[インデックス 13871] ファイルの概要
このコミットは、Go言語プロジェクトのsrc/run.bat
ファイルに対する変更です。src/run.bat
は、Goプロジェクトのテストスイートを実行するためのWindowsバッチスクリプトであり、主にCI/CD環境や開発者がWindows環境でテストを実行する際に使用されます。
コミット
commit 8627e5c0a1da23e0fe2eb10c306aed77c0743f08
Author: Alex Brainman <alex.brainman@gmail.com>
Date: Wed Sep 19 12:07:25 2012 +1000
misc/cgo/test and test/bench/go1: enable these tests on windows
R=golang-dev, r, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/6488127
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/8627e5c0a1da23e0fe2eb10c306aed77c0743f08
元コミット内容
misc/cgo/test and test/bench/go1: enable these tests on windows
R=golang-dev, r, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/6488127
変更の背景
このコミットの背景には、Windows環境におけるファイルパスの長さ制限という、当時のGo言語のテスト実行における既知の問題がありました。コミット前のsrc/run.bat
には、test/bench/go1
とmisc/cgo/test
という2つのテストスイートがコメントアウトされていました。コメントには、TODO(brainman): disabled, because it fails with: mkdir C:\\Users\\ADMINI~1\\AppData\\Local\\Temp\\2.....\\test\\bench\\: The filename or extension is too long.
という記述があり、これはWindowsのファイルシステムが持つパスの最大長(通常260文字)を超過するために、これらのテストが一時ディレクトリの作成に失敗していたことを示しています。
このコミットは、このパス長制限の問題が解決されたか、または回避策が導入されたことを受けて、これらのテストをWindows環境で再び有効にするために行われました。これにより、Windows上でのGo言語のテストカバレッジが向上し、より堅牢なクロスプラットフォーム開発が可能になります。
前提知識の解説
src/run.bat
: Go言語プロジェクトのルートディレクトリにあるバッチスクリプトで、Windows環境でGoのテストやビルドプロセスを実行するために使用されます。これは、Unix系システムにおけるmake
コマンドやシェルスクリプトに相当する役割を果たします。go test
: Go言語の標準テストコマンドです。指定されたパッケージ内のテスト関数を実行し、結果を報告します。test/bench/go1
: Go言語のベンチマークテストの一つで、Go 1のリリース時に導入された主要なベンチマークスイートを指します。Go言語のパフォーマンス回帰を検出するために重要です。misc/cgo/test
:cgo
に関連するテストスイートです。cgo
はGoプログラムからC言語のコードを呼び出すためのGoの機能であり、このテストはcgo
の機能が正しく動作するかを確認します。cgo
はOS固有のリンカやコンパイラに依存するため、クロスプラットフォームでのテストは特に重要です。if errorlevel 1 goto fail
: Windowsバッチスクリプトの構文です。直前のコマンドがエラーコード(errorlevel
)として1以上を返した場合(通常、エラーが発生したことを意味します)、スクリプトの実行を:fail
というラベルの箇所にジャンプさせます。これにより、テストの失敗時にスクリプト全体が停止し、エラーが報告されます。- Windowsのファイルパス長制限: Windowsの古いAPI(MAX_PATH)では、ファイルパスの最大長が260文字に制限されていました。これは、特に深いディレクトリ構造を持つプロジェクトや、一時ファイルに長いパスが生成される場合に問題となることがありました。現代のWindowsではこの制限は緩和されていますが、古いシステムや特定のアプリケーションでは依然として考慮が必要です。
技術的詳細
このコミットの技術的な詳細は、src/run.bat
ファイル内のコメントアウトされた行を解除することに集約されます。
以前、test/bench/go1
とmisc/cgo/test
の実行は、Windows環境で一時ディレクトリを作成する際に、生成されるパスがWindowsのファイルパス長制限(MAX_PATH)を超過するために失敗していました。この問題は、Goのテストフレームワークやビルドシステムが、テスト実行のために非常に長い一時パスを生成する傾向があったことに起因します。
このコミットでは、これらのテストを実行するコマンドの前の::
(バッチファイルでのコメントアウト)を削除しています。これは、以下のいずれかの理由でパス長の問題が解決されたことを示唆しています。
- Goツールチェーンの改善: Goのビルドシステムやテストランナーが、Windows上での一時ファイルのパス生成方法を改善し、より短いパスを使用するように変更された。
- Windows APIの利用: GoがWindowsの新しいAPI(Long Path Aware API)を利用するように変更され、260文字のパス長制限を超えてもファイルを作成できるよう
go
コマンドが対応した。 - テスト環境の調整: テスト実行環境自体が、より短いベースパスを持つように設定された。
コミットメッセージに記載されているhttps://golang.org/cl/6488127
は、この変更に関連するGoのコードレビュー(Change List)へのリンクであり、通常、このリンクを辿ることで、具体的な問題解決の詳細(例えば、Goのツールチェーンのどの部分が変更されたか)を知ることができます。このCL(Change List)は、Goのソースコード管理システムであるGerritにおける変更提案を指し、関連する議論や具体的なコード変更履歴が記録されています。
コアとなるコードの変更箇所
src/run.bat
ファイルにおいて、以下の2つのセクションが変更されています。
1. test/bench/go1
テストの有効化:
--- a/src/run.bat
+++ b/src/run.bat
@@ -57,11 +57,10 @@ go build ..\misc\dashboard\builder ..\misc\goplay
if errorlevel 1 goto fail
echo.
