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[インデックス 1426] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のテストスイートの一部である test/initcomma.go ファイルに対する変更です。このファイルは、Go言語における配列(array)とスライス(slice)の初期化、特にリテラルを用いた初期化の挙動を検証するためのテストケースを含んでいます。初期化時のカンマの扱い、長さの指定、そして要素のデフォルト値(ゼロ値)の挙動が主なテスト対象です。

コミット

このコミットは、Go言語の配列およびスライスの初期化に関するテストを修正し、さらに多くのテストケースを追加することで、これらのデータ構造の初期化挙動が期待通りであることを保証することを目的としています。特に、配列の長さの推論(...)や、部分的に初期化された配列の残りの要素がゼロ値で埋められる挙動に焦点を当てた詳細な検証が追加されています。

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/476e3cd7fda4ddaa2bb6a1cab1c1752adc43b018

元コミット内容

fixed and added more tests

R=r
OCL=22187
CL=22187

変更の背景

このコミットは、Go言語がまだ開発の初期段階(2009年1月)にあった時期に行われました。当時のGo言語は、言語仕様やランタイムの挙動が活発に定義・実装されている最中であり、特に配列やスライスといった基本的なデータ構造の初期化ルールは、厳密なテストを通じてその正確性と一貫性を確保する必要がありました。

initcomma.go というファイル名が示唆するように、初期化リテラルにおける末尾のカンマの扱いもテスト対象の一つでしたが、このコミットの主な目的は、配列の長さの推論機能([...])や、配列が宣言された長さよりも少ない要素で初期化された場合に、残りの要素が自動的にゼロ値で埋められるという重要な挙動を検証することにありました。これは、言語の安定性と予測可能性を確保するために不可欠なステップでした。

前提知識の解説

このコミットの変更内容を理解するためには、Go言語における以下の基本的な概念を理解しておく必要があります。

  1. 配列 (Arrays):

    • Go言語の配列は、同じ型の要素を固定長で連続して格納するデータ構造です。
    • 宣言時に [N]Type のように長さを指定します。例: var arr [5]int
    • 初期化時に要素を明示的に指定しない場合、すべての要素は型のゼロ値(数値型なら 0、文字列型なら ""、ブール型なら false など)で初期化されます。
    • 配列リテラルで初期化する際、[N]Type{elem1, elem2, ...} のように指定します。指定された要素数が N より少ない場合、残りの要素はゼロ値で埋められます。
    • [...]Type{elem1, elem2, ...} のように ... を使用すると、配列の長さは初期化リテラルの要素数から自動的に推論されます。
  2. スライス (Slices):

    • スライスは、配列の一部を参照する動的なデータ構造です。配列とは異なり、長さは固定ではありません。
    • 宣言時に []Type のように長さを指定せずに宣言します。例: var s []int
    • スライスリテラルで初期化する際、[]Type{elem1, elem2, ...} のように指定します。
  3. ゼロ値 (Zero Values):

    • Go言語では、変数を宣言するだけで初期化しなかった場合、その型に応じた「ゼロ値」が自動的に割り当てられます。
    • int 型のゼロ値は 0 です。
    • この特性は、配列が部分的に初期化された場合に、残りの要素が自動的にゼロ値で埋められる挙動の根拠となります。
  4. panicln 関数:

    • Go言語のテストコードでよく見られる panicln は、テストが失敗した場合にプログラムの実行を停止し、指定されたメッセージを出力するための関数です。これは、テストフレームワークがまだ成熟していなかった初期のGo言語のテストでよく使われていたパターンです。

技術的詳細

このコミットでは、test/initcomma.go ファイル内の配列とスライスの初期化テストが大幅に強化されています。

変更前は、var a = []int { 1, 2, } のようにスライスとして宣言され、var b = []int { } のように空のスライスとして宣言されていました。テストも len のチェックのみで、要素の値の検証は行われていませんでした。

変更後、以下の点が改善されました。

  1. var b の変更:

    • var b = []int { } (スライス) から var b = [5]int { 1,2,3 } (長さ5の配列) に変更されました。
    • この変更により、配列 b は最初の3つの要素が 1, 2, 3 で初期化され、残りの b[3]b[4]int 型のゼロ値である 0 で自動的に初期化される挙動がテスト対象となりました。
  2. var d の追加:

    • var d = [...]int { 1,2,3 } という新しい配列 d が追加されました。
    • ... を使用することで、配列の長さが初期化リテラルの要素数(この場合は3)から自動的に推論される挙動がテストされます。
  3. 詳細な値の検証の追加:

    • main 関数内に、a, b, c, d の各要素の値が期待通りであるかを検証する if 文が多数追加されました。
    • 特に b については、b[0] から b[4] までのすべての要素が、明示的に初期化された値とゼロ値の両方を含めて正しく設定されているかを確認しています。
    • cpanicln メッセージのタイプミス ("len a""len d" に) も修正されていますが、これは c のテストが d のテストと混同されていた可能性を示唆しています。

これらの変更により、Go言語の配列とスライスの初期化、特にゼロ値の自動割り当てと長さの推論に関する挙動が、より堅牢にテストされるようになりました。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/test/initcomma.go
+++ b/test/initcomma.go
@@ -6,12 +6,29 @@
 
  package main
 
-var a = []int { 1, 2, }\n-var b = []int { }\n+var a = []int { 1,2, }\n+var b = [5]int { 1,2,3 }\n var c = []int { 1 }\n+var d = [...]int { 1,2,3 }\n 
  func main() {
  	if len(a) != 2 { panicln("len a", len(a)) }\n  	if len(b) != 5 { panicln("len b", len(b)) }\n-\tif len(c) != 1 { panicln("len a", len(c)) }\n+\tif len(c) != 1 { panicln("len d", len(c)) }\n+\tif len(d) != 3 { panicln("len c", len(d)) }\n+\n+\tif a[0] != 1 { panicln("a[0]", a[0]) }\n+\tif a[1] != 2 { panicln("a[1]", a[1]) }\n+\n+\tif b[0] != 1 { panicln("b[0]", b[0]) }\n+\tif b[1] != 2 { panicln("b[1]", b[1]) }\n+\tif b[2] != 3 { panicln("b[2]", b[2]) }\n+\tif b[3] != 0 { panicln("b[3]\", b[3]) }\n+\tif b[4] != 0 { panicln("b[4]\", b[4]) }\n+\n+\tif c[0] != 1 { panicln("c[0]", c[0]) }\n+\n+\tif d[0] != 1 { panicln("d[0]", d[0]) }\n+\tif d[1] != 2 { panicln("d[1]", d[1]) }\n+\tif d[2] != 3 { panicln("d[2]", d[2]) }\
  }\n

コアとなるコードの解説

  • var a = []int { 1,2, }:

    • 元のコードでは 1, 2, と末尾にカンマがありましたが、1,2, と変更され、末尾のカンマが削除されました。これは単なるフォーマットの調整である可能性が高いです。Go言語では、リテラルの末尾にカンマを置くことは許容されていますが、この変更は一貫性のためか、あるいは初期のパーサーの挙動をテストするためかもしれません。
    • a は引き続きスライスとして宣言されています。
    • if a[0] != 1 { ... }if a[1] != 2 { ... } が追加され、スライス a の要素が正しく初期化されているかを確認しています。
  • var b = [5]int { 1,2,3 }:

    • 元の var b = []int { } (空のスライス) から、長さ5の配列 [5]int に変更され、最初の3つの要素 1,2,3 で初期化されています。
    • この変更により、配列の残りの要素 (b[3]b[4]) が自動的に int 型のゼロ値である 0 で初期化されるGo言語の重要な挙動がテストされるようになりました。
    • if b[0] != 1 { ... } から if b[4] != 0 { ... } までの詳細なチェックが追加され、配列 b のすべての要素が期待通りの値(明示的に指定された値とゼロ値)を持っていることを検証しています。
  • var c = []int { 1 }:

    • この変数の宣言自体に変更はありません。
    • if len(c) != 1 { panicln("len d", len(c)) } の行で、panicln のメッセージが "len a" から "len d" に修正されました。これは、おそらくコピー&ペーストによるタイプミスか、テストの意図が変更されたことによる修正です。c の長さのテストであるため、メッセージは len c が適切ですが、この時点では len d となっています。
  • var d = [...]int { 1,2,3 }:

    • 新しく追加された配列です。
    • [...] 構文は、配列の長さが初期化リテラルの要素数(この場合は3)から自動的に推論されることを示します。
    • if len(d) != 3 { ... } が追加され、推論された長さが正しいことを確認しています。
    • if d[0] != 1 { ... } から if d[2] != 3 { ... } までのチェックが追加され、配列 d の要素が正しく初期化されていることを検証しています。

これらの変更は、Go言語の配列とスライスの初期化に関する言語仕様の正確な実装を保証するための、基本的ながらも重要なテストの強化を示しています。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語のソースコード (GitHub): https://github.com/golang/go
  • Go言語の配列とスライスの基本概念に関する一般的なプログラミングリソース。
  • Go言語のゼロ値に関する情報。