[インデックス 13628] ファイルの概要
このコミットは、Go言語のツールチェインの一部である5l
リンカのソースコード、具体的にはsrc/cmd/5l/asm.c
ファイルにおける些細なホワイトスペースのクリーンアップを目的としています。コードの機能的な変更はなく、主に可読性とコーディング規約への準拠を向上させるための修正です。
コミット
commit 16a82828a2a552d01285d2cd3f01ed36b000b680
Author: Robert Hencke <robert.hencke@gmail.com>
Date: Wed Aug 15 10:32:44 2012 +1000
5l: trivial whitespace cleanup
R=golang-dev, dave
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/6446131
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/16a82828a2a552d01285d2cd3f01ed36b000b680
元コミット内容
5l: trivial whitespace cleanup
変更の背景
このコミットの背景は、コードベース全体の品質と一貫性を維持するための定期的なメンテナンス活動の一環です。特にオープンソースプロジェクトでは、多数の貢献者が関わるため、コーディングスタイルやフォーマットの統一が重要になります。ホワイトスペースの調整は、コードの視覚的な整合性を保ち、将来の読者や開発者がコードを理解しやすくするために行われます。機能的なバグ修正や新機能の追加ではなく、コードの「見た目」を改善し、潜在的な混乱を避けることが目的です。
前提知識の解説
Go言語のツールチェインと5l
Go言語は、コンパイラ、アセンブラ、リンカなどを含む独自のツールチェインを持っています。初期のGo言語では、異なるアーキテクチャ(CPUの種類)ごとに専用のリンカコマンドが存在しました。
8l
: x86 (386) アーキテクチャ用6l
: x86-64 (amd64) アーキテクチャ用5l
: ARM アーキテクチャ用
このコミットで言及されている5l
は、ARMアーキテクチャ向けのリンカでした。リンカの役割は、コンパイルされたオブジェクトファイルやライブラリを結合し、実行可能なバイナリを生成することです。
現在のGo言語のツールチェイン:
Go 1.5以降、これらの特定のリンカコマンド(5l
, 6l
, 8l
)は非推奨となり、その機能は単一のgo tool link
コマンドに統合されました。現在では、GOOS
(オペレーティングシステム)とGOARCH
(アーキテクチャ)環境変数によって、go tool link
が適切なリンカの動作を決定します。
アセンブラとリンカの役割
- Goアセンブラ: Goのアセンブラは、一般的なアセンブラとは異なり、直接的な機械語命令ではなく、「半抽象的な命令セット」を扱います。この設計により、Goを新しいアーキテクチャに移植するプロセスが簡素化されます。
- Goリンカ (
go tool link
): リンカの主な機能は、コンパイルされたGoのアーカイブファイルやオブジェクトファイル、およびそれらの依存関係を取り込み、単一の実行可能バイナリに結合することです。このプロセスには、アセンブラからの半抽象的な命令を、特定の機械語命令に変換する「命令選択」も含まれます。
asm.c
ファイル
src/cmd/5l/asm.c
は、5l
リンカのアセンブリコード生成に関連する部分を実装していたC言語のソースファイルです。リンカが最終的なバイナリを生成する際に、特定のアセンブリ命令やオペコードをどのように表現するかを定義する役割を担っていました。
技術的詳細
このコミットは、src/cmd/5l/asm.c
ファイル内のoprrr
関数におけるホワイトスペースの変更です。oprrr
関数は、特定のオペレーションコード(ADIVF
, ASQRTD
, ASQRTF
, AABSD
, AABSF
, ACMPD
, ACMPF
など)に対応する機械語命令のビットパターンを生成する役割を担っています。
変更内容は非常に単純で、AABSD
とAABSF
のケースにおいて、return
文の後のオペランド定義部分のインデントが、タブ文字からスペースに変更されています。これは、コードの視覚的なアライメントを改善し、他の行との一貫性を保つためのものです。
具体的には、return o | (0xe<<24) | (0xb<<20) | (0<<16) | (0xb<<8) | (0xc<<4);
のようなビット演算の連なりが、より読みやすくなるように調整されています。機能的な影響は一切なく、コンパイル結果や実行時の動作に変化はありません。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/src/cmd/5l/asm.c
+++ b/src/cmd/5l/asm.c
@@ -1954,8 +1954,8 @@ oprrr(int a, int sc)
case ADIVF: return o | (0xe<<24) | (0x8<<20) | (0xa<<8) | (0<<4);
case ASQRTD: return o | (0xe<<24) | (0xb<<20) | (1<<16) | (0xb<<8) | (0xc<<4);
case ASQRTF: return o | (0xe<<24) | (0xb<<20) | (1<<16) | (0xa<<8) | (0xc<<4);
- case AABSD: return o | (0xe<<24) | (0xb<<20) | (0<<16) | (0xb<<8) | (0xc<<4);
- case AABSF: return o | (0xe<<24) | (0xb<<20) | (0<<16) | (0xa<<8) | (0xc<<4);
+ case AABSD: return o | (0xe<<24) | (0xb<<20) | (0<<16) | (0xb<<8) | (0xc<<4);
+ case AABSF: return o | (0xe<<24) | (0xb<<20) | (0<<16) | (0xa<<8) | (0xc<<4);
case ACMPD: return o | (0xe<<24) | (0xb<<20) | (4<<16) | (0xb<<8) | (0xc<<4);
case ACMPF: return o | (0xe<<24) | (0xb<<20) | (4<<16) | (0xa<<8) | (0xc<<4);
コアとなるコードの解説
変更された行は、oprrr
関数内のswitch
文のcase AABSD:
とcase AABSF:
の部分です。
-
変更前:
case AABSD: return o | (0xe<<24) | (0xb<<20) | (0<<16) | (0xb<<8) | (0xc<<4); case AABSF: return o | (0xe<<24) | (0xb<<20) | (0<<16) | (0xa<<8) | (0xc<<4);
return
キーワードとo
の間にスペースが一つだけありました。 -
変更後:
case AABSD: return o | (0xe<<24) | (0xb<<20) | (0<<16) | (0xb<<8) | (0xc<<4); case AABSF: return o | (0xe<<24) | (0xb<<20) | (0<<16) | (0xa<<8) | (0xc<<4);
return
キーワードとo
の間にタブ文字(\t
)が挿入されました。これにより、他のcase
文のreturn
文の開始位置とアライメントが揃えられ、コード全体の視覚的な一貫性が向上しています。
この変更は、C言語のコーディングスタイルにおけるインデントの慣習に従ったものであり、コードの機能には影響を与えません。純粋にコードの整形(フォーマット)に関する修正です。
関連リンク
- Go CL (Code Review) ページ: https://golang.org/cl/6446131
参考にした情報源リンク
- Go言語のリンカについて (Stack Overflow): https://stackoverflow.com/questions/tagged/go-linker
- Go言語のツールチェインについて (go.dev): https://go.dev/doc/
- Go言語のアセンブラについて (go.dev): https://go.dev/doc/asm
- Go言語のビルドプロセス (Stack Overflow): https://stackoverflow.com/questions/tagged/go-build
- Go言語のツール (
go tool link
) (go.dev): https://go.dev/cmd/go/#hdr-Build_and_test_Go_packages - Go言語のツール (
go tool link
) (go.dev): https://go.dev/doc/go1.5#go_tool_link