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[インデックス 14377] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の公式FAQドキュメント(doc/go_faq.html)に対する変更です。具体的には、「ゴルーチンとして実行されるクロージャはどうなりますか?」というセクションに、go vetツールの使用を推奨する記述が追加されています。

コミット

commit 89ed40c44bf6818ec76108b95cf9268d88ca156b
Author: Christian Himpel <chressie@googlemail.com>
Date:   Mon Nov 12 07:25:54 2012 -0800

    faq: mention go vet in "What happens with closures running as goroutines?"
    
    R=r
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/6822111

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/89ed40c44bf6818ec76108b95cf9268d88ca156b

元コミット内容

faq: mention go vet in "What happens with closures running as goroutines?"

R=r
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/6822111

変更の背景

Go言語において、forループ内でゴルーチンとしてクロージャを起動する際に、ループ変数のキャプチャに関する一般的な落とし穴が存在します。この問題は、クロージャがループ変数の「値」ではなく「変数そのもの」を参照するため、ゴルーチンが実際に実行される時にはループが既に終了しており、ループ変数が最後の値になっている、というものです。これにより、プログラマが意図しない結果(例えば、すべてのゴルーチンが同じ最終値を出力する)が生じることがあります。

このコミットは、このような一般的な誤解やバグを未然に防ぐため、公式FAQドキュメントの該当セクションに、静的解析ツールであるgo vetの利用を促す記述を追加することを目的としています。go vetは、このような特定のコードパターンを検出する能力を持っており、開発者が問題を早期に特定し修正するのに役立ちます。

前提知識の解説

1. Goにおけるゴルーチン (Goroutines)

ゴルーチンは、Go言語における軽量な並行実行単位です。OSのスレッドよりもはるかに軽量であり、数千、数万のゴルーチンを同時に実行することが可能です。goキーワードを関数の呼び出しの前に置くことで、その関数を新しいゴルーチンとして実行できます。

package main

import (
	"fmt"
	"time"
)

func sayHello() {
	fmt.Println("Hello from goroutine!")
}

func main() {
	go sayHello() // sayHelloを新しいゴルーチンとして実行
	fmt.Println("Hello from main goroutine!")
	time.Sleep(1 * time.Second) // ゴルーチンが実行されるのを待つ
}

2. Goにおけるクロージャ (Closures)

クロージャとは、関数が定義された環境(レキシカルスコープ)を記憶し、その環境内の変数を参照できる関数のことです。Goの関数はファーストクラスオブジェクトであり、他の関数内で定義したり、関数の戻り値として返したりすることができます。クロージャは、外部スコープの変数を「キャプチャ」します。

package main

import "fmt"

func makeGreeter(name string) func() {
	// makeGreeterのスコープにあるname変数をキャプチャするクロージャを返す
	return func() {
		fmt.Printf("Hello, %s!\n", name)
	}
}

func main() {
	greet := makeGreeter("Alice")
	greet() // "Hello, Alice!" と出力
}

3. ループ内でのクロージャとゴルーチンの落とし穴

Goのforループ内でクロージャをゴルーチンとして起動する際、特に注意が必要なのは、クロージャがループ変数を「参照」としてキャプチャするという点です。

以下のコードを考えてみましょう。

package main

import (
	"fmt"
	"time"
)

func main() {
	values := []int{1, 2, 3}
	for _, v := range values {
		go func() {
			// ここでvを参照している
			fmt.Println(v)
		}()
	}
	time.Sleep(1 * time.Second) // ゴルーチンが実行されるのを待つ
}

このコードを実行すると、期待される出力(1, 2, 3がそれぞれ1回ずつ)ではなく、多くの場合「3, 3, 3」のような出力が得られます。これは、ゴルーチンが実行される時にはforループが既に終了しており、vが最後の値(この場合は3)になっているためです。すべてのクロージャは同じv変数を共有しているため、最終的にその変数の最後の値を参照してしまいます。

この問題を解決するには、ループ変数の値を新しい変数にコピーしてからクロージャに渡す必要があります。

package main

import (
	"fmt"
	"time"
)

func main() {
	values := []int{1, 2, 3}
	for _, v := range values {
		// ループ変数の値を新しい変数にコピー
		val := v 
		go func() {
			fmt.Println(val) // コピーされたvalを参照
		}()
	}
	time.Sleep(1 * time.Second)
}

