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[インデックス 14337] ファイルの概要

このコミットは、Goコンパイラのsrc/cmd/gc/export.cファイルに対する修正です。export.cは、Goコンパイラにおいて、パッケージの外部に公開される(エクスポートされる)型や関数の情報を、他のパッケージがインポートできるようにするためのメタデータとして出力する役割を担っています。具体的には、コンパイルされたGoパッケージのインターフェース定義を生成する部分に関連しています。

このファイルは、Go言語のコンパイラ(gc、現在はcmd/compileに統合)の一部であり、Goプログラムがどのようにコンパイルされ、異なるパッケージ間で型情報が共有されるかを理解する上で重要です。

コミット

commit c6f363b22abe905abb5f2c17f4b1356c6c74aef9
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date:   Wed Nov 7 09:14:21 2012 -0500

    cmd/gc: fix go:nointerface export comment
    
    R=ken
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/6815073

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/c6f363b22abe905abb5f2c17f4b1356c6c74aef9

元コミット内容

cmd/gc: fix go:nointerface export comment

このコミットの目的は、Goコンパイラ(cmd/gc)において、go:nointerfaceディレクティブに関するエクスポートコメントの出力位置を修正することです。

変更の背景

Go言語には、コンパイラに対する特別な指示を与えるための「コンパイラディレクティブ」または「ビルドタグ」と呼ばれるコメント形式が存在します。//go:nointerfaceもその一つです。このディレクティブは、特定のメソッドがインターフェース型としてエクスポートされる際に、そのメソッドがインターフェースのメソッドセットに含まれないようにするために使用されます。これは、主に内部的な最適化や、特定の型が外部に公開されるインターフェースとして扱われることを防ぐ目的で使われることがあります。

このコミットが行われた2012年当時、Goコンパイラはexport.c内で型情報をエクスポートする際に、//go:nointerfaceコメントの出力位置が適切ではありませんでした。具体的には、メソッドのインライン化に関する処理の後にコメントが出力されており、これが意図しない挙動や、生成されるエクスポート情報の整合性の問題を引き起こす可能性がありました。

変更の背景には、コンパイラが生成するエクスポートデータ(.aファイルなどに含まれる)の正確性を保証し、go:nointerfaceディレクティブの意図が正しく反映されるようにするという目的があります。コメントの出力位置を修正することで、コンパイラが生成するメタデータがより正確になり、Goツールチェーンの他の部分(例えば、他のパッケージがこの情報を読み込む際)での解釈が正しく行われるようになります。

前提知識の解説

Goコンパイラ (gc / cmd/compile)

Go言語の公式コンパイラは、かつてはgc(Go Compiler)として知られていましたが、現在はcmd/compileパッケージとしてGoのソースツリー内に存在します。このコンパイラは、Goのソースコードを機械語に変換するだけでなく、型情報やシンボル情報を他のパッケージが利用できるようにエクスポートする機能も持っています。export.cは、このエクスポート処理の一部を担うC言語で書かれたファイルでした(Goコンパイラは初期にはC言語で書かれていましたが、現在はGo言語自身で書かれています)。

//go:nointerface ディレクティブ

//go:nointerfaceは、Goコンパイラに対する特殊な指示(ディレクティブ)です。このディレクティブがメソッドの定義の直前に記述されると、そのメソッドは、その型がインターフェースとしてエクスポートされる際に、インターフェースのメソッドセットには含まれないようにコンパイラに指示します。

例えば、以下のようなコードがあったとします。

type MyType struct{}

//go:nointerface
func (m MyType) internalMethod() {
    // ...
}

func (m MyType) PublicMethod() {
    // ...
}

この場合、MyTypeがインターフェースとして扱われる際、internalMethodはインターフェースのメソッドセットには含まれませんが、PublicMethodは含まれます。これは、特定のメソッドが型の内部的な実装詳細であり、外部のインターフェース契約の一部ではないことをコンパイラに伝えるために使用されます。主に、コンパイラの最適化や、特定のAPI設計の意図を明確にするために使われます。

export.c の役割

export.cは、Goコンパイラがコンパイル時に生成するパッケージのエクスポートデータ(go.aファイルなどに含まれる)を扱うためのファイルです。このエクスポートデータには、パッケージが外部に公開する型、関数、変数などの情報が含まれており、他のGoパッケージがimport文を使ってそのパッケージを利用する際に、型チェックやリンクのために必要となります。

dumpexporttype関数は、このファイル内で特定の型のエクスポート情報をダンプ(出力)する役割を担っています。これには、その型が持つメソッドの情報も含まれます。

Bprint 関数

Bprintは、Goコンパイラの内部で使われるバッファリングされた出力関数です。export.cのようなコンパイラのバックエンド部分で、生成されるエクスポートデータやデバッグ情報を効率的にファイルに書き出すために使用されます。Bprint(bout, ...)は、boutという出力バッファに対してフォーマットされた文字列を書き込むことを意味します。

Type 構造体と f->nointerface

Goコンパイラの内部では、Go言語の型はTypeというC言語の構造体で表現されます。このType構造体には、型の種類、フィールド、メソッドなどの情報が含まれています。

f->nointerfaceは、このType構造体に関連するフィールド(または、メソッドを表す構造体Fieldのフィールド)で、そのメソッドが//go:nointerfaceディレクティブを持っているかどうかを示すブール値(真偽値)フラグです。このフラグがtrueの場合、そのメソッドはインターフェースとしてエクスポートされる際に除外されるべきであることを示します。

技術的詳細

このコミットの技術的な核心は、src/cmd/gc/export.c内のdumpexporttype関数における//go:nointerfaceコメントの出力ロジックの変更です。

dumpexporttype関数は、Goの型(Type *t)を受け取り、その型が持つメソッド(f)をループ処理しながら、エクスポート情報をbout(出力バッファ)に書き出します。

変更前のコードでは、f->nointerfaceが真の場合に//go:nointerfaceコメントを出力するBprint呼び出しが、メソッドのインライン化に関する条件分岐(if (f->type->nname && f->type->nname->inl))の内側、かつtypecheckinl関数の呼び出しのに配置されていました。

// 変更前
if (f->type->nname && f->type->nname->inl) {
    // ...
    if(debug['l'] < 2)
        typecheckinl(f->type->nname);
    if(f->nointerface) // ここにあった
        Bprint(bout, "\\t//go:nointerface\\n");
    Bprint(bout, "\\tfunc (%#T) %#hhS%#hT { %#H }\\n", getthisx(f->type)->type, f->sym, f->type, f->type->nname->inl);
    // ...
} else
// ...

この配置の問題点は、//go:nointerfaceコメントが、メソッドがインライン化される場合にのみ、かつインライン化関連の処理の後にしか出力されない可能性があったことです。//go:nointerfaceディレクティブは、メソッドのインライン化とは直接関係なく、そのメソッドがインターフェースに含まれるべきかどうかという、より基本的なエクスポートの属性を定義します。したがって、このコメントは、メソッドの定義がエクスポートされる際に、そのメソッドの属性として常に適切に出力されるべきです。

変更後のコードでは、//go:nointerfaceコメントの出力が、メソッドのループ(for(i=0; i<n; i++) { f = m[i]; ... })の直後、かつインライン化に関する条件分岐の外側に移動されました。

// 変更後
for(i=0; i<n; i++) {
    f = m[i];
    if(f->nointerface) // ここに移動した
        Bprint(bout, "\\t//go:nointerface\\n");
    if (f->type->nname && f->type->nname->inl) {
        // ...
    } else
    // ...
}

この修正により、//go:nointerfaceコメントは、そのメソッドがインライン化されるかどうかにかかわらず、常にメソッドのエクスポート情報の先頭に適切に出力されるようになります。これにより、生成されるエクスポートデータがgo:nointerfaceディレクティブの意図を正確に反映し、他のツールやコンパイラのフェーズがこの情報を正しく解釈できるようになります。これは、コンパイラが生成するメタデータの正確性と整合性を保つ上で重要な修正です。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/cmd/gc/export.c
+++ b/src/cmd/gc/export.c
@@ -273,13 +273,13 @@ dumpexporttype(Type *t)
 	Bprint(bout, "\ttype %#S %#lT\n", t->sym, t);
 	for(i=0; i<n; i++) {
 		f = m[i];
+		if(f->nointerface)
+			Bprint(bout, "\t//go:nointerface\n");
 		if (f->type->nname && f->type->nname->inl) { // nname was set by caninl
 			// when lazily typechecking inlined bodies, some re-exported ones may not have been typechecked yet.
 			// currently that can leave unresolved ONONAMEs in import-dot-ed packages in the wrong package
 			if(debug['l'] < 2)
 				typecheckinl(f->type->nname);
-			if(f->nointerface)
-				Bprint(bout, "\t//go:nointerface\n");
 			Bprint(bout, "\tfunc (%#T) %#hhS%#hT { %#H }\n", getthisx(f->type)->type, f->sym, f->type, f->type->nname->inl);
 			reexportdeplist(f->type->nname->inl);
 		} else

コアとなるコードの解説

上記のdiffは、src/cmd/gc/export.cファイル内のdumpexporttype関数における変更を示しています。

  • -で始まる行(削除された行):

    -			if(f->nointerface)
    -				Bprint(bout, "\t//go:nointerface\n");
    

    これらの行は、元のコードでif (f->type->nname && f->type->nname->inl)という条件分岐の内部に存在していました。これは、メソッドがインライン化される場合にのみ、//go:nointerfaceコメントが出力されることを意味していました。この位置では、go:nointerfaceディレクティブの意図が常に正しく反映されない可能性がありました。

  • +で始まる行(追加された行):

    +		if(f->nointerface)
    +			Bprint(bout, "\t//go:nointerface\n");
    

    これらの行は、for(i=0; i<n; i++) { f = m[i]; ... }というメソッドをループ処理するブロックの直後、かつインライン化に関する条件分岐の外側に移動されました。この新しい位置では、f->nointerfaceフラグが設定されている(つまり、//go:nointerfaceディレクティブが指定されている)メソッドであれば、そのメソッドがインライン化されるかどうかにかかわらず、常に//go:nointerfaceコメントがエクスポート情報として出力されるようになります。

この変更により、Goコンパイラが生成するエクスポートデータにおいて、//go:nointerfaceディレクティブのセマンティクスがより正確に反映されるようになりました。これは、コンパイラの内部的な整合性を高め、Go言語の機能が意図通りに動作することを保証するための重要な修正です。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語のコンパイラディレクティブに関する一般的な情報:
  • Goコンパイラの歴史と構造に関する情報(gcからcmd/compileへの移行など):
  • Goコンパイラの内部構造に関する一般的な情報(Type構造体など):
    • Goのソースコード(特にsrc/cmd/compile/internal/types/type.goや関連ファイル)
    • Goコンパイラの設計に関するブログ記事やプレゼンテーション(例: "Go's Toolchain" by Russ Cox)
  • //go:nointerfaceディレクティブの具体的な使用例や目的に関する情報:
    • Goの標準ライブラリのソースコード内で//go:nointerfaceが使用されている箇所(例: src/runtime/proc.goなど)
    • GoのIssueトラッカーやメーリングリストでの議論

[インデックス 14337] ファイルの概要

このコミットは、Goコンパイラのsrc/cmd/gc/export.cファイルに対する修正です。export.cは、Goコンパイラにおいて、パッケージの外部に公開される(エクスポートされる)型や関数の情報を、他のパッケージがインポートできるようにするためのメタデータとして出力する役割を担っています。具体的には、コンパイルされたGoパッケージのインターフェース定義を生成する部分に関連しています。

このファイルは、Go言語のコンパイラ(gc、現在はcmd/compileに統合)の一部であり、Goプログラムがどのようにコンパイルされ、異なるパッケージ間で型情報が共有されるかを理解する上で重要です。

コミット

commit c6f363b22abe905abb5f2c17f4b1356c6c74aef9
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date:   Wed Nov 7 09:14:21 2012 -0500

    cmd/gc: fix go:nointerface export comment
    
    R=ken
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/6815073

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/c6f363b22abe905abb5f2c17f4b1356c6c74aef9

元コミット内容

cmd/gc: fix go:nointerface export comment

このコミットの目的は、Goコンパイラ(cmd/gc)において、go:nointerfaceディレクティブに関するエクスポートコメントの出力位置を修正することです。

変更の背景

Go言語には、コンパイラに対する特別な指示を与えるための「コンパイラディレクティブ」または「ビルドタグ」と呼ばれるコメント形式が存在します。//go:nointerfaceもその一つです。このディレクティブは、特定のメソッドがインターフェース型としてエクスポートされる際に、そのメソッドがインターフェースのメソッドセットに含まれないようにするために使用されます。これは、主に内部的な最適化や、特定の型が外部に公開されるインターフェースとして扱われることを防ぐ目的で使われることがあります。

このコミットが行われた2012年当時、Goコンパイラはexport.c内で型情報をエクスポートする際に、//go:nointerfaceコメントの出力位置が適切ではありませんでした。具体的には、メソッドのインライン化に関する処理の後にコメントが出力されており、これが意図しない挙動や、生成されるエクスポート情報の整合性の問題を引き起こす可能性がありました。

変更の背景には、コンパイラが生成するエクスポートデータ(.aファイルなどに含まれる)の正確性を保証し、go:nointerfaceディレクティブの意図が正しく反映されるようにするという目的があります。コメントの出力位置を修正することで、コンパイラが生成するメタデータがより正確になり、Goツールチェーンの他の部分(例えば、他のパッケージがこの情報を読み込む際)での解釈が正しく行われるようになります。

前提知識の解説

Goコンパイラ (gc / cmd/compile)

Go言語の公式コンパイラは、かつてはgc(Go Compiler)として知られていましたが、現在はcmd/compileパッケージとしてGoのソースツリー内に存在します。このコンパイラは、Goのソースコードを機械語に変換するだけでなく、型情報やシンボル情報を他のパッケージが利用できるようにエクスポートする機能も持っています。export.cは、このエクスポート処理の一部を担うC言語で書かれたファイルでした(Goコンパイラは初期にはC言語で書かれていましたが、現在はGo言語自身で書かれています)。

//go:nointerface ディレクティブ

//go:nointerfaceは、Goコンパイラに対する特殊な指示(ディレクティブ)です。このディレクティブがメソッドの定義の直前に記述されると、そのメソッドは、その型がインターフェースとしてエクスポートされる際に、インターフェースのメソッドセットには含まれないようにコンパイラに指示します。

例えば、以下のようなコードがあったとします。

type MyType struct{}

//go:nointerface
func (m MyType) internalMethod() {
    // ...
}

func (m MyType) PublicMethod() {
    // ...
}

この場合、MyTypeがインターフェースとして扱われる際、internalMethodはインターフェースのメソッドセットには含まれませんが、PublicMethodは含まれます。これは、特定のメソッドが型の内部的な実装詳細であり、外部のインターフェース契約の一部ではないことをコンパイラに伝えるために使用されます。主に、コンパイラの最適化や、特定のAPI設計の意図を明確にするために使われます。

export.c の役割

export.cは、Goコンパイラがコンパイル時に生成するパッケージのエクスポートデータ(go.aファイルなどに含まれる)を扱うためのファイルです。このエクスポートデータには、パッケージが外部に公開する型、関数、変数などの情報が含まれており、他のGoパッケージがimport文を使ってそのパッケージを利用する際に、型チェックやリンクのために必要となります。

dumpexporttype関数は、このファイル内で特定の型のエクスポート情報をダンプ(出力)する役割を担っています。これには、その型が持つメソッドの情報も含まれます。

Bprint 関数

Bprintは、Goコンパイラの内部で使われるバッファリングされた出力関数です。export.cのようなコンパイラのバックエンド部分で、生成されるエクスポートデータやデバッグ情報を効率的にファイルに書き出すために使用されます。Bprint(bout, ...)は、boutという出力バッファに対してフォーマットされた文字列を書き込むことを意味します。

Type 構造体と f->nointerface

Goコンパイラの内部では、Go言語の型はTypeというC言語の構造体で表現されます。このType構造体には、型の種類、フィールド、メソッドなどの情報が含まれています。

f->nointerfaceは、このType構造体に関連するフィールド(または、メソッドを表す構造体Fieldのフィールド)で、そのメソッドが//go:nointerfaceディレクティブを持っているかどうかを示すブール値(真偽値)フラグです。このフラグがtrueの場合、そのメソッドはインターフェースとしてエクスポートされる際に除外されるべきであることを示します。

技術的詳細

このコミットの技術的な核心は、src/cmd/gc/export.c内のdumpexporttype関数における//go:nointerfaceコメントの出力ロジックの変更です。

dumpexporttype関数は、Goの型(Type *t)を受け取り、その型が持つメソッド(f)をループ処理しながら、エクスポート情報をbout(出力バッファ)に書き出します。

変更前のコードでは、f->nointerfaceが真の場合に//go:nointerfaceコメントを出力するBprint呼び出しが、メソッドのインライン化に関する条件分岐(if (f->type->nname && f->type->nname->inl))の内側、かつtypecheckinl関数の呼び出しのに配置されていました。

// 変更前
if (f->type->nname && f->type->nname->inl) {
    // ...
    if(debug['l'] < 2)
        typecheckinl(f->type->nname);
    if(f->nointerface) // ここにあった
        Bprint(bout, "\\t//go:nointerface\\n");
    Bprint(bout, "\\tfunc (%#T) %#hhS%#hT { %#H }\\n", getthisx(f->type)->type, f->sym, f->type, f->type->nname->inl);
    // ...
} else
// ...

この配置の問題点は、//go:nointerfaceコメントが、メソッドがインライン化される場合にのみ、かつインライン化関連の処理の後にしか出力されない可能性があったことです。//go:nointerfaceディレクティブは、メソッドのインライン化とは直接関係なく、そのメソッドがインターフェースに含まれるべきかどうかという、より基本的なエクスポートの属性を定義します。したがって、このコメントは、メソッドの定義がエクスポートされる際に、そのメソッドの属性として常に適切に出力されるべきです。

変更後のコードでは、//go:nointerfaceコメントの出力が、メソッドのループ(for(i=0; i<n; i++) { f = m[i]; ... })の直後、かつインライン化に関する条件分岐の外側に移動されました。

// 変更後
for(i=0; i<n; i++) {
    f = m[i];
    if(f->nointerface) // ここに移動した
        Bprint(bout, "\\t//go:nointerface\\n");
    if (f->type->nname && f->type->nname->inl) {
        // ...
    } else
    // ...
}

この修正により、//go:nointerfaceコメントは、そのメソッドがインライン化されるかどうかにかかわらず、常にメソッドのエクスポート情報の先頭に適切に出力されるようになります。これにより、生成されるエクスポートデータがgo:nointerfaceディレクティブの意図を正確に反映し、他のツールやコンパイラのフェーズがこの情報を正しく解釈できるようになります。これは、コンパイラが生成するメタデータの正確性と整合性を保つ上で重要な修正です。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/cmd/gc/export.c
+++ b/src/cmd/gc/export.c
@@ -273,13 +273,13 @@ dumpexporttype(Type *t)
 	Bprint(bout, "\ttype %#S %#lT\n", t->sym, t);
 	for(i=0; i<n; i++) {
 		f = m[i];
+		if(f->nointerface)
+			Bprint(bout, "\t//go:nointerface\n");
 		if (f->type->nname && f->type->nname->inl) { // nname was set by caninl
 			// when lazily typechecking inlined bodies, some re-exported ones may not have been typechecked yet.
 			// currently that can leave unresolved ONONAMEs in import-dot-ed packages in the wrong package
 			if(debug['l'] < 2)
 				typecheckinl(f->type->nname);
-			if(f->nointerface)
-				Bprint(bout, "\t//go:nointerface\n");
 			Bprint(bout, "\tfunc (%#T) %#hhS%#hT { %#H }\n", getthisx(f->type)->type, f->sym, f->type, f->type->nname->inl);
 			reexportdeplist(f->type->nname->inl);
 		} else

コアとなるコードの解説

上記のdiffは、src/cmd/gc/export.cファイル内のdumpexporttype関数における変更を示しています。

  • -で始まる行(削除された行):

    -			if(f->nointerface)
    -				Bprint(bout, "\t//go:nointerface\n");
    

    これらの行は、元のコードでif (f->type->nname && f->type->nname->inl)という条件分岐の内部に存在していました。これは、メソッドがインライン化される場合にのみ、//go:nointerfaceコメントが出力されることを意味していました。この位置では、go:nointerfaceディレクティブの意図が常に正しく反映されない可能性がありました。

  • +で始まる行(追加された行):

    +		if(f->nointerface)
    +			Bprint(bout, "\t//go:nointerface\n");
    

    これらの行は、for(i=0; i<n; i++) { f = m[i]; ... }というメソッドをループ処理するブロックの直後、かつインライン化に関する条件分岐の外側に移動されました。この新しい位置では、f->nointerfaceフラグが設定されている(つまり、//go:nointerfaceディレクティブが指定されている)メソッドであれば、そのメソッドがインライン化されるかどうかにかかわらず、常に//go:nointerfaceコメントがエクスポート情報として出力されるようになります。

この変更により、Goコンパイラが生成するエクスポートデータにおいて、//go:nointerfaceディレクティブのセマンティクスがより正確に反映されるようになりました。これは、コンパイラの内部的な整合性を高め、Go言語の機能が意図通りに動作することを保証するための重要な修正です。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語のコンパイラディレクティブに関する一般的な情報:
  • Goコンパイラの歴史と構造に関する情報(gcからcmd/compileへの移行など):
  • Goコンパイラの内部構造に関する一般的な情報(Type構造体など):
    • Goのソースコード(特にsrc/cmd/compile/internal/types/type.goや関連ファイル)
    • Goコンパイラの設計に関するブログ記事やプレゼンテーション(例: "Go's Toolchain" by Russ Cox)
  • //go:nointerfaceディレクティブの具体的な使用例や目的に関する情報:
    • Goの標準ライブラリのソースコード内で//go:nointerfaceが使用されている箇所(例: src/runtime/proc.goなど)
    • GoのIssueトラッカーやメーリングリストでの議論
    • Web検索結果: //go:nointerfaceディレクティブは、主にGoコンパイラとランタイムの内部で使用されるGoコンパイラディレクティブ(プラグマとも呼ばれる)です。//go:generate//go:buildのような他のGoコンパイラディレクティブとは異なり、//go:nointerfaceはほとんど文書化されていません。その目的は、メソッドがインターフェースを満たすために使用されるのを防ぐことであるとされており、nilメソッドを持つ非nilインターフェースにつながる可能性があると指摘されています。その文書化されていない性質と内部的な性質のため、一般的なGo開発者がアプリケーションで通常使用するディレクティブではありません。