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[インデックス 14508] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のEmacsメジャーモードであるgo-mode.elにおけるハングアップ(フリーズ)の問題を修正するものです。具体的には、コメントや文字列のハイライト処理に関連するロジックが原因で発生していた無限ループまたは非効率な処理を改善し、Emacsの応答性を向上させます。

コミット

commit a93b15cad90828a8706e79eb00e7962da09c1317
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date:   Tue Nov 27 12:21:10 2012 -0500

    misc/emacs: fix go-mode hang
    
    Fix suggested by serbaut.
    
    Fixes #4445.
    
    R=sameer
    CC=golang-dev, serbaut
    https://golang.org/cl/6842102

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/a93b15cad90828a8706e79eb00e7962da09c1317

元コミット内容

このコミットは、misc/emacs/go-mode.elファイルに対して以下の変更を加えています。

--- a/misc/emacs/go-mode.el
+++ b/misc/emacs/go-mode.el
@@ -432,7 +432,7 @@ if no further tokens of the type exist."
       (if (or (>= (point) limit) (eobp))
 	  (setq result nil)
 	(setq cs (go-mode-cs))
-	(if cs
+	(if (and cs (>= (car cs) (point)))
 	    (if (eq (= (char-after (car cs)) ?/) comment)
 		;; If inside the expected comment/string, highlight it.
 		(progn

変更点は1行のみで、go-mode.elの435行目において、条件式が(if csから(if (and cs (>= (car cs) (point))))に変更されています。

変更の背景

このコミットは、Go言語のEmacsメジャーモードであるgo-mode.elを使用している際に、Emacsがハングアップ(応答停止)する問題(Issue #4445)を修正するために行われました。

go-mode.elは、Go言語のソースコードをEmacsで編集する際に、シンタックスハイライト、インデント、コード補完などの機能を提供するLispスクリプトです。ハングアップは、特にコメントや文字列のハイライト処理において、特定の条件下で発生していました。

元のコードでは、go-mode-csという関数が返す値csが存在するかどうかのみをチェックしていました。csは、現在のカーソル位置(point)から見て、次に現れるコメントまたは文字列の開始位置を示す情報を含んでいると推測されます。しかし、このcsが示す位置が現在のカーソル位置よりも前にある場合、または不適切な値である場合に、ハイライト処理のロジックが無限ループに陥ったり、非常に非効率な処理を実行したりする可能性がありました。これにより、Emacsが応答しなくなり、ユーザー体験が著しく損なわれていました。

この問題は、serbaut氏によって提案された修正に基づいて解決されました。

前提知識の解説

このコミットを理解するためには、以下の前提知識が必要です。

  1. Emacs Lisp (Elisp): Emacsエディタの拡張機能や設定を記述するために使用されるプログラミング言語です。go-mode.elもElispで書かれています。

    • point: Emacs Lispにおいて、現在のカーソル位置を示すバッファ内の文字位置です。整数値で表されます。
    • car: リストの最初の要素を返す関数です。Elispでは、リストは非常に基本的なデータ構造であり、多くの情報がリストとして表現されます。
    • and: 論理AND演算子です。複数の条件がすべて真である場合に真を返します。
    • >=: 比較演算子で、「以上」を意味します。
    • setq: 変数に値を代入する関数です。
    • if: 条件分岐を行う構文です。
    • eobp: "End Of Buffer P" の略で、カーソルがバッファの終端にある場合に真を返す述語です。
    • char-after: 指定された位置の文字を返す関数です。
    • eq: 2つの引数が同じオブジェクトである場合に真を返す関数です。
    • =: 2つの数値が等しい場合に真を返す関数です。
    • progn: 複数の式を順に評価し、最後の式の値を返す関数です。
  2. シンタックスハイライト: プログラミング言語のキーワード、文字列、コメントなどを異なる色やスタイルで表示する機能です。エディタがコードの構造を解析し、適切な部分にスタイルを適用します。この処理は、特に大規模なファイルや複雑な構造を持つコードにおいて、効率的に行われる必要があります。

  3. Go言語のコメントと文字列: Go言語では、//で始まる1行コメントと、/* ... */で囲まれた複数行コメントがあります。文字列はダブルクォート"またはバッククォート`で囲まれます。go-mode.elはこれらの構文要素を正しく認識し、ハイライトする必要があります。

  4. Issue Tracking System: GitHubのIssue #4445のように、ソフトウェア開発においてバグ報告や機能要望を管理するためのシステムです。Fixes #4445という記述は、このコミットが特定のIssueを解決したことを示します。

技術的詳細

この修正は、go-mode.el内のシンタックスハイライト処理の一部であるgo-mode-cs関数が返す値の検証を強化することで、ハングアップ問題を解決しています。

元のコードでは、以下の条件式がありました。

(if cs
    ;; ...
)

ここでcsは、go-mode-cs関数によって計算された、現在のカーソル位置から見て次に現れるコメントまたは文字列の開始位置に関する情報を含むリストであると推測されます。このリストの最初の要素(car cs)は、その開始位置のバッファ内でのインデックス(整数値)であると考えられます。