この修正により、各ゴルーチンはループの各イテレーションでvの独立したコピーを参照するため、期待通りの出力(1, 2, 3)が得られます。

4. go vetツール

go vetは、Go言語のソースコードを静的に解析し、潜在的なバグや疑わしい構成を報告するツールです。コンパイルエラーにはならないが、実行時に問題を引き起こす可能性のあるコードパターン(例えば、上記のループ内クロージャの問題、フォーマット文字列の不一致、到達不能なコードなど)を検出するのに非常に役立ちます。

go vetはGoツールチェーンの一部であり、go vet ./...のように実行することで、現在のモジュール内のすべてのパッケージをチェックできます。

技術的詳細

このコミットは、Go言語のFAQドキュメントに、前述の「ループ内でのクロージャとゴルーチンの落とし穴」に対する解決策の一つとしてgo vetの利用を明示的に推奨する記述を追加するものです。

GoのFAQドキュメントは、Go言語の設計思想、一般的な疑問、よくある間違いなどについて解説しており、Goプログラマにとって重要な情報源です。このドキュメントにgo vetへの言及を追加することで、開発者がこの一般的な問題をより簡単に特定し、修正できるようになります。

go vetは、コンパイル時に検出できないランタイムエラーやロジックエラーの可能性を指摘することで、コードの品質と信頼性を向上させます。特に、並行処理に関連する微妙なバグはデバッグが困難な場合が多いため、静的解析ツールによる早期発見は非常に価値があります。

この変更は、Go言語のコミュニティが、開発者が直面する一般的な課題を理解し、それらに対処するためのツールや情報を提供することに注力していることを示しています。FAQの更新は、Go言語の学習曲線における重要なポイントをカバーし、より堅牢なコードを書くためのベストプラクティスを広める一環と言えます。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/doc/go_faq.html
+++ b/doc/go_faq.html
@@ -1262,6 +1262,8 @@ each iteration of the loop uses the same instance of the variable <code>v</code>
 each closure shares that single variable. When the closure runs, it prints the 
 value of <code>v</code> at the time <code>fmt.Println</code> is executed,
 but <code>v</code> may have been modified since the goroutine was launched. 
+To help detect this and other problems before they happen, run
+<a href="http://golang.org/cmd/go/#Run_go_tool_vet_on_packages"><code>go vet</code></a>.
 </p>
 
 <p>

コアとなるコードの解説

変更はdoc/go_faq.htmlファイル内の特定の段落に対して行われています。

元のHTMLコードは以下の内容を含んでいました。

each iteration of the loop uses the same instance of the variable <code>v</code>
each closure shares that single variable. When the closure runs, it prints the 
value of <code>v</code> at the time <code>fmt.Println</code> is executed,
but <code>v</code> may have been modified since the goroutine was launched. 

この部分に、以下の2行が追加されました。

+To help detect this and other problems before they happen, run
+<a href="http://golang.org/cmd/go/#Run_go_tool_vet_on_packages"><code>go vet</code></a>.

追加された行は、既存のテキストの後に続き、次のような意味になります。

「ループの各イテレーションは変数 v の同じインスタンスを使用し、各クロージャはその単一の変数を共有します。クロージャが実行されるとき、fmt.Println が実行された時点での v の値を出力しますが、ゴルーチンが起動されてから v が変更されている可能性があります。」

追加された行の日本語訳:

「これが起こる前に、この問題やその他の問題を検出するのに役立つように、go vet を実行してください。」

そして、go vetというテキストは、http://golang.org/cmd/go/#Run_go_tool_vet_on_packagesへのハイパーリンクとして設定されています。これにより、読者はgo vetツールの詳細なドキュメントに直接アクセスできるようになります。

この変更は、FAQの既存の解説に、問題の診断と予防のための具体的なツール(go vet)を提示することで、ドキュメントの実用性を高めています。

関連リンク

  • Gerrit Change-Id: https://golang.org/cl/6822111 (GoプロジェクトのコードレビューシステムであるGerritにおけるこの変更のID)
  • go vetコマンドのドキュメント: http://golang.org/cmd/go/#Run_go_tool_vet_on_packages

参考にした情報源リンク

このコミットは、Go言語の公式FAQドキュメント(doc/go_faq.html)に対する変更です。具体的には、「ゴルーチンとして実行されるクロージャはどうなりますか?」というセクションに、go vetツールの使用を推奨する記述が追加されています。

コミット

commit 89ed40c44bf6818ec76108b95cf9268d88ca156b
Author: Christian Himpel <chressie@googlemail.com>
Date:   Mon Nov 12 07:25:54 2012 -0800

    faq: mention go vet in "What happens with closures running as goroutines?"
    
