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[インデックス 14359] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のランタイムパッケージ内のcrash_test.goファイルに対する変更です。crash_test.goは、Goプログラムがクラッシュした場合のランタイムの挙動をテストするために設計されたファイルです。具体的には、Goランタイムが予期せぬ終了(クラッシュ)を適切に処理し、デバッグ情報などを生成できるかを確認するテストが含まれています。

コミット

このコミットは、NetBSDオペレーティングシステム上でのGoランタイムのクラッシュテストを再有効化するものです。以前はNetBSD上でこのテストが失敗する問題があったため無効化されていましたが、その問題が特定され修正されたため、テストが再び実行されるように変更されました。

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/4e75d2c7d5234f3bd9789b643e30b744de96b348

元コミット内容

commit 4e75d2c7d5234f3bd9789b643e30b744de96b348
Author: Joel Sing <jsing@google.com>
Date:   Fri Nov 9 03:41:43 2012 +1100

    runtime: re-enable crash test on NetBSD
    
    Re-enable the crash tests on NetBSD now that the issue has been
    identified and fixed.
    
    R=golang-dev, bradfitz
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/6813100

変更の背景

Go言語のランタイムには、プログラムが異常終了(クラッシュ)した際に、その状態を適切に処理し、デバッグに役立つ情報(例えばスタックトレース)を生成する機能が組み込まれています。この機能が正しく動作するかを確認するために、crash_test.goのようなテストが存在します。

過去のある時点において、NetBSD環境でこのクラッシュテストを実行すると、予期せぬ失敗や遅延が発生する問題がありました。コミットメッセージのTODO(jsing): figure out why this causes delayed failures on NetBSD - http://golang.org/issue/3954というコメントから、この問題が認識されており、一時的にNetBSD上でのテスト実行がスキップされるようにコードが変更されていたことがわかります。

このコミットが行われた時点では、NetBSDにおけるクラッシュテストの失敗原因が特定され、その問題が修正されたため、テストを再び有効にすることが可能になりました。これにより、NetBSD環境でのGoランタイムの安定性と信頼性が向上したことを確認できるようになります。

前提知識の解説

Go言語のruntimeパッケージ

runtimeパッケージは、Goプログラムの実行環境(ランタイム)と直接対話するための低レベルな機能を提供します。これには、ガベージコレクション、ゴルーチンのスケジューリング、システムコール、そしてプログラムのクラッシュ処理などが含まれます。crash_test.goはこのパッケージの一部であり、ランタイムの堅牢性を保証するための重要なテストです。

testingパッケージ

Go言語の標準ライブラリであるtestingパッケージは、ユニットテスト、ベンチマークテスト、および例(example)の記述をサポートします。テスト関数はTestで始まり、*testing.T型の引数を取ります。

  • t.Logf(...): テスト中にログメッセージを出力するために使用されます。テストが失敗した場合でも、このメッセージは表示されます。
  • t.Skipf(...): 特定の条件が満たされた場合にテストをスキップするために使用されます。このコミットでは、特定のOSでテストをスキップするために使われていました。

runtime.GOOS

runtime.GOOSは、Goプログラムがコンパイルされ、実行されているオペレーティングシステムの名前を表す文字列定数です。例えば、Linuxでは"linux"、macOSでは"darwin"、Windowsでは"windows"、そしてNetBSDでは"netbsd"となります。この定数を利用することで、特定のOSに依存するコードの条件付きコンパイルや実行が可能になります。これはクロスプラットフォーム開発において非常に重要な機能です。

クラッシュテスト

クラッシュテストは、ソフトウェアが予期せぬエラーや異常な入力に遭遇した際に、どのように振る舞うかを検証するテストの一種です。Go言語の文脈では、ランタイムがパニック(Goにおける実行時エラーの一種)やセグメンテーション違反などの致命的なエラーに遭遇した際に、適切にスタックトレースを出力し、プログラムが終了するかどうかなどを確認します。これらのテストは、システムの安定性とデバッグの容易性を確保するために不可欠です。

