[インデックス 13582] ファイルの概要
このコミットは、test/run.go
ファイルに3行の追加を行うものです。具体的には、compiledir
アクション中に .go
以外のファイルを無視する処理が追加されています。
コミット
- コミットハッシュ:
1df9ee0322e33a19a10ed531020c199eb3b49e61
- 作者: Alex Brainman alex.brainman@gmail.com
- コミット日時: 2012年8月6日 月曜日 14:56:39 +1000
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/1df9ee0322e33a19a10ed531020c199eb3b49e61
元コミット内容
test/run: ignore all but .go file during compiledir action
R=golang-dev, rsc
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/6454091
変更の背景
この変更の背景には、Go言語のテストインフラストラクチャにおける効率性と正確性の向上が挙げられます。test/run.go
はGoのテストスイートを実行するための内部ツールであり、compiledir
アクションは、特定のディレクトリ内のGoソースファイルをコンパイルするプロセスを指します。
従来、compiledir
アクションが実行される際、対象ディレクトリ内にGoソースファイル(.go
)以外のファイル(例えば、テストデータ、設定ファイル、一時ファイルなど)が存在した場合、それらのファイルも処理の対象に含まれてしまう可能性がありました。これは、コンパイルエラーを引き起こしたり、不必要な処理時間を費やしたり、テストの信頼性を損なう原因となることが考えられます。
このコミットは、compiledir
アクションが明示的にGoソースファイルのみを対象とすることで、このような問題を解決し、テストプロセスの堅牢性を高めることを目的としています。これにより、テストの実行がより高速になり、予期せぬエラーが減少することが期待されます。
前提知識の解説
- Go言語のテストフレームワーク: Go言語には標準で強力なテストフレームワークが組み込まれています。
go test
コマンドを使用してテストを実行し、パッケージ内の_test.go
で終わるファイルに記述されたテスト関数が自動的に発見・実行されます。 go tool
:go tool
はGo言語のツールチェインに含まれる様々な低レベルツールを実行するためのコマンドです。例えば、go tool compile
はGoソースファイルをコンパイルし、go tool link
はオブジェクトファイルをリンクします。このコミットではgo tool gc
が使用されており、これはGoコンパイラ(gc
は "Go compiler" の略)を指します。compiledir
アクション: Goのテストスイート内部で使われる概念で、特定のディレクトリ内のGoソースファイルをコンパイルする一連の操作を指します。これは、テスト対象のコードをビルドしたり、テスト用のバイナリを生成したりする際に利用されます。filepath.Ext()
: Go言語のpath/filepath
パッケージに含まれる関数で、与えられたパスの拡張子(例:.go
,.txt
)を返します。拡張子がない場合は空文字列を返します。continue
ステートメント: Go言語におけるfor
ループ内で使用されるキーワードで、現在のイテレーションの残りの処理をスキップし、次のイテレーションに進むために使用されます。
技術的詳細
このコミットの技術的な核心は、test/run.go
内の run
メソッドにおけるファイル処理ロジックの改善にあります。
run
メソッドは、テスト実行のために指定されたディレクトリ内のファイルをイテレートし、それぞれに対してコンパイルなどの処理を行います。変更前のコードでは、files
スライスに含まれるすべてのエントリがGoソースファイルであると暗黙的に仮定し、それらを go tool gc
コマンドに渡していました。
しかし、実際には files
スライスには .go
以外のファイルが含まれる可能性があり、それらのファイルが go tool gc
に渡されると、コンパイラはそれらを有効なGoソースファイルとして認識できず、エラーを発生させていました。
このコミットでは、以下の3行が追加されました。
if filepath.Ext(gofile.Name()) != ".go" {
continue
}
このコードスニペットは、files
スライスから取得した各ファイル (gofile
) に対して、そのファイル名 (gofile.Name()
) の拡張子を filepath.Ext()
関数でチェックします。もし拡張子が .go
でない場合、continue
ステートメントが実行され、現在のループのイテレーションがスキップされ、次のファイルへと処理が移ります。
これにより、go tool gc
コマンドに渡されるファイルは確実にGoソースファイルのみとなり、不必要なコンパイルエラーや処理の無駄が排除されます。これは、テストの安定性と効率性を向上させるための、シンプルながらも効果的な変更です。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/test/run.go
+++ b/test/run.go
@@ -314,6 +314,9 @@ func (t *test) run() {
return
}
for _, gofile := range files {
+ if filepath.Ext(gofile.Name()) != ".go" {
+ continue
+ }
afile := strings.Replace(gofile.Name(), ".go", "."+letter, -1)
out, err := runcmd("go", "tool", gc, "-e", "-D.", "-I.", "-o", afile, filepath.Join(longdir, gofile.Name()))
if err != nil {
コアとなるコードの解説
変更は test/run.go
ファイルの func (t *test) run()
メソッド内で行われています。
元のコードでは、files
という変数(おそらくディレクトリ内のファイルリスト)をループで処理し、各 gofile
に対してコンパイル操作を行っていました。
追加されたコードは、このループの冒頭に配置されています。
if filepath.Ext(gofile.Name()) != ".go" {
continue
}
filepath.Ext(gofile.Name())
: 現在処理しているファイルgofile
の名前からファイル拡張子を取得します。例えば、ファイル名がmain.go
であれば.go
を返します。!= ".go"
: 取得した拡張子が文字列".go"
と等しくないかどうかを比較します。continue
: もし拡張子が".go"
でなければ、現在のループの残りの処理(ファイルのコンパイルなど)をスキップし、for
ループの次のイテレーション(つまり次のファイル)へと処理を移します。
この変更により、for
ループ内で go tool gc
コマンドが実行される前に、対象のファイルがGoソースファイルであることを確実にチェックするようになりました。これにより、テストディレクトリ内に存在する可能性のある非Goファイル(例: README.md
, testdata.txt
など)が誤ってコンパイル対象となることを防ぎ、テスト実行時のエラーを減らし、処理の効率を向上させています。
関連リンク
- Go CL 6454091: https://golang.org/cl/6454091 (このコミットに対応するGoのコードレビューシステム上のチェンジリスト)
参考にした情報源リンク
- Go言語の公式ドキュメント (テスト、ツールチェインに関する情報): https://go.dev/doc/
path/filepath
パッケージのドキュメント: https://pkg.go.dev/path/filepath- Go言語の
continue
ステートメントに関する情報 (Go言語の仕様やチュートリアル): https://go.dev/ref/spec#For_statements