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[インデックス 13749] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のランタイム(runtime)におけるOpenBSD専用のシンボル名に含まれるタイポ(typo、誤字)を修正するものです。具体的には、src/pkg/runtime/thread_openbsd.cファイル内のruntime.exitという記述がruntime·exitに修正されました。これは、Goランタイムが内部的に使用するシンボル命名規則に合わせた修正であり、OpenBSD環境でのGoプログラムの安定性や正確な動作を保証するために重要です。

コミット

commit ee911c426574d5421d7b227eda07b7b62f9dbfdf
Author: Alan Donovan <adonovan@google.com>
Date:   Tue Sep 4 16:35:05 2012 -0400

    runtime: fix typo in openbsd-only symbol name.
    
    R=golang-dev, minux.ma, rsc
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/6490076

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/ee911c426574d5421d7b227eda07b7b62f9dbfdf

元コミット内容

diff --git a/src/pkg/runtime/thread_openbsd.c b/src/pkg/runtime/thread_openbsd.c
index c55f25278f..f479e2c3e9 100644
--- a/src/pkg/runtime/thread_openbsd.c
+++ b/src/pkg/runtime/thread_openbsd.c
@@ -240,5 +240,5 @@ runtime·badsignal(int32 sig)
 		return;  // Ignore SIGPROFs intended for a non-Go thread.
 	}\n \truntime·write(2, badsignal, sizeof badsignal - 1);\n-\truntime.exit(1)\n+\truntime·exit(1);\
 }\n

変更の背景

この変更の背景には、Go言語のランタイムが特定のオペレーティングシステム(この場合はOpenBSD)と連携する際の、内部的なシンボル命名規則の厳密な遵守があります。Goのランタイムは、GoプログラムがOSと対話するための低レベルな機能を提供します。これには、スレッド管理、メモリ管理、システムコールなどが含まれます。

Goのコンパイラとリンカは、Goのソースコードで定義された関数や変数名を、アセンブリレベルで参照可能なシンボル名に変換します。Goの内部では、パッケージ名と関数名を区切るために、通常のドット(.)ではなく、中点(·、Unicode U+00B7 MIDDLE DOT)を使用する慣習があります。例えば、runtimeパッケージのexit関数は、内部的にはruntime·exitというシンボル名で表現されます。

src/pkg/runtime/thread_openbsd.cファイルは、OpenBSDオペレーティングシステムに特化したGoランタイムのスレッド関連の処理を実装しています。このファイル内でruntime.exitと誤って記述されていた箇所は、Goの内部的なシンボル命名規則に違反していました。このようなタイポは、コンパイルエラーを引き起こすか、あるいはより深刻な場合、実行時にリンクエラーや未定義の動作を引き起こす可能性があります。

このコミットは、このような潜在的な問題を修正し、OpenBSD環境におけるGoランタイムの正確性と堅牢性を確保することを目的としています。

前提知識の解説

1. Go言語のランタイム (runtime)

Go言語は、ガベージコレクション、スケジューリング、システムコールインターフェースなど、多くの低レベルな機能を言語自体に組み込んでいます。これらの機能は「ランタイム(runtime)」と呼ばれるGo言語で書かれたライブラリによって提供されます。ランタイムは、Goプログラムが実行される際にOSと連携し、Goの並行処理モデル(goroutineやchannel)を効率的に管理し、メモリを自動的に解放する役割を担います。ランタイムのコードは、Go言語だけでなく、C言語やアセンブリ言語でも書かれており、OS固有の低レベルな処理を扱います。

2. OpenBSD

OpenBSDは、セキュリティを最優先に設計されたUNIX系オペレーティングシステムです。厳格なコードレビュー、プロアクティブなセキュリティ対策、そしてクリーンなコードベースで知られています。Go言語のようなクロスプラットフォーム言語がOpenBSD上で動作するためには、OS固有のシステムコールやスレッドモデルに対応したランタイムの実装が必要です。thread_openbsd.cのようなファイルは、まさにそのためのOpenBSD特有のランタイムコードを含んでいます。

3. シンボル名とタイポ

プログラミングにおいて、「シンボル」とは、関数、変数、クラスなどのプログラム要素を一意に識別するための名前です。コンパイラやリンカは、これらのシンボル名を使って、プログラムの異なる部分や異なるライブラリ間で参照を解決します。

Go言語の内部では、特にランタイムのような低レベルな部分で、Goのパッケージ名と関数名を区切るために、通常のドット(.)ではなく、中点(·、Unicode U+00B7 MIDDLE DOT)を使用する独自の命名規則があります。これは、Goのコンパイラやリンカが内部的にシンボルを識別するための慣習であり、C言語のコードからGoのランタイム関数を呼び出す際などに重要になります。

