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[インデックス 13810] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリである net/rpc/jsonrpc パッケージ内のテストファイル all_test.go におけるエラーメッセージの修正に関するものです。具体的には、テスト失敗時に出力されるエラーメッセージの期待値と実際の値の表示順序が逆になっていた点を修正しています。

コミット

commit 66331532cd512ae2d506c7a120796c203c78099c
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date:   Wed Sep 12 17:37:39 2012 -0400

    net/rpc/jsonrpc: fix test error message
    
    Fixes #4041.
    
    R=golang-dev, bradfitz
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/6495121

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/66331532cd512ae2d506c7a120796c203c78099c

元コミット内容

net/rpc/jsonrpc: テストのエラーメッセージを修正

Issue #4041 を修正。

変更の背景

この変更の背景には、Go言語のテストフレームワークにおける慣習と、テスト結果の可読性の向上が挙げられます。Goの標準的なテスト関数では、testing.T 型のインスタンスが提供され、そのメソッドの一つである Errorf を用いてテスト失敗時のエラーメッセージを出力します。

一般的なプログラミングにおけるテストでは、「期待される結果 (expected)」と「実際の結果 (got)」を比較し、それらが一致しない場合にエラーを報告します。エラーメッセージを生成する際、多くの開発者は「got X expected Y」という形式を好みます。これは、まず実際に得られた値を示し、次に期待していた値を示すことで、デバッグ時に何が間違っていたのかを直感的に理解しやすくするためです。

このコミット以前の net/rpc/jsonrpc/all_test.go 内のテストでは、t.Errorf のメッセージが「expected X got Y」という順序になっていました。これは機能的な問題を引き起こすものではありませんが、テスト結果を解析する開発者にとっては、慣習的な順序と異なるため、一瞬の混乱や読み取りの遅延を引き起こす可能性がありました。

このコミットは、このメッセージの順序を「got X expected Y」に統一することで、テスト出力の一貫性と可読性を向上させることを目的としています。コミットメッセージにある Fixes #4041 は、この問題がGoのIssueトラッカーで報告され、その修正としてこのコミットが作成されたことを示しています。

前提知識の解説

Go言語の net/rpc/jsonrpc パッケージ

net/rpc/jsonrpc パッケージは、Go言語の標準ライブラリの一部であり、JSON-RPC 2.0プロトコルを介したリモートプロシージャコール (RPC) を実装するための機能を提供します。RPCは、異なるアドレス空間にあるプログラムが、あたかもローカルなプロシージャ(関数やサブルーチン)であるかのように、互いに通信し、サービスを要求できるようにする技術です。

  • RPC (Remote Procedure Call): ネットワーク上の別のコンピュータにあるプログラムのサブルーチンや関数を、ローカルなプログラムであるかのように呼び出すためのプロトコル。
  • JSON-RPC: RPCプロトコルの一種で、メッセージのエンコーディングにJSONを使用します。HTTPなどのトランスポート層プロトコル上で動作することが一般的です。
  • net/rpc: Go言語の標準RPCパッケージ。エンコーディングに依存しないRPCクライアントとサーバーの実装を提供します。
  • net/rpc/jsonrpc: net/rpc パッケージの拡張で、JSONエンコーディングを使用してRPC通信を行うためのクライアントとサーバーのコーデックを提供します。これにより、GoプログラムがJSON-RPCを話す他のシステムと容易に連携できるようになります。

Go言語の testing パッケージと t.Errorf

Go言語には、ユニットテストを記述するための組み込みの testing パッケージがあります。

  • testing パッケージ: Goのテストフレームワークの基盤を提供します。テストファイルは通常 _test.go というサフィックスを持ち、TestXxx という名前の関数がテスト関数として認識されます。
  • *testing.T: 各テスト関数に渡される構造体で、テストの状態管理、エラー報告、ログ出力などのためのメソッドを提供します。
  • t.Errorf(format string, args ...interface{}): testing.T のメソッドの一つで、テストが失敗したことを報告するために使用されます。fmt.Printf と同様のフォーマット文字列と引数を受け取り、エラーメッセージを標準エラー出力に書き込みます。このメソッドが呼び出されると、テストは失敗としてマークされますが、テスト関数の実行は継続されます。

このコミットは、まさにこの t.Errorf メソッドに渡されるフォーマット文字列内の引数の順序を変更することで、テスト失敗時のメッセージの可読性を向上させています。

技術的詳細

このコミットの技術的詳細は、Go言語のテストにおけるエラーメッセージの慣習と、その一貫性の重要性に集約されます。

Goのテストでは、t.Errorf を使用してテストの失敗を報告します。この関数は fmt.Printf と同様にフォーマット文字列と可変引数を受け取ります。テストが失敗する典型的なシナリオは、計算結果や期待される状態が、実際に得られた結果や状態と異なる場合です。

例えば、Add 関数が A + B を計算するとします。テストでは Add(2, 3)5 を返すことを期待します。もし Add(2, 3) が誤って 6 を返した場合、テストコードは以下のようにエラーを報告するでしょう。

if result != expected {
    t.Errorf("Add: got %d expected %d", result, expected)
}

