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[インデックス 12669] ファイルの概要

このコミットは、Go言語プロジェクトのWindowsビルドスクリプトである src/make.bat における変更です。具体的には、ビルドプロセス中に古い生成済みファイルを削除する際に、そのファイルが存在しない場合に表示されるエラーメッセージを抑制するように修正されています。これにより、スクリプトの実行がより堅牢になり、不要なエラー出力がユーザーに表示されなくなります。

コミット

  • コミットハッシュ: 4aaf03aa74fbecdf3558d232f49a438700eb0ff8
  • Author: Shenghou Ma minux.ma@gmail.com
  • Date: Sat Mar 17 00:32:48 2012 +0800

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/4aaf03aa74fbecdf3558d232f49a438700eb0ff8

元コミット内容

make.bat: don't show error message if old generated files do not exist

R=golang-dev, alex.brainman, mattn.jp
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5843045

変更の背景

ビルドプロセスでは、以前のビルドで生成された中間ファイルや一時ファイルをクリーンアップすることがよくあります。これは、クリーンな状態からビルドを開始するため、または古いファイルが新しいビルドに悪影響を与えるのを防ぐために行われます。

このコミット以前の src/make.bat スクリプトでは、.\pkg\runtime\runtime_defs.go というファイルを削除するコマンドが含まれていました。しかし、このファイルが何らかの理由で存在しない場合(例えば、初回ビルド時や、以前のクリーンアップが完全に成功していた場合など)、del コマンドは「指定されたファイルが見つかりません」といったエラーメッセージを標準エラー出力に表示していました。

このようなエラーメッセージは、スクリプトの実行自体には影響がないものの、ユーザーにとっては不要な情報であり、ビルドが失敗したかのような誤解を与える可能性がありました。また、自動化されたビルドシステムでは、このようなエラー出力がログを乱雑にし、実際の重要なエラーを見落とす原因となることもあります。

この変更の背景には、ビルドスクリプトの堅牢性を高め、ユーザーエクスペリエンスを向上させるという目的があります。ファイルが存在しない場合にエラーメッセージを表示しないことで、スクリプトはより「静かに」かつ効率的に動作するようになります。

前提知識の解説

1. make.bat とは

make.bat は、Windows環境で実行されるバッチスクリプトファイルです。Go言語のようなクロスプラットフォーム開発では、各OSに対応したビルドスクリプトが用意されることが一般的です。make.bat は、Goプロジェクトのビルド、テスト、クリーンアップなどのタスクを自動化するために使用されます。これはUnix/Linux環境における Makefile に相当する役割を担います。

2. del /F コマンド

del コマンドは、Windowsのコマンドプロンプトでファイルやディレクトリを削除するために使用されます。

  • del: ファイルを削除します。
  • /F: 読み取り専用属性が設定されているファイルでも強制的に削除します。

3. 2>NUL とは

これはWindowsのコマンドプロンプトにおけるリダイレクションの構文です。

  • 2: 標準エラー出力 (stderr) を表すファイルディスクリプタです。コマンドがエラーメッセージを出力する際に使用されます。
  • >: リダイレクション演算子で、出力の向きを変更します。
  • NUL: Windowsにおける「ヌルデバイス」です。Unix/Linuxにおける /dev/null に相当します。NUL にリダイレクトされた出力はすべて破棄され、どこにも表示されません。

したがって、2>NUL は「標準エラー出力を NUL デバイスにリダイレクトする」、つまり「エラーメッセージを画面に表示せず、すべて破棄する」という意味になります。

4. runtime_defs.go と Go のビルドプロセス

runtime_defs.go は、Go言語のランタイム(プログラム実行環境)に関する定義が含まれるGoのソースファイルです。このようなファイルは、通常、ビルドプロセス中に自動的に生成されることが多いです。Goのビルドプロセスでは、ソースコードのコンパイルだけでなく、特定のプラットフォームやアーキテクチャに合わせたコードの生成、依存関係の解決、リンクなど、様々なステップが含まれます。ビルドスクリプトは、これらのステップを適切な順序で実行し、最終的な実行可能ファイルを生成する役割を担います。

