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[インデックス 14401] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリである regexp パッケージに、パッケージレベルのシンプルな使用例を追加するものです。具体的には、src/pkg/regexp/example_test.go という新しいファイルが作成され、regexp.MustCompileMatchString メソッドを用いた正規表現のマッチング処理の基本的な使用方法が示されています。この変更は、Issue #4125 に対応するものであり、regexp パッケージのドキュメントと利用方法の理解を向上させることを目的としています。

コミット

commit e33b9f78150c05c42acc67968c3066e3634dee0d
Author: Andrew Gerrand <adg@golang.org>
Date:   Wed Nov 14 10:43:21 2012 +0100

    regexp: add simple package-level example
    
    Update #4125
    
    R=golang-dev, r
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/6846045

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/e33b9f78150c05c42acc67968c3066e3634dee0d

元コミット内容

regexp: add simple package-level example Update #4125

変更の背景

この変更の背景には、Go言語の標準ライブラリのドキュメンテーションと、ユーザーがパッケージの機能をより簡単に理解し、利用できるようにするという目的があります。Go言語では、Example 関数を _test.go ファイル内に記述することで、go doc コマンドや pkg.go.dev のような公式ドキュメントサイトに、実行可能なコード例として表示される仕組みがあります。

コミットメッセージにある Update #4125 は、GitHubのIssue #4125 に関連する変更であることを示しています。一般的に、このようなIssueは、特定のパッケージのドキュメントが不足している、使用例が分かりにくい、あるいは特定の機能の使い方が不明瞭であるといったユーザーからのフィードバックに基づいて作成されます。このコミットは、regexp パッケージの基本的な使用方法を示すシンプルな例を追加することで、そのIssueに対応し、パッケージの使いやすさを向上させることを意図しています。

前提知識の解説

Go言語の regexp パッケージ

regexp パッケージは、Go言語で正規表現を扱うための標準ライブラリです。Perlのような正規表現構文をサポートしており、文字列の検索、置換、分割など、様々な正規表現操作を行うことができます。

正規表現 (Regular Expression)

正規表現は、文字列のパターンを記述するための強力なツールです。特定の文字の並び、繰り返し、選択肢などを簡潔に表現できます。 このコミットで使われている正規表現 ^[a-z]+\\[[0-9]+\\]$ について解説します。

  • ^: 文字列の先頭にマッチします。
  • [a-z]+: 小文字のアルファベット (a から z) が1回以上繰り返される部分にマッチします。+ は1回以上の繰り返しを意味します。
  • \\[: リテラルの [ 文字にマッチします。[ は正規表現の特殊文字であるため、\ でエスケープする必要があります。Goの文字列リテラルでは \ もエスケープが必要なため、\\ となります。
  • [0-9]+: 数字 (0 から 9) が1回以上繰り返される部分にマッチします。
  • \\]: リテラルの ] 文字にマッチします。] も正規表現の特殊文字であるため、\ でエスケープする必要があります。Goの文字列リテラルでは \ もエスケープが必要なため、\\ となります。
  • $: 文字列の末尾にマッチします。

したがって、この正規表現は「小文字のアルファベットで始まり、その後に [ が続き、1つ以上の数字が続き、最後に ] が来て、文字列が終了する」というパターンにマッチします。例:「adam[23]」や「eve[7]」など。

regexp.MustCompile

regexp.MustCompile 関数は、与えられた正規表現文字列をコンパイルし、*regexp.Regexp 型のオブジェクトを返します。この関数は、正規表現のコンパイルに失敗した場合(例えば、正規表現の構文が不正な場合)に panic を発生させます。これは、プログラムの初期化時など、正規表現が常に有効であることが期待される場面でよく使用されます。コンパイルされた正規表現オブジェクトは、その後のマッチング操作で再利用されます。

regexp.Regexp.MatchString

*regexp.Regexp オブジェクトの MatchString メソッドは、指定された文字列が正規表現に完全にマッチするかどうかをチェックし、ブール値を返します。マッチすれば true、そうでなければ false を返します。

Go言語の Example 関数と _test.go ファイル

Go言語では、_test.go で終わるファイルはテストファイルとして扱われます。これらのファイルには、ユニットテスト (TestXxx)、ベンチマークテスト (BenchmarkXxx)、そしてコード例 (ExampleXxx) を記述できます。 Example 関数は、特定のパッケージ、関数、型、またはパッケージ全体の使用例を示すために使用されます。Example 関数が標準出力に書き出す内容は、コメント // Output: の後に続く期待される出力と比較されます。これにより、コード例が常に正しく動作することが保証され、ドキュメントの信頼性が高まります。

