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[インデックス 14484] ファイルの概要

このコミットは、Goコンパイラのgc(ガベージコレクタ)の一部であるracewalk.cファイルにおけるビルドエラーを修正するものです。具体的には、Gitのマージコンフリクトによって誤って残されたコードを削除することで、ビルドが正常に完了するようにします。

コミット

  • コミットハッシュ: 7f0821805098ce7d7d58c6bf6c54d1a86b905ca9
  • 作者: Dmitriy Vyukov dvyukov@google.com
  • 日付: Mon Nov 26 22:14:43 2012 +0400

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/7f0821805098ce7d7d58c6bf6c54d1a86b905ca9

元コミット内容

cnd/gc: fix build

R=golang-dev
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/6856097

変更の背景

このコミットの背景には、Goコンパイラの開発プロセスにおけるGitのマージ操作が関係しています。src/cmd/gc/racewalk.cファイル内で、以前のコミットで発生したマージコンフリクトが適切に解決されず、コンフリクトマーカー(<<<<<<< local=======>>>>>>> other)がコードベースに残ってしまったことが原因です。これらのマーカーは有効なC言語の構文ではないため、コンパイラがこのファイルを処理する際に構文エラーを引き起こし、結果としてGoコンパイラ自体のビルドが失敗していました。

このコミットは、その残存するコンフリクトマーカーと、それに伴う重複または不要なコード行を削除することで、ビルドプロセスを修正し、Goコンパイラが再び正常にビルドされるようにすることを目的としています。

前提知識の解説

  • Goコンパイラ (gc): Go言語の公式コンパイラは、通常gcと呼ばれます。これはGoソースコードを機械語に変換する役割を担っています。src/cmd/gcディレクトリには、このコンパイラのソースコードが含まれています。
  • レース検出器 (Race Detector): Go言語には、並行処理におけるデータ競合(レースコンディション)を検出するための組み込みツールであるレース検出器があります。これは、複数のゴルーチンが共有データに同時にアクセスし、少なくとも一方が書き込み操作を行う場合に発生するバグを見つけるのに役立ちます。racewalk.cファイルは、このレース検出器に関連するコードの一部である可能性が高いです。コンパイラがコードを分析し、レース検出に必要なインストゥルメンテーション(計測コードの挿入)を行う際に使用されることがあります。
  • racewalk.cの役割: このファイルは、Goコンパイラのバックエンドの一部として、プログラムの抽象構文木(AST)を走査し、レース検出器が実行時にデータ競合を特定できるようにするためのコードを生成または変換する役割を担っていると考えられます。具体的には、メモリへのアクセス(読み書き)を監視するためのフックやチェックを挿入する処理が含まれている可能性があります。
  • Gitマージコンフリクト: Gitを使用していると、複数の開発者が同じファイルの同じ行を同時に変更した場合などに「マージコンフリクト」が発生します。Gitは自動的に変更を統合できないため、コンフリクトが発生した箇所に特殊なマーカー(<<<<<<<=======>>>>>>>)を挿入し、開発者に手動での解決を促します。このコミットは、その手動解決が不完全であったために発生した問題の修正です。
  • Go言語の内部型システムにおけるTFIELD: Goコンパイラの内部では、プログラムの型情報を表現するために様々な内部的な型定数や構造体が使用されます。TFIELDは、構造体やインターフェースのフィールドを表すために使用される可能性のある型定数の一つです。コンパイラが型の情報を処理する際に、フィールドの型を適切に扱うためにこのようなチェックが行われます。

技術的詳細

このコミットの技術的な詳細は、src/cmd/gc/racewalk.cファイル内のcallinstr関数におけるマージコンフリクトの解決に集約されます。

元のコードには、以下のようなマージコンフリクトマーカーが含まれていました。

<<<<<<< local
 			if(f->type->etype == TFIELD)
 				f->type = f->type->type;
=======
>>>>>>> other

これは、Gitが2つの異なるブランチからの変更をマージしようとした際に、if(f->type->etype == TFIELD)で始まる行に関して競合が発生したことを示しています。

  • <<<<<<< localから=======までのブロックは、現在のブランチ(local)での変更を示します。
  • =======から>>>>>>> otherまでのブロックは、マージしようとしている別のブランチ(other)での変更を示します。

