[インデックス 12765] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の公式ドキュメントである doc/reference-cmd.html から、cov および prof コマンドに関する記述を削除するものです。これは、これらのコマンドがGoツールチェインから廃止された、あるいはより新しいツールに置き換えられたことに伴うドキュメントの整理を目的としています。

コミット

commit 9031f952e2b17752f4eb716d4d96575026ce5338
Author: Andrew Gerrand <adg@golang.org>
Date:   Tue Mar 27 12:46:46 2012 +1100

    doc: remove cov and prof from /ref/cmd
    
    Update #3400
    
    R=golang-dev, r
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5921044

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/9031f952e2b17752f4eb716d4d96575026ce5338

元コミット内容

doc: remove cov and prof from /ref/cmd

Update #3400

R=golang-dev, r
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5921044

変更の背景

この変更の背景には、Go言語のツールチェインの進化があります。初期のGo言語には、go tool cov (コードカバレッジ) や go tool prof (プロファイリング) といった、基本的な機能を提供するコマンドが存在していました。しかし、これらのツールは「rudimentary (初歩的、未発達)」とドキュメントにも記載されている通り、機能が限定的でした。

Go言語の開発が進むにつれて、より高機能で統合されたプロファイリングおよびカバレッジツールが導入されました。具体的には、go test -cover によるコードカバレッジ機能や、go tool pprof を用いた高度なプロファイリング機能が標準で提供されるようになりました。これらの新しいツールは、より詳細な情報を提供し、使いやすさも向上しています。

そのため、古い cov および prof コマンドは廃止され、ドキュメントからも削除されることになりました。コミットメッセージにある Update #3400 は、GoのIssueトラッカーにおける関連する課題番号を示しており、これらのツールの廃止または置き換えに関する議論や決定があったことを示唆しています。このコミットは、実際のツールの廃止に追従して、ドキュメントを最新の状態に保つためのものです。

前提知識の解説

Goコマンドと`go tool`

Go言語のビルド、テスト、実行、フォーマットなど、様々な操作は go コマンドを通じて行われます。例えば、go build や go run などです。

一方で、go tool は、Go言語の内部ツールや、より専門的な用途のコマンドを実行するためのサブコマンドです。例えば、go tool vet はコードの静的解析を行い、go tool pprof はプロファイリングデータを解析します。初期の cov や prof も go tool のサブコマンドとして提供されていました。

コードカバレッジ (Code Coverage)

コードカバレッジとは、テストがソースコードのどの部分を実行したかを示す指標です。これにより、テストがどれだけ広範囲のコードを網羅しているかを把握し、テストの品質を評価するのに役立ちます。Go言語では、現在 go test -cover コマンドを使用してコードカバレッジを測定できます。

プロファイリング (Profiling)

プロファイリングとは、プログラムの実行中にそのパフォーマンス特性（CPU使用率、メモリ割り当て、I/O操作など）を測定し、ボトルネックを特定するプロセスです。Go言語では、net/http/pprof パッケージや go tool pprof コマンドを使用して、CPU、メモリ、ゴルーチンなどのプロファイリングデータを収集・解析できます。

`cov` と `prof` コマンド (旧ツール)

このコミットで削除された cov と prof は、Go言語の初期に提供されていたコードカバレッジとプロファイリングの「初歩的な」ツールでした。

cov: 簡易的なコードカバレッジツール。
prof: 簡易的なリアルタイムプロファイラ。

これらのツールは、Go言語のツールチェインが成熟するにつれて、より強力で柔軟な go test -cover や go tool pprof に置き換えられました。

技術的詳細

このコミットは、doc/reference-cmd.html という単一のHTMLファイルを変更しています。このファイルは、Go言語のコマンドリファレンスを提供しており、各コマンドの簡単な説明とリンクが表形式で記述されています。

変更内容は、主に以下の2点です。

cov コマンドの記述の削除: cov コマンドに関する <tr> (テーブル行) 要素が完全に削除されています。これには、コマンド名、スペース、および「Cov is a rudimentary code coverage tool.」という説明が含まれていました。
prof コマンドの記述の削除: 同様に、prof コマンドに関する <tr> 要素が完全に削除されています。これには、コマンド名、スペース、および「Prof is a rudimentary real-time profiler.」という説明が含まれていました。

また、HTMLタグの表記が <a href="/cmd/go/">go</a> から <code>go</code> のように、よりセマンティックな <code> タグに一部変更されています。これは、コマンド名をコードとして強調するための一般的なドキュメントの改善であり、cov や prof の削除とは直接関係ありませんが、同じコミットでまとめて行われています。

これらの変更により、Go言語の公式コマンドリファレンスから、もはや存在しないか、推奨されないツールに関する情報が削除され、ドキュメントの正確性と最新性が保たれています。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/doc/reference-cmd.html
+++ b/doc/reference-cmd.html
@@ -10,27 +10,25 @@ by the <a href="/cmd/go/">go</a> program.
 </p>
 
