[インデックス 13165] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリであるstrconvパッケージ内のFormatInt関数とFormatUint関数のドキュメンテーションを改善することを目的としています。具体的には、これらの関数が数値を文字列に変換する際の基数（base）の範囲と、10以上の桁を表現するために小文字のアルファベット（'a'から'z'）を使用するという重要な詳細が追加されました。

コミット

strconv: better documentation for FormatInt, FormatUint.

Fixes #3580.

R=golang-dev, r
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/6252047

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/184209787c5904cb670857c7c1ef3a2fd10718e5

元コミット内容

commit 184209787c5904cb670857c7c1ef3a2fd10718e5
Author: Robert Griesemer <gri@golang.org>
Date:   Thu May 24 16:24:39 2012 -0700

    strconv: better documentation for FormatInt, FormatUint.
    
    Fixes #3580.
    
    R=golang-dev, r
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/6252047
---\n src/pkg/strconv/itoa.go | 8 ++++++--
 1 file changed, 6 insertions(+), 2 deletions(-)

diff --git a/src/pkg/strconv/itoa.go b/src/pkg/strconv/itoa.go
index ca40dd7ef6..67f17d8664 100644
--- a/src/pkg/strconv/itoa.go
+++ b/src/pkg/strconv/itoa.go
@@ -4,13 +4,17 @@
 
  package strconv
  
-// FormatUint returns the string representation of i in the given base.\n+// FormatUint returns the string representation of i in the given base,\n+// for 2 <= base <= 36. The result uses the lower-case letters \'a\' to \'z\'\n+// for digit values >= 10.\n func FormatUint(i uint64, base int) string {\n  _, s := formatBits(nil, i, base, false, false)\n  return s\n }\n \n-// FormatInt returns the string representation of i in the given base.\n+// FormatInt returns the string representation of i in the given base,\n+// for 2 <= base <= 36. The result uses the lower-case letters \'a\' to \'z\'\n+// for digit values >= 10.\n func FormatInt(i int64, base int) string {\n  _, s := formatBits(nil, uint64(i), base, i < 0, false)\n  return s\n```

## 変更の背景

このコミットの主な背景は、Go言語の`strconv`パッケージにおける`FormatInt`および`FormatUint`関数の既存のドキュメンテーションが不十分であったことです。コミットメッセージにある「Fixes #3580」が示す通り、これはGitHubのGoリポジトリで報告されたIssue 3580に対応するものです。

Issue 3580では、`strconv.FormatInt`および`strconv.FormatUint`関数のドキュメンテーションが、引数`base`の有効な範囲（2から36まで）と、10以上の桁を表現する際に小文字のアルファベット（'a'から'z'）が使用されるという重要な情報が欠けていることが指摘されました。これらの情報は、関数を正しく、かつ意図通りに使用するために不可欠です。特に、基数36までの変換では、数字の0-9に加えてアルファベットのA-Z（またはa-z）が使用されるため、その表記規則を明記することはユーザーの混乱を防ぎ、コードの可読性と正確な利用を促進します。

この変更は、Go言語のドキュメンテーションの品質向上と、開発者がライブラリ関数をより効果的に利用できるようにするための継続的な取り組みの一環です。

## 前提知識の解説

### `strconv`パッケージ

`strconv`はGo言語の標準ライブラリの一つで、"string conversion"（文字列変換）の略です。このパッケージは、基本的なデータ型（整数、浮動小数点数、真偽値など）と文字列との間の変換機能を提供します。例えば、文字列を整数にパースしたり（`Atoi`, `ParseInt`）、整数を文字列にフォーマットしたり（`Itoa`, `FormatInt`）する際に使用されます。

### `FormatInt`と`FormatUint`関数

*   **`func FormatInt(i int64, base int) string`**:
    *   `int64`型の整数`i`を、指定された`base`（基数）で文字列に変換します。
    *   `int64`は符号付き64ビット整数です。
*   **`func FormatUint(i uint64, base int) string`**:
    *   `uint64`型の符号なし整数`i`を、指定された`base`（基数）で文字列に変換します。
    *   `uint64`は符号なし64ビット整数です。

これらの関数は、数値を様々な基数（例: 2進数、8進数、10進数、16進数など）で表現する際に非常に有用です。

### 数値の基数（Base）と桁の表現

*   **基数（Base）**: 数値を表現するための桁の種類の数です。
    *   **10進数 (Base 10)**: 0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9 の10種類の数字を使用します。
    *   **2進数 (Base 2)**: 0, 1 の2種類の数字を使用します。
    *   **16進数 (Base 16)**: 0-9 と A-F (または a-f) の16種類の数字を使用します。
*   **36進数 (Base 36)**: 0-9 の数字と、A-Z (または a-z) のアルファベットを組み合わせた36種類の文字を使用します。これは、英数字のみで表現できる最大の基数であり、短い文字列で大きな数値を表現するのに便利です。
*   **桁の表現**: 基数が10を超える場合、通常の数字（0-9）だけでは桁を表現しきれません。このため、アルファベットが追加の桁として使用されます。慣例として、10は'A'（または'a'）、11は'B'（または'b'）といったように割り当てられます。`strconv`パッケージの`FormatInt`と`FormatUint`では、小文字の'a'から'z'が使用されます。