タイポ(誤字)は、プログラムのソースコードにおける単純なスペルミスです。しかし、シンボル名のような重要な箇所でのタイポは、コンパイラがそのシンボルを見つけられず、コンパイルエラーやリンクエラーを引き起こす原因となります。特に、低レベルなランタイムコードでは、このような小さなミスがプログラム全体の動作に大きな影響を与える可能性があります。

4. runtime.exitruntime·exit の違い

Goのソースコードでは、runtime.exitのようにドットでパッケージと関数を区切って記述しますが、Goのコンパイラが生成するアセンブリコードやリンカが扱うシンボル名では、このドットが中点(·)に変換されます。これはGoの内部的なABI(Application Binary Interface)の一部であり、Goのコンポーネントが互いに、あるいはC言語で書かれた部分と正しくリンクするために不可欠です。

したがって、C言語で書かれたthread_openbsd.cのようなファイルからGoのランタイム関数を呼び出す際には、Goの内部的なシンボル名であるruntime·exitを使用する必要があります。runtime.exitと記述してしまうと、リンカが正しいシンボルを見つけられず、未定義のシンボルエラーが発生する可能性があります。

技術的詳細

このコミットは、src/pkg/runtime/thread_openbsd.cファイル内のruntime·badsignal関数内で発生していたタイポを修正しています。

元のコードでは、runtime.exit(1)と記述されていました。ここでexitは、Goランタイムが提供する、プログラムを終了させるための内部関数です。Goのランタイムは、C言語で書かれた部分からGoの関数を呼び出す際に、Goの内部的なシンボル命名規則に従う必要があります。この規則では、Goのパッケージ名と関数名を区切るために、通常のピリオド(.)ではなく、中点(·、Unicode U+00B7 MIDDLE DOT)を使用します。

したがって、runtimeパッケージのexit関数を参照する際には、runtime·exitというシンボル名を使用するのが正しい形式です。元のコードのruntime.exitという記述は、この規則に反しており、コンパイル時またはリンク時に問題を引き起こす可能性がありました。

修正後のコードでは、runtime·exit(1);と変更されています。これにより、Goの内部的なシンボル命名規則に合致し、リンカがruntimeパッケージのexit関数を正しく解決できるようになります。引数1は、プログラムが異常終了したことを示すステータスコードです。

この修正は、OpenBSD環境におけるGoプログラムの安定性と正確な動作を保証するために重要です。特に、badsignalのようなシグナルハンドリングに関連する低レベルなコードでは、正確なシンボル参照が不可欠であり、タイポ一つでプログラムのクラッシュや予期せぬ動作につながる可能性があります。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/pkg/runtime/thread_openbsd.c
+++ b/src/pkg/runtime/thread_openbsd.c
@@ -240,5 +240,5 @@ runtime·badsignal(int32 sig)
 		return;  // Ignore SIGPROFs intended for a non-Go thread.
 	}\n \truntime·write(2, badsignal, sizeof badsignal - 1);\n-\truntime.exit(1)\n+\truntime·exit(1);\
 }\n

コアとなるコードの解説

変更はsrc/pkg/runtime/thread_openbsd.cファイルの以下の行にあります。

-\truntime.exit(1)
+\truntime·exit(1);\

この行は、runtime·badsignalという関数の一部です。badsignal関数は、Goランタイムが予期しないシグナルを受け取った際に呼び出される可能性のある、エラーハンドリングに関連する関数と考えられます。

元のコードのruntime.exit(1)は、Goのランタイム内部関数exitを呼び出そうとしていますが、シンボル名が誤っていました。Goの内部的なシンボル命名規則では、パッケージ名と関数名の区切りに中点(·)を使用します。したがって、runtimeパッケージのexit関数は、C言語のコードからはruntime·exitとして参照される必要があります。

修正後のruntime·exit(1);は、このタイポを修正し、正しいシンボル名を使用しています。これにより、リンカはruntime·exitというシンボルを正しく解決し、Goランタイムのexit関数が期待通りに呼び出されるようになります。引数1は、プログラムがエラー状態(非ゼロの終了コード)で終了することを示しています。セミコロン(;)の追加も、C言語の文の終端を示すための正しい構文です。

この修正は非常に小さいですが、Goランタイムの低レベルな部分におけるシンボル解決の正確性を保証するために不可欠です。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語のランタイムに関する一般的な情報
  • OpenBSDの特性に関する情報
  • Go言語の内部的なシンボル命名規則(特に中点 · の使用)に関する情報
  • C言語とGo言語の連携(cgoなど)におけるシンボル解決のメカニズムに関する情報
  • Goのソースコードリポジトリ内の関連ファイル(src/pkg/runtime/ディレクトリ内の他のファイル)