技術的詳細

このコミットの技術的詳細の核心は、Windowsバッチスクリプトにおけるエラーメッセージの抑制メカニズムである 2>NUL の利用にあります。

従来の del /F ".\pkg\runtime\runtime_defs.go" コマンドは、指定されたファイルが存在しない場合に、del コマンド自体がエラーコードを返し、同時にエラーメッセージを標準エラー出力に書き出します。例えば、「指定されたファイルが見つかりません。」といったメッセージです。

この変更では、コマンドの末尾に 2>NUL を追加することで、del コマンドが生成する標準エラー出力(ファイルが見つからない旨のエラーメッセージなど)を NUL デバイスにリダイレクトし、結果としてこれらのメッセージがコマンドプロンプトに表示されなくなります。

このアプローチは、ビルドスクリプトやシェルスクリプトにおいて非常に一般的なパターンです。特に、ファイルの削除やディレクトリの作成など、冪等性(何度実行しても同じ結果になること)が求められる操作において有効です。例えば、ファイルを削除するコマンドは、ファイルが存在しない場合でもエラーを出力すべきではありません。なぜなら、最終的な目的は「そのファイルが存在しない状態にする」ことであり、ファイルが最初から存在しないのであれば、その目的は既に達成されているからです。

2>NUL を使用することで、スクリプトは以下のような利点を得ます。

  1. クリーンな出力: 不要なエラーメッセージが抑制され、ビルドログが読みやすくなります。これにより、実際のビルドエラーや警告がより明確になります。
  2. 堅牢性: ファイルの有無に依存せず、スクリプトが中断することなく実行を継続できます。これは、異なる環境やビルド段階でのスクリプトの互換性を高めます。
  3. 自動化の容易さ: 自動ビルドシステムやCI/CDパイプラインにおいて、予期せぬエラー出力によるビルドの失敗や警告を回避できます。

ただし、2>NUL の使用には注意も必要です。これにより、本当に重要なエラーメッセージも抑制されてしまう可能性があります。このため、2>NUL は、エラーが予期されており、かつそのエラーがスクリプトの正常な実行を妨げない場合にのみ慎重に使用されるべきです。このケースでは、runtime_defs.go が存在しないことは予期される状況であり、その削除が失敗してもビルド全体には影響しないため、適切な使用例と言えます。

コアとなるコードの変更箇所

変更は src/make.bat ファイルの1行のみです。

--- a/src/make.bat
+++ b/src/make.bat
@@ -29,7 +29,7 @@ if "x%GOROOT_FINAL%"=="x" set GOROOT_FINAL=%GOROOT%
 set DEFGOROOT=-DGOROOT_FINAL="\"%GOROOT_FINAL:\\=\\%\""
 
 :: Clean old generated file that will cause problems in the build.
-del /F ".\pkg\runtime\runtime_defs.go"
+del /F ".\pkg\runtime\runtime_defs.go" 2>NUL
 
 echo # Building C bootstrap tool.
 echo cmd/dist

コアとなるコードの解説

変更された行は以下の通りです。

  • 変更前: del /F ".\pkg\runtime\runtime_defs.go"
  • 変更後: del /F ".\pkg\runtime\runtime_defs.go" 2>NUL

この変更は、del コマンドの実行結果のうち、標準エラー出力(ファイルが見つからない場合のエラーメッセージなど)を NUL デバイスにリダイレクトすることで、そのメッセージがコマンドプロンプトに表示されないようにしています。

具体的には、.\pkg\runtime\runtime_defs.go というパスにあるファイルを強制的に削除しようとします。もしこのファイルが存在しない場合、変更前は del コマンドがエラーメッセージを出力していましたが、変更後は 2>NUL のおかげでそのエラーメッセージは破棄され、画面には何も表示されません。これにより、ビルドスクリプトの実行がよりスムーズになり、ユーザーは不要なエラー出力に惑わされることがなくなります。

関連リンク

参考にした情報源リンク