問題は、csnilでない(つまり、何らかの情報が返された)場合でも、その情報が現在のカーソル位置に対して有効でない場合があったことです。例えば、csが示す位置が既に処理済みの領域(現在のpointよりも前の位置)である場合、ハイライト処理が無限ループに陥るか、不適切な領域を繰り返し処理しようとする可能性がありました。

新しい条件式は以下の通りです。

(if (and cs (>= (car cs) (point)))
    ;; ...
)

この変更により、以下の2つの条件が同時に満たされる場合にのみ、ハイライト処理の内部ロジックが実行されるようになります。

  1. csが存在する: go-mode-csが有効な情報を返したことを確認します。
  2. (car cs)が現在のカーソル位置point以上である: csが示すコメントまたは文字列の開始位置が、現在のカーソル位置(point)よりも後、または現在のカーソル位置と一致していることを確認します。これにより、既に通過した領域や無効な位置を指すcsの値によって、ハイライト処理が誤動作するのを防ぎます。

この追加された条件 (>= (car cs) (point))は、ハイライト処理が常に前方(または現在の位置)に進むことを保証し、後方への不必要なジャンプや無限ループを防ぐための重要なガード条件として機能します。これにより、Emacsの応答性が維持され、ハングアップが解消されます。

コアとなるコードの変更箇所

変更されたファイル: misc/emacs/go-mode.el

変更された行: 435行目

-	(if cs
+	(if (and cs (>= (car cs) (point)))

コアとなるコードの解説

この変更は、Emacs Lispの条件分岐if文の条件式を修正しています。

  • 変更前: (if cs ...)

    • これは、変数csnil(Emacs Lispにおける偽)でない限り、続くS式(ここではハイライト処理のロジック)を実行するという意味です。csが何らかの値を持っていれば、その値が現在のカーソル位置に対して意味があるかどうかに関わらず、処理が続行されていました。
  • 変更後: (if (and cs (>= (car cs) (point))) ...)

    • この新しい条件式は、論理AND演算子andを使用しています。これは、andの引数がすべて真である場合にのみ、and式全体が真となり、if文の本体が実行されます。
    • cs: 最初の条件は、csnilでないことを確認します。これは変更前と同じですが、次の条件と組み合わされることで意味を持ちます。
    • (>= (car cs) (point)): 2番目の条件は、csリストの最初の要素(car cs)が、現在のカーソル位置(point)以上であることを確認します。
      • car csは、go-mode-cs関数が返す、次にハイライトすべきコメントや文字列の開始位置のバッファインデックスです。
      • pointは、現在のカーソル位置のバッファインデックスです。
      • この条件は、「次にハイライトすべき位置が、現在のカーソル位置よりも後、または現在のカーソル位置と等しい」ことを保証します。

この修正により、ハイライト処理は、有効なコメント/文字列情報が存在し、かつその情報が現在の処理範囲内または未来の範囲を指している場合にのみ実行されるようになります。これにより、過去の無効な位置を参照することによる無限ループや非効率な処理が回避され、Emacsのハングアップが解消されます。

関連リンク

参考にした情報源リンク

[インデックス 14508] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のEmacsメジャーモードであるgo-mode.elにおけるハングアップ(フリーズ)の問題を修正するものです。具体的には、コメントや文字列のハイライト処理に関連するロジックが原因で発生していた無限ループまたは非効率な処理を改善し、Emacsの応答性を向上させます。

コミット

commit a93b15cad90828a8706e79eb00e7962da09c1317
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date:   Tue Nov 27 12:21:10 2012 -0500

    misc/emacs: fix go-mode hang
    
    Fix suggested by serbaut.
    
    Fixes #4445.
    
    R=sameer
    CC=golang-dev, serbaut
    https://golang.org/cl/6842102

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/a93b15cad90828a8706e79eb00e7962da09c1317

元コミット内容

このコミットは、misc/emacs/go-mode.elファイルに対して以下の変更を加えています。

--- a/misc/emacs/go-mode.el
+++ b/misc/emacs/go-mode.el
@@ -432,7 +432,7 @@ if no further tokens of the type exist."
       (if (or (>= (point) limit) (eobp))
 	  (setq result nil)
 	(setq cs (go-mode-cs))
-	(if cs
+	(if (and cs (>= (car cs) (point)))
 	    (if (eq (= (char-after (car cs)) ?/) comment)
 		;; If inside the expected comment/string, highlight it.
 		(progn

変更点は1行のみで、go-mode.elの435行目において、条件式が(if csから(if (and cs (>= (car cs) (point))))に変更されています。

変更の背景

このコミットは、Go言語のEmacsメジャーモードであるgo-mode.elを使用している際に、Emacsがハングアップ(応答停止)する問題(Issue #4445)を修正するために行われました。このgo-mode.elは、Go言語の公式リポジトリの一部として提供されていたものです。

go-mode.elは、Go言語のソースコードをEmacsで編集する際に、シンタックスハイライト、インデント、コード補完などの機能を提供するLispスクリプトです。ハングアップは、特にコメントや文字列のハイライト処理において、特定の条件下で発生していました。

