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[インデックス 1322] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のソースコードリポジトリ内の src/lib/Makefile ファイルに対する変更です。src/lib/Makefile は、Go言語の標準ライブラリのビルドプロセスを定義する重要な設定ファイルであり、各パッケージのコンパイル、インストール、および依存関係を管理しています。

コミット

このコミットは、以前の変更によって発生したビルドエラーを修正するためのものです。具体的には、net パッケージのビルド(インストール)が fmt パッケージのビルドに依存するように、Makefile の依存関係が更新されています。

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/a9e890d5cfa33d19ee4999ab822c4c2eaa869a0b

元コミット内容

commit a9e890d5cfa33d19ee4999ab822c4c2eaa869a0b
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date:   Wed Dec 10 21:20:48 2008 -0800

    looks like i broke the build
    
    TBR=r
    OCL=20963
    CL=20963

変更の背景

コミットメッセージ「looks like i broke the build」(どうやらビルドを壊してしまったようだ)が示す通り、この変更は、以前のコミットによってGo言語のビルドプロセスが失敗するようになった問題への修正です。

Go言語の初期開発段階では、標準ライブラリのパッケージ間の依存関係は Makefile を通じて明示的に管理されていました。net パッケージが fmt パッケージの機能(例えば、文字列のフォーマットやエラーメッセージの生成など)を利用するようになったにもかかわらず、Makefile 上でその依存関係が適切に宣言されていなかったため、net パッケージがビルドされる際に fmt パッケージがまだ利用可能になっておらず、ビルドエラーが発生したと考えられます。

このコミットは、net パッケージが正しくビルドされるために必要な fmt パッケージの依存関係を追加することで、このビルド問題を解決することを目的としています。

前提知識の解説

Makefile

Makefile は、プログラムのコンパイルやビルドプロセスを自動化するためのファイルです。make ユーティリティによって解釈され、ソースコードから実行可能ファイルやライブラリを生成する手順を定義します。Makefile は「ターゲット」「依存関係」「コマンド」の3つの主要な要素で構成されます。

  • ターゲット (Target): 生成したいファイルや実行したいアクションの名前。
  • 依存関係 (Prerequisites): ターゲットを生成するために必要となるファイルや他のターゲット。依存関係が更新された場合、ターゲットは再ビルドされます。
  • コマンド (Commands): ターゲットを生成するために実行されるシェルコマンド。

Go言語の初期のビルドシステムでは、C言語で書かれた部分や、Go言語自体で書かれたライブラリのビルドに Makefile が広く利用されていました。

Go言語の初期のビルドシステム

Go言語は2009年に公開されましたが、このコミットは2008年に行われており、Go言語がまだ活発に開発されていた初期段階のものです。当時のGoのビルドシステムは、現在の go build コマンドのような統合されたツールチェーンとは異なり、より伝統的な Makefile ベースのシステムに大きく依存していました。

各パッケージのビルドやインストールは、Makefile 内の特定のターゲット(例: pkg.dirinstall)として定義され、パッケージ間の依存関係も Makefile 内で明示的に記述する必要がありました。これは、現在のGoモジュールシステムや go build が自動的に依存関係を解決する仕組みとは大きく異なります。

Goのパッケージシステム (netfmt)

  • net パッケージ: ネットワーク関連の機能を提供するGoの標準ライブラリパッケージです。TCP/IP、UDP、DNSルックアップなど、ネットワークプログラミングに必要な基本的なインターフェースを提供します。
  • fmt パッケージ: フォーマットされたI/O(入出力)機能を提供するGoの標準ライブラリパッケージです。PrintfSprintf のような関数を提供し、様々なデータ型を文字列に変換したり、標準出力やファイルに書き込んだりするために使用されます。

依存関係

ソフトウェア開発における依存関係とは、あるコンポーネント(この場合はGoのパッケージ)が正しく機能するために、別のコンポーネントが必要となる関係を指します。ビルドシステムにおいては、あるターゲットがビルドされる前に、その依存関係にあるターゲットが先にビルドまたはインストールされている必要があることを意味します。Makefile では、この依存関係が明示的に記述されます。

