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[インデックス 13827] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のコマンドラインツールである cmd/go のビルドに関する問題を修正するものです。具体的には、src/cmd/go/pkg.go ファイル内で使用されていた hasPrefix 関数を、Go標準ライブラリの strings.HasPrefix 関数に置き換えることで、ビルドエラーまたは予期せぬ動作を解消しています。

コミット

  • コミットハッシュ: ae42beafd330d0f6a247a61933fb562b10f42d13
  • 作者: Russ Cox rsc@golang.org
  • コミット日時: 2012年9月14日 金曜日 12:21:57 -0400
  • コミットメッセージ:
    cmd/go: fix build
    
    TBR=r
    
    TBR=r
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/6496124
    

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/ae42beafd330d0f6a247a61933fb562b10f42d13

元コミット内容

cmd/go: fix build

TBR=r

TBR=r
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/6496124

変更の背景

このコミットは「ビルドの修正 (fix build)」と明記されており、cmd/go ツール自体のビルドプロセスにおいて何らかの問題が発生していたことを示唆しています。src/cmd/go/pkg.go は、Goのパッケージのロードと処理に関連するロジックを扱うファイルです。このファイル内で使用されていた hasPrefix という関数が、おそらくビルドエラーの原因となっていたか、あるいは意図しない動作を引き起こしていたと考えられます。

Go言語では、文字列が特定のプレフィックスで始まるかどうかをチェックする標準的な方法として strings.HasPrefix 関数が提供されています。このコミットは、非標準的または問題のある hasPrefix の使用を、信頼性の高い標準ライブラリ関数に置き換えることで、ビルドの問題を解決することを目的としています。

前提知識の解説

Go言語の strings パッケージと strings.HasPrefix

Go言語の標準ライブラリには、文字列操作のための豊富な機能を提供する strings パッケージが含まれています。strings.HasPrefix 関数は、このパッケージの一部であり、以下のようなシグネチャを持ちます。

func HasPrefix(s, prefix string) bool

この関数は、文字列 sprefix で始まる場合に true を返し、そうでない場合に false を返します。これは、文字列の先頭が特定のパターンと一致するかどうかを効率的かつ正確に判断するための、Go言語における標準的かつ推奨される方法です。

cmd/go ツールとパッケージのロード

cmd/go は、Go言語のビルド、テスト、依存関係管理などを行うための主要なコマンドラインツールです。Goのソースコードをコンパイルし、実行可能なバイナリを生成する過程で、cmd/go はプロジェクト内の様々なパッケージをロードし、その依存関係を解決します。

src/cmd/go/pkg.go ファイルは、このパッケージロードのロジックの一部を担っています。具体的には、Package 構造体の load メソッド内で、パッケージのインポートパスに基づいてその特性を判断する処理が行われています。p.Goroot は、そのパッケージがGoの標準ライブラリの一部であるかどうかを示し、p.ImportPath はパッケージのインポートパス(例: "fmt", "net/http", "exp/rand" など)を表します。

filepath.HasPrefix とその非推奨化(関連情報)

Go言語には、かつて filepath パッケージに filepath.HasPrefix という関数が存在しました。しかし、この関数はパスの区切り文字の扱いや大文字・小文字の区別に関する問題から、2012年頃には非推奨のような状態になっていました。filepath.HasPrefix はパスのセグメントを考慮してプレフィックスをチェックしようとしましたが、その挙動が直感的でなかったり、プラットフォーム間で一貫性がなかったりする問題がありました。

今回のコミットで修正された hasPrefix が、もし filepath.HasPrefix の誤用や、それに類するカスタム実装であった場合、その問題点を strings.HasPrefix で置き換えることで解決したと考えられます。strings.HasPrefix は純粋に文字列の内容に基づいてプレフィックスをチェックするため、パスのセマンティクスに起因する問題を回避できます。

