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[インデックス 12857] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のcmd/yaccツール内のunits.yファイルに対する「春の清掃 (spring cleaning)」と称されるコード改善を目的としています。units.yファイルは、goyacc(Go言語版Yacc)によって解析される文法定義ファイルであり、単位変換や数値解析に関連するロジックを定義していると推測されます。このコミットの主な目的は、コードの可読性、保守性、および正確性を向上させることです。具体的には、インポートのソート、GOROOTの取得方法の改善、およびタイプミス(typo)の修正が行われています。

コミット

commit f6d582db6123e3b199fa34334505f952e554312d
Author: Benny Siegert <bsiegert@gmail.com>
Date:   Mon Apr 9 15:04:59 2012 -0400

    cmd/yacc: spring cleaning for units.y
    
    * sort imports
    * use runtime.GOROOT
    * fix some typos
    
    R=golang-dev, dave, rsc
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5987054

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/f6d582db6123e3b199fa34334505f952e554312d

元コミット内容

cmd/yacc: spring cleaning for units.y

* sort imports
* use runtime.GOROOT
* fix some typos

R=golang-dev, dave, rsc
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5987054

変更の背景

このコミットは、コードベースの品質向上と保守性の維持を目的とした一般的な「春の清掃」の一環として行われました。具体的な背景は以下の通りです。

  1. コードの可読性と一貫性の向上: インポート文のソートは、Goコミュニティにおける一般的なコーディング規約であり、コードの可読性を高め、異なる開発者間での一貫性を保ちます。これにより、新しいインポートが追加された際に、どこに配置すべきか迷うことがなくなり、マージコンフリクトのリスクも低減されます。
  2. GOROOTの取得方法の改善: 以前は環境変数GOROOTを直接参照していましたが、これはGoプログラム内でGoのインストールパスを取得する際に推奨される方法ではありませんでした。runtime.GOROOT()を使用することで、より堅牢でGoのランタイムに依存した方法でGOROOTパスを取得できるようになります。これにより、環境変数が設定されていない場合や、Goのバージョンアップに伴うパスの変更などにも対応しやすくなります。
  3. タイプミスの修正: コード内のタイプミスは、特にエラーメッセージやコメントにおいて、ユーザーの混乱を招いたり、プロフェッショナルな印象を損ねたりする可能性があります。これらの軽微な修正は、コードベース全体の品質と信頼性を向上させます。

これらの変更は、機能的な変更ではなく、主にコードの健全性と保守性を高めるためのリファクタリングです。

前提知識の解説

Yaccとgoyacc

Yacc (Yet Another Compiler Compiler) は、プログラミング言語のコンパイラやインタプリタの構文解析器(パーサー)を自動生成するためのツールです。文法規則を定義したファイル(通常は.y拡張子)を入力として受け取り、その文法に従って入力テキストを解析するC言語のコードを生成します。Yaccは、複雑な構文を持つ言語のパーサーを手動で記述する手間を大幅に削減し、文法変更への対応も容易にします。

goyacc は、Go言語で実装されたYaccのバージョンであり、Go言語のパーサーを生成します。goyaccもYaccと同様に、文法定義ファイル(.y)からGo言語のソースコード(通常はy.go)を生成します。この生成されたGoコードは、入力ストリームからトークン(語彙要素)を受け取り、それらを文法規則に従って解析します。goyaccは、Go言語でドメイン固有言語(DSL)のパーサーや設定ファイルのパーサーなどを開発する際に利用されます。

units.yファイルは、goyaccが処理する文法定義ファイルであり、単位変換や数値表現に関する構文規則が記述されていると考えられます。

Goの環境変数とGOROOT

Go言語の開発環境では、いくつかの重要な環境変数がGoツールの動作に影響を与えます。その中でも特に重要なのが GOROOTGOPATH です。

  • GOROOT: GoのSDK(Software Development Kit)がインストールされているディレクトリのパスを指します。これには、Goコンパイラ、標準ライブラリ、およびその他のGoツールが含まれます。Goプログラムが標準ライブラリのパッケージを見つけるために使用されます。
  • GOPATH: Goのワークスペースのルートディレクトリを指します。Goのソースコード、コンパイルされたバイナリ、およびパッケージが配置される場所です。Go Modulesが導入されてからは、GOPATHの重要性は以前ほどではなくなりましたが、一部のレガシーなビルドシステムやツールでは依然として使用されます。

runtime.GOROOT()