この場合、otherブランチでは該当する行が削除されたか、あるいは全く異なる変更が行われたため、=======>>>>>>> otherの間には何もありません。

このコミットでは、これらのマージコンフリクトマーカーと、localブランチ側のコード行(if(f->type->etype == TFIELD)f->type = f->type->type;)が削除されています。これは、最終的にotherブランチ側の変更(つまり、該当行の削除)が正しいと判断されたことを意味します。

callinstr関数は、おそらくGoプログラムの特定の命令(instr)を処理し、レース検出器のためのインストゥルメンテーションを行う役割を担っています。削除されたコードは、fというノードの型がTFIELDである場合に、その型をf->type->typeに再割り当てするというロジックでした。このロジックが不要になったか、あるいは別の方法で処理されるようになったため、マージコンフリクトの解決の一環として削除されたと考えられます。

この修正により、コンパイラは不正な構文を持つコードを読み込むことなく、racewalk.cを正常にコンパイルできるようになり、結果としてGoコンパイラ全体のビルドが成功するようになります。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/cmd/gc/racewalk.c
+++ b/src/cmd/gc/racewalk.c
@@ -430,11 +430,8 @@ callinstr(Node **np, NodeList **init, int wr, int skip)\n 			t1 = f->type;\n 			n = treecopy(n);\n 			f = nod(OXDOT, n, newname(t1->sym));\n 			f->type = t1;\n-<<<<<<< local
 			if(f->type->etype == TFIELD)
 				f->type = f->type->type;\n-=======\n->>>>>>> other
 			if(callinstr(&f, init, wr, 0)) {\n 				typecheck(&f, Erv);\n 				res = 1;\n```

## コアとなるコードの解説

上記の差分は、`src/cmd/gc/racewalk.c`ファイルの`callinstr`関数内で行われた変更を示しています。

削除された行は以下の通りです。

1.  `<<<<<<< local`
2.  `			if(f->type->etype == TFIELD)`
3.  `				f->type = f->type->type;`
4.  `=======`
5.  `>>>>>>> other`

これらの行は、Gitのマージコンフリクトマーカーと、そのコンフリクトによって残されたコードブロックです。

*   `if(f->type->etype == TFIELD)`: これは、ノード`f`の型(`f->type`)の基本型(`etype`)が`TFIELD`(フィールド型)であるかどうかをチェックする条件文です。
*   `f->type = f->type->type;`: もし`f`の型が`TFIELD`であれば、その型を`f->type->type`に再割り当てしています。これは、フィールドの型がさらに別の型を指している場合に、その「真の」型を取得するための処理である可能性があります。例えば、構造体のフィールドがポインタ型である場合、そのポインタが指す先の型を取得するような操作です。

これらの行が削除されたのは、マージコンフリクトの解決の一環として、このロジックが不要になったか、あるいは別の場所で同様の処理が行われるようになったためと考えられます。この削除により、コンパイラは不正な構文を無視して、`racewalk.c`を正常にコンパイルできるようになりました。

## 関連リンク

*   Go CL (Change List) 6856097: [https://golang.org/cl/6856097](https://golang.org/cl/6856097)

## 参考にした情報源リンク

*   Git マージコンフリクトの解決: [https://git-scm.com/book/ja/v2/Git-%E3%81%AE%E5%9F%BA%E7%A4%8E-%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%81%AE%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AA%E3%82%AF%E3%83%88](https://git-scm.com/book/ja/v2/Git-%E3%81%AE%E5%9F%BA%E7%A4%8E-%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%81%AE%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AA%E3%82%AF%E3%83%88)
*   Go Race Detector: [https://go.dev/doc/articles/race_detector](https://go.dev/doc/articles/race_detector)
*   Go Compiler Internals (General Concepts): [https://go.dev/blog/go1.5-gc](https://go.dev/blog/go1.5-gc) (Note: This is a general article about GC, not specific to `racewalk.c` but provides context on Go's GC.)
*   Go Source Code (for context on `src/cmd/gc`): [https://github.com/golang/go/tree/master/src/cmd/gc](https://github.com/golang/go/tree/master/src/cmd/gc)
*   Go Compiler Types (Internal): [https://github.com/golang/go/blob/master/src/cmd/compile/internal/types/type.go](https://github.com/golang/go/blob/master/src/cmd/compile/internal/types/type.go) (Note: This is a more recent version, but provides insight into how types are handled internally.)
*   Go Compiler `Node` structure (Internal): [https://github.com/golang/go/blob/master/src/cmd/compile/internal/ir/ir.go](https://github.com/golang/go/blob/master/src/cmd/compile/internal/ir/ir.go) (Note: This is a more recent version, but provides insight into how AST nodes are handled internally.)