技術的詳細

このコミットの技術的な核心は、src/cmd/go/pkg.go ファイル内の Package 構造体の load メソッドにおける条件分岐の修正です。

元のコードでは、以下のような条件式がありました。

if p.Goroot && (isGoTool[p.ImportPath] || hasPrefix(p.ImportPath, "exp/")) {

ここで hasPrefix(p.ImportPath, "exp/") の部分が問題でした。hasPrefix がどのような関数として定義されていたかはコミット差分からは直接読み取れませんが、Goの標準的なコーディング規約や、strings.HasPrefix の存在を考えると、これは以下のいずれかの可能性が高いです。

  1. カスタム実装の hasPrefix 関数: pkg.go または関連ファイル内で独自に定義された hasPrefix 関数が、何らかのバグを含んでいたか、効率が悪かった。
  2. filepath.HasPrefix の誤用: filepath.HasPrefix を意図していたが、その問題点に気づかず使用していた。
  3. 単純なタイポまたは誤解: strings.HasPrefix を意図していたが、strings. を付け忘れていた、あるいはその存在を認識していなかった。

いずれの場合も、この hasPrefix の呼び出しが cmd/go のビルドプロセスに悪影響を与えていたため、「ビルドの修正」が必要となりました。

修正後のコードでは、この部分が以下のように変更されています。

if p.Goroot && (isGoTool[p.ImportPath] || strings.HasPrefix(p.ImportPath, "exp/")) {

strings.HasPrefix を明示的に使用することで、Go標準ライブラリが提供する、信頼性が高く最適化された文字列プレフィックスチェック機能を利用するようになります。これにより、p.ImportPath が "exp/" で始まるかどうかを正確かつ安定して判断できるようになり、ビルドの問題が解消されたと考えられます。

この条件分岐は、Goの標準ライブラリ(p.Goroottrue の場合)に属するパッケージのうち、特にGoツール自体 (isGoTool[p.ImportPath]) であるか、または実験的なパッケージ (exp/ プレフィックスを持つもの) であるかを識別するために使用されています。これらのパッケージは、通常のパッケージとは異なるターゲットパス (p.target = filepath.Join(gorootPkg, "tool", full)) にビルドされるため、この正確な識別が重要となります。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/cmd/go/pkg.go
+++ b/src/cmd/go/pkg.go
@@ -319,7 +319,7 @@ func (p *Package) load(stk *importStack, bp *build.Package, err error) *Package
 		telem = full
 	}
 	p.target = filepath.Join(p.build.BinDir, elem)
-	if p.Goroot && (isGoTool[p.ImportPath] || hasPrefix(p.ImportPath, "exp/")) {
+	if p.Goroot && (isGoTool[p.ImportPath] || strings.HasPrefix(p.ImportPath, "exp/")) {
 		p.target = filepath.Join(gorootPkg, "tool", full)
 	}
 	if buildContext.GOOS == "windows" {

コアとなるコードの解説

変更は src/cmd/go/pkg.go ファイルの320行目です。

  • 変更前: if p.Goroot && (isGoTool[p.ImportPath] || hasPrefix(p.ImportPath, "exp/")) {
  • 変更後: if p.Goroot && (isGoTool[p.ImportPath] || strings.HasPrefix(p.ImportPath, "exp/")) {

この変更は、条件式 hasPrefix(p.ImportPath, "exp/")strings.HasPrefix(p.ImportPath, "exp/") に置き換えるものです。

p.Goroot は、現在のパッケージがGoのインストールディレクトリ(GOROOT)内にあるかどうかを示すブール値です。isGoTool[p.ImportPath] は、特定のインポートパスがGoツール(例: "cmd/go", "cmd/vet" など)であるかどうかをチェックするマップ参照です。

この if 文全体は、Goの標準ライブラリの一部であるパッケージ(p.Goroottrue)のうち、Goツール自体であるか、またはインポートパスが "exp/" で始まる実験的なパッケージである場合に、そのパッケージのビルドターゲットパスを gorootPkg/tool ディレクトリ以下に設定するためのものです。

元の hasPrefix 関数が何であったかに関わらず、この修正によって、文字列のプレフィックスチェックがGo標準ライブラリの strings.HasPrefix 関数によって行われるようになり、より堅牢で正しい動作が保証されます。これにより、cmd/go のビルドプロセスにおける潜在的な問題が解消され、安定性が向上しました。

関連リンク

参考にした情報源リンク