技術的詳細

このコミットの技術的詳細は、Makefile の依存関係の記述方法と、Go言語の初期のビルドプロセスにおける dirinstall ターゲットの役割に集約されます。

Makefile の依存関係の記述

Makefile では、ターゲットと依存関係は通常、以下の形式で記述されます。

target: prerequisite1 prerequisite2 ...
	command

このコミットで変更された行は以下の通りです。

-net.dirinstall: once.install os.dirinstall strconv.dirinstall
+net.dirinstall: fmt.dirinstall once.install os.dirinstall strconv.dirinstall

これは、net.dirinstall というターゲットが、once.installos.dirinstallstrconv.dirinstall に加えて、新たに fmt.dirinstall に依存するように変更されたことを示しています。

dirinstall ターゲット

Go言語の初期の Makefile において、*.dirinstall のようなターゲットは、特定のパッケージのディレクトリをビルドし、インストールする(つまり、コンパイルされたライブラリファイルを適切な場所に配置する)ためのルールを意味していました。

net.dirinstallnet パッケージのビルドとインストールを担当し、fmt.dirinstallfmt パッケージのビルドとインストールを担当します。

変更の具体的な意味

この変更は、net パッケージがビルドされる前に、fmt パッケージが確実にビルドされ、インストールされている必要があることを make ユーティリティに伝えています。これにより、net パッケージのコンパイル時に fmt パッケージの関数や型が利用可能になり、ビルドエラーが解消されます。

これは、net パッケージのコードベースが進化し、fmt パッケージの機能(例えば、エラーメッセージのフォーマットやデバッグ出力など)を内部的に利用するようになったことを示唆しています。このような依存関係の追加は、ソフトウェア開発において一般的なことであり、機能の追加やリファクタリングに伴って発生します。

コアとなるコードの変更箇所

diff --git a/src/lib/Makefile b/src/lib/Makefile
index 197e535d71..7d855e4346 100644
--- a/src/lib/Makefile
+++ b/src/lib/Makefile
@@ -94,7 +94,7 @@ fmt.dirinstall: io.dirinstall reflect.dirinstall strconv.dirinstall
 hash.dirinstall: os.dirinstall
 http.dirinstall: bufio.install io.dirinstall net.dirinstall os.dirinstall strings.install
 io.dirinstall: os.dirinstall syscall.dirinstall
-net.dirinstall: once.install os.dirinstall strconv.dirinstall
+net.dirinstall: fmt.dirinstall once.install os.dirinstall strconv.dirinstall
 os.dirinstall: syscall.dirinstall
 regexp.dirinstall: os.dirinstall
 reflect.dirinstall: strconv.dirinstall sync.dirinstall

コアとなるコードの解説

変更は src/lib/Makefile の1行のみです。

  • 変更前:

    net.dirinstall: once.install os.dirinstall strconv.dirinstall
    

    これは、net パッケージのインストールターゲット net.dirinstall が、onceosstrconv の各パッケージのインストールに依存していることを示していました。

  • 変更後:

    net.dirinstall: fmt.dirinstall once.install os.dirinstall strconv.dirinstall
    

    この行では、既存の依存関係に加えて fmt.dirinstall が追加されました。これにより、net パッケージをビルドする前に fmt パッケージがビルドされ、利用可能であることが保証されます。

このシンプルな変更は、Go言語のビルドシステムにおける依存関係の管理がいかに重要であるかを示しています。たとえ小さなコード変更であっても、それが新しいパッケージへの依存を生み出す場合、ビルドシステムはその新しい依存関係を認識し、適切に処理するように更新される必要があります。このコミットは、その依存関係の更新を正確に行うことで、壊れたビルドを修復した典型的な例です。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • GNU Make マニュアル: https://www.gnu.org/software/make/manual/
  • Go言語の初期のビルドシステムに関する議論やドキュメント(一般的な知識に基づくため、特定のURLはなし)