    R=r
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/6822111

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/89ed40c44bf6818ec76108b95cf9268d88ca156b

元コミット内容

faq: mention go vet in "What happens with closures running as goroutines?"

R=r
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/6822111

変更の背景

Go言語において、forループ内でゴルーチンとしてクロージャを起動する際に、ループ変数のキャプチャに関する一般的な落とし穴が存在します。この問題は、クロージャがループ変数の「値」ではなく「変数そのもの」を参照するため、ゴルーチンが実際に実行される時にはループが既に終了しており、ループ変数が最後の値になっている、というものです。これにより、プログラマが意図しない結果(例えば、すべてのゴルーチンが同じ最終値を出力する)が生じることがあります。

このコミットは、このような一般的な誤解やバグを未然に防ぐため、公式FAQドキュメントの該当セクションに、静的解析ツールであるgo vetの利用を促す記述を追加することを目的としています。go vetは、このような特定のコードパターンを検出する能力を持っており、開発者が問題を早期に特定し修正するのに役立ちます。

前提知識の解説

1. Goにおけるゴルーチン (Goroutines)

ゴルーチンは、Go言語における軽量な並行実行単位です。OSのスレッドよりもはるかに軽量であり、数千、数万のゴルーチンを同時に実行することが可能です。goキーワードを関数の呼び出しの前に置くことで、その関数を新しいゴルーチンとして実行できます。

package main

import (
	"fmt"
	"time"
)

func sayHello() {
	fmt.Println("Hello from goroutine!")
}

func main() {
	go sayHello() // sayHelloを新しいゴルーチンとして実行
	fmt.Println("Hello from main goroutine!")
	time.Sleep(1 * time.Second) // ゴルーチンが実行されるのを待つ
}

2. Goにおけるクロージャ (Closures)

クロージャとは、関数が定義された環境(レキシカルスコープ)を記憶し、その環境内の変数を参照できる関数のことです。Goの関数はファーストクラスオブジェクトであり、他の関数内で定義したり、関数の戻り値として返したりすることができます。クロージャは、外部スコープの変数を「キャプチャ」します。

package main

import "fmt"

func makeGreeter(name string) func() {
	// makeGreeterのスコープにあるname変数をキャプチャするクロージャを返す
	return func() {
		fmt.Printf("Hello, %s!\n", name)
	}
}

func main() {
	greet := makeGreeter("Alice")
	greet() // "Hello, Alice!" と出力
}

3. ループ内でのクロージャとゴルーチンの落とし穴

Goのforループ内でクロージャをゴルーチンとして起動する際、特に注意が必要なのは、クロージャがループ変数を「参照」としてキャプチャするという点です。

以下のコードを考えてみましょう。

package main

import (
	"fmt"
	"time"
)

func main() {
	values := []int{1, 2, 3}
	for _, v := range values {
		go func() {
			// ここでvを参照している
			fmt.Println(v)
		}()
	}
	time.Sleep(1 * time.Second) // ゴルーチンが実行されるのを待つ
}

このコードを実行すると、期待される出力(1, 2, 3がそれぞれ1回ずつ)ではなく、多くの場合「3, 3, 3」のような出力が得られます。これは、ゴルーチンが実行される時にはforループが既に終了しており、vが最後の値(この場合は3)になっているためです。すべてのクロージャは同じv変数を共有しているため、最終的にその変数の最後の値を参照してしまいます。

この問題を解決するには、ループ変数の値を新しい変数にコピーしてからクロージャに渡す必要があります。

package main

import (
	"fmt"
	"time"
)

func main() {
	values := []int{1, 2, 3}
	for _, v := range values {
		// ループ変数の値を新しい変数にコピー
		val := v 
		go func() {
			fmt.Println(val) // コピーされたvalを参照
		}()
	}
	time.Sleep(1 * time.Second)
}

