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[インデックス 13643] ファイルの概要

このコミットは、Go言語プロジェクトのテスト実行スクリプトである src/run.bat に関連する変更です。src/run.bat は、Goプロジェクトの様々なテストを実行するためのバッチファイルであり、特にWindows環境でのビルドとテストの自動化において重要な役割を担っています。

コミット

commit 2a642c34e55bcafd57cca9c84c63cba3902c6a79
Author: Alex Brainman <alex.brainman@gmail.com>
Date:   Fri Aug 17 14:15:01 2012 +1000

    misc/cgo/test: disable test on windows (attempt to fix windows build)
    
    see issus 3358 for similar problem
    
    R=golang-dev
    CC=golang-dev, minux.ma
    https://golang.org/cl/6464072

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/2a642c34e55bcafd57cca9c84c63cba3902c6a79

元コミット内容

Windows上でのビルドを修正する試みとして、misc/cgo/test のテストを無効化しました。同様の問題については、issue 3358を参照してください。

変更の背景

このコミットは、Go言語のWindowsビルドプロセスにおける特定のテストの失敗に対処するために行われました。具体的には、misc/cgo/test に関連するテストが、Windows環境で一時ディレクトリを作成する際に「ファイル名または拡張子が長すぎる」というエラー(The filename or extension is too long.)で失敗していました。これは、Windowsのファイルシステムが持つパスの長さ制限(通常は MAX_PATH として知られる260文字)に起因する問題です。

GoプロジェクトのCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)パイプラインにおいて、特定のプラットフォームでのビルドやテストの失敗は、全体の開発フローを阻害します。この問題は、特にCgo(GoとC言語の相互運用)に関連するテストで顕著であり、Cgoがコンパイル時に生成する中間ファイルや一時ディレクトリのパスが長くなる傾向があったためと考えられます。

このコミットは、根本的な解決策ではなく、一時的な回避策として、問題を引き起こしているテストをWindows環境で無効化することで、ビルドの安定性を確保することを目的としています。コミットメッセージに「see issus 3358 for similar problem」とあるように、この問題は以前から認識されており、issue 3358で追跡されていました。

前提知識の解説

Go言語のテスト (go test)

Go言語には、標準でテストフレームワークが組み込まれており、go test コマンドを使用してテストを実行します。go test は、カレントディレクトリまたは指定されたパッケージ内の _test.go で終わるファイルを見つけ、その中のテスト関数(Test で始まる関数)を実行します。これにより、開発者はコードの品質と正確性を保証するための単体テスト、結合テストなどを容易に記述・実行できます。

Cgo (GoとC言語の相互運用)

Cgoは、GoプログラムからC言語のコードを呼び出したり、C言語のコードからGoの関数を呼び出したりするためのメカニズムです。Goのコード内で import "C" を記述し、C言語の関数やデータ構造を直接利用できます。Cgoを使用すると、既存のCライブラリをGoプロジェクトに統合したり、パフォーマンスが重要な部分をCで記述したりすることが可能になります。Cgoはコンパイル時にCコンパイラ(通常はGCCなど)を呼び出すため、ビルドプロセスが複雑になり、一時ファイルが生成されることがあります。

Windowsにおけるパスの長さ制限 (MAX_PATH)

Windowsオペレーティングシステムには、ファイルパスの長さに歴史的な制限があります。これは通常 MAX_PATH と呼ばれ、260文字(ドライブレター、コロン、バックスラッシュ、NULL終端文字を含む)に設定されています。この制限は、特に深くネストされたディレクトリ構造や、長いファイル名を持つファイルを作成しようとした場合に問題となります。多くのアプリケーションは、この制限を意識して設計されていますが、一時ファイルや自動生成されるパスが予期せず長くなることがあります。近年では、Windows 10以降でこの制限を解除する設定も導入されていますが、古いシステムや特定のアプリケーションでは依然として問題となることがあります。