TODOコメント

ソースコード内のTODOコメントは、将来的に実装または修正が必要な項目を示す一般的な慣習です。このコミットでは、TODO(brainman)TODO(jsing)というコメントがあり、それぞれ異なる開発者が担当する、または過去に担当していた未解決の問題を示唆しています。

技術的詳細

このコミットの核心は、src/pkg/runtime/crash_test.goファイル内の条件付きコンパイルロジックの変更です。

元のコードでは、testCrashHandler関数内で、runtime.GOOS"freebsd"または"netbsd"の場合にテストをスキップする条件が設定されていました。

func testCrashHandler(t *testing.T, ct *crashTest) {
	if runtime.GOOS == "freebsd" || runtime.GOOS == "netbsd" {
		// TODO(brainman): do not know why this test fails on freebsd
		// TODO(jsing): figure out why this causes delayed failures
		// on NetBSD - http://golang.org/issue/3954
		t.Logf("skipping test on %q", runtime.GOOS)
		return
	}
	// ... (rest of the test logic)
}

このコミットでは、runtime.GOOS == "netbsd"の条件が削除され、"freebsd"の場合のみテストがスキップされるように変更されました。

func testCrashHandler(t *testing.T, ct *crashTest) {
	if runtime.GOOS == "freebsd" {
		// TODO(brainman): do not know why this test fails on freebsd
		t.Logf("skipping test on %q", runtime.GOOS)
		return
	}
	// ... (rest of the test logic)
}

これにより、NetBSD環境でGoのテストスイートが実行される際に、crash_test.go内のクラッシュテストが実際に実行されるようになります。これは、NetBSDにおけるGoランタイムの安定性向上と、関連するバグが修正されたことの証拠となります。

TODO(jsing)コメントが削除されたことも重要です。これは、Joel Sing氏が担当していたNetBSDでの遅延失敗の問題が解決されたことを意味します。一方で、TODO(brainman)コメントは残されており、FreeBSDでのテスト失敗問題は依然として未解決であることが示唆されています。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/pkg/runtime/crash_test.go
+++ b/src/pkg/runtime/crash_test.go
@@ -22,10 +22,8 @@ type crashTest struct {
 // both main (m0) and non-main threads (m).
 
 func testCrashHandler(t *testing.T, ct *crashTest) {
-	if runtime.GOOS == "freebsd" || runtime.GOOS == "netbsd" {
+	if runtime.GOOS == "freebsd" {
 		// TODO(brainman): do not know why this test fails on freebsd
-		// TODO(jsing): figure out why this causes delayed failures
-		// on NetBSD - http://golang.org/issue/3954
 		t.Logf("skipping test on %q", runtime.GOOS)
 		return
 	}

コアとなるコードの解説

変更されたコードは、testCrashHandler関数内の条件分岐です。

  • 変更前: if runtime.GOOS == "freebsd" || runtime.GOOS == "netbsd"

    • この条件は、「現在のOSがFreeBSDであるか、またはNetBSDであるならば」という意味です。
    • この条件が真の場合、テストはt.Logf("skipping test on %q", runtime.GOOS)によってログメッセージを出力し、returnによってテスト関数の実行を終了(スキップ)していました。
    • これにより、FreeBSDとNetBSDの両方でクラッシュテストが実行されないようになっていました。
    • コメントには、NetBSDでの問題(TODO(jsing))とFreeBSDでの問題(TODO(brainman))が明記されていました。
  • 変更後: if runtime.GOOS == "freebsd"

    • この条件は、「現在のOSがFreeBSDであるならば」という意味です。
    • || runtime.GOOS == "netbsd"の部分が削除されました。
    • これにより、NetBSD環境ではこのif条件が偽となり、テストがスキップされずに実行されるようになります。
    • NetBSDに関するTODO(jsing)コメントも削除され、問題が解決されたことがコードレベルで示されています。

この変更は、NetBSDにおけるGoランタイムの安定性が向上し、クラッシュテストがこのOS上で正しく動作するようになったことを直接的に示しています。

関連リンク

参考にした情報源リンク