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[インデックス 13564] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリである go/build パッケージ内の build.go ファイルに対する変更です。go/build パッケージは、Goのソースコードパッケージの構造を理解し、ビルドプロセスをサポートするための機能を提供します。具体的には、Goのソースファイルやパッケージを解析し、依存関係を解決する際に使用されます。

コミット

このコミットは「tiny cleanup」(小さなクリーンアップ)と題されており、go/build パッケージ内のコードから冗長な型変換を削除することを目的としています。これにより、コードの可読性と効率がわずかに向上します。

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/f3a45d4695d332b5964e11f648c330b2f11980b8

元コミット内容

commit f3a45d4695d332b5964e11f648c330b2f11980b8
Author: Robert Griesemer <gri@golang.org>
Date:   Fri Aug 3 10:45:02 2012 -0700

    go/build: tiny cleanup
    
    R=rsc
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/6453083
---
 src/pkg/go/build/build.go | 4 ++--
 1 file changed, 2 insertions(+), 2 deletions(-)

diff --git a/src/pkg/go/build/build.go b/src/pkg/go/build/build.go
index c3e0e8e69c..ef7433883c 100644
--- a/src/pkg/go/build/build.go
+++ b/src/pkg/go/build/build.go
@@ -539,7 +539,7 @@ Found:
 			return p, err
 		}
 
-		pkg := string(pf.Name.Name)
+		pkg := pf.Name.Name
 		if pkg == "documentation" {
 			continue
 		}
@@ -573,7 +573,7 @@ Found:
 				if !ok {
 					continue
 				}
-				quoted := string(spec.Path.Value)
+				quoted := spec.Path.Value
 				path, err := strconv.Unquote(quoted)
 				if err != nil {
 					log.Panicf("%s: parser returned invalid quoted string: <%s>\", filename, quoted)

変更の背景

この変更の背景には、Go言語のAST(抽象構文木)を扱う際の型と、文字列変換の効率性に関する考慮があります。Goのgo/astパッケージで定義されているast.Ident(識別子)やast.BasicLit(基本リテラル、特に文字列リテラル)のNameValueフィールドは、既にstring型、またはstring型に直接変換可能な型(例えば[]byte)として設計されています。

以前のコードでは、これらのフィールドの値をstring()に明示的に型変換していましたが、これは多くの場合冗長であり、不要なメモリ割り当てや処理オーバーヘッドを引き起こす可能性がありました。この「tiny cleanup」は、このような冗長な変換を削除し、コードをより簡潔で効率的にすることを目的としています。これは、Go言語の設計哲学である「シンプルさ」と「効率性」に合致する変更と言えます。

前提知識の解説

Go言語のgo/buildパッケージ

go/buildパッケージは、Goのソースコードを解析し、パッケージのビルドに必要な情報を収集するための標準ライブラリです。Goのツールチェイン(go build, go installなど)の基盤として機能し、ソースファイルの依存関係、パッケージのインポートパス、ビルドタグなどを解決します。

AST (Abstract Syntax Tree)

AST(抽象構文木)は、プログラミング言語のソースコードの抽象的な構文構造を木構造で表現したものです。コンパイラやリンター、コード分析ツールなどがソースコードを解析する際に内部的に使用します。Go言語では、go/parserパッケージでソースコードをASTにパースし、go/astパッケージでASTのノード構造を定義しています。

ast.Identast.BasicLit

  • ast.Ident: 識別子(Identifier)を表すASTノードです。変数名、関数名、パッケージ名などがこれに該当します。ast.Ident構造体には、識別子の名前を表すName stringフィールドが含まれています。
  • ast.BasicLit: 基本リテラル(Basic Literal)を表すASTノードです。数値リテラル、文字列リテラル、真偽値リテラルなどがこれに該当します。文字列リテラルの場合、ast.BasicLit構造体にはリテラルの値を表すValue stringフィールドが含まれています。

Go言語における型変換

Go言語では、異なる型間で値を変換する際に明示的な型変換(Type(value))が必要です。しかし、特定のケースでは、コンパイラが自動的に型を推論したり、基になる型が既に目的の型と互換性があるため、明示的な変換が不要な場合があります。特に、string型に直接変換可能な[]byte型や、既にstring型である値を再度string()に変換することは冗長です。

技術的詳細

このコミットの技術的な詳細は、GoのASTノードから値を取得する際の型変換の最適化にあります。

変更前:

pkg := string(pf.Name.Name)
quoted := string(spec.Path.Value)

変更後:

pkg := pf.Name.Name
quoted := spec.Path.Value

ここで、pf.Name.Nameast.Ident型のNameフィールドであり、その型はstringです。同様に、spec.Path.Valueast.BasicLit型のValueフィールドであり、その型もstringです。

Go言語では、既にstring型である値を再度string()に変換しても、コンパイルエラーにはなりませんが、これは冗長な操作です。コンパイラはこのような冗長な変換を最適化する場合がありますが、コードの意図をより明確にし、潜在的なオーバーヘッドを避けるためには、不要な変換は削除するのがベストプラクティスです。

この変更は、コードのセマンティクス(意味)を変えることなく、単にコードをより簡潔にし、実行時の効率をわずかに向上させるためのものです。特に、go/buildパッケージのような、頻繁に呼び出される可能性のある低レベルのコードでは、このような小さな最適化も全体的なパフォーマンスに寄与する可能性があります。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/pkg/go/build/build.go
+++ b/src/pkg/go/build/build.go
@@ -539,7 +539,7 @@ Found:
 			return p, err
 		}
 
-		pkg := string(pf.Name.Name)
+		pkg := pf.Name.Name
 		if pkg == "documentation" {
 			continue
 		}
@@ -573,7 +573,7 @@ Found:
 				if !ok {
 					continue
 				}
-				quoted := string(spec.Path.Value)
+				quoted := spec.Path.Value
 				path, err := strconv.Unquote(quoted)
 				if err != nil {
 					log.Panicf("%s: parser returned invalid quoted string: <%s>\", filename, quoted)

コアとなるコードの解説

変更された2つの行は、それぞれ異なるASTノードから文字列値を取得しています。

  1. pkg := string(pf.Name.Name) から pkg := pf.Name.Name への変更:

    • この行は、Goのソースファイルからパッケージ名を抽出する部分にあります。
    • pf はおそらく*ast.File(Goのソースファイルを表すAST)またはそれに類似する構造体です。
    • pf.Name はパッケージの識別子(*ast.Ident)を表します。
    • pf.Name.Name は、その識別子の名前(string型)です。
    • 元々string(pf.Name.Name)と書かれていましたが、pf.Name.Name自体が既にstring型であるため、string()への明示的な変換は不要でした。この変更により、冗長な変換が削除されました。
  2. quoted := string(spec.Path.Value) から quoted := spec.Path.Value への変更:

    • この行は、インポートパス(import "path/to/package"のような文字列)を処理する部分にあります。
    • spec はおそらく*ast.ImportSpec(インポート宣言を表すAST)です。
    • spec.Path はインポートパスのリテラル(*ast.BasicLit)を表します。
    • spec.Path.Value は、そのリテラルの値(string型、引用符を含む)です。
    • 同様に、spec.Path.Value自体が既にstring型であるため、string()への明示的な変換は不要でした。この変更により、冗長な変換が削除されました。

これらの変更は、コードの機能には影響を与えず、単にコードの簡潔性と効率性を向上させるためのものです。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメント (上記リンクを含む)
  • Go言語のASTに関する一般的な情報源 (例: Go AST Explorerなど)
  • Go言語の型システムと型変換に関する情報