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[インデックス 14412] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のランタイムにおけるcgo(C言語との連携機能)関連のファイルにおいて、strerror関数が正しく宣言されるように<string.h>ヘッダーを含める変更を加えています。これにより、strerror関数の利用時に発生しうるコンパイルエラーや未定義動作を防ぎ、特にFreeBSDおよびNetBSD環境の386およびAMD64アーキテクチャにおけるcgoの安定性と正確性を向上させます。

コミット

commit cc8bd8969f21a7c0a5e5a0a4f61173d25f1c03e7
Author: Ian Lance Taylor <iant@golang.org>
Date:   Wed Nov 14 22:04:03 2012 -0800

    runtime/cgo: include <string.h> as needed so that strerror is declared
    
    R=golang-dev, dave, jsing
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/6847051

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/cc8bd8969f21a7c0a5e5a0a4f61173d25f1c03e7

元コミット内容

runtime/cgo: include <string.h> as needed so that strerror is declared

このコミットは、Goランタイムのcgo関連コードにおいて、strerror関数が使用される際にその宣言が適切に行われるよう、<string.h>ヘッダーファイルを含めることを目的としています。

変更の背景

Go言語は、C言語で書かれたライブラリを呼び出すためのメカニズムとしてcgoを提供しています。cgoを使用するGoプログラムは、内部的にCコンパイラ(通常はGCC)を介してCコードをコンパイルし、Goのランタイムとリンクします。

strerrorは、C標準ライブラリ(libc)の一部であり、システムコールやライブラリ関数のエラーコード(errno)に対応するエラーメッセージ文字列を返すために使用されます。この関数は通常、<string.h>ヘッダーファイルで宣言されています。

Goのランタイムコードの一部、特にcgoに関連する部分では、エラー処理のためにstrerror関数が内部的に使用されることがあります。しかし、特定の環境(この場合はFreeBSDおよびNetBSDの386およびAMD64アーキテクチャ)において、strerrorを使用するCソースファイルに<string.h>が明示的にインクルードされていなかったため、コンパイル時にstrerrorが未宣言であるという警告やエラーが発生する可能性がありました。

このコミットは、このようなコンパイル時の問題を解決し、Goランタイムのcgo部分が異なるプラットフォームでより堅牢に動作するようにするために行われました。

前提知識の解説

cgo

cgoは、GoプログラムからC言語のコードを呼び出したり、C言語のコードからGoの関数を呼び出したりするためのGoの機能です。Goのビルドシステムに統合されており、GoとCの間の相互運用を可能にします。cgoを使用すると、Goのコード内でCのヘッダーファイルをインクルードし、Cの関数を直接呼び出すことができます。Goのランタイム自体も、システムコールやOS固有の機能にアクセスするために内部的にcgoを使用することがあります。

strerror関数

strerrorは、C標準ライブラリの関数で、errnoグローバル変数に格納されているエラー番号に対応するエラーメッセージ文字列へのポインタを返します。errnoは、システムコールやライブラリ関数が失敗した際に設定される整数値で、エラーの種類を示します。strerrorは、これらの数値エラーコードを人間が読める形式の文字列に変換するために広く使用されます。この関数は、C言語の標準ヘッダーファイルである<string.h>で宣言されています。

Cヘッダーファイルと宣言

C言語では、関数や変数を他のソースファイルで使用する前に、それらを「宣言」する必要があります。宣言は、コンパイラに対して、その関数や変数の名前、戻り値の型、引数の型などを伝えます。ヘッダーファイル(.hファイル)は、これらの宣言をまとめて記述し、複数のソースファイルで共有するためのメカニズムです。ソースファイルが特定の関数を使用する場合、その関数が宣言されているヘッダーファイルを#includeプリプロセッサディレクティブを使ってインクルードする必要があります。これにより、コンパイラは関数呼び出しが正しいかどうかをチェックし、リンカがその関数の定義を見つけられるようになります。

技術的詳細

このコミットの技術的な核心は、Cコンパイラがstrerror関数の存在とシグネチャ(引数と戻り値の型)を認識できるようにすることです。C言語の標準では、strerror<string.h>で宣言されることになっています。

Goのランタイムにおけるcgo関連のCソースファイル(src/pkg/runtime/cgo/gcc_freebsd_386.cなど)は、Goのランタイムの一部としてコンパイルされます。これらのファイル内でstrerrorが呼び出されているにもかかわらず、必要な<string.h>ヘッダーがインクルードされていなかったため、コンパイラはstrerrorが未宣言であると判断し、警告(または厳密なコンパイル設定ではエラー)を出す可能性がありました。

この問題は、特にクロスコンパイル環境や、異なるバージョンのCライブラリやコンパイラを使用する環境で顕在化することがあります。一部のシステムでは、他のヘッダーファイルが間接的に<string.h>をインクルードしているため問題が表面化しないこともありますが、移植性を高め、標準に準拠するためには、strerrorを使用するファイルで明示的に<string.h>をインクルードすることが最善です。

このコミットは、以下の4つのファイルにそれぞれ#include <string.h>の行を追加することで、この問題を解決しています。

  • src/pkg/runtime/cgo/gcc_freebsd_386.c
  • src/pkg/runtime/cgo/gcc_freebsd_amd64.c
  • src/pkg/runtime/cgo/gcc_netbsd_386.c
  • src/pkg/runtime/cgo/gcc_netbsd_amd64.c

これらのファイルは、それぞれFreeBSDおよびNetBSDオペレーティングシステム上の386(32ビット)およびAMD64(64ビット)アーキテクチャ向けのcgoランタイムサポートに関連しています。変更は非常にシンプルですが、Goのランタイムの堅牢性と移植性を確保する上で重要です。

コアとなるコードの変更箇所

変更は、以下の4つのファイルに共通して、#include <string.h>の行が追加されています。

例として、src/pkg/runtime/cgo/gcc_freebsd_386.cの変更を示します。

--- a/src/pkg/runtime/cgo/gcc_freebsd_386.c
+++ b/src/pkg/runtime/cgo/gcc_freebsd_386.c
@@ -6,6 +6,7 @@
 #include <sys/signalvar.h>
 #include <pthread.h>
 #include <signal.h>
+#include <string.h>
 #include "libcgo.h"
 
 static void* threadentry(void*);

同様の変更が、他の3つのファイルにも適用されています。

コアとなるコードの解説

追加された行は、#include <string.h>です。

  • #include: Cプリプロセッサディレクティブの一つで、指定されたファイルを現在のソースファイルに挿入するようコンパイラに指示します。
  • <string.h>: C標準ライブラリの一部である文字列操作関数(strcpy, strlen, strcatなど)や、エラーメッセージ関連関数(strerror)の宣言が含まれる標準ヘッダーファイルです。

この行を追加することで、コンパイラはstrerror関数が呼び出される前にその宣言を認識できるようになります。これにより、strerrorが未宣言であるというコンパイル時の警告やエラーが解消され、Goのランタイムがこれらのプラットフォームで正しくビルドされ、実行されることが保証されます。これは、C言語の基本的なプログラミング慣習に従った、クリーンで堅牢なコードを維持するための重要な修正です。

関連リンク

参考にした情報源リンク