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[インデックス 13492] ファイルの概要

このコミットは、Goプロジェクトのダッシュボードアプリケーションにおけるコードレビュー機能に、管理者のみが利用できる「CL(Change List)の強制更新」リンクを追加するものです。これにより、管理者は特定のコードレビュー項目(CL)の情報を手動で更新できるようになり、ダッシュボードの表示が最新の状態に保たれるようになります。

コミット

commit a8ce9ab46ca4302d7e33c3734610f4b680b52e72
Author: David Symonds <dsymonds@golang.org>
Date:   Mon Jul 23 12:41:23 2012 +1000

    misc/dashboard/codereview: add admin-only link to force-update a CL.
    
    R=nigeltao
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/6431055

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/a8ce9ab46ca4302d7e33c3734610f4b680b52e72

元コミット内容

misc/dashboard/codereview: 管理者のみが利用できる、CL(Change List)を強制的に更新するためのリンクを追加。

変更の背景

Goプロジェクトでは、Gerritをベースとしたコードレビューシステム(golang.org/cl)が利用されています。このシステムは、Goのダッシュボード(misc/dashboard)と連携し、進行中のコードレビューのステータスや関連情報を表示しています。

しかし、何らかの理由(例えば、キャッシュの遅延、Gerritとの同期問題、あるいは特定のイベントがトリガーされなかった場合など)により、ダッシュボードに表示されるCLの情報が最新ではない状況が発生する可能性があります。このような場合、開発者やレビュー担当者は、ダッシュボード上の情報が古いために混乱したり、適切なアクションを取れなかったりすることが考えられます。

このコミットは、このような状況に対処するため、システム管理者が手動で特定のCLの情報をダッシュボード上で強制的に更新できるメカニズムを提供することを目的としています。これにより、ダッシュボードの情報の正確性と即時性が向上し、コードレビュープロセスの円滑な運用が支援されます。特に、管理者権限を持つユーザーに限定することで、誤操作や悪用を防ぎつつ、必要な時に迅速な対応を可能にしています。

前提知識の解説

  • Goプロジェクトのダッシュボード: Goプロジェクトの様々な側面(ビルドステータス、テスト結果、コードレビューの状況など)を一覧表示するためのウェブアプリケーションです。開発の進捗状況を把握するために利用されます。
  • CL (Change List): Goプロジェクトにおけるコードレビューの単位です。Gerritというコードレビューシステムで管理されており、提案されたコード変更のセットを指します。開発者はCLを提出し、他の開発者やメンテナがそれをレビューし、承認することでGoのリポジトリにマージされます。
  • Gerrit: オープンソースのコードレビューシステムです。Gitリポジトリと連携し、変更の提案(CL)を管理し、レビュー、コメント、承認のワークフローを提供します。Goプロジェクトでは、golang.org/clとしてGerritが運用されています。
  • Google App Engine (GAE): このコミットのコード構造(user.Current(c)user.IsAdmin(c)といった関数呼び出し)から、このダッシュボードアプリケーションがGoogle App Engine上で動作している可能性が高いと推測されます。GAEは、Googleが提供するPaaS(Platform as a Service)であり、スケーラブルなウェブアプリケーションやモバイルバックエンドを構築・ホストするためのプラットフォームです。GAEのGo SDKには、ユーザー認証や管理者権限のチェックを行うためのAPIが提供されています。
  • HTMLテンプレート (Go html/template): Go言語の標準ライブラリに含まれるパッケージで、HTMLを安全に生成するためのテンプレートエンジンを提供します。クロスサイトスクリプティング(XSS)攻撃を防ぐための自動エスケープ機能が特徴です。このコミットでは、template.Must(template.New("front").Funcs(template.FuncMap{...}))という形でテンプレートが初期化され、データが渡されてレンダリングされています。
  • http.ResponseWriter*http.Request: Goの標準HTTPライブラリにおける、HTTPハンドラの基本的な引数です。http.ResponseWriterはHTTPレスポンスを書き込むためのインターフェースであり、*http.Requestは受信したHTTPリクエストの詳細(URL、ヘッダー、ボディなど)を含みます。
  • user.Current(c)user.IsAdmin(c): これらはGoogle App EngineのユーザーAPIの一部である可能性が高いです。user.Current(c)は現在のユーザー情報を取得し、user.IsAdmin(c)は現在のユーザーがアプリケーションの管理者であるかどうかをチェックします。cはApp Engineのコンテキストオブジェクトを指します。

技術的詳細

この変更は、Goダッシュボードのフロントエンド部分、具体的にはコードレビューの概要を表示するページに影響を与えます。

  1. front.go の変更:
    • handleFront 関数内で、frontPageData構造体にIsAdminフィールドが追加され、user.IsAdmin(c)関数の結果が格納されるようになりました。これは、現在のユーザーが管理者であるかどうかの情報をテンプレートに渡すために必要です。
    • frontPageData構造体自体にもIsAdmin boolフィールドが追加されています。
  2. HTMLテンプレートの変更:
    • frontPageという名前のHTMLテンプレートに、新しい条件付きブロックが追加されました。
    • {{if $.IsAdmin}}という条件文が使用されており、これはfrontPageData構造体のIsAdminフィールドがtrueの場合にのみ、その中のHTMLコンテンツがレンダリングされることを意味します。
    • 条件が満たされた場合、<td><a href="/update-cl?cl={{.Number}}" title="Update this CL">&#x27f3;</a></td>というHTML要素が追加されます。
      • <td>はテーブルのセルを表します。
      • <a href="/update-cl?cl={{.Number}}" ...>はハイパーリンクです。
        • href属性は/update-clというパスにクエリパラメータclとして現在のCLの番号(.Number)を付けています。これは、このリンクがクリックされたときに、指定されたCLの更新をトリクエストするバックエンドのエンドポイントを呼び出すことを示唆しています。
        • title="Update this CL"は、マウスオーバー時に表示されるツールチップです。
        • &#x27f3;はUnicode文字で、おそらく「時計回りのオープンサークル矢印」のようなアイコンを表し、更新アクションを視覚的に示しています。