## 技術的詳細

このコミットは、`src/pkg/strconv/itoa.go`ファイル内の`FormatUint`と`FormatInt`関数のドキュメンテーションコメントに、以下の重要な情報を追加しています。

1.  **基数の有効範囲**: `for 2 <= base <= 36`
    *   これは、`base`引数として指定できる基数が2（2進数）から36（36進数）までの範囲であることを明示しています。これ以外の基数を指定した場合の挙動は未定義であるか、エラーを引き起こす可能性があります。
2.  **10以上の桁の表現**: `The result uses the lower-case letters 'a' to 'z' for digit values >= 10.`
    *   これは、基数が10を超える場合（例: 16進数や36進数）、10以上の桁の値を表現するために小文字のアルファベット（'a', 'b', ..., 'z'）が使用されることを明確にしています。例えば、16進数で10は'a'、11は'b'と表現されます。

これらの追加情報は、関数の振る舞いをより正確に記述し、開発者がこれらの関数を誤解なく使用できるようにするために不可欠です。特に、`base`の範囲と文字の規則は、出力される文字列の形式に直接影響するため、ドキュメンテーションに明記されるべき重要な詳細です。

変更自体はコードのロジックには影響を与えず、純粋にドキュメンテーションの改善に焦点を当てています。これは、Go言語の設計哲学である「明確さ」と「使いやすさ」に沿ったものです。

## コアとなるコードの変更箇所

```diff
--- a/src/pkg/strconv/itoa.go
+++ b/src/pkg/strconv/itoa.go
@@ -4,13 +4,17 @@
 
  package strconv
  
-// FormatUint returns the string representation of i in the given base.\n+// FormatUint returns the string representation of i in the given base,\n+// for 2 <= base <= 36. The result uses the lower-case letters \'a\' to \'z\'\n+// for digit values >= 10.\n func FormatUint(i uint64, base int) string {\n  _, s := formatBits(nil, i, base, false, false)\n  return s\n }\n \n-// FormatInt returns the string representation of i in the given base.\n+// FormatInt returns the string representation of i in the given base,\n+// for 2 <= base <= 36. The result uses the lower-case letters \'a\' to \'z\'\n+// for digit values >= 10.\n func FormatInt(i int64, base int) string {\n  _, s := formatBits(nil, uint64(i), base, i < 0, false)\n  return s\n```

## コアとなるコードの解説

上記の差分は、`src/pkg/strconv/itoa.go`ファイル内の2つの関数、`FormatUint`と`FormatInt`のドキュメンテーションコメントに対する変更を示しています。

*   **`FormatUint`関数の変更**:
    *   変更前: `// FormatUint returns the string representation of i in the given base.`
    *   変更後:
        ```go
        // FormatUint returns the string representation of i in the given base,
        // for 2 <= base <= 36. The result uses the lower-case letters 'a' to 'z'
        // for digit values >= 10.
        ```
    *   元のコメントは非常に簡潔でしたが、変更後は`base`引数の有効な範囲（2から36まで）と、10以上の桁が小文字の'a'から'z'で表現されるという具体的な規則が追加されました。これにより、関数の振る舞いがより明確になりました。

*   **`FormatInt`関数の変更**:
    *   `FormatUint`と同様に、`FormatInt`のドキュメンテーションコメントも同様の修正が加えられました。
    *   変更前: `// FormatInt returns the string representation of i in the given base.`
    *   変更後:
        ```go
        // FormatInt returns the string representation of i in the given base,
        // for 2 <= base <= 36. The result uses the lower-case letters 'a' to 'z'
        // for digit values >= 10.
        ```
    *   こちらも、`base`の範囲と10以上の桁の表現に関する情報が追加され、ドキュメンテーションの質が向上しています。

これらの変更は、Go言語のドキュメンテーション規約に則り、関数のシグネチャの直前にコメントとして記述されています。Goのツール（`go doc`など）はこれらのコメントを読み取り、開発者向けドキュメンテーションを生成します。したがって、この変更はGo言語の公式ドキュメンテーションに直接反映され、ユーザーがこれらの関数をより正確に理解し、利用できるようになります。

## 関連リンク

*   **GitHubコミットページ**: [https://github.com/golang/go/commit/184209787c5904cb670857c7c1ef3a2fd10718e5](https://github.com/golang/go/commit/184209787c5904cb670857c7c1ef3a2fd10718e5)
*   **Go Issue 3580**: [https://github.com/golang/go/issues/3580](https://github.com/golang/go/issues/3580)
*   **Go言語 `strconv` パッケージ公式ドキュメンテーション**: [https://pkg.go.dev/strconv](https://pkg.go.dev/strconv)

## 参考にした情報源リンク

*   Go言語の公式ドキュメンテーション
*   GitHubのGoリポジトリのIssueトラッカー
*   Go言語のソースコード