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[インデックス 12665] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のビルドシステムにおけるmake.batスクリプトの修正に関するものです。具体的には、古い生成ファイルがビルドプロセスで問題を引き起こすのを防ぐための変更が加えられています。この修正は、Windows環境でのGoのビルドの安定性を向上させることを目的としています。

コミット

commit 8009542f559cee2a2c17af1bdafb46666778feac
Author: Christopher Redden <christopher.redden@gmail.com>
Date:   Fri Mar 16 14:30:43 2012 +1100

    make.bat: Fix for old files
    
    Same fix as applied here: https://golang.org/cl/5761044
    
    Fixes #3222.
    
    R=golang-dev, alex.brainman, rsc
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5838043

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/8009542f559cee2a2c17af1bdafb46666778feac

元コミット内容

make.bat: Fix for old files

Same fix as applied here: https://golang.org/cl/5761044

Fixes #3222.

変更の背景

このコミットの背景には、Go言語のビルドプロセスにおいて、以前のビルドで生成された古いファイルが原因で、その後のビルドが失敗するという問題がありました。特に、runtime_defs.goというファイルが問題を引き起こすことが報告されていました。

コミットメッセージにある「Fixes #3222」は、GoのIssueトラッカーにおけるIssue 3222を指しています。このIssueは、「make.bat: build fails if runtime_defs.go exists」というタイトルで、runtime_defs.goファイルが既に存在する場合にmake.batを使用したビルドが失敗するというバグを報告しています。このファイルは、Goのランタイムに関する定義を含む自動生成されるファイルであり、古いバージョンが残っていると新しいビルドプロセスと整合性が取れなくなり、エラーが発生していました。

また、「Same fix as applied here: https://golang.org/cl/5761044」という記述は、同様の問題に対する以前の修正(Change List 5761044)が存在し、このコミットがその修正と同じアプローチを採用していることを示唆しています。これは、この種の問題がGoのビルドシステムにおいて繰り返し発生する可能性があり、共通の解決策が適用されていることを示しています。

この修正は、ビルドの堅牢性を高め、開発者がクリーンな状態からビルドを開始しなくても、古い生成ファイルが原因でビルドが中断されることを防ぐことを目的としています。

前提知識の解説

  • make.bat: make.batは、Windows環境でGo言語のソースコードをビルドするために使用されるバッチスクリプトです。Unix/Linux環境におけるMakefileに相当する役割を果たします。Goの初期のビルドシステムでは、プラットフォーム固有のスクリプトが使用されており、make.batはそのWindows版でした。これは、コンパイラ、リンカ、標準ライブラリなど、Goのツールチェイン全体をソースから構築するプロセスを自動化します。

  • Goのビルドプロセス: Goのビルドプロセスは、通常、以下のステップを含みます。

    1. ブートストラップ: 最初に、Goのコンパイラ自体をビルドするために、既存のGoコンパイラ(またはCコンパイラ)を使用します。
    2. ツールチェインのビルド: goコマンド、コンパイラ(gc)、アセンブラ(go tool asm)、リンカ(go tool link)などのGoツールチェインをビルドします。
    3. 標準ライブラリのビルド: fmt, net, osなどのGoの標準ライブラリをビルドします。
    4. テスト: ビルドされたコンポーネントが正しく機能するかを確認するためにテストを実行します。 このプロセス中に、一部のファイルはソースコードから直接生成されます。
  • runtime_defs.go: runtime_defs.goは、Goのランタイム(実行時システム)に関する定義を含むGoソースファイルです。このファイルは手動で記述されるのではなく、ビルドプロセス中に自動的に生成されます。具体的には、Goのランタイムが使用する内部的なデータ構造、定数、関数ポインタなどの定義が含まれることがあります。これらの定義は、Goのコンパイラやリンカがランタイムと正しく連携するために必要です。 自動生成されるファイルであるため、ビルド環境やGoのバージョンが変更された際に、古いバージョンのruntime_defs.goが残っていると、新しいビルドプロセスが期待する定義と異なり、コンパイルエラーやリンクエラーを引き起こす可能性があります。

技術的詳細

このコミットの技術的な核心は、Goのビルドプロセスにおける「クリーンアップ」の重要性にあります。特に、自動生成されるファイルがビルドの整合性に与える影響を考慮しています。

runtime_defs.goのようなファイルは、Goのソースコードから直接生成されるのではなく、ビルドスクリプトや特定のツールによって生成されます。これは、プラットフォーム固有の特性や、コンパイル時に決定されるべき内部的な詳細をGoのランタイムに組み込むために行われます。