Goの標準ライブラリには、runtimeパッケージが含まれており、Goランタイムシステムとのインタラクションを可能にする機能を提供します。runtime.GOROOT()関数は、Goのインストールルートディレクトリのパスを返します。この関数は、まず環境変数GOROOTをチェックし、それが設定されていればその値を返します。設定されていなければ、Goバイナリがコンパイルされた際に「焼き付けられた」GOROOTの値を返します。

ただし、現代のGo開発では、runtime.GOROOT()は非推奨とされており、代わりにgo env GOROOTコマンドを使用してGOROOTのパスを取得することが推奨されています。これは、runtime.GOROOT()が返す値が、バイナリが別のマシンにコピーされた場合に意味をなさない可能性があるためです。しかし、このコミットが作成された2012年時点では、runtime.GOROOT()は環境変数に直接アクセスするよりも推奨されるGoプログラム内でのGOROOT取得方法でした。

path/filepathパッケージ

path/filepathパッケージは、オペレーティングシステムに依存しないパス操作のための関数を提供します。ファイルパスの結合、クリーンアップ、要素の抽出など、様々な操作が可能です。特に、filepath.Join()関数は、複数のパス要素を結合して単一のパスを生成する際に、OS固有のパス区切り文字(Windowsでは\、Unix系では/)を適切に処理するため、クロスプラットフォームなコードを書く上で非常に重要です。

技術的詳細

インポートのソート

Go言語では、goimportsなどのツールによって自動的にインポート文がソートされ、グループ化されることが一般的です。このコミットでは、手動でインポート文の順序を修正し、アルファベット順にソートしています。

変更前:

import (
	"flag"
	"fmt"
	"bufio"
	"os"
	"math"
)

変更後:

import (
	"bufio"
	"flag"
	"fmt"
	"math"
	"runtime"
	"os"
	"path/filepath"
	"strconv"
	"unicode/utf8"
)

(実際には、strconvunicode/utf8は元々存在し、runtimepath/filepathが追加されていますが、ソートの意図は明確です。)

このソートにより、インポートされたパッケージのリストが整理され、どのパッケージが使用されているかを一目で把握しやすくなります。また、チーム開発においてコードの一貫性を保つ上でも重要なプラクティスです。

runtime.GOROOTの使用とfilepath.Join

この変更の最も重要な技術的側面は、units.txtデータファイルのパスを構築する方法の改善です。

変更前は、GOROOT環境変数をos.Getenv("GOROOT")で取得し、それに文字列連結で/src/cmd/yacc/units.txtを追加していました。

if dir := os.Getenv("GOROOT"); dir != "" {
	file = dir + "/src/cmd/yacc/units.txt"
}

この方法は、GOROOT環境変数が設定されていない場合に問題が発生する可能性があり、また、パスの連結に文字列操作を使用しているため、OS間のパス区切り文字の違い(Windowsの\とUnix系の/)を考慮していませんでした。

変更後は、runtime.GOROOT()を使用してGoのインストールルートパスを取得し、path/filepath.Join()関数を使って安全にパスを結合しています。

file = filepath.Join(runtime.GOROOT(), "src/cmd/yacc/units.txt")

filepath.Join()は、引数として与えられたパス要素をOSに適した区切り文字で結合するため、クロスプラットフォームな互換性が保証されます。runtime.GOROOT()の使用は、Goプログラムが自身の実行環境のGOROOTを正確に特定するための、より堅牢な方法です。

タイプミスの修正

以下の2つのタイプミスが修正されています。

  1. エラーメッセージ内の"can not find""cannot find"に修正されました。cannotcan notの一般的な短縮形であり、より自然な英語表現です。
    -		fmt.Fprintf(os.Stderr, "can not find data file units.txt; provide it as argument or set $GOROOT\\n")
    +		fmt.Fprintf(os.Stderr, "cannot find data file units.txt; provide it as argument or set $GOROOT\\n")
    