この変更により、管理者としてダッシュボードにアクセスすると、各CLの行に新しい「更新」アイコンが表示され、それをクリックすることで個別のCL情報を強制的に更新できるようになります。

コアとなるコードの変更箇所

diff --git a/misc/dashboard/codereview/dashboard/front.go b/misc/dashboard/codereview/dashboard/front.go
index 21d4d3cda9..791a1000c2 100644
--- a/misc/dashboard/codereview/dashboard/front.go
+++ b/misc/dashboard/codereview/dashboard/front.go
@@ -30,6 +30,7 @@ func handleFront(w http.ResponseWriter, r *http.Request) {
 	data := &frontPageData{
 		Reviewers: personList,
 		User:      user.Current(c).Email,
+		IsAdmin:   user.IsAdmin(c),
 	}
 	var currentPerson string
 	currentPerson, data.UserIsReviewer = emailToPerson[data.User]
@@ -136,6 +137,7 @@ type frontPageData struct {
 	UserIsReviewer bool
 
 	User, LogoutURL string
+	IsAdmin         bool
 }
 
 type clTable struct {
@@ -245,6 +247,7 @@ var frontPage = template.Must(template.New("front").Funcs(template.FuncMap{
       {{if and .LGTMs $tbl.Assignable}}<br /><span style="font-size: smaller;">LGTMs: {{.LGTMHTML}}{{end}}</span>
     </td>
     <td title="Last modified">{{.ModifiedAgo}}</td>
+    {{if $.IsAdmin}}<td><a href="/update-cl?cl={{.Number}}" title="Update this CL">&#x27f3;</a></td>{{end}}
   </tr>
 {{end}}
 </table>

コアとなるコードの解説

  1. misc/dashboard/codereview/dashboard/front.go の変更:
    • handleFront 関数内 (@@ -30,6 +30,7 @@):
      	data := &frontPageData{
      		Reviewers: personList,
      		User:      user.Current(c).Email,
      +		IsAdmin:   user.IsAdmin(c),
      	}
      
      frontPageData構造体の初期化時に、新しく追加されたIsAdminフィールドにuser.IsAdmin(c)の戻り値(現在のユーザーが管理者であればtrue、そうでなければfalse)が設定されます。これにより、この情報がHTMLテンプレートに渡されるようになります。
    • frontPageData 構造体定義 (@@ -136,6 +137,7 @@):
      	UserIsReviewer bool
       
      	User, LogoutURL string
      +	IsAdmin         bool
       }
      
      frontPageData構造体にIsAdmin boolという新しいフィールドが追加されました。これは、テンプレートに管理者情報を渡すためのデータ構造の拡張です。
  2. HTMLテンプレート (var frontPage = template.Must(...) 内) (@@ -245,6 +247,7 @@):
          {{if and .LGTMs $tbl.Assignable}}<br /><span style="font-size: smaller;">LGTMs: {{.LGTMHTML}}{{end}}</span>
         </td>
         <td title="Last modified">{{.ModifiedAgo}}</td>
    +    {{if $.IsAdmin}}<td><a href="/update-cl?cl={{.Number}}" title="Update this CL">&#x27f3;</a></td>{{end}}
       </tr>
     {{end}}
     </table>
    
    各CLの行(<tr>)の最後に新しい<td>要素が追加されています。この<td>要素は、Goテンプレートの条件分岐{{if $.IsAdmin}}によって囲まれています。
    • $.IsAdminは、テンプレートに渡されたルートデータ(frontPageData)のIsAdminフィールドを参照します。
    • もしIsAdmintrue(つまり、現在のユーザーが管理者)であれば、<td>要素とその中の<a>タグがレンダリングされます。
    • <a>タグは、/update-cl?cl={{.Number}}というURLへのリンクを生成します。ここで{{.Number}}は、現在処理されているCLの番号に置き換えられます。このリンクは、管理者ユーザーが特定のCLの情報を手動で更新するためのトリガーとして機能します。&#x27f3;は、更新アクションを示す視覚的なアイコンです。

これらの変更により、ダッシュボードのコードレビュー一覧において、管理者ユーザーにのみCLの強制更新リンクが表示されるようになり、ダッシュボードのデータ整合性を手動で維持する手段が提供されました。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • コミットメッセージと差分情報 (./commit_data/13492.txt)
  • Goプロジェクトのコードレビュープロセスに関する一般的な知識
  • Google App EngineのGo開発に関する一般的な知識
  • Go言語のhtml/templateパッケージに関する一般的な知識
  • Unicode文字 &#x27f3; の意味に関する情報 (Web検索)
  • GoプロジェクトのGitHubリポジトリ: https://github.com/golang/go
  • Goの公式ドキュメント: https://go.dev/
  • Gerrit Code Reviewの一般的な概念 (Web検索)