-:: TODO(brainman): disabled, because it fails with: mkdir C:\Users\ADMINI~1\AppData\Local\Temp\2.....\test\bench\: The filename or extension is too long.
-::echo # ..\test\bench\go1
-::go test ..\test\bench\go1
-::if errorlevel 1 goto fail
-::echo.
+echo # ..\test\bench\go1
+go test ..\test\bench\go1
+if errorlevel 1 goto fail
+echo.
2. misc/cgo/test
テストの有効化:
--- a/src/run.bat
+++ b/src/run.bat
@@ -77,11 +76,10 @@ if x%CGO_ENABLED% == x0 goto nocgo
::if errorlevel 1 goto fail
::echo.
-:: TODO(brainman): disabled, because it fails with: mkdir C:\Users\ADMINI~1\AppData\Local\Temp\2.....\go\misc\cgo\: The filename or extension is too long.
-::echo # ..\misc\cgo\test
-::go test ..\misc\cgo\test
-::if errorlevel 1 goto fail
-::echo.
+echo # ..\misc\cgo\test
+go test ..\misc\cgo\test
+if errorlevel 1 goto fail
+echo.
:nocgo
コアとなるコードの解説
変更は非常にシンプルで、コメントアウトされていた以下の行の先頭にある::
が削除されています。
echo # ..\test\bench\go1
go test ..\test\bench\go1
if errorlevel 1 goto fail
そして、同様にmisc/cgo/test
についても同じ変更が適用されています。
echo # ..\misc\cgo\test
go test ..\misc\cgo\test
if errorlevel 1 goto fail
それぞれの行の役割は以下の通りです。
echo # ..\test\bench\go1
(またはmisc/cgo/test
): これは、現在実行しているテストスイートの名前をコンソールに出力するための行です。テストの進行状況をユーザーに知らせるためのものです。go test ..\test\bench\go1
(またはmisc/cgo/test
): 実際にGoのテストコマンドを実行する行です。指定されたパス(..\test\bench\go1
や..\misc\cgo\test
)にあるテストパッケージをビルドし、その中のテストを実行します。if errorlevel 1 goto fail
: この行は、直前のgo test
コマンドの実行結果をチェックします。もしgo test
がエラーを返した場合(errorlevel
が1以上)、スクリプトは:fail
ラベルにジャンプし、テストプロセス全体が失敗として終了します。これにより、テストの失敗が適切に報告されます。
これらの変更により、Windows環境でsrc/run.bat
が実行された際に、以前はスキップされていたtest/bench/go1
とmisc/cgo/test
が実際に実行されるようになります。
関連リンク
- Go言語の公式リポジトリ: https://github.com/golang/go
- このコミットのChange List (CL): https://golang.org/cl/6488127
参考にした情報源リンク
- Windowsのファイルパス長制限に関する情報 (一般的な知識)
- Go言語の
go test
コマンドに関する公式ドキュメント (一般的な知識) - Windowsバッチスクリプトの構文に関する情報 (一般的な知識)
- Go言語の
cgo
に関する公式ドキュメント (一般的な知識) - https://golang.org/cl/6488127 (コミットメッセージに記載されたCL)
- https://github.com/golang/go/commit/8627e5c0a1da23e0fe2eb10c306aed77c0743f08 (GitHub上のコミットページ)