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[インデックス 14245] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の実験的な型チェッカーである exp/gotype パッケージのテストスイートに、より多くの標準ライブラリパッケージを追加するものです。具体的には、go/buildgo/printergo/token パッケージがテスト対象として追加され、既存の go/tokengo/scanner のテストエントリが修正されています。これにより、gotype の堅牢性と正確性が向上し、Go言語の進化するエコシステムへの適応性が高まります。

コミット

commit d77eb129981063fec19efc7dd4078c4757fcf997
Author: Robert Griesemer <gri@golang.org>
Date:   Tue Oct 30 09:42:43 2012 -0700

    exp/gotype: add more test packages
    
    R=r
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/6822051

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/d77eb129981063fec19efc7dd4078c4757fcf997

元コミット内容

exp/gotype: add more test packages

このコミットは、exp/gotype パッケージのテストに、さらに多くのGo標準ライブラリパッケージを追加することを目的としています。

変更の背景

exp/gotype は、Go言語の型システムを解析し、型情報を抽出するための実験的なパッケージでした。このようなツールは、コンパイラ、IDE、リンター、コード分析ツールなど、Goコードを静的に解析する様々なアプリケーションの基盤となります。

このコミットが行われた2012年10月時点では、Go言語はまだ比較的新しく、そのエコシステムは急速に発展していました。exp/gotype のようなツールが正確かつ堅牢に機能するためには、Go言語の様々な側面(異なるパッケージ構造、複雑な型定義、標準ライブラリの多様なAPIなど)を適切に処理できる必要があります。

テストスイートにGo標準ライブラリのより多くのパッケージを含めることは、exp/gotype が実際のGoコードベースに対してどれだけ正確に型情報を推論できるかを検証するために不可欠です。特に、go/buildgo/printergo/token のようなパッケージは、Goのツールチェインの基本的な部分を構成しており、これらのパッケージのコードを正確に解析できることは、gotype の実用性を示す上で重要でした。

また、既存のテストエントリ (go/tokengo/scanner) の修正は、おそらくこれらのパッケージのテスト方法が gotype の期待する入力形式や解析ロジックとより一致するように調整されたか、あるいはより適切なテスト対象が選ばれたことを示唆しています。

前提知識の解説

Go言語のパッケージ構造

Go言語のコードは「パッケージ」という単位で整理されます。各パッケージは、関連する機能の集合体であり、通常はディレクトリに対応します。標準ライブラリは、src/pkg ディレクトリ以下に配置され、go/astgo/parser など、Go言語のツールチェインを構築するための基本的なパッケージが含まれています。

exp/gotype パッケージ

exp/gotype は、Go言語のソースコードを解析し、その型情報を抽出するための実験的なパッケージでした。これは、Goのコンパイラやその他のツールがコードのセマンティクスを理解するために使用する内部表現を模倣するものです。このパッケージは、Go言語の型システムがどのように機能するかを理解し、それをプログラム的に操作するための基盤を提供しました。最終的には、この実験的なパッケージの機能は、Go言語の標準ライブラリの go/types パッケージに統合され、より安定した形で提供されることになります。

Go標準ライブラリの関連パッケージ

このコミットでテスト対象として言及されている、または修正されているGo標準ライブラリのパッケージは以下の通りです。これらはGo言語のツールチェインの重要な構成要素です。

  • go/ast: Goのソースコードの抽象構文木 (AST: Abstract Syntax Tree) を表現するためのデータ構造と関数を提供します。ソースコードを解析した結果として得られる構文構造をプログラム的に操作するために使用されます。
  • go/build: Goパッケージのビルドプロセスに関する情報(ソースファイルの検索、依存関係の解決など)を提供します。Goのビルドシステムがどのように動作するかを理解し、操作するために使用されます。
  • go/doc: Goのソースコードからドキュメントを抽出するための機能を提供します。go doc コマンドや godoc ツールがこれを利用して、パッケージのドキュメントを生成します。
  • go/parser: Goのソースコードを解析し、go/ast パッケージで定義されたASTを生成するための機能を提供します。
  • go/printer: go/ast パッケージで定義されたASTを、Goのソースコードとして整形して出力するための機能を提供します。gofmt ツールがこれを利用しています。
  • go/scanner: Goのソースコードをトークン(識別子、キーワード、演算子など)に分割する字句解析(スキャン)機能を提供します。
  • go/token: Goのソースコードにおけるトークン(字句)の種類や、ソースコード内の位置(ファイル、行、列)を表現するためのデータ構造を提供します。

これらのパッケージは、Go言語のコンパイラ、リンター、フォーマッター、IDEなどの開発ツールがGoコードを理解し、処理するために連携して動作します。exp/gotype がこれらのパッケージのコードを正確に解析できることは、その汎用性と信頼性を示す上で重要です。

