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[インデックス 13275] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリnetパッケージにおけるcgo_netbsd.goファイルの不完全なマージ("botched merge")を修正し、冗長な+buildディレクティブを削除することを目的としています。具体的には、NetBSD環境でのネットワークアドレス情報取得に関するCgoコードが、マージ競合によって誤った状態になっていたのを修正し、ビルドタグの重複を解消しています。

コミット

  • コミットハッシュ: 622ace8ffe6aab56c35bf80c3a9853c833839a15
  • Author: Joel Sing jsing@google.com
  • Date: Tue Jun 5 02:12:23 2012 +1000

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/622ace8ffe6aab56c35bf80c3a9853c833839a15

元コミット内容

net: fix botched cgo netbsd merge

Fix botched cgo_netbsd.go merge and remove redundant +build directive.

R=golang-dev, rsc
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/6282048

変更の背景

この変更の背景には、Git(または他のバージョン管理システム)におけるマージ操作の失敗、特に「botched merge」(台無しになったマージ)があります。src/pkg/net/cgo_netbsd.goファイルは、以前のマージプロセス中に競合が発生し、その競合が適切に解決されずに、マージ競合マーカー(<<<<<<<, =======, >>>>>>>)がコード内に残ったままコミットされてしまったと考えられます。

このような状態のコードはコンパイルエラーを引き起こすか、意図しない動作をする可能性があります。このコミットは、その壊れた状態を修正し、コードを正しい状態に戻すことを目的としています。また、ファイル冒頭に記述されていた// +build netbsdというビルドディレクティブが冗長であったため、これも同時に削除されています。これは、ファイル名自体がcgo_netbsd.goであるため、Goのビルドシステムが自動的にNetBSDプラットフォーム向けであると認識するためです。

前提知識の解説

Goのビルドディレクティブ (+buildタグ)

Go言語では、ソースファイルの先頭に// +build tag形式のコメントを記述することで、そのファイルが特定のビルド条件(OS、アーキテクチャ、カスタムタグなど)を満たす場合にのみコンパイルされるように制御できます。例えば、// +build linuxはLinux環境でのみコンパイルされ、// +build !windowsはWindows以外の環境でコンパイルされます。 しかし、Goのビルドシステムは、ファイル名に特定のOS名やアーキテクチャ名が含まれている場合(例: _linux.go, _amd64.go, _netbsd.go)、自動的にそのプラットフォーム向けのファイルとして認識します。したがって、cgo_netbsd.goのようにファイル名自体にnetbsdが含まれている場合、ファイル冒頭の// +build netbsdは冗長となります。

Cgo

Cgoは、GoプログラムからC言語のコードを呼び出すためのGoの機能です。Goのコード内でCの関数を呼び出したり、Cのデータ構造を使用したりすることができます。import "C"という特別なインポート宣言を使用し、その直前のコメントブロックにCのコードを記述します。これにより、GoとCの間の相互運用が可能になります。 このコミットで修正されているcgo_netbsd.goファイルは、NetBSDシステムコールやライブラリ関数をGoのnetパッケージから利用するためにCgoを使用している部分です。

netパッケージとアドレス情報 (getaddrinfo)

Goの標準ライブラリnetパッケージは、ネットワーク通信機能を提供します。IPアドレスの解決(DNSルックアップ)、TCP/UDP接続、HTTPクライアント/サーバーなどが含まれます。 getaddrinfoは、POSIX標準で定義されている関数で、ホスト名とサービス名(ポート番号)から、ネットワークアドレス構造体(sockaddr)のリストを取得するために使用されます。この関数は、IPv4とIPv6の両方に対応し、様々なオプションフラグ(AI_CANONNAME, AI_V4MAPPED, AI_ALLなど)を指定することで、取得するアドレス情報の種類を制御できます。

AI_CANONNAME, AI_V4MAPPED, AI_ALL

これらはgetaddrinfo関数に渡されるフラグです。

  • AI_CANONNAME: 結果として返されるアドレス情報に、ホストの正規名(canonical name)を含めるように要求します。
  • AI_V4MAPPED: IPv6アドレスを要求した場合に、IPv4アドレスをIPv4-mapped IPv6アドレスとして返すようにします。これにより、IPv6ソケットでIPv4接続を受け入れることができます。
  • AI_ALL: AI_V4MAPPEDと組み合わせて使用されることが多く、IPv6アドレスとIPv4-mapped IPv6アドレスの両方を返すようにします。

マージ競合マーカー

Gitなどのバージョン管理システムでマージ競合が発生した場合、競合している部分のファイルには以下のような特殊なマーカーが挿入されます。

<<<<<<< HEAD
// HEAD(現在のブランチ)での変更
=======
// マージ対象のブランチでの変更
>>>>>>> branch-name

または、今回のコミットのようにlocalotherというマーカーが使われることもあります。

  • <<<<<<< local: 自分のローカルでの変更の開始
  • =======: 競合する変更の区切り
  • >>>>>>> other: マージ対象のブランチでの変更の終了

これらのマーカーは、手動で競合を解決する際に、どちらの変更を採用するか、あるいは両方を組み合わせて新しいコードを作成するかを決定するために使用されます。マージ競合が適切に解決されずにコミットされると、これらのマーカーがコードベースに残ってしまい、コンパイルエラーや予期せぬ動作の原因となります。

技術的詳細

このコミットの核心は、src/pkg/net/cgo_netbsd.goファイル内で発生したマージ競合の解決です。元のファイルには、cgoAddrInfoFlags()関数内で、getaddrinfoに渡すフラグを決定する部分にマージ競合マーカーが残っていました。

 func cgoAddrInfoFlags() C.int {
-<<<<<<< local
 \treturn C.AI_CANONNAME
-=======\
-\treturn C.AI_CANONNAME | C.AI_V4MAPPED | C.AI_ALL
->>>>>>> other
 }

このスニペットは、2つの異なる変更が同じ行に適用され、Gitが自動的に解決できなかったことを示しています。

  • <<<<<<< localから=======までの部分(return C.AI_CANONNAME)は、マージを実行しているローカルブランチ(または現在の作業コピー)での変更を示しています。
  • =======から>>>>>>> otherまでの部分(return C.AI_CANONNAME | C.AI_V4MAPPED | C.AI_ALL)は、マージ対象の別のブランチ(other)での変更を示しています。

このコミットでは、otherブランチの変更、すなわちC.AI_CANONNAME | C.AI_V4MAPPED | C.AI_ALLを採用することで競合を解決しています。これは、NetBSD環境において、getaddrinfoが正規名、IPv4-mapped IPv6アドレス、およびすべての利用可能なアドレスを返すように意図されていたためと考えられます。

また、ファイル冒頭の// +build netbsdディレクティブが削除されています。これは、Goのビルドシステムがファイル名(cgo_netbsd.go)から自動的にターゲットOSを推論するため、このディレクティブが冗長であると判断されたためです。冗長なディレクティブを削除することで、コードの簡潔性と保守性が向上します。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/pkg/net/cgo_netbsd.go
+++ b/src/pkg/net/cgo_netbsd.go
@@ -2,8 +2,6 @@
 // Use of this source code is governed by a BSD-style
 // license that can be found in the LICENSE file.\n
 \n-// +build netbsd\n-\n package net\n \n /*\n@@ -12,9 +10,5 @@ package net\n import \"C\"\n \n func cgoAddrInfoFlags() C.int {\n-<<<<<<< local\n \treturn C.AI_CANONNAME
-=======\n-\treturn C.AI_CANONNAME | C.AI_V4MAPPED | C.AI_ALL
->>>>>>> other
 }\n

コアとなるコードの解説

上記のdiffは、src/pkg/net/cgo_netbsd.goファイルに対する2つの主要な変更を示しています。

  1. // +build netbsdの削除:

    - // +build netbsd
    

    この行は、ファイルの先頭から削除されています。前述の通り、Goのビルドシステムはファイル名に_netbsd.goが含まれている場合、自動的にそのファイルをNetBSDプラットフォーム向けとして認識します。そのため、このビルドディレクティブは冗長であり、削除してもビルドの挙動に影響はありません。これにより、コードがよりクリーンになります。

  2. マージ競合マーカーの削除と正しいフラグの採用:

    -<<<<<<< local
    - \treturn C.AI_CANONNAME
    -=======
    - \treturn C.AI_CANONNAME | C.AI_V4MAPPED | C.AI_ALL
    ->>>>>>> other
    

    これらの行は、マージ競合マーカーと、競合していた両方のバージョンのコードを示しています。このコミットでは、これらのマーカーと競合するコードを削除し、最終的に以下の1行に置き換えています。

    	return C.AI_CANONNAME | C.AI_V4MAPPED | C.AI_ALL
    

    これは、cgoAddrInfoFlags()関数が、getaddrinfo関数に渡すためのフラグとして、AI_CANONNAME(正規名)、AI_V4MAPPED(IPv4-mapped IPv6アドレス)、およびAI_ALL(すべての利用可能なアドレス)を組み合わせた値を返すように修正されたことを意味します。これにより、NetBSD環境でのアドレス解決が意図通りに機能するようになります。

これらの変更により、cgo_netbsd.goファイルは、NetBSDプラットフォームで正しくコンパイルされ、期待されるネットワークアドレス解決の挙動を示すようになります。

関連リンク

参考にした情報源リンク