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[インデックス 14021] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のドキュメンテーションツールであるgodocが使用するHTMLテンプレートファイルlib/godoc/godoc.htmlに対する変更です。具体的には、JavaScriptライブラリであるjQueryの読み込み方法を、GoogleがホストするCDN(Content Delivery Network)からの読み込みを優先し、それが失敗した場合にローカルにホストされているバージョンにフォールバックする形に変更しています。

コミット

commit 593a6285729160d3ce4dc1c440e6a6be0fa87242
Author: Shenghou Ma <minux.ma@gmail.com>
Date:   Thu Oct 4 15:14:20 2012 +0800

    lib/godoc/godoc.html: try Google hosted jQuery first, fallback to locally hosted one
    
    R=golang-dev, adg
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/6593078

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/593a6285729160d3ce4dc1c440e6a6be0fa87242

元コミット内容

lib/godoc/godoc.html: try Google hosted jQuery first, fallback to locally hosted one

このコミットメッセージは、godocのHTMLテンプレートファイルであるgodoc.htmlにおいて、jQueryの読み込みをGoogleがホストするバージョンから試み、それが利用できない場合にローカルにホストされているバージョンに切り替える(フォールバックする)ように変更したことを示しています。

変更の背景

この変更の主な背景には、ウェブアプリケーションにおけるパフォーマンスと信頼性の向上が挙げられます。

  1. パフォーマンスの向上: CDN(Content Delivery Network)からjQueryを読み込むことで、ユーザーは地理的に近いサーバーからファイルをダウンロードできるため、読み込み速度が向上します。また、多くのウェブサイトが同じCDNからjQueryを読み込んでいる場合、ユーザーのブラウザにすでにキャッシュされている可能性があり、その場合はダウンロードが不要になるため、さらに高速なページ表示が期待できます。
  2. 信頼性の向上: Googleのような大手プロバイダが提供するCDNは、高い可用性と信頼性を持っています。これにより、godocサーバー自体の負荷を軽減しつつ、jQueryファイルの提供が安定します。
  3. オフラインまたはCDNアクセス不可時の対応: CDNが利用できない状況(例: ユーザーがオフライン、または特定のネットワーク環境でCDNへのアクセスがブロックされている場合)に備え、ローカルにホストされたjQueryファイルへのフォールバックメカニズムを導入することで、アプリケーションの堅牢性を高めています。これにより、CDNからの読み込みが失敗しても、godocの機能が損なわれることなく動作し続けることが保証されます。

前提知識の解説

jQuery

jQueryは、JavaScriptの高速で小規模かつ機能豊富なJavaScriptライブラリです。HTMLのDOM操作、イベントハンドリング、アニメーション、Ajaxなど、ウェブ開発で頻繁に行われるタスクを、より簡単でクロスブラウザ互換性のある方法で実現するために設計されています。その簡潔なAPIと広範なプラグインエコシステムにより、ウェブ開発のデファクトスタンダードの一つとして広く利用されてきました。

CDN (Content Delivery Network)

CDNは、ウェブコンテンツ(画像、動画、JavaScriptファイル、CSSファイルなど)をユーザーに効率的に配信するために最適化された分散型サーバーネットワークです。コンテンツを世界中の複数のデータセンターにキャッシュすることで、ユーザーが最も近いサーバーからコンテンツを取得できるようになり、ウェブサイトの読み込み速度が向上します。また、CDNはトラフィックの急増にも対応できるため、ウェブサイトの可用性と信頼性を高める役割も果たします。Google Hosted Librariesは、Googleが提供する主要なJavaScriptライブラリをホストするCDNサービスの一つです。

フォールバック (Fallback)

フォールバックとは、システムやアプリケーションが主要な機能やリソースが利用できない場合に、代替の手段やリソースに切り替えて動作を継続するメカニズムのことです。このコミットでは、CDNからのjQuery読み込みが失敗した場合に、ローカルにホストされたjQueryファイルに切り替えることで、アプリケーションの機能が損なわれないようにするフォールバック戦略が採用されています。

技術的詳細

このコミットで導入された技術的な変更は、JavaScriptのスクリプト読み込みにおける一般的なパターンである「CDN優先、ローカルフォールバック」の実装です。

変更前は、以下の1行でローカルパスからjQueryを読み込んでいました。 <script type="text/javascript" src="/doc/jquery.js"></script>

変更後は、以下の2行に置き換えられています。

  1. <script type="text/javascript" src="http://ajax.googleapis.com/ajax/libs/jquery/1.8.2/jquery.min.js"></script> この行は、Google Hosted LibrariesからjQueryバージョン1.8.2の圧縮版(.min.js)を読み込もうとします。http:プロトコルが指定されていますが、現代のブラウザでは通常、現在のページのプロトコル(https:であればhttps:)に合わせて自動的にアップグレードされます。

  2. <script type="text/javascript">window.jQuery || document.write(unescape("%3Cscript src=\'/doc/jquery.js\' type=\'text/javascript\'%3E%3C/script%3E"));</script> このスクリプトブロックは、CDNからの読み込みが成功したかどうかをチェックするためのフォールバックメカニズムです。

    • window.jQuery: グローバルスコープにjQueryオブジェクトが存在するかどうかをチェックします。CDNからの読み込みが成功していれば、jQueryオブジェクトは定義されています。
    • ||: 論理OR演算子です。window.jQuerytrue(つまりjQueryオブジェクトが定義されている)であれば、それ以降の式は評価されません。
    • document.write(unescape("%3Cscript src=\'/doc/jquery.js\' type=\'text/javascript\'%3E%3C/script%3E")): window.jQueryfalse(つまりCDNからの読み込みが失敗したか、まだ完了していない)の場合に実行されます。
      • unescape(...): %3C, %3EなどのエスケープされたHTMLエンティティを元の文字(<, >など)に戻します。
      • document.write(...): HTMLドキュメントに新しい<script>タグを動的に挿入し、ローカルにホストされている/doc/jquery.jsを読み込みます。

このシーケンスにより、ブラウザはまずCDNからの読み込みを試み、それが何らかの理由で失敗した場合にのみ、ローカルのjQueryファイルが読み込まれることが保証されます。これにより、パフォーマンスと信頼性の両方を最適化しています。

コアとなるコードの変更箇所

変更はlib/godoc/godoc.htmlファイル内で行われています。

--- a/lib/godoc/godoc.html
+++ b/lib/godoc/godoc.html
@@ -8,7 +8,8 @@
   <title>The Go Programming Language</title>
 {{end}}\n <link type=\"text/css\" rel=\"stylesheet\" href=\"/doc/style.css\">\n-<script type=\"text/javascript\" src=\"/doc/jquery.js\"></script>\n+<script type=\"text/javascript\" src=\"http://ajax.googleapis.com/ajax/libs/jquery/1.8.2/jquery.min.js\"></script>\n+<script type=\"text/javascript\">window.jQuery || document.write(unescape(\"%3Cscript src=\'/doc/jquery.js\' type=\'text/javascript\'%3E%3C/script%3E\"));</script>\n <script type=\"text/javascript\" src=\"/doc/godocs.js\"></script>\n {{if .SearchBox}}\n <link rel=\"search\" type=\"application/opensearchdescription+xml\" title=\"godoc\" href=\"/opensearch.xml\" />

コアとなるコードの解説

この変更は、HTMLの<head>セクション内でJavaScriptファイルを読み込む一般的な方法を修正しています。

  • 削除された行: <script type="text/javascript" src="/doc/jquery.js"></script> これは、godocアプリケーションが提供するローカルパス/doc/jquery.jsから直接jQueryを読み込むための従来のスクリプトタグです。

  • 追加された行1: <script type="text/javascript" src="http://ajax.googleapis.com/ajax/libs/jquery/1.8.2/jquery.min.js"></script> この行は、GoogleのCDNからjQueryバージョン1.8.2を読み込むための新しいスクリプトタグです。ブラウザはまずこのURLにリクエストを送信し、jQueryファイルの取得を試みます。

  • 追加された行2: <script type="text/javascript">window.jQuery || document.write(unescape("%3Cscript src=\'/doc/jquery.js\' type=\'text/javascript\'%3E%3C/script%3E"));</script> このインラインスクリプトは、CDNからの読み込みが成功したかどうかを検証し、失敗した場合にローカルフォールバックを実行します。 window.jQueryは、jQueryライブラリが正常にロードされると定義されるグローバルオブジェクトです。このオブジェクトが存在しない(つまり、CDNからの読み込みが失敗した)場合、||演算子の右側が評価されます。 document.write()は、HTMLドキュメントに直接コンテンツを書き込むJavaScript関数です。ここでは、エスケープされた文字列をunescape()でデコードし、ローカルのjQueryファイルを参照する新しい<script>タグを動的に挿入しています。これにより、CDNが利用できない場合でも、godocの機能が損なわれることなく動作し続けることが保証されます。

この変更により、godocのウェブインターフェースは、より高速で信頼性の高いjQueryの読み込みメカニズムを利用できるようになりました。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • コミット情報: /home/orange/Project/comemo/commit_data/14021.txt
  • GitHubコミットページ: https://github.com/golang/go/commit/593a6285729160d3ce4dc1c440e6a6be0fa87242
  • 一般的なCDNフォールバックのパターンに関するウェブ上の情報(例: Stack Overflow, MDN Web Docsなど)
  • JavaScriptのdocument.write()および論理OR演算子に関する情報