技術的詳細

このコミットでは、src/pkg/regexp/example_test.go という新しいファイルが追加されています。このファイルは、regexp_test パッケージに属しており、regexp パッケージの外部からその機能を使用する例を示しています。

追加された Example 関数は以下の手順を実行します。

  1. regexp.MustCompile を使用して、^[a-z]+\\[[0-9]+\\]$ という正規表現をコンパイルし、validID という *regexp.Regexp オブジェクトに格納します。この正規表現は、小文字のアルファベットで始まり、角括弧で囲まれた数字が続く文字列(例: adam[23])にマッチするように設計されています。
  2. fmt.PrintlnvalidID.MatchString を組み合わせて、いくつかの異なる文字列が validID 正規表現にマッチするかどうかをテストし、その結果(true または false)を標準出力に出力します。
    • "adam[23]": マッチするため true
    • "eve[7]": マッチするため true
    • "Job[48]": 先頭が大文字のためマッチせず false
    • "snakey": 角括弧と数字のパターンがないためマッチせず false
  3. // Output: コメントブロックにより、この Example 関数を実行した際の期待される出力が明示されています。これにより、ドキュメントとしての正確性が保証されます。

この例は、regexp パッケージの基本的な正規表現のコンパイルと文字列マッチングのワークフローを簡潔に示しており、新規ユーザーがパッケージの利用を開始する際の良い出発点となります。

コアとなるコードの変更箇所

--- /dev/null
+++ b/src/pkg/regexp/example_test.go
@@ -0,0 +1,22 @@
+package regexp_test
+
+import (
+	"fmt"
+	"regexp"
+)
+
+func Example() {
+	// Compile the expression once, usually at init time.
+	// Use raw strings to avoid having to quote the backslashes.
+	var validID = regexp.MustCompile(`^[a-z]+\\[[0-9]+\\]$`)
+
+	fmt.Println(validID.MatchString("adam[23]"))
+	fmt.Println(validID.MatchString("eve[7]"))
+	fmt.Println(validID.MatchString("Job[48]"))
+	fmt.Println(validID.MatchString("snakey"))
+	// Output:
+	// true
+	// true
+	// false
+	// false
+}

コアとなるコードの解説

  • package regexp_test: この行は、このファイルが regexp パッケージのテストパッケージであることを示します。_test サフィックスが付いているため、これは regexp パッケージとは別のパッケージとしてコンパイルされます。これにより、regexp パッケージの公開されたAPIのみを使用してテストや例が書かれていることが保証され、ユーザーが実際にパッケージを使用する際と同じ環境をシミュレートできます。

  • import ("fmt", "regexp"): 必要なパッケージをインポートしています。fmt は標準出力への出力(fmt.Println)のために、regexp は正規表現機能のために使用されます。

  • func Example() { ... }: これがGoのドキュメンテーションシステムで認識される Example 関数です。関数名が Example のみの場合、それはパッケージ全体の例として扱われます。

  • // Compile the expression once, usually at init time.: 正規表現のコンパイルはコストがかかる操作であるため、通常はプログラムの初期化時(init 関数内など)に一度だけ行い、コンパイル済みの正規表現オブジェクトを再利用することが推奨されるというコメントです。

  • // Use raw strings to avoid having to quote the backslashes.: バッククォート ( ) で囲まれた文字列は「raw string literal(生文字列リテラル)」と呼ばれ、エスケープシーケンス(\n, \t など)が解釈されません。これにより、正規表現内でバックスラッシュ (\) をリテラルとして使用する際に、\\ のように二重にエスケープする必要がなくなります。正規表現 ^[a-z]+\\[[0-9]+\\]$ の中の \[\] は、正規表現の特殊文字である [] をリテラルとして扱うためのエスケープですが、Goの通常の文字列リテラル ("") で書くと ^[a-z]+\\[[0-9]+\\]$ とさらにエスケープが必要になります。生文字列リテラルを使うことで、正規表現の記述がより直感的になります。

  • var validID = regexp.MustCompile(^[a-z]+\[[0-9]+\]$): 前述の通り、正規表現をコンパイルし、validID 変数に代入しています。

  • fmt.Println(validID.MatchString("adam[23]")) など: コンパイルされた正規表現オブジェクト validIDMatchString メソッドを呼び出し、様々な入力文字列が正規表現にマッチするかどうかをテストし、その結果を標準出力に出力しています。

  • // Output:: このコメントは、Example 関数が実行されたときに期待される標準出力の内容を示します。go test コマンドは、このコメントの後の出力と実際の出力を比較し、一致しない場合はテストを失敗させます。これにより、コード例が常に最新かつ正確であることが保証されます。

関連リンク

参考にした情報源リンク