[インデックス 13819] ファイルの概要
このコミットは、Go言語のビルドシステムにおけるWindows環境用のバッチスクリプト src/all.bat
に関連する変更です。all.bat
は、Goのソースコードをビルドし、テストを実行するための主要なスクリプトの一つです。
コミット
build: print go banner before restoring windows PATH
R=golang-dev, r
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/6492117
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/9a82324fb753cfe2e6902ac6835973237829c941
元コミット内容
このコミットは、Windows環境でのGoのビルドプロセスにおいて、Goのバナー(バージョン情報など)を表示する処理のタイミングを調整するものです。具体的には、PATH
環境変数を元の状態に戻す前に、Goのバナーを表示するように変更されています。
変更の背景
Goのビルドプロセスでは、一時的に PATH
環境変数を変更して、ビルドに必要なツール(Goコンパイラやその他のユーティリティ)が正しく見つかるように設定します。ビルドが完了した後、通常は PATH
環境変数を元のシステムの状態に戻します。
このコミットが行われる前は、go tool dist banner
コマンド(Goのバナーを表示するコマンド)が PATH
環境変数を元の状態に戻した後に実行されていました。この順序だと、go tool dist banner
が正しく動作するために必要なGoツールチェーンのパスが PATH
から削除されてしまい、バナーの表示が失敗したり、意図しない動作を引き起こす可能性がありました。
この問題を解決するため、go tool dist banner
の実行を PATH
環境変数を元の状態に戻す前に行うように変更されました。これにより、go tool dist banner
はビルドプロセス中に設定された適切な PATH
環境下で実行され、確実にバナーが表示されるようになります。
前提知識の解説
PATH
環境変数: オペレーティングシステムが実行可能ファイル(コマンド)を探す際に参照するディレクトリのリストです。コマンドプロンプトでgo
やgcc
などのコマンドを実行すると、システムはこのPATH
に含まれるディレクトリを順番に検索し、該当する実行ファイルを見つけます。set PATH=%OLDPATH%
: Windowsのバッチスクリプトでよく使われる表現です。OLDPATH
は、スクリプトの実行開始時に保存しておいた元のPATH
環境変数の値を指します。このコマンドは、PATH
環境変数をスクリプト実行前の状態に戻すために使用されます。go tool dist banner
: Goのビルドシステムの一部であるgo tool dist
コマンドのサブコマンドです。Goのバージョン情報やビルドに関する情報を表示するために使用されます。このコマンド自体が、GoのツールチェーンがPATH
上に存在することを前提としている可能性があります。src/all.bat
: Go言語のソースリポジトリに含まれるWindows用のバッチスクリプトで、Goのビルドとテストの実行を自動化するためのものです。
技術的詳細
この変更は、Windowsのバッチスクリプトにおけるコマンドの実行順序に関するものです。
元のコードでは、以下の順序でコマンドが実行されていました。
set PATH=%OLDPATH%
:PATH
環境変数を元のシステムの状態に戻す。go tool dist banner
:Goのバナーを表示する。
この順序の問題点は、go tool dist banner
が実行される時点で、Goのビルドツールが一時的に追加していたパスが PATH
から削除されてしまっている可能性があることです。もし go tool dist banner
が内部的に go
コマンドや他のGoツールに依存している場合、それらが見つからなくなり、コマンドが失敗するか、期待通りに動作しない可能性がありました。
新しいコードでは、この順序が逆転しています。
go tool dist banner
:Goのバナーを表示する。set PATH=%OLDPATH%
:PATH
環境変数を元のシステムの状態に戻す。
この変更により、go tool dist banner
は、Goのビルドプロセス中に設定された、Goツールチェーンへのパスが含まれる PATH
環境下で実行されることが保証されます。これにより、バナーの表示が確実に行われるようになります。これは、ビルドスクリプトの堅牢性を高め、Windows環境でのビルドの信頼性を向上させるための修正です。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/src/all.bat
+++ b/src/all.bat
@@ -16,8 +16,8 @@ call make.bat --no-banner --no-local
if %GOBUILDFAIL%==1 goto end
call run.bat --no-rebuild --no-local
if %GOBUILDFAIL%==1 goto end
-set PATH=%OLDPATH%
go tool dist banner
+set PATH=%OLDPATH%
:end
if x%GOBUILDEXIT%==x1 exit %GOBUILDFAIL%
コアとなるコードの解説
変更は src/all.bat
ファイルの以下の部分にあります。
- set PATH=%OLDPATH%
:元のコードでは、この行でPATH
環境変数が元の状態に戻されていました。go tool dist banner
:この行はGoのバナーを表示するコマンドです。+ set PATH=%OLDPATH%
:変更後、set PATH=%OLDPATH%
の行がgo tool dist banner
の後に移動されました。
この変更により、go tool dist banner
コマンドが実行される前に PATH
がリセットされることがなくなり、Goのビルドツールが正しく利用できる環境でバナーが表示されるようになりました。
関連リンク
- Go Gerrit Change-Id: https://golang.org/cl/6492117
参考にした情報源リンク
- コミット情報:
commit_data/13819.txt
- Go言語のソースコードリポジトリ (GitHub): https://github.com/golang/go
- Windowsバッチスクリプトの環境変数に関する一般的な知識
- Go言語のビルドシステムに関する一般的な知識