この修正により、各ゴルーチンはループの各イテレーションでvの独立したコピーを参照するため、期待通りの出力(1, 2, 3)が得られます。

4. go vetツール

go vetは、Go言語のソースコードを静的に解析し、潜在的なバグや疑わしい構成を報告するツールです。コンパイルエラーにはならないが、実行時に問題を引き起こす可能性のあるコードパターン(例えば、上記のループ内クロージャの問題、フォーマット文字列の不一致、到達不能なコードなど)を検出するのに非常に役立ちます。

go vetはGoツールチェーンの一部であり、go vet ./...のように実行することで、現在のモジュール内のすべてのパッケージをチェックできます。

技術的詳細

このコミットは、Go言語のFAQドキュメントに、前述の「ループ内でのクロージャとゴルーチンの落とし穴」に対する解決策の一つとしてgo vetの利用を明示的に推奨する記述を追加するものです。

GoのFAQドキュメントは、Go言語の設計思想、一般的な疑問、よくある間違いなどについて解説しており、Goプログラマにとって重要な情報源です。このドキュメントにgo vetへの言及を追加することで、開発者がこの一般的な問題をより簡単に特定し、修正できるようになります。

go vetは、コンパイル時に検出できないランタイムエラーやロジックエラーの可能性を指摘することで、コードの品質と信頼性を向上させます。特に、並行処理に関連する微妙なバグはデバッグが困難な場合が多いため、静的解析ツールによる早期発見は非常に価値があります。

この変更は、Go言語のコミュニティが、開発者が直面する一般的な課題を理解し、それらに対処するためのツールや情報を提供することに注力していることを示しています。FAQの更新は、Go言語の学習曲線における重要なポイントをカバーし、より堅牢なコードを書くためのベストプラクティスを広める一環と言えます。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/doc/go_faq.html
+++ b/doc/go_faq.html
@@ -1262,6 +1262,8 @@ each iteration of the loop uses the same instance of the variable <code>v</code>
 each closure shares that single variable. When the closure runs, it prints the 
 value of <code>v</code> at the time <code>fmt.Println</code> is executed,
 but <code>v</code> may have been modified since the goroutine was launched. 
+To help detect this and other problems before they happen, run
+<a href="http://golang.org/cmd/go/#Run_go_tool_vet_on_packages"><code>go vet</code></a>.
 </p>
 
 <p>

コアとなるコードの解説

変更はdoc/go_faq.htmlファイル内の特定の段落に対して行われています。

元のHTMLコードは以下の内容を含んでいました。

each iteration of the loop uses the same instance of the variable <code>v</code>
each closure shares that single variable. When the closure runs, it prints the 
value of <code>v</code> at the time <code>fmt.Println</code> is executed,
but <code>v</code> may have been modified since the goroutine was launched. 

この部分に、以下の2行が追加されました。

+To help detect this and other problems before they happen, run
+<a href="http://golang.org/cmd/go/#Run_go_tool_vet_on_packages"><code>go vet</code></a>.

追加された行は、既存のテキストの後に続き、次のような意味になります。

「ループの各イテレーションは変数 v の同じインスタンスを使用し、各クロージャはその単一の変数を共有します。クロージャが実行されるとき、fmt.Println が実行された時点での v の値を出力しますが、ゴルーチンが起動されてから v が変更されている可能性があります。」

追加された行の日本語訳:

「これが起こる前に、この問題やその他の問題を検出するのに役立つように、go vet を実行してください。」

そして、go vetというテキストは、http://golang.org/cmd/go/#Run_go_tool_vet_on_packagesへのハイパーリンクとして設定されています。これにより、読者はgo vetツールの詳細なドキュメントに直接アクセスできるようになります。

この変更は、FAQの既存の解説に、問題の診断と予防のための具体的なツール(go vet)を提示することで、ドキュメントの実用性を高めています。

関連リンク

  • Gerrit Change-Id: https://golang.org/cl/6822111 (GoプロジェクトのコードレビューシステムであるGerritにおけるこの変更のID)
  • go vetコマンドのドキュメント: http://golang.org/cmd/go/#Run_go_tool_vet_on_packages

参考にした情報源リンク