元のコードでは、go-mode-csという関数が返す値csが存在するかどうかのみをチェックしていました。csは、現在のカーソル位置(point)から見て、次に現れるコメントまたは文字列の開始位置を示す情報を含んでいると推測されます。しかし、このcsが示す位置が現在のカーソル位置よりも前にある場合、または不適切な値である場合に、ハイライト処理のロジックが無限ループに陥ったり、非常に非効率な処理を実行したりする可能性がありました。これにより、Emacsが応答しなくなり、ユーザー体験が著しく損なわれていました。

この問題は、serbaut氏によって提案された修正に基づいて解決されました。

前提知識の解説

このコミットを理解するためには、以下の前提知識が必要です。

  1. Emacs Lisp (Elisp): Emacsエディタの拡張機能や設定を記述するために使用されるプログラミング言語です。go-mode.elもElispで書かれています。

    • point: Emacs Lispにおいて、現在のカーソル位置を示すバッファ内の文字位置です。整数値で表されます。
    • car: リストの最初の要素を返す関数です。Elispでは、リストは非常に基本的なデータ構造であり、多くの情報がリストとして表現されます。
    • and: 論理AND演算子です。複数の条件がすべて真である場合に真を返します。
    • >=: 比較演算子で、「以上」を意味します。
    • setq: 変数に値を代入する関数です。
    • if: 条件分岐を行う構文です。
    • eobp: "End Of Buffer P" の略で、カーソルがバッファの終端にある場合に真を返す述語です。
    • char-after: 指定された位置の文字を返す関数です。
    • eq: 2つの引数が同じオブジェクトである場合に真を返す関数です。
    • =: 2つの数値が等しい場合に真を返す関数です。
    • progn: 複数の式を順に評価し、最後の式の値を返す関数です。
  2. シンタックスハイライト: プログラミング言語のキーワード、文字列、コメントなどを異なる色やスタイルで表示する機能です。エディタがコードの構造を解析し、適切な部分にスタイルを適用します。この処理は、特に大規模なファイルや複雑な構造を持つコードにおいて、効率的に行われる必要があります。

  3. Go言語のコメントと文字列: Go言語では、//で始まる1行コメントと、/* ... */で囲まれた複数行コメントがあります。文字列はダブルクォート"またはバッククォート`で囲まれます。go-mode.elはこれらの構文要素を正しく認識し、ハイライトする必要があります。

  4. Issue Tracking System: GitHubのIssue #4445のように、ソフトウェア開発においてバグ報告や機能要望を管理するためのシステムです。Fixes #4445という記述は、このコミットが特定のIssueを解決したことを示します。

技術的詳細

この修正は、go-mode.el内のシンタックスハイライト処理の一部であるgo-mode-cs関数が返す値の検証を強化することで、ハングアップ問題を解決しています。

元のコードでは、以下の条件式がありました。

(if cs
    ;; ...
)

ここでcsは、go-mode-cs関数によって計算された、現在のカーソル位置から見て次に現れるコメントまたは文字列の開始位置に関する情報を含むリストであると推測されます。このリストの最初の要素(car cs)は、その開始位置のバッファ内でのインデックス(整数値)であると考えられます。

問題は、csnilでない(つまり、何らかの情報が返された)場合でも、その情報が現在のカーソル位置に対して有効でない場合があったことです。例えば、csが示す位置が既に処理済みの領域(現在のpointよりも前の位置)である場合、ハイライト処理が無限ループに陥るか、不適切な領域を繰り返し処理しようとする可能性がありました。

新しい条件式は以下の通りです。

(if (and cs (>= (car cs) (point)))
    ;; ...
)

この変更により、以下の2つの条件が同時に満たされる場合にのみ、ハイライト処理の内部ロジックが実行されるようになります。

  1. csが存在する: go-mode-csが有効な情報を返したことを確認します。
  2. (car cs)が現在のカーソル位置point以上である: csが示すコメントまたは文字列の開始位置が、現在のカーソル位置(point)よりも後、または現在のカーソル位置と一致していることを確認します。これにより、既に通過した領域や無効な位置を指すcsの値によって、ハイライト処理が誤動作するのを防ぎます。

この追加された条件 (>= (car cs) (point))は、ハイライト処理が常に前方(または現在の位置)に進むことを保証し、後方への不必要なジャンプや無限ループを防ぐための重要なガード条件として機能します。これにより、Emacsの応答性が維持され、ハングアップが解消されます。

コアとなるコードの変更箇所

変更されたファイル: misc/emacs/go-mode.el

変更された行: 435行目

-	(if cs
+	(if (and cs (>= (car cs) (point)))

コアとなるコードの解説

この変更は、Emacs Lispの条件分岐if文の条件式を修正しています。

  • 変更前: (if cs ...)

    • これは、変数csnil(Emacs Lispにおける偽)でない限り、続くS式(ここではハイライト処理のロジック)を実行するという意味です。csが何らかの値を持っていれば、その値が現在のカーソル