[インデックス 12753] ファイルの概要
このコミットは、Go言語のコマンドラインツールgo
の一部であるcmd/go
ディレクトリ内のdoc.go
とget.go
ファイルの変更を含んでいます。具体的には、go get
コマンドがリモートパッケージのバージョンを選択する際の挙動に関する説明が追加されています。
コミット
- コミットハッシュ:
6421bdeb71b3900b495535959259fbb24d83d407
- 作者: Rob Pike r@golang.org
- コミット日時: Mon Mar 26 17:47:39 2012 +1100
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/6421bdeb71b3900b495535959259fbb24d83d407
元コミット内容
cmd/go: explain versions better
Summarize the desiderata for selecting versions of remote packages to get.
Fixes #3394.
R=golang-dev, adg
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5902058
変更の背景
このコミットの主な目的は、go get
コマンドがリモートのGoパッケージを取得する際に、どのバージョンを選択するかというロジックをより明確に説明することです。コミットメッセージにある「Fixes #3394」は、GitHubのIssue #3394を修正したことを示しており、このIssueはおそらくgo get
のバージョン選択挙動に関するドキュメントの不足や不明瞭さを指摘していたものと推測されます。
以前は、doc.go
とget.go
の関連箇所に「TODO: Explain versions better.」というコメントがあり、バージョン選択に関する説明が不十分であることが認識されていました。このコミットは、そのTODOを解消し、ユーザーがgo get
の動作をより深く理解できるようにするためのものです。特に、Goのリリースサイクルやバージョン管理の慣習に合わせたパッケージの取得方法が重要視されています。
前提知識の解説
go get
コマンド
go get
は、Go言語のパッケージ管理ツールであり、指定されたリモートリポジトリからGoパッケージとその依存関係をダウンロードし、ビルドしてインストールするコマンドです。通常、GOPATH
環境変数で指定されたワークスペースにソースコードを配置し、バイナリをGOBIN
にインストールします。
Goのバージョン管理とリリースサイクル
Go言語は、安定版リリース(例: Go 1.x)と開発版(weekly builds)の両方を提供しています。
- 安定版リリース:
release.rNN
のような形式でバージョンが付けられます(例:release.r60
)。これは特定の安定したスナップショットを示します。 - 週次ビルド (weekly builds):
weekly.YYYY-MM-DD
のような形式でバージョンが付けられます(例:weekly.2012-03-26
)。これは開発中の最新版を示します。
バージョン管理システム (VCS) のブランチとタグ
go get
は、Git、Mercurial、Subversionなどの分散バージョン管理システム(VCS)を利用してリモートリポジトリからコードを取得します。VCSでは、特定のコードの状態を識別するために「ブランチ」や「タグ」が使用されます。
- ブランチ: 開発の並行ライン。
- タグ: 特定のコミットに付けられる永続的なラベルで、通常はリリースバージョン(例:
v1.0.0
)や特定の重要なポイントを示すために使用されます。
go get
がパッケージのバージョンを選択する際、これらのブランチやタグが重要な役割を果たします。
技術的詳細
このコミットで追加された説明は、go get
がリモートパッケージのバージョンを決定する際の具体的なアルゴリズムを詳述しています。そのロジックは以下の優先順位で動作します。
-
ローカルのGoバージョンとの一致:
go get
はまず、ローカルにインストールされているGoのバージョンに一致するブランチまたはタグをリモートリポジトリ内で探します。- もしローカルのGoバージョンが「
release.rNN
」形式(例:release.r60
)であれば、go get
はリモートリポジトリ内で「go.rNN
」というタグまたはブランチを探します。これは、Goの特定のリリースバージョンに対応するパッケージのバージョンを取得しようとする意図を示しています。 - もしローカルのGoバージョンが「
weekly.YYYY-MM-DD
」形式(例:weekly.2012-03-26
)であれば、go get
はリモートリポジトリ内で「go.YYYY-MM-DD
」というラベルのパッケージバージョンを探します。これは、Goの開発版を使用している場合に、その開発版に対応するパッケージのバージョンを取得しようとするものです。
- もしローカルのGoバージョンが「
-
適切な形式のラベルが存在する場合の最新版: もし上記で目的のバージョン(
go.rNN
やgo.YYYY-MM-DD
など)が見つからなかったとしても、他の適切な形式のラベル(例:go.r59
,go.2012-03-25
など)がリモートリポジトリに存在する場合、go get
は目的のラベルより前の最も新しいバージョンを取得します。これは、厳密な一致が見つからなくても、互換性のある可能性のある最新の安定版または開発版を取得しようとするフォールバックメカニズムです。 -
最終的なフォールバック(最新版の取得): 上記すべての試みが失敗した場合、
go get
は最終手段として、そのパッケージの最も新しいバージョン(通常はデフォルトブランチのHEAD)を取得します。これは、特定のバージョン指定がない場合や、指定されたバージョンが見つからない場合の一般的な挙動です。
この詳細な説明により、開発者はgo get
がどのようにパッケージのバージョンを解決しているかを理解し、予期せぬバージョンが取得されることを防ぐことができます。
コアとなるコードの変更箇所
このコミットでは、以下の2つのファイルが変更されています。
src/cmd/go/doc.go
src/cmd/go/get.go
両方のファイルで、既存の「TODO: Explain versions better.
