Keyboard shortcuts

Press or to navigate between chapters

Press S or / to search in the book

Press ? to show this help

Press Esc to hide this help

[インデックス 12701] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリsortパッケージ内の2つの関数、SortIsSortedにドキュメントを追加し、特にSort関数の安定性(stability)について明記するものです。これにより、godocツールで生成されるドキュメントの品質と正確性が向上しました。

コミット

commit 65dc7dc90bece08e9810de12acf06f82cc6a6384
Author: Brad Fitzpatrick <bradfitz@golang.org>
Date:   Tue Mar 20 11:40:41 2012 -0700

    sort: document two undocumented functions
    
    They looked out of place in godoc.
    Includes documenting sort stability.
    
    Fixes #3356
    
    R=golang-dev, gri, trolleriprofessorn
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5855044

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/65dc7dc90bece08e9810de12acf06f82cc6a6384

元コミット内容

---
 src/pkg/sort/sort.go | 3 +++
 1 file changed, 3 insertions(+)

diff --git a/src/pkg/sort/sort.go b/src/pkg/sort/sort.go
index 31da3c83d0..60f2d9ab40 100644
--- a/src/pkg/sort/sort.go
+++ b/src/pkg/sort/sort.go
@@ -183,6 +183,8 @@ func quickSort(data Interface, a, b, maxDepth int) {\n 	}\n }\n \n+// Sort sorts data.\n+// The algorithm used is not guaranteed to be a stable sort.\n func Sort(data Interface) {\n 	// Switch to heapsort if depth of 2*ceil(lg(n)) is reached.\n 	n := data.Len()\
@@ -194,6 +196,7 @@ func Sort(data Interface) {\n 	quickSort(data, 0, n, maxDepth)\n }\n \n+// IsSorted reports whether data is sorted.\n func IsSorted(data Interface) bool {\n 	n := data.Len()\
 	for i := n - 1; i > 0; i-- {\

変更の背景

このコミットの主な背景は、Go言語のドキュメンテーションツールであるgodocの出力品質を向上させることにあります。godocはGoのソースコードから直接ドキュメントを生成するため、関数や型の定義の直前に書かれたコメントがそのままドキュメントとして利用されます。

コミットメッセージにある「They looked out of place in godoc.」という記述は、SortIsSortedという2つの重要な公開関数が、godocによって適切にドキュメント化されていなかったことを示唆しています。ドキュメントがない、あるいは不十分な場合、これらの関数がgodocの出力に表示されなかったり、表示されてもその機能や振る舞いが不明瞭であったりします。

特に、Sort関数の「安定性(stability)」に関するドキュメントの追加は重要です。ソートアルゴリズムの安定性は、同じ値を持つ要素の相対的な順序がソート後も保持されるかどうかを指します。多くのプログラミング言語の標準ソート関数は安定ソートであるか、その安定性が明記されていますが、Goのsort.Sortは安定ソートではないため、その旨を明記することで、開発者が予期せぬ挙動に遭遇するのを防ぐことができます。

この変更は、Go言語の標準ライブラリの品質と使いやすさを継続的に改善する取り組みの一環です。

前提知識の解説

このコミットを理解するためには、以下の概念についての知識が役立ちます。

  1. Go言語のsortパッケージ:

    • Go言語の標準ライブラリの一部で、スライスやユーザー定義のコレクションをソートするためのインターフェースと関数を提供します。
    • ソート対象のデータはsort.Interfaceインターフェース(Len(), Less(i, j int) bool, Swap(i, j int)の3つのメソッドを持つ)を実装する必要があります。
    • sort.Sort(data Interface)関数は、このインターフェースを実装した任意のデータ構造をソートします。
    • 内部的には、データのサイズや再帰の深さに応じてクイックソートやヒープソートなどのアルゴリズムを組み合わせて使用します。
  2. godocツール:

    • Go言語の公式ドキュメンテーションツールです。
    • Goのソースコードを解析し、公開されている型、関数、メソッド、定数、変数などに関するドキュメントを自動生成します。
    • ドキュメントは、対応する宣言の直前に書かれたコメントから抽出されます。特に、エクスポートされた(大文字で始まる)識別子に対するコメントは、godocによってドキュメントとして認識されます。
    • godocは、ローカルでドキュメントサーバーを起動したり、静的なHTMLファイルを生成したりすることができます。
  3. ソートアルゴリズムの安定性(Stability):

    • ソートアルゴリズムの特性の一つで、ソート対象のデータに同じ値を持つ複数の要素が存在する場合に重要になります。
    • 安定ソート(Stable Sort): 同じ値を持つ要素が、ソート前と同じ相対的な順序を保持するソートアルゴリズムです。例えば、[A:5, B:3, C:5]というリストをソートして[B:3, A:5, C:5]となった場合、A:5C:5の相対順序が保持されているため安定です。
    • 不安定ソート(Unstable Sort): 同じ値を持つ要素の相対的な順序が、ソート後に変更される可能性があるソートアルゴリズムです。上記の例で[B:3, C:5, A:5]となった場合、不安定です。
    • Goのsort.Sort関数が内部で使用するクイックソートは、一般的に不安定ソートとして知られています。そのため、この特性を明記することは、開発者がソート結果を正確に理解するために不可欠です。Goにはsort.Stableという安定ソートを行うための関数も別途提供されています。
  4. Go言語のコメント規約:

    • Goでは、公開される(エクスポートされる)識別子(関数、型、変数など)には、その識別子の目的を説明するコメントを付けることが推奨されています。
    • このコメントは、識別子の名前で始まり、その後に説明が続きます。例えば、// Sort sorts data.のように書かれます。
    • godocはこの規約に従ってドキュメントを生成します。

技術的詳細

このコミットは、src/pkg/sort/sort.goファイルに対して行われました。具体的には、Sort関数とIsSorted関数の定義の直前に、それぞれドキュメンテーションコメントが追加されています。

Sort関数への変更

変更前:

func Sort(data Interface) {
	// Switch to heapsort if depth of 2*ceil(lg(n)) is reached.
	n := data.Len()
	maxDepth := 0
	for i := n; i > 0; i >>= 1 {
		maxDepth++
	}
	maxDepth *= 2
	quickSort(data, 0, n, maxDepth)
}

変更後:

// Sort sorts data.
// The algorithm used is not guaranteed to be a stable sort.
func Sort(data Interface) {
	// Switch to heapsort if depth of 2*ceil(lg(n)) is reached.
	n := data.Len()
	maxDepth := 0
	for i := n; i > 0; i >>= 1 {
		maxDepth++
	}
	maxDepth *= 2
	quickSort(data, 0, n, maxDepth)
}

追加されたコメントは以下の2行です。

  • // Sort sorts data.:これはgodocが関数Sortの目的を認識するための標準的なコメント形式です。
  • // The algorithm used is not guaranteed to be a stable sort.:これがこのコミットの最も重要な技術的詳細です。sort.Sortが内部でクイックソートを使用しているため、安定ソートではないことを明示しています。これにより、開発者はsort.Sortを使用する際に、同じ値を持つ要素の相対的な順序が保持されない可能性があることを認識できます。

IsSorted関数への変更

変更前:

func IsSorted(data Interface) bool {
	n := data.Len()
	for i := n - 1; i > 0; i-- {
		if data.Less(i, i-1) {
			return false
		}
	}
	return true
}

変更後:

// IsSorted reports whether data is sorted.
func IsSorted(data Interface) bool {
	n := data.Len()
	for i := n - 1; i > 0; i-- {
		if data.Less(i, i-1) {
			return false
		}
	}
	return true
}

追加されたコメントは以下の1行です。

  • // IsSorted reports whether data is sorted.:これもgodocが関数IsSortedの目的を認識するための標準的なコメント形式です。この関数は、与えられたデータがソート済みであるかどうかを報告します。

これらの変更は、コードの振る舞いを変更するものではなく、純粋にドキュメンテーションの改善を目的としています。しかし、特にSort関数の安定性に関する記述は、その関数の利用方法や期待される結果に大きな影響を与えるため、非常に重要な情報です。

コアとなるコードの変更箇所

変更はsrc/pkg/sort/sort.goファイルに集中しており、以下の2つの関数にドキュメンテーションコメントが追加されました。

  1. func Sort(data Interface) の直前
  2. func IsSorted(data Interface) bool の直前

具体的な変更行は以下の通りです。

--- a/src/pkg/sort/sort.go
+++ b/src/pkg/sort/sort.go
@@ -183,6 +183,8 @@ func quickSort(data Interface, a, b, maxDepth int) {
 	}\n }\n \n+// Sort sorts data.\n+// The algorithm used is not guaranteed to be a stable sort.\n func Sort(data Interface) {\
 	// Switch to heapsort if depth of 2*ceil(lg(n)) is reached.\n \tn := data.Len()\
 @@ -194,6 +196,7 @@ func Sort(data Interface) {\
 \tquickSort(data, 0, n, maxDepth)\n }\n \n+// IsSorted reports whether data is sorted.\n func IsSorted(data Interface) bool {\
 \tn := data.Len()\
 \tfor i := n - 1; i > 0; i-- {\

コアとなるコードの解説

このコミットで追加されたコードは、Go言語のコメント構文に従った通常のコメントです。Goのコンパイラはこれらのコメントを無視しますが、godocツールはこれらを解析し、生成されるドキュメントに含めます。

  • // Sort sorts data.

    • これはSort関数の概要を説明するコメントです。godocは、この行をSort関数のドキュメントの最初の行として表示します。
  • // The algorithm used is not guaranteed to be a stable sort.

    • この行は、Sort関数が使用するソートアルゴリズムが安定ソートではないことを明確に述べています。これは、同じ値を持つ要素の相対的な順序がソート後に保持されない可能性があることを意味します。開発者はこの情報を基に、安定ソートが必要な場合はsort.Stable関数を使用するなどの判断ができます。
  • // IsSorted reports whether data is sorted.

    • これはIsSorted関数の概要を説明するコメントです。この関数は、与えられたsort.Interfaceを実装するデータが既にソートされているかどうかをブール値で返します。

これらのコメントは、Goのドキュメンテーションのベストプラクティスに従っており、コードの可読性とgodocによって生成されるドキュメントの品質を向上させます。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメント
  • Go言語のソースコード
  • ソートアルゴリズムの安定性に関する一般的な情報 (例: Wikipediaなど)