[インデックス 13622] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の標準ライブラリ runtime/pprof
パッケージ内のコメント修正に関するものです。具体的には、Profile
、countProfile
、writeHeap
という識別子に対するコメントの先頭の単語を小文字から大文字に変更し、Goのコメント規約に合わせることで、ドキュメントの整合性と可読性を向上させています。
コミット
commit 058149f153d7ef7b777df1b3ca20edbc9f49c5c1
Author: Dmitriy Vyukov <dvyukov@google.com>
Date: Tue Aug 14 01:51:42 2012 +0400
runtime/pprof: fix comments
R=golang-dev, iant
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/6460082
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/058149f153d7ef7b777df1b3ca20edbc9f49c5c1
元コミット内容
runtime/pprof: fix comments
変更の背景
Go言語では、エクスポートされる(つまり、パッケージ外からアクセス可能な)識別子(変数、関数、型など)のコメントは、その識別子の名前で始まるべきであるという慣習があります。これは、go doc
コマンドやGoの公式ドキュメントジェネレーターが、コメントの最初の文を識別子の簡潔な説明として利用するためです。
このコミットが行われた2012年当時、Goの標準ライブラリはまだ活発に開発されており、このようなドキュメンテーションに関する規約が確立されつつある時期でした。runtime/pprof
パッケージ内のいくつかのコメントがこの規約に準拠していなかったため、それらを修正し、Goのドキュメンテーションツールが正しく情報を抽出できるようにすることが変更の背景にあります。これにより、開発者がruntime/pprof
パッケージのドキュメントを参照する際に、より正確で一貫性のある情報が得られるようになります。
前提知識の解説
Go言語のドキュメンテーションとコメント規約
Go言語には、コードのドキュメンテーションを生成するための組み込みツール go doc
があります。このツールは、エクスポートされた識別子(大文字で始まる名前の変数、関数、型など)の直前にあるコメントを読み取り、それをドキュメントとして表示します。
Goのコメント規約では、エクスポートされた識別子に対するコメントは、その識別子の名前で始まるべきだとされています。例えば、type Profile struct { ... }
という型がある場合、そのコメントは // Profile is a collection of stack traces...
のように「Profile」で始まるべきです。これにより、go doc Profile
と実行した際に、コメントの最初の文がその識別子の簡潔な説明として表示され、開発者がコードの目的を素早く理解できるようになります。
runtime/pprof
パッケージ
runtime/pprof
パッケージは、Goプログラムのプロファイリングデータ(CPU使用率、メモリ割り当て、ゴルーチンスタックトレースなど)を収集し、標準的なpprof形式で出力するための機能を提供します。pprofは、Googleが開発したプロファイリングデータの可視化ツールであり、GoだけでなくC++などの他の言語でも利用されています。
このパッケージを使用することで、開発者はGoアプリケーションのパフォーマンスボトルネックを特定し、最適化を行うことができます。主なプロファイルの種類には以下のようなものがあります。
- CPUプロファイル: プログラムがCPU時間をどこで消費しているかを示します。
- ヒーププロファイル: プログラムがメモリをどのように割り当てているかを示します。
- ゴルーチンプロファイル: 実行中のゴルーチンのスタックトレースを示します。
- ブロックプロファイル: 同期プリミティブ(ミューテックスなど)によってゴルーチンがブロックされている時間を示します。
- ミューテックスプロファイル: ミューテックスの競合を示します。
runtime/pprof
パッケージは、これらのプロファイルをファイルに書き出すための関数を提供しており、通常は go tool pprof
コマンドと組み合わせてプロファイルデータを解析・可視化します。
技術的詳細
このコミットは、Go言語のドキュメンテーション規約に準拠するための単純なコメント修正です。技術的な機能変更やバグ修正ではなく、コードの可読性とドキュメンテーションの品質向上を目的としています。
具体的には、以下の3つのコメントが修正されています。
Profile
型のコメント:// A Profile is a collection...
から// Profile is a collection...