 <p>
-The most common way to run these programs is as a subcommand of the go
-program,
-for instance as "go fmt". Run like this, the command operates on complete
-packages of Go source code, with the go program invoking the underlying binary
-with arguments appropriate to package-level processing.
+The most common way to run these programs is as a subcommand of the go program,
+for instance as <code>go fmt</code>. Run like this, the command operates on
+complete packages of Go source code, with the go program invoking the
+underlying binary with arguments appropriate to package-level processing.
 </p>
 
 <p>
  The programs can also be run as stand-alone binaries, with unmodified arguments,
-using the go tool subcommand, such as "go tool vet".
-This style of invocation allows, for instance, checking a single source file rather than
-an entire package: "go tool vet myprogram.go" as compared to
-"go vet mypackage".
-Some of the commands, such as prof and yacc, are accessible
-only through the go tool subcommand.
+using the go <code>tool</code> subcommand, such as <code>go tool vet</code>.
+This style of invocation allows, for instance, checking a single source file
+rather than an entire package: <code>go tool vet myprogram.go</code> as
+compared to <code>go vet mypackage</code>.
+Some of the commands, such as <code>yacc</code>, are accessible only through
+the go <code>tool</code> subcommand.
 </p>
 
 <p>
-Finally, two of the commands, fmt and
-doc, are also installed as regular binaries called
-gofmt and godoc
+Finally, two of the commands, <code>fmt</code> and <code>doc</code>, are also
+installed as regular binaries called <code>gofmt</code> and <code>godoc</code>
 because they are so often referenced.
 </p>
 
@@ -63,12 +61,6 @@ details.
 <td>Cgo enables the creation of Go packages that call C code.</td>
 </tr>
 
-<tr>
-<td><a href="/cmd/cov/">cov</a></td>
-<td>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;</td>
-<td>Cov is a rudimentary code coverage tool.</td>
-</tr>
-
 <tr>
  <td><a href="/cmd/fix/">fix</a></td>
  <td>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;</td>
@@ -90,12 +82,6 @@ an independent <a href="/cmd/godoc/">godoc</a> command with more general options
 gofmt</a> command with more general options.</td>
  </tr>
 
-<tr>
-<td><a href="/cmd/prof/">prof</a></td>
-<td>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;</td>
-<td>Prof is a rudimentary real-time profiler.</td>
-</tr>
-
 <tr>
  <td><a href="/cmd/vet/">vet</a></td>
  <td>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;</td>

コアとなるコードの解説

上記の差分は、doc/reference-cmd.html ファイルに対する変更を示しています。

HTMLタグの変更:
- 行 10 から 25 にかけて、"go fmt" や "go tool vet" のようなコマンド名が、引用符で囲まれたテキストから <code> タグで囲まれたテキストに変更されています。これは、HTMLドキュメントにおけるコードの表現方法を改善し、よりセマンティックなマークアップを使用するための変更です。例えば、"go fmt" は <code>go fmt</code> に、"go tool vet" は <code>go tool vet</code> になっています。
- 同様に、行 34 から 37 にかけて、fmt と doc コマンド、およびそれらのバイナリ名 gofmt と godoc も <code> タグで囲まれています。
cov コマンドの削除:
- 行 66 から 70 にかけて存在していた以下のHTMLコードブロックが完全に削除されています。
```
<tr>
<td><a href="/cmd/cov/">cov</a></td>
<td>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;</td>
<td>Cov is a rudimentary code coverage tool.</td>
</tr>
```
  このブロックは、cov コマンドへのリンクと、その簡単な説明（「Cov is a rudimentary code coverage tool.」）を含むテーブル行でした。この削除は、cov コマンドがGoツールチェインから廃止されたことを反映しています。
prof コマンドの削除:
- 行 93 から 97 にかけて存在していた以下のHTMLコードブロックが完全に削除されています。
```
<tr>
<td><a href="/cmd/prof/">prof</a></td>
<td>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;</td>
<td>Prof is a rudimentary real-time profiler.</td>
</tr>
```
  このブロックは、prof コマンドへのリンクと、その簡単な説明（「Prof is a rudimentary real-time profiler.」）を含むテーブル行でした。この削除は、prof コマンドがGoツールチェインから廃止されたことを反映しています。

これらの変更により、Go言語のコマンドリファレンスは、現在のGoツールチェインの状況を正確に反映するように更新されました。

参考にした情報源リンク

Go言語の公式ドキュメント (現在のGoツールに関する情報): https://go.dev/doc/
Go言語のプロファイリングに関するドキュメント: https://go.dev/doc/diagnose-performance-issues
Go言語のコードカバレッジに関するドキュメント: https://go.dev/blog/cover
Go言語のgo toolコマンドに関する情報: https://go.dev/cmd/go/#hdr-Go_tool_commands
Go言語の過去のツールに関する議論 (Web検索による推測): "golang cov command removed", "golang prof command removed" などのキーワードで検索し、当時のGoコミュニティの議論や変更履歴を参考にしました。
- (具体的なリンクは検索結果に依存しますが、Goのメーリングリストや古いGoのブログ記事などが該当する可能性があります。)

comemo