技術的詳細

このコミットは、src/pkg/exp/gotype/gotype_test.go ファイル内の tests スライスを変更しています。この tests スライスは、exp/gotype パッケージのテストで使用される、テスト対象のディレクトリパスと期待されるパッケージ名を定義しています。

変更の具体的な内容は以下の通りです。

  1. go/build パッケージの追加: {filepath.Join(runtime.GOROOT(), "src/pkg/go/build"), "build"}, go/build パッケージがテスト対象として追加されました。これにより、gotype がGoのビルド関連のコードを正しく解析できるかどうかが検証されます。

  2. go/printer パッケージの追加: {filepath.Join(runtime.GOROOT(), "src/pkg/go/printer"), "printer"}, go/printer パッケージがテスト対象として追加されました。これは、gotype がASTの整形・出力に関連するコードを正しく解析できるかを確認するためです。

  3. go/token および go/scanner のテストエントリの修正: 変更前: {filepath.Join(runtime.GOROOT(), "src/pkg/go/token"), "scanner"}, {filepath.Join(runtime.GOROOT(), "src/pkg/go/scanner"), "scanner"},

    変更後: {filepath.Join(runtime.GOROOT(), "src/pkg/go/scanner"), "scanner"}, {filepath.Join(runtime.GOROOT(), "src/pkg/go/token"), "token"},

    元の go/token のエントリが scanner パッケージを期待していたのが、token パッケージを期待するように修正されました。これは、go/token パッケージ自体をテスト対象とし、そのパッケージ名が token であることを期待するように変更されたことを意味します。また、go/scanner のエントリはそのまま残されています。この修正は、テストの意図をより正確に反映し、各パッケージがその本来のパッケージ名で正しく識別されることを確認するためのものです。

これらの変更は、exp/gotype がGo標準ライブラリのより広範なコードベースに対して、その型解析能力を検証できるようにするためのものです。テストカバレッジの拡大は、ツールの信頼性と正確性を向上させる上で非常に重要です。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/pkg/exp/gotype/gotype_test.go
+++ b/src/pkg/exp/gotype/gotype_test.go
@@ -35,10 +35,12 @@ var tests = []struct {
 
 	// directories
 	{filepath.Join(runtime.GOROOT(), "src/pkg/go/ast"), "ast"},
+	{filepath.Join(runtime.GOROOT(), "src/pkg/go/build"), "build"},
 	{filepath.Join(runtime.GOROOT(), "src/pkg/go/doc"), "doc"},
-	{filepath.Join(runtime.GOROOT(), "src/pkg/go/token"), "scanner"},
-	{filepath.Join(runtime.GOROOT(), "src/pkg/go/scanner"), "scanner"},
 	{filepath.Join(runtime.GOROOT(), "src/pkg/go/parser"), "parser"},
+	{filepath.Join(runtime.GOROOT(), "src/pkg/go/printer"), "printer"},
+	{filepath.Join(runtime.GOROOT(), "src/pkg/go/scanner"), "scanner"},
+	{filepath.Join(runtime.GOROOT(), "src/pkg/go/token"), "token"},
 	{filepath.Join(runtime.GOROOT(), "src/pkg/exp/types"), "types"},
 }

コアとなるコードの解説

変更は gotype_test.go ファイル内の tests という名前のグローバル変数(スライス)に対して行われています。このスライスは、struct の匿名型で構成されており、各要素はテスト対象のGoパッケージのディレクトリパスと、そのパッケージが期待されるパッケージ名を含んでいます。

  • filepath.Join(runtime.GOROOT(), "src/pkg/..."): これは、Goのインストールディレクトリ (GOROOT) を基点として、標準ライブラリの特定のパッケージへの絶対パスを構築しています。
  • "ast", "build", "doc", "parser", "printer", "scanner", "token", "types": これらは、対応するディレクトリパスにあるGoパッケージが持つべき期待されるパッケージ名です。exp/gotype のテストでは、指定されたパスのGoコードを解析し、そのパッケージ名がここで指定された期待値と一致するかどうかを検証します。

このコミットでは、既存のテストエントリの間に新しいエントリが挿入され、また既存のエントリの一部が修正されています。これにより、exp/gotype がGo標準ライブラリのより多くの部分を正確に解析できることを保証するためのテストカバレッジが拡張されています。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメント
  • Go言語のソースコード (特に src/pkg/exp/gotype および src/pkg/go 以下のパッケージ)
  • Go言語のコミット履歴 (GitHub)
  • Go言語のメーリングリストや開発者フォーラム (当時の議論を推測するため)
  • filepath.Join および runtime.GOROOT() のGo言語ドキュメント
  • 抽象構文木 (AST) に関する一般的な情報