バッチファイル (.bat) の役割

バッチファイル(.bat または .cmd 拡張子)は、Windowsのコマンドプロンプトで実行されるスクリプトファイルです。一連のコマンドを記述しておくことで、手動で一つずつ入力する手間を省き、自動化されたタスクを実行できます。Goプロジェクトでは、ビルド、テスト、デプロイなどのプロセスを自動化するために、run.bat のようなバッチファイルが使用されることがあります。

技術的詳細

このコミットは、src/run.bat というGoプロジェクトのテスト実行スクリプトに対する変更です。このスクリプトは、Goの様々なテストパッケージを順次実行するように記述されています。

問題が発生したのは、go test ..\misc\cgo\test というコマンドの実行時でした。このコマンドは、misc/cgo/test パッケージ内のテストを実行しようとします。Cgoテストは、GoとCのコードをコンパイルするために、内部的にCコンパイラを呼び出し、その過程で一時ファイルやディレクトリを生成します。

Windows環境では、go test が一時ディレクトリを作成する際に、そのパスが C:\Users\ADMINI~1\AppData\Local\Temp\2.....\go\misc\cgo\ のように非常に長くなり、Windowsの MAX_PATH 制限(260文字)を超過してしまいました。これにより、mkdir コマンドが「ファイル名または拡張子が長すぎる」というエラーを返し、テストの実行が失敗していました。

コミットの目的は、このWindowsビルドの失敗を回避することです。根本的な解決策(例えば、Goツールチェーンが生成する一時パスを短縮する、またはWindowsのパス制限を回避するメカニズムを導入する)ではなく、一時的な措置として、問題を引き起こしているテストの実行を無効化しました。

具体的には、src/run.bat 内の以下の行をコメントアウトすることで、このテストの実行をスキップするように変更されました。

:: TODO(brainman): disabled, because it fails with: mkdir C:\Users\ADMINI~1\AppData\Local\Temp\2.....\go\misc\cgo\: The filename or extension is too long.
::echo # ..\misc\cgo\test
::go test ..\misc\cgo\test
::if errorlevel 1 goto fail
::echo.

行の先頭に :: を追加することで、バッチファイルがその行をコマンドとして解釈せず、コメントとして無視するようにします。これにより、Windows環境でのビルドが中断されることなく完了するようになります。TODO(brainman) というコメントは、この変更が一時的なものであり、将来的にこの問題が解決された際にはテストを再度有効化する必要があることを示唆しています。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/run.bat
+++ b/src/run.bat
@@ -72,10 +72,11 @@ echo.
 
 :: TODO ..\misc\cgo\stdio
 
-echo # ..\misc\cgo\test
-go test ..\misc\cgo\\test
-if errorlevel 1 goto fail
-echo.
+:: TODO(brainman): disabled, because it fails with: mkdir C:\Users\ADMINI~1\AppData\Local\Temp\2.....\go\misc\cgo\: The filename or extension is too long.
+::echo # ..\misc\cgo\test
+::go test ..\misc\cgo\\test
+::if errorlevel 1 goto fail
+::echo.
 :nocgo
 
 :: TODO: The other tests in run.bash.

コアとなるコードの解説

変更は src/run.bat ファイル内で行われました。

元のコードでは、以下の行が misc/cgo/test パッケージのテストを実行していました。

echo # ..\misc\cgo\test
go test ..\misc\cgo\test
if errorlevel 1 goto fail
echo.

このコミットでは、これらの行の先頭に :: を追加してコメントアウトしました。

:: TODO(brainman): disabled, because it fails with: mkdir C:\Users\ADMINI~1\AppData\Local\Temp\2.....\go\misc\cgo\: The filename or extension is too long.
::echo # ..\misc\cgo\test
::go test ..\misc\cgo\test
::if errorlevel 1 goto fail
::echo.

これにより、src/run.bat がWindows環境で実行される際、misc/cgo/test のテストはスキップされ、パスの長さ制限によるエラーが発生しなくなります。TODO(brainman) コメントは、この無効化が一時的な措置であり、根本的な問題が解決された際にはこのテストを再有効化する必要があることを開発者に伝えています。この変更は、Windowsビルドの安定性を一時的に確保するための実用的な回避策です。

関連リンク

参考にした情報源リンク