[インデックス 12812] ファイルの概要
このコミットは、Go言語プロジェクトのコードレビューツール codereview.py
におけるエラーメッセージの改善に関するものです。具体的には、デフォルトブランチ以外で変更リスト(CL: Change List)を作成しようとした際に表示されるエラーメッセージを、よりユーザーフレンドリーなものに変更しています。
コミット
commit 3b7feb7001a3d7a99a4340b2fe3cf75b6ad5ceb1
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date: Mon Apr 2 12:55:23 2012 -0400
codereview: give advice on 'cannot create CL outside default branch'
Fixes #3430.
R=golang-dev, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5981047
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/3b7feb7001a3d7a99a4340b2fe3cf75b6ad5ceb1
元コミット内容
このコミットは、codereview
ツールがデフォルトブランチ以外でCLを作成しようとした際に、「cannot create CL outside default branch」というエラーメッセージを返す動作を修正します。修正内容は、このエラーメッセージに「; switch with 'hg update default'」という具体的な指示を追加し、ユーザーが問題を解決するための手助けをすることです。
変更の背景
Go言語プロジェクトでは、変更を提出するために codereview
ツールを使用しています。このツールは、Mercurial (hg) をバックエンドのバージョン管理システムとして利用しており、変更は通常 default
ブランチ上で作成されることが期待されます。
以前のバージョンでは、ユーザーが default
ブランチ以外のブランチでCLを作成しようとすると、単に「cannot create CL outside default branch」というメッセージが表示されるだけでした。このメッセージは、なぜCLが作成できないのかを伝えますが、ユーザーが次に何をすべきかについての具体的な指示がありませんでした。
このコミットの背景には、ユーザーエクスペリエンスの向上という明確な意図があります。エラーメッセージは、単にエラーが発生したことを伝えるだけでなく、ユーザーがそのエラーから回復するための道筋を示すべきです。この変更は、ユーザーが default
ブランチに切り替える必要があることを明示的に伝えることで、ツールの使いやすさを向上させ、ユーザーが手動で解決策を探す手間を省きます。
なお、コミットメッセージには Fixes #3430
とありますが、現在の golang/go
リポジトリのIssue #3430は、このコミットのタイムスタンプ(2012年)とは異なる、より新しい gopls
関連のIssueを指しています。これは、Issue番号が再利用されたか、または当時のIssueトラッカーが現在のGitHubとは異なるシステムであった可能性を示唆しています。このコミットの文脈では、具体的なIssueの内容よりも、エラーメッセージの改善という目的が重要です。
前提知識の解説
- Go言語プロジェクトのコードレビュープロセス: Go言語プロジェクトでは、変更を公式リポジトリにマージする前に、厳格なコードレビュープロセスを経ます。このプロセスには、
codereview
ツールが重要な役割を果たします。 codereview
ツール: Go言語プロジェクトで利用される、変更の提出とレビューを支援するツールです。Mercurial (hg) と連携して動作し、変更セット(Change List: CL)の作成、アップロード、レビューコメントの管理などを行います。- Change List (CL): Go言語プロジェクトにおける変更の単位です。Gitにおけるコミットやプルリクエストに相当しますが、Mercurialの変更セットの概念に基づいています。
- Mercurial (hg): Go言語プロジェクトが初期に採用していた分散型バージョン管理システムです。Gitと同様に、リポジトリのクローン、ブランチの作成、変更のコミットなどを行います。
default
ブランチ: Mercurialにおける慣習的なメイン開発ブランチの名前です。Gitにおけるmaster
やmain
ブランチに相当します。hg update default
: Mercurialコマンドの一つで、現在の作業ディレクトリをdefault
ブランチの最新の状態に更新(切り替え)します。
技術的詳細
この変更は、lib/codereview/codereview.py
ファイル内の change
関数にあります。この関数は、新しいCLを作成するロジックを担当しています。
変更前は、repo[None].branch() != "default"
という条件で現在のブランチが default
でない場合に、単に "cannot create CL outside default branch"
という文字列を返していました。この文字列が、ユーザーに表示されるエラーメッセージとなります。
変更後は、この文字列に ; switch with 'hg update default'
というサフィックスが追加されました。これにより、エラーメッセージは "cannot create CL outside default branch; switch with 'hg update default'"
となり、ユーザーはエラーの原因だけでなく、その解決策(hg update default
コマンドを実行すること)を直接知ることができます。
この変更は、Pythonの文字列操作によって行われており、非常にシンプルながらもユーザーエクスペリエンスに大きな影響を与える改善です。エラーメッセージの変更は、ツールの内部ロジックやデータ構造に影響を与えるものではなく、純粋にユーザーインターフェースの改善に焦点を当てています。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/lib/codereview/codereview.py
+++ b/lib/codereview/codereview.py
@@ -1309,7 +1309,7 @@ def change(ui, repo, *pats, **opts):
name = "new"
cl = CL("new")
if repo[None].branch() != "default":
- return "cannot create CL outside default branch"
+ return "cannot create CL outside default branch; switch with 'hg update default'"
dirty[cl] = True
files = ChangedFiles(ui, repo, pats, taken=Taken(ui, repo))\
コアとなるコードの解説
上記の差分は、lib/codereview/codereview.py
ファイルの change
関数内にある1行の変更を示しています。
if repo[None].branch() != "default":
- この行は、現在のリポジトリのブランチが
default
ブランチではないかどうかをチェックしています。repo[None].branch()
は、現在の作業ブランチの名前を返します。
- この行は、現在のリポジトリのブランチが
- return "cannot create CL outside default branch"
- 変更前のコードでは、ブランチが
default
でない場合に、この文字列を返していました。この文字列がcodereview
ツールのエラー出力として表示されます。
- 変更前のコードでは、ブランチが
+ return "cannot create CL outside default branch; switch with 'hg update default'"
- 変更後のコードでは、返される文字列に
; switch with 'hg update default'
が追加されています。これにより、エラーメッセージがより具体的になり、ユーザーが問題を解決するための次のステップを明確に示しています。
- 変更後のコードでは、返される文字列に
この変更は、エラーメッセージのテキストを直接修正するものであり、プログラムのロジック自体には影響を与えません。しかし、ユーザーがエラーに遭遇した際の混乱を減らし、自己解決を促すという点で、非常に価値のある改善です。
関連リンク
- Go言語の公式ウェブサイト: https://golang.org/
- Mercurial (hg) の公式ウェブサイト: https://www.mercurial-scm.org/
参考にした情報源リンク
- コミット情報:
/home/orange/Project/comemo/commit_data/12812.txt
- GitHub上のコミットページ: https://github.com/golang/go/commit/3b7feb7001a3d7a99a4340b2fe3cf75b6ad5ceb1
- Mercurialのドキュメント(
hg update
コマンドについて) - Go言語プロジェクトのコードレビューに関するドキュメント(一般的な情報源として)
golang/go
リポジトリのIssue #3430に関するWeb検索結果(ただし、このコミットの文脈とは異なるIssueである可能性が高いことを考慮)