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[インデックス 13889] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリである net パッケージ内のコメントの修正に関するものです。具体的には、dial.go、fd_unix.go、fd_windows.go、sock_posix.go の4つのファイルにおいて、説明文の誤字や参照先の誤りを修正しています。

コミット

commit 9773ac1d08312e376d0741791545ca21cd0332d6
Author: Mikio Hara <mikioh.mikioh@gmail.com>
Date:   Fri Sep 21 07:13:36 2012 +0900

    net: fix comment
    
    R=golang-dev, bradfitz
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/6546044

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/9773ac1d08312e376d0741791545ca21cd0332d6

元コミット内容

このコミットは、Go言語の net パッケージにおけるコメントの修正を目的としています。

  • src/pkg/net/dial.go: Dial 関数のコメント内で、IPネットワークに関する説明において「addr」と記載されていた箇所を「net」に修正。
  • src/pkg/net/fd_unix.go: ForkLock の説明に関するコメントの参照先を ../syscall/exec.go から ../syscall/exec_unix.go に修正。
  • src/pkg/net/fd_windows.go: ForkLock の説明に関するコメントの参照先を ../syscall/exec.go から ../syscall/exec_unix.go に修正。
  • src/pkg/net/sock_posix.go: ForkLock の説明に関するコメントの参照先を ../syscall/exec.go から ../syscall/exec_unix.go に修正。

変更の背景

このコミットの背景には、Go言語の標準ライブラリのドキュメントとコードの整合性を高めるという目的があります。コメントはコードの理解を助ける重要な要素であり、その内容が正確であることは開発者にとって非常に重要です。

src/pkg/net/dial.go の変更は、Dial 関数の引数に関する説明の誤りを修正するものです。Dial 関数はネットワーク接続を確立するために使用され、その引数 net はネットワークプロトコル（例: "tcp", "udp"）を指定します。元のコメントでは「addr」と誤って記載されており、これが混乱を招く可能性がありました。

src/pkg/net/fd_unix.go、src/pkg/net/fd_windows.go、src/pkg/net/sock_posix.go の変更は、ForkLock に関するコメントの参照先を修正するものです。ForkLock は、Goプログラムが fork システムコールを使用する際に発生する可能性のあるデッドロックや競合状態を防ぐためのメカニズムです。このロックに関する詳細な説明は、オペレーティングシステム固有の実装ファイルである exec_unix.go に移動されたため、コメントの参照先もそれに合わせて更新されました。これは、コードの整理と、より正確なドキュメントへの誘導を意図しています。

前提知識の解説

このコミットを理解するためには、以下の前提知識が役立ちます。

Go言語の net パッケージ

net パッケージは、Go言語におけるネットワークI/Oの主要なインターフェースを提供します。TCP/IP、UDP、Unixドメインソケットなど、様々なネットワークプロトコルを扱うための機能が含まれています。

  • Dial 関数: net パッケージの主要な関数の一つで、指定されたネットワークアドレスへの接続を確立するために使用されます。例えば、net.Dial("tcp", "google.com:80") はGoogleのウェブサーバーのポート80にTCP接続を試みます。
  • net 引数: Dial 関数における net 引数は、使用するネットワークプロトコル（例: "tcp", "udp", "ip"）を指定します。
  • addr 引数: Dial 関数における addr 引数は、接続先のアドレス（例: "google.com:80", "[::1]:8080"）を指定します。

Go言語の syscall パッケージと ForkLock

syscall パッケージは、Goプログラムから低レベルのオペレーティングシステム機能（システムコール）にアクセスするためのインターフェースを提供します。

  • fork システムコール: Unix系OSにおいて、新しいプロセスを作成するためのシステムコールです。親プロセスのメモリ空間やファイルディスクリプタなどをコピーして子プロセスを生成します。
  • ForkLock: Goランタイムが fork システムコールを使用する際に、デッドロックや競合状態を防ぐために導入されたメカニズムです。fork はプロセス全体の状態を複製するため、Goランタイムの内部状態（例えば、ガベージコレクタのヒープやスケジューラの状態）が不整合になる可能性があります。ForkLock は、fork が実行される間、これらの内部状態へのアクセスを制限することで、安全性を確保します。
  • exec.go と exec_unix.go: Goのソースコードでは、プラットフォーム固有のシステムコール実装が異なるファイルに分割されていることがあります。exec.go は一般的な実行関連のコードを含むことがありますが、Unix系OSに特化した fork や exec の実装は exec_unix.go のようなファイルに記述されます。

技術的詳細

net/dial.go のコメント修正

元のコメント:

// For IP networks, addr must be "ip", "ip4" or "ip6" followed
// by a colon and a protocol number or name.

修正後:

// For IP networks, net must be "ip", "ip4" or "ip6" followed
// by a colon and a protocol number or name.

この修正は、Dial 関数のシグネチャ func Dial(net, addr string) (Conn, error) を考慮したものです。IPネットワークの場合、"ip", "ip4", "ip6" は net 引数に指定される値であり、addr 引数ではありません。この修正により、コメントが関数の実際の動作と一致し、開発者の誤解を防ぎます。

net/fd_unix.go, net/fd_windows.go, net/sock_posix.go のコメント修正

元のコメント:

// See ../syscall/exec.go for description of ForkLock.