  2. コメント内の"develope a database""develop a database"に修正されました。developedevelopのタイプミスです。
    -	 * develope a database
    +	 * develop a database
    

これらの修正は、コードの品質とプロフェッショナリズムを高めるための小さな、しかし重要な改善です。

コアとなるコードの変更箇所

diff --git a/src/cmd/yacc/units.y b/src/cmd/yacc/units.y
index 7258e3e597..eaa3fb18a4 100644
--- a/src/cmd/yacc/units.y
+++ b/src/cmd/yacc/units.y
@@ -26,11 +26,13 @@
 package main
 
 import (
+"bufio"
 	"flag"
 	"fmt"
-"bufio"
-"os"
 	"math"
+"runtime"
+"os"
+"path/filepath"
 	"strconv"
 	"unicode/utf8"
 )
@@ -287,13 +289,11 @@ func main() {
 
 	flag.Parse()
 
-	if dir := os.Getenv("GOROOT"); dir != "" {
-		file = dir + "/src/cmd/yacc/units.txt"
-	}
+	file = filepath.Join(runtime.GOROOT(), "src/cmd/yacc/units.txt")
 	if flag.NArg() > 0 {
 		file = flag.Arg(0)
 	} else if file == "" {
-		fmt.Fprintf(os.Stderr, "can not find data file units.txt; provide it as argument or set $GOROOT\\n")
+		fmt.Fprintf(os.Stderr, "cannot find data file units.txt; provide it as argument or set $GOROOT\\n")
 		os.Exit(1)
 	}
 
@@ -308,7 +308,7 @@ func main() {
 
 	/*
 	 * read the 'units' file to
-	 * develope a database
+	 * develop a database
 	 */
 	lineno = 0
 	for {

コアとなるコードの解説

インポート文の変更 (@@ -26,11 +26,13 @@)

  • - "bufio"- "os": 既存のbufioosパッケージのインポートが、ソートされたリストの適切な位置に移動するために削除されています。
  • + "bufio": bufioパッケージがアルファベット順の正しい位置に再配置されています。
  • + "runtime": runtime.GOROOT()関数を使用するために、runtimeパッケージが新しくインポートされています。
  • + "os": osパッケージがアルファベット順の正しい位置に再配置されています。
  • + "path/filepath": filepath.Join()関数を使用するために、path/filepathパッケージが新しくインポートされています。

これらの変更により、インポートリストがアルファベット順に整理され、新しく追加されたruntimepath/filepathパッケージが適切に組み込まれています。

GOROOTパス構築ロジックの変更 (@@ -287,13 +289,11 @@)

  • - if dir := os.Getenv("GOROOT"); dir != "" { ... }: 以前のGOROOT環境変数を直接読み取り、文字列連結でパスを構築するロジックが削除されています。この方法は、環境変数が設定されていない場合にfile変数が空のままになる可能性があり、またOS間のパス区切り文字の違いを考慮していませんでした。
  • + file = filepath.Join(runtime.GOROOT(), "src/cmd/yacc/units.txt"): 新しいロジックでは、runtime.GOROOT()を呼び出してGoのインストールルートパスを取得し、そのパスと"src/cmd/yacc/units.txt"filepath.Join()関数で結合しています。これにより、units.txtへのパスがOSに依存しない形で、かつGOROOTが環境変数で設定されていなくても(コンパイル時に埋め込まれた値を使用することで)確実に取得できるようになります。

エラーメッセージのタイプミス修正 (@@ -287,13 +289,11 @@ の続き)

  • - fmt.Fprintf(os.Stderr, "can not find data file units.txt; provide it as argument or set $GOROOT\\n"): エラーメッセージ内の"can not find"が、
  • + fmt.Fprintf(os.Stderr, "cannot find data file units.txt; provide it as argument or set $GOROOT\\n"): より自然な英語表現である"cannot find"に修正されています。

コメントのタイプミス修正 (@@ -308,7 +308,7 @@)

  • - * develope a database: コメント内の"develope"というタイプミスが、
  • + * develop a database: 正しいスペルの"develop"に修正されています。

これらの変更は、コードの機能には影響を与えませんが、可読性、保守性、および全体的な品質を向上させるための重要な改善です。

関連リンク

参考にした情報源リンク