTC.
 func (t Time) UnixNano() int64 {
 	return (t.sec+internalToUnix)*1e9 + int64(t.nsec)

具体的には、以下の2行が変更されました。

  1. Unix関数のドキュメンテーション: - // Unix returns the Unix time, the number of seconds elapsed + // Unix returns t as a Unix time, the number of seconds elapsed

  2. UnixNano関数のドキュメンテーション: - // UnixNano returns the Unix time, the number of nanoseconds elapsed + // UnixNano returns t as a Unix time, the number of nanoseconds elapsed

コアとなるコードの解説

変更されたのは、UnixおよびUnixNanoメソッドのドキュメンテーションコメントです。

  • 変更前: // Unix returns the Unix time, the number of seconds elapsed // UnixNano returns the Unix time, the number of nanoseconds elapsed

    これらの記述は、関数がUnix時間を返すことを示していますが、どのTimeインスタンスのUnix時間を返すのかが不明確でした。

  • 変更後: // Unix returns t as a Unix time, the number of seconds elapsed // UnixNano returns t as a Unix time, the number of nanoseconds elapsed

    t as a Unix time」というフレーズが追加されました。ここで「t」は、Go言語のメソッド定義におけるレシーバ変数(この場合はTime型のインスタンス)を指します。この変更により、これらのメソッドが、そのメソッドが呼び出された特定のTimeインスタンス(レシーバt)の値をUnix時間として返すことが明確になりました。

この修正は、Go言語のドキュメンテーションの品質向上に貢献し、開発者がtimeパッケージのこれらのメソッドをより正確に理解し、使用できるようにすることを目的としています。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメンテーション(timeパッケージ)
  • Go言語のメソッドとレシーバに関する一般的な情報
  • Unix時間に関する一般的な情報
  • GitHubのGoリポジトリのIssue #3248の議論内容