修正後:

// See ../syscall/exec_unix.go for description of ForkLock.

この修正は、ForkLock の詳細な説明が src/pkg/syscall/exec_unix.go に移動されたことに対応しています。Goのクロスプラットフォーム対応において、システムコール関連のコードはOSごとに異なる実装を持つことがよくあります。exec_unix.go はUnix系OS（Linux, macOSなど）における exec および fork 関連のシステムコール実装を扱います。Windows版の fd_windows.go も exec_unix.go を参照しているのは、ForkLock の概念自体がUnix系OSの fork に関連するものであり、Windowsでは fork が存在しないため、その説明がUnix系OSの実装ファイルに集約されているためと考えられます。この変更により、開発者は ForkLock の詳細を知りたい場合に、より正確な情報源にたどり着けるようになります。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットは、以下の4つのファイルのコメントを修正しています。

  • src/pkg/net/dial.go
  • src/pkg/net/fd_unix.go
  • src/pkg/net/fd_windows.go
  • src/pkg/net/sock_posix.go

具体的な変更は、各ファイル内のコメント行1行のみです。

diff --git a/src/pkg/net/dial.go b/src/pkg/net/dial.go
index 51912397a4..752f81b618 100644
--- a/src/pkg/net/dial.go
+++ b/src/pkg/net/dial.go
@@ -81,7 +81,7 @@ func resolveNetAddr(op, net, addr string) (afnet string, a Addr, err error) {
 //	Dial("tcp", "google.com:80")
 //	Dial("tcp", "[de:ad:be:ef::ca:fe]:80")
 //
-// For IP networks, addr must be "ip", "ip4" or "ip6" followed
+// For IP networks, net must be "ip", "ip4" or "ip6" followed
 // by a colon and a protocol number or name.
 //
 // Examples:
diff --git a/src/pkg/net/fd_unix.go b/src/pkg/net/fd_unix.go
index 1b157daef1..57e04bb6ca 100644
--- a/src/pkg/net/fd_unix.go
+++ b/src/pkg/net/fd_unix.go
@@ -582,7 +582,7 @@ func (fd *netFD) accept(toAddr func(syscall.Sockaddr) Addr) (netfd *netFD, err e
 	}\n \tdefer fd.decref()\n \n-\t// See ../syscall/exec.go for description of ForkLock.\n+\t// See ../syscall/exec_unix.go for description of ForkLock.\n \t// It is okay to hold the lock across syscall.Accept\n \t// because we have put fd.sysfd into non-blocking mode.\n \tvar s int
diff --git a/src/pkg/net/fd_windows.go b/src/pkg/net/fd_windows.go
index 45f5c2d882..4ae78397c3 100644
--- a/src/pkg/net/fd_windows.go
+++ b/src/pkg/net/fd_windows.go
@@ -524,7 +524,7 @@ func (fd *netFD) accept(toAddr func(syscall.Sockaddr) Addr) (*netFD, error) {
 	defer fd.decref()\n \n \t// Get new socket.\n-\t// See ../syscall/exec.go for description of ForkLock.\n+\t// See ../syscall/exec_unix.go for description of ForkLock.\n \tsyscall.ForkLock.RLock()\n \ts, err := syscall.Socket(fd.family, fd.sotype, 0)\n \tif err != nil {
diff --git a/src/pkg/net/sock_posix.go b/src/pkg/net/sock_posix.go
index e9e5735478..dc5247a7f3 100644
--- a/src/pkg/net/sock_posix.go
+++ b/src/pkg/net/sock_posix.go
@@ -17,7 +17,7 @@ var listenerBacklog = maxListenerBacklog()\n \n // Generic socket creation.\n func socket(net string, f, t, p int, ipv6only bool, ulsa, ursa syscall.Sockaddr, toAddr func(syscall.Sockaddr) Addr) (fd *netFD, err error) {\n-\t// See ../syscall/exec.go for description of ForkLock.\n+\t// See ../syscall/exec_unix.go for description of ForkLock.\n \tsyscall.ForkLock.RLock()\n \ts, err := syscall.Socket(f, t, p)\n \tif err != nil {

コアとなるコードの解説

このコミットは機能的な変更を伴わず、コードのコメントのみを修正しています。しかし、これらのコメント修正は、Go言語の標準ライブラリの品質と保守性を向上させる上で重要です。

  • dial.go の修正は、Dial 関数の使用方法に関する誤解を解消し、より正確なドキュメントを提供します。これは、特にGo言語のネットワークプログラミングを学習する開発者にとって有益です。
  • fd_unix.go、fd_windows.go、sock_posix.go の修正は、ForkLock の概念と実装に関する正確な情報源へのリンクを提供します。これにより、Goランタイムの低レベルな動作や、fork システムコールとの相互作用について深く理解したい開発者が、適切なドキュメントにアクセスできるようになります。

これらの修正は、コードの可読性とメンテナンス性を向上させ、将来的な開発における誤解や混乱を防ぐことに貢献します。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメント
  • Go言語のソースコード (特に src/pkg/net および src/pkg/syscall ディレクトリ)
  • Go言語のコミット履歴とコードレビュー (Gerrit CL 6546044)
  • fork システムコールに関する一般的な情報 (Unix系OSのドキュメントなど)
  • Go言語におけるクロスプラットフォーム開発に関する情報