問題は、以前のビルドで生成されたruntime_defs.goが、その後のビルドで再生成される際に、古い内容が残っていると発生します。例えば、Goのバージョンアップや、ビルド環境の変更によって、runtime_defs.goの期待される内容が変更されたとします。この時、make.batが新しいruntime_defs.goを生成しようとしても、古いファイルが既に存在し、かつその内容が新しいビルドプロセスと互換性がない場合、コンパイルエラーやリンクエラーが発生します。これは、コンパイラが古い定義に基づいてコードを生成しようとするか、または新しい定義と古い定義が衝突するためです。

この問題を解決するために、コミットではビルドの初期段階で明示的に古いruntime_defs.goファイルを削除するアプローチを採用しています。これにより、常に最新のビルドプロセスに基づいてruntime_defs.goが再生成されることが保証され、古いファイルが原因で発生するビルドエラーを防ぐことができます。

Windowsのバッチスクリプトにおけるdel /Fコマンドは、ファイルを強制的に削除するコマンドです。これにより、読み取り専用属性が設定されている場合でもファイルを削除でき、ビルドプロセスが中断される可能性を低減します。

この修正は、ビルドシステムの堅牢性を高めるための一般的なプラクティスを示しています。自動生成されるファイルや中間ファイルは、ビルドの開始時にクリーンアップされるべきであり、これにより、以前のビルドの状態が現在のビルドに悪影響を与えることを防ぎます。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/make.bat
+++ b/src/make.bat
@@ -28,6 +28,9 @@ cd src
 if "x%GOROOT_FINAL%\"==\"x\" set GOROOT_FINAL=%GOROOT%
 set DEFGOROOT=-DGOROOT_FINAL=\"\\\"%GOROOT_FINAL:\\=\\\\%\\\"\"\
 
+:: Clean old generated file that will cause problems in the build.
+del /F \".\\pkg\\runtime\\runtime_defs.go\"\
+\
 echo # Building C bootstrap tool.
 echo cmd/dist
 if not exist ..\\bin\\tool mkdir ..\\bin\\tool

コアとなるコードの解説

このコミットにおけるコアとなるコードの変更は、src/make.batファイルに以下の3行が追加されたことです。

:: Clean old generated file that will cause problems in the build.
del /F ".\\pkg\\runtime\\runtime_defs.go"
  1. :: Clean old generated file that will cause problems in the build.: これはバッチスクリプトにおけるコメント行です。::は、バッチファイルでコメントを記述するための一般的な方法です。このコメントは、続くコマンドの目的を説明しており、「ビルドで問題を引き起こす古い生成ファイルをクリーンアップする」ことを明確に示しています。これは、コードの可読性と保守性を高める上で非常に重要です。

  2. del /F ".\\pkg\\runtime\\runtime_defs.go": これが実際の修正の核心となるコマンドです。

    • del: Windowsのコマンドプロンプトでファイルやディレクトリを削除するためのコマンドです。
    • /F: delコマンドのオプションで、「強制的に削除する」ことを意味します。これにより、読み取り専用属性が設定されているファイルでも削除が可能になります。これは、runtime_defs.goが何らかの理由で読み取り専用になっている場合に、ビルドプロセスが中断されるのを防ぐために重要です。
    • ".\\pkg\\runtime\\runtime_defs.go": 削除対象のファイルのパスです。
      • .\\: 現在のディレクトリ(この場合はsrcディレクトリ)を指します。
      • pkg\\runtime\\: Goの標準ライブラリのパッケージが配置されるpkgディレクトリ内のruntimeパッケージのディレクトリを指します。
      • runtime_defs.go: 削除される特定のファイル名です。

このコマンドは、make.batがビルドプロセスを開始する前に、.\pkg\runtime\runtime_defs.goというパスにある既存のruntime_defs.goファイルを強制的に削除します。これにより、ビルドプロセスは常にクリーンな状態でruntime_defs.goを再生成することができ、古いファイルが原因で発生するコンパイルエラーやリンクエラーを防ぎます。

この変更は、Goのビルドシステムの堅牢性を向上させ、開発者がよりスムーズにGoのソースコードをビルドできるようにするための、シンプルかつ効果的な修正です。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go Issue 3222: make.bat: build fails if runtime_defs.go exists - GitHub: https://github.com/golang/go/issues/3222
  • Windows del command documentation (一般的な情報源)
  • Go言語のビルドプロセスに関する一般的な知識