」というコメントが削除され、代わりにgo get
のバージョン選択ロジックを説明する以下の10行のテキストが追加されています。
--- a/src/cmd/go/doc.go
+++ b/src/cmd/go/doc.go
@@ -225,7 +225,15 @@ The -u flag instructs get to use the network to update the named packages
and their dependencies. By default, get uses the network to check out
missing packages but does not use it to look for updates to existing packages.
-TODO: Explain versions better.
+When checking out or updating a package, get looks for a branch or
+tag that matches the locally installed version of Go. If the local
+version "is release.rNN", it searches for "go.rNN". (For an
+installation using Go version "weekly.YYYY-MM-DD", it searches for a
+package version labeled "go.YYYY-MM-DD".) If the desired version
+cannot be found but others exist with labels in the correct format,
+get retrieves the most recent version before the desired label.
+Finally, if all else fails it retrieves the most recent version of
+the package.
For more about specifying packages, see 'go help packages'.
--- a/src/cmd/go/get.go
+++ b/src/cmd/go/get.go
@@ -36,7 +36,15 @@ The -u flag instructs get to use the network to update the named packages
and their dependencies. By default, get uses the network to check out
missing packages but does not use it to look for updates to existing packages.
-TODO: Explain versions better.
+When checking out or updating a package, get looks for a branch or
+tag that matches the locally installed version of Go. If the local
+version "is release.rNN", it searches for "go.rNN". (For an
+installation using Go version "weekly.YYYY-MM-DD", it searches for a
+package version labeled "go.YYYY-MM-DD".) If the desired version
+cannot be found but others exist with labels in the correct format,
+get retrieves the most recent version before the desired label.
+Finally, if all else fails it retrieves the most recent version of
+the package.
For more about specifying packages, see 'go help packages'.
コアとなるコードの解説
このコミットで追加されたコードは、Goのソースコード自体に機能を追加するものではなく、go
コマンドのドキュメントと、go get
コマンドの内部的なヘルプテキストを更新するものです。
src/cmd/go/doc.go
: このファイルは、go help
コマンドで表示されるGoコマンド全体のドキュメントの一部を構成しています。ここにバージョン選択ロジックの説明を追加することで、ユーザーがgo help get
やgo help packages
などを実行した際に、この情報にアクセスできるようになります。src/cmd/go/get.go
: このファイルはgo get
コマンドの実装に関連しており、通常はコマンドの内部的なヘルプメッセージやコメントが含まれています。ここに同じ説明を追加することで、コードベースを読んでいる開発者や、go get
の挙動をデバッグしている際に、この情報がすぐに参照できるようになります。
両方のファイルに同じ説明が追加されているのは、ドキュメントの一貫性を保ち、ユーザーと開発者の両方にとって情報が容易に利用できるようにするためです。これにより、go get
がどのようにパッケージのバージョンを解決しているかという重要な情報が、公式ドキュメントとコードのコメントの両方で明確に提供されることになります。
関連リンク
- Go CL 5902058: https://golang.org/cl/5902058
- Go Issue 3394: https://github.com/golang/go/issues/3394 (このコミットが修正したIssue)
参考にした情報源リンク
- 特になし。この解説は、提供されたコミット情報とGo言語に関する一般的な知識に基づいて生成されました。