この「got X expected Y」という形式は、Goコミュニティで広く採用されている慣習です。この順序にはいくつかの利点があります。

  1. 直感的なデバッグ: 開発者は通常、まず「何が実際に起こったのか」を知りたいと考えます。got の値が最初に提示されることで、問題の特定が迅速に行えます。
  2. 一貫性: Goの標準ライブラリや多くのサードパーティライブラリのテストコードでこの形式が採用されているため、開発者は異なるプロジェクトやパッケージのテスト結果を解析する際に、一貫したパターンに遭遇し、認知負荷が軽減されます。
  3. ツールとの連携: テスト結果を解析する自動化ツールやIDEの機能も、この慣習的な順序を前提としている場合があります。順序が異なると、これらのツールが期待通りに動作しないか、誤解を招く表示をする可能性があります。

このコミットは、net/rpc/jsonrpc/all_test.go 内の複数の t.Errorf 呼び出しにおいて、この慣習に沿っていない箇所を特定し、修正しています。具体的には、t.Errorf("... expected %d got %d", reply.C, args.A+args.B) のような記述を t.Errorf("... got %d expected %d", reply.C, args.A+args.B) に変更しています。

この変更は、コードのロジックや機能に影響を与えるものではなく、純粋にテスト出力の品質と開発者体験を向上させるためのものです。しかし、大規模なプロジェクトや多くの開発者が関わるオープンソースプロジェクトにおいては、このような小さな一貫性の改善が、長期的なメンテナンス性とデバッグ効率に大きく貢献します。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/pkg/net/rpc/jsonrpc/all_test.go
+++ b/src/pkg/net/rpc/jsonrpc/all_test.go
@@ -131,7 +131,7 @@ func TestClient(t *testing.T) {
 		t.Errorf("Add: expected no error but got string %q", err.Error())
 	}
 	if reply.C != args.A+args.B {
-		t.Errorf("Add: expected %d got %d", reply.C, args.A+args.B)
+		t.Errorf("Add: got %d expected %d", reply.C, args.A+args.B)
 	}
 
 	args = &Args{7, 8}
@@ -141,7 +141,7 @@ func TestClient(t *testing.T) {
 		t.Errorf("Mul: expected no error but got string %q", err.Error())
 	}
 	if reply.C != args.A*args.B {
-		t.Errorf("Mul: expected %d got %d", reply.C, args.A*args.B)
+		t.Errorf("Mul: got %d expected %d", reply.C, args.A*args.B)
 	}
 
 	// Out of order.
@@ -156,7 +156,7 @@ func TestClient(t *testing.T) {
 		t.Errorf("Add: expected no error but got string %q", addCall.Error.Error())
 	}
 	if addReply.C != args.A+args.B {
-		t.Errorf("Add: expected %d got %d", addReply.C, args.A+args.B)
+		t.Errorf("Add: got %d expected %d", addReply.C, args.A+args.B)
 	}
 
 	mulCall = <-mulCall.Done
@@ -164,7 +164,7 @@ func TestClient(t *testing.T) {
 		t.Errorf("Mul: expected no error but got string %q", mulCall.Error.Error())
 	}
 	if mulReply.C != args.A*args.B {
-		t.Errorf("Mul: expected %d got %d", mulReply.C, args.A*args.B)
+		t.Errorf("Mul: got %d expected %d", mulReply.C, args.A*args.B)
 	}
 
 	// Error test

コアとなるコードの解説

このコミットでは、src/pkg/net/rpc/jsonrpc/all_test.go ファイル内の TestClient 関数において、合計4箇所で t.Errorf の呼び出しが修正されています。

各修正は、以下のパターンに従っています。

変更前:

t.Errorf("Add: expected %d got %d", reply.C, args.A+args.B)

この行では、reply.C (実際に得られた値) と args.A+args.B (期待される値) が、フォーマット文字列 expected %d got %d に従って出力されていました。これにより、メッセージは「expected [実際の値] got [期待される値]」という、慣習とは逆の順序で表示されていました。

変更後:

t.Errorf("Add: got %d expected %d", reply.C, args.A+args.B)

変更後では、フォーマット文字列が got %d expected %d に修正されています。しかし、引数の順序は reply.C, args.A+args.B のままです。これは、reply.C が「実際に得られた値 (got)」であり、args.A+args.B が「期待される値 (expected)」であるため、フォーマット文字列の変更に合わせて引数の順序を入れ替える必要があったことを示唆しています。

詳細な分析:

  • reply.C はRPC呼び出しの結果として返された値であり、これは「実際に得られた値 (got)」です。
  • args.A+args.B または args.A*args.B は、テストが期待する正しい計算結果であり、これは「期待される値 (expected)」です。

したがって、変更後の t.Errorf("Add: got %d expected %d", reply.C, args.A+args.B) は、%d のプレースホルダーにそれぞれ reply.Cargs.A+args.B が代入され、結果として「got [reply.Cの値] expected [args.A+args.Bの値]」という、Goのテストにおける標準的なエラーメッセージ形式になります。

この修正は、テストが失敗した際に、開発者がエラーメッセージから「何が実際に得られ、何が期待されていたのか」をより迅速かつ正確に把握できるようにすることを目的としています。これは、デバッグの効率を向上させ、コードベース全体のテスト出力の一貫性を保つ上で重要な改善です。

関連リンク

  • Go CL (Change List) 6495121: https://golang.org/cl/6495121
  • Go Issue #4041: このコミットが修正したとされるIssueの直接的なリンクは、GoのIssueトラッカーの古い形式のため、現在のGitHubリポジトリでは直接見つけるのが難しい場合があります。しかし、コミットメッセージに明記されているため、この修正が特定の報告された問題に対応していることは確かです。

参考にした情報源リンク