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[インデックス 14134] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリtimeパッケージにおけるTicker型のドキュメンテーションから、誤解を招く可能性のある単語「synchronous」を削除する変更です。これにより、Tickerの動作に関する説明がより正確になります。

コミット

time: delete erroneous word from documentation.
Fixes #4236.

R=golang-dev, dsymonds
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/6658051

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/06d42690b6ada912bc657435ca4dd962a9413502

元コミット内容

commit 06d42690b6ada912bc657435ca4dd962a9413502
Author: Rob Pike <r@golang.org>
Date:   Fri Oct 12 11:00:00 2012 +1100

    time: delete erroneous word from documentation.
    Fixes #4236.
    
    R=golang-dev, dsymonds
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/6658051
---\n src/pkg/time/tick.go | 2 +-\n 1 file changed, 1 insertion(+), 1 deletion(-)\n\ndiff --git a/src/pkg/time/tick.go b/src/pkg/time/tick.go\nindex 8c6b9bc3b2..8e43559048 100644\n--- a/src/pkg/time/tick.go\n+++ b/src/pkg/time/tick.go\n@@ -6,7 +6,7 @@ package time\n \n import \"errors\"\n \n-// A Ticker holds a synchronous channel that delivers `ticks\' of a clock\n+// A Ticker holds a channel that delivers `ticks\' of a clock\n // at intervals.\n type Ticker struct {\n \tC <-chan Time // The channel on which the ticks are delivered.\n```

## 変更の背景

このコミットは、Go言語の`time`パッケージにおける`Ticker`型のドキュメンテーションの正確性を向上させることを目的としています。具体的には、`Ticker`が保持するチャネルを「synchronous channel」と記述していた部分から「synchronous」という単語を削除しています。

Goのチャネルには、バッファなしチャネル(unbuffered channel)とバッファありチャネル(buffered channel)の2種類があります。バッファなしチャネルは、送信操作が受信操作と同期するまでブロックするため、「同期チャネル」と呼ばれることがあります。しかし、`time.Ticker`が使用するチャネルは、指定された間隔で「tick」を送信するために内部的にバッファを持つことがあります。また、`Ticker`の目的は、一定間隔でイベントを通知することであり、チャネルの同期特性そのものを強調するものではありません。

元のドキュメンテーションの「synchronous channel」という表現は、`Ticker`のチャネルが常にバッファなしチャネルのように振る舞うという誤解を招く可能性がありました。実際には、`Ticker`のチャネルは、その設計上、送信が受信を待つことなく行われる場合があるため、厳密な意味での「同期チャネル」という表現は適切ではありませんでした。この不正確さを修正し、より正確な情報を提供するために、この変更がコミットされました。

この変更は、GoのIssue #4236で報告された問題に対応しています。

## 前提知識の解説

### Go言語の`time`パッケージ

`time`パッケージは、Go言語で時間に関する操作(時刻の表現、期間の計算、タイマー、ティッカーなど)を行うための機能を提供します。

### `time.Ticker`

`time.Ticker`は、一定の時間間隔でイベントを発生させるための構造体です。これは、定期的に何かを実行したい場合に非常に便利です。例えば、毎秒ログを出力したり、定期的にデータを更新したりする際に使用されます。

`Ticker`は、`C`という名前の読み取り専用チャネル(`<-chan Time`)を持っています。このチャネルには、`Ticker`が設定された間隔で`Time`型の値が送信されます。ユーザーはこの`C`チャネルから値を受信することで、イベントの発生を検知します。

