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[インデックス 13354] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリ crypto/elliptic パッケージ内のドキュメントの誤字を修正するものです。具体的には、P521() 関数に関するコメントが誤って P256() と記述されていた箇所を修正し、正確な情報を提供するように変更されています。

コミット

commit a11e74daf7e42fa811378f5f38fb0dfdf6480f3a
Author: Shenghou Ma <minux.ma@gmail.com>
Date:   Thu Jun 14 22:43:15 2012 +0800

    crypto/elliptic: fix doc typo
            Fixes #3735.
    
    R=golang-dev, agl
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/6301083

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/a11e74daf7e42fa811378f5f38fb0dfdf6480f3a

元コミット内容

上記の「コミット」セクションに記載されている通りです。

変更の背景

この変更の背景は、Go言語の暗号ライブラリ crypto/elliptic パッケージ内のドキュメントに存在する単純な誤字の修正です。P521() 関数は、NIST P-521楕円曲線(FIPS 186-3, section D.2.5で定義)を実装した Curve を返すものですが、その関数のコメントが誤って P256() を参照していました。このようなドキュメントの誤りは、ライブラリを利用する開発者が関数の目的や挙動を誤解する原因となるため、正確な情報を提供するために修正が必要でした。この問題はGoのIssue #3735として報告され、このコミットによって解決されました。

前提知識の解説

楕円曲線暗号 (ECC: Elliptic Curve Cryptography)

楕円曲線暗号は、公開鍵暗号の一種で、有限体上の楕円曲線の数学的構造を利用しています。従来のRSA暗号などと比較して、同等のセキュリティレベルをより短い鍵長で実現できるため、計算資源が限られた環境(モバイルデバイスなど)や、より高いパフォーマンスが求められる場面で広く利用されています。

NIST 曲線

NIST (National Institute of Standards and Technology: 米国国立標準技術研究所) は、デジタル署名や鍵交換プロトコルで使用するための標準的な楕円曲線群を推奨しています。これらは「NIST曲線」と呼ばれ、P-192, P-224, P-256, P-384, P-521などがあります。これらの曲線は、特定のセキュリティ要件を満たすように設計されており、多くの暗号ライブラリで実装されています。

FIPS 186-3

FIPS (Federal Information Processing Standard) 186-3は、NISTによって発行された「Digital Signature Standard (DSS)」のバージョン3です。この標準は、デジタル署名の生成と検証のためのアルゴリズム(DSA, ECDSA, RSA)を規定しています。FIPS 186-3は、特に楕円曲線デジタル署名アルゴリズム (ECDSA) におけるNIST曲線の使用について詳細を定めており、P-521曲線もその一つとしてD.2.5セクションで定義されています。

Go言語の crypto/elliptic パッケージ

Go言語の標準ライブラリ crypto/elliptic パッケージは、NISTが推奨するP-224, P-256, P-384, P-521といった標準的な楕円曲線を実装しています。このパッケージは、楕円曲線上の点演算や、crypto/ecdsa パッケージと連携してデジタル署名を行うための基盤を提供します。ただし、このパッケージの直接的な使用は、より安全で効率的な crypto/ecdh パッケージやサードパーティのモジュールが推奨される場合が多いです。

P-521 曲線

P-521曲線は、NISTが推奨する楕円曲線の一つで、secp521r1 とも呼ばれます。これは、非常に高いセキュリティレベルを提供する曲線であり、特に高い機密性が求められるアプリケーションや、長期的なセキュリティを考慮する場面で利用されます。FIPS 186-3のセクションD.2.5でその詳細が規定されています。

技術的詳細

このコミットは、src/pkg/crypto/elliptic/elliptic.go ファイル内の P521() 関数のドキュメンテーションコメントの修正に焦点を当てています。

元のコードでは、P521() 関数のコメントが以下のように記述されていました。

// P256 returns a Curve which implements P-521 (see FIPS 186-3, section D.2.5)

このコメントは、関数名が P521() であるにもかかわらず、誤って P256 を返すと記述していました。これは明らかに誤りであり、P521() 関数が実際にP-521曲線に対応する Curve を返すことを正確に反映するように修正する必要がありました。

修正後のコメントは以下のようになります。

// P521 returns a Curve which implements P-521 (see FIPS 186-3, section D.2.5)

この変更により、ドキュメントがコードの実際の挙動と一致し、開発者が混乱することなく crypto/elliptic パッケージを正しく利用できるようになります。

コアとなるコードの変更箇所

diff --git a/src/pkg/crypto/elliptic/elliptic.go b/src/pkg/crypto/elliptic/elliptic.go
index 30835a90b9..a3990891be 100644
--- a/src/pkg/crypto/elliptic/elliptic.go
+++ b/src/pkg/crypto/elliptic/elliptic.go
@@ -370,7 +370,7 @@ func P384() Curve {
 	return p384
 }
 
-// P256 returns a Curve which implements P-521 (see FIPS 186-3, section D.2.5)
+// P521 returns a Curve which implements P-521 (see FIPS 186-3, section D.2.5)
 func P521() Curve {
 	initonce.Do(initAll)
 	return p521

コアとなるコードの解説

変更された行は、src/pkg/crypto/elliptic/elliptic.go ファイルの373行目です。

  • - // P256 returns a Curve which implements P-521 (see FIPS 186-3, section D.2.5): これは修正前の行で、P521() 関数のコメントが誤って P256 を返すと記述していました。
  • + // P521 returns a Curve which implements P-521 (see FIPS 186-3, section D.2.5): これは修正後の行で、コメントの関数名を P521 に修正し、P521() 関数がP-521曲線に対応する Curve を返すことを正確に示しています。

この修正は、コードの機能には影響を与えず、ドキュメンテーションの正確性を向上させるためのものです。これにより、このライブラリを使用する開発者が、各関数がどの楕円曲線に対応しているかを正しく理解できるようになります。

関連リンク

参考にした情報源リンク