へ変更。countProfile
型のコメント:// A countProfile is a set...
から// countProfile is a set...
へ変更。writeHeap
関数のコメント:// writeHeapProfile writes the current runtime heap profile to w.
から// writeHeap writes the current runtime heap profile to w.
へ変更。
これらの変更により、コメントの最初の単語が、それが説明する識別子(Profile
、countProfile
、writeHeap
)と一致するようになります。これにより、go doc
ツールがこれらのコメントを正しく解析し、より適切なドキュメントを生成できるようになります。
コアとなるコードの変更箇所
src/pkg/runtime/pprof/pprof.go
ファイルの以下の行が変更されています。
--- a/src/pkg/runtime/pprof/pprof.go
+++ b/src/pkg/runtime/pprof/pprof.go
@@ -23,7 +23,7 @@ import (
// BUG(rsc): A bug in the OS X Snow Leopard 64-bit kernel prevents
// CPU profiling from giving accurate results on that system.
-// A Profile is a collection of stack traces showing the call sequences
+// Profile is a collection of stack traces showing the call sequences
// that led to instances of a particular event, such as allocation.
// Packages can create and maintain their own profiles; the most common
// use is for tracking resources that must be explicitly closed, such as files
@@ -250,7 +250,7 @@ func (x stackProfile) Less(i, j int) bool {
return len(t) < len(u)
}
-// A countProfile is a set of stack traces to be printed as counts
+// countProfile is a set of stack traces to be printed as counts
// grouped by stack trace. There are multiple implementations:
// all that matters is that we can find out how many traces there are
// and obtain each trace in turn.
@@ -356,7 +356,7 @@ func countHeap() int {
return n
}
-// writeHeapProfile writes the current runtime heap profile to w.
+// writeHeap writes the current runtime heap profile to w.
func writeHeap(w io.Writer, debug int) error {
// Find out how many records there are (MemProfile(nil, true)),
// allocate that many records, and get the data.
コアとなるコードの解説
変更された各行は、Goのドキュメンテーション規約に沿ってコメントを修正しています。
-
Profile
型のコメント修正:- 変更前:
// A Profile is a collection of stack traces...
- 変更後:
// Profile is a collection of stack traces...
Profile
はエクスポートされた型であるため、そのコメントは「Profile」で始まるべきです。これにより、go doc runtime/pprof.Profile
を実行した際に、コメントの最初の文が型の説明として適切に表示されます。
- 変更前:
-
countProfile
型のコメント修正:- 変更前:
// A countProfile is a set of stack traces...
- 変更後:
// countProfile is a set of stack traces...
countProfile
はエクスポートされていない(小文字で始まる)型ですが、Goの内部的なコメント規約や、将来的にエクスポートされる可能性を考慮して、コメントの整合性を保つために修正されたと考えられます。
- 変更前:
-
writeHeap
関数のコメント修正:- 変更前:
// writeHeapProfile writes the current runtime heap profile to w.
- 変更後:
// writeHeap writes the current runtime heap profile to w.
writeHeap
はエクスポートされていない(小文字で始まる)関数ですが、同様にコメントの整合性を保つために修正されました。元のコメントでは関数名がwriteHeapProfile
となっていましたが、実際の関数名はwriteHeap
であるため、コメントと関数名の一致も図られています。
- 変更前:
これらの変更は、コードの動作には影響を与えませんが、Goのドキュメンテーションツールがより正確で読みやすいドキュメントを生成するのに役立ちます。
関連リンク
- Go言語のドキュメンテーション規約に関する公式ガイドライン(Goのバージョンアップにより内容が変更されている可能性がありますが、基本的な原則は同じです):
runtime/pprof
パッケージの公式ドキュメント:- Goプロファイリングの概要:
- Go プロファイリングの紹介 (Go公式ブログ)
参考にした情報源リンク
- Go言語の公式ドキュメント
- Go言語のソースコード(特に
runtime/pprof
パッケージ) - Go言語のコミット履歴
- pprofツールの一般的な情報