基本的な使用例は以下の通りです。

```go
package main

import (
	"fmt"
	"time"
)

func main() {
	ticker := time.NewTicker(time.Second) // 1秒ごとにtickを発生
	defer ticker.Stop()                   // 忘れずにTickerを停止する

	done := make(chan bool)
	go func() {
		time.Sleep(5 * time.Second) // 5秒後に終了
		done <- true
	}()

	for {
		select {
		case <-done:
			fmt.Println("Done!")
			return
		case t := <-ticker.C:
			fmt.Println("Tick at", t)
		}
	}
}

Go言語のチャネル

Go言語のチャネルは、ゴルーチン間で値を安全に送受信するための通信メカニズムです。チャネルは、Goにおける並行処理の基本的な構成要素であり、共有メモリによる競合状態を避けるための推奨される方法です。

チャネルには以下の2種類があります。

  1. バッファなしチャネル (Unbuffered Channel):

    • make(chan Type)のように作成されます。
    • 送信操作は、別のゴルーチンがそのチャネルから値を受信するまでブロックします。
    • 受信操作は、別のゴルーチンがそのチャネルに値を送信するまでブロックします。
    • これにより、送信と受信が同期し、値の受け渡しが確実に行われます。
  2. バッファありチャネル (Buffered Channel):

    • make(chan Type, capacity)のように、容量を指定して作成されます。
    • チャネルのバッファが満杯でない限り、送信操作はブロックしません。
    • チャネルが空でない限り、受信操作はブロックしません。
    • バッファの容量に達すると、送信操作はブロックします。バッファが空になると、受信操作はブロックします。

Tickerの文脈で「synchronous channel」という表現が誤解を招くのは、Tickerのチャネルが必ずしもバッファなしチャネルのように振る舞うわけではないためです。Tickerは一定間隔で値を送信するため、受信側が常に準備できているとは限りません。そのため、内部的にはバッファを持つことで、送信が受信を待つことなく行われる場合があります。

技術的詳細

このコミットの技術的な詳細は、Go言語のドキュメンテーションの正確性に関するものです。Goのドキュメンテーションは、その簡潔さと正確性で知られており、開発者がGoの機能やAPIを理解する上で非常に重要な役割を果たします。

time.Tickerのドキュメンテーションにおける「synchronous」という単語は、Goのチャネルの概念、特にバッファなしチャネルの「同期」特性と混同される可能性がありました。TickerのチャネルCは、Tickerが設定された間隔でTime値を送信するために使用されます。このチャネルは、内部実装によってはバッファを持つことがあり、その場合、送信操作は必ずしも受信操作と同期してブロックするわけではありません。

例えば、time.NewTickerの内部実装では、runtime.newtimerruntime.starttimerといった低レベルのタイマー機能が使われ、チャネルへの送信は、タイマーが発火したときに非同期的に行われることがあります。もし受信側が準備できていなくても、チャネルにバッファがあれば、送信はブロックせずに完了します。

したがって、「synchronous channel」という表現は、Tickerのチャネルが常にバッファなしチャネルのように振る舞い、送信と受信が厳密に同期することを暗示してしまうため、不正確でした。この修正は、Tickerのチャネルが単に「ticks」を配信するチャネルであるという、より一般的なかつ正確な説明にすることで、誤解を避けることを目的としています。

この変更は、コードの動作自体には影響を与えませんが、GoのAPIを使用する開発者がTickerの動作を正しく理解するために非常に重要です。ドキュメンテーションの正確性は、ライブラリの使いやすさと、それを使用するコードの品質に直接影響します。

コアとなるコードの変更箇所

変更はsrc/pkg/time/tick.goファイルの一箇所のみです。

--- a/src/pkg/time/tick.go
+++ b/src/pkg/time/tick.go
@@ -6,7 +6,7 @@ package time
 
 import "errors"
 
-// A Ticker holds a synchronous channel that delivers `ticks\' of a clock
+// A Ticker holds a channel that delivers `ticks\' of a clock
 // at intervals.
 type Ticker struct {
 	C <-chan Time // The channel on which the ticks are delivered.

具体的には、以下の行が変更されました。

  • 変更前: // A Ticker holds a synchronous channel that delivers ticks' of a clock`
  • 変更後: // A Ticker holds a channel that delivers ticks' of a clock`

「synchronous 」という単語が削除されています。

コアとなるコードの解説

この変更は、timeパッケージ内のtick.goファイルにあるTicker構造体のコメント行を修正しています。

元のコメントは、Tickerが「synchronous channel」を保持していると説明していました。しかし、前述の通り、Tickerのチャネルは必ずしもバッファなしチャネルのように厳密に同期するわけではありません。Tickerの主な役割は、一定間隔でTime値をチャネルに送信することであり、チャネルの同期特性を強調することは、その本質的な動作を誤解させる可能性がありました。

変更後のコメントは、「A Ticker holds a channel that delivers ticks of a clock at intervals.」となり、「synchronous」という単語が削除されました。これにより、Tickerが単に「ticks」を配信するチャネルを保持しているという、より正確で一般的な説明になっています。この修正は、Tickerの動作に関する誤解を防ぎ、ドキュメンテーションの品質を向上させるためのものです。

この変更は、Go言語のドキュメンテーションが、その機能の正確な動作を反映するように細心の注意を払って維持されていることを示しています。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語公式ドキュメンテーション: timeパッケージ
  • Go言語公式ドキュメンテーション: チャネル
  • Go言語のソースコード (src/pkg/time/tick.go)
  • Go Issue Tracker (Issue #4236)
  • Go Code Review (CL 6658051)
  • Go言語に関する一般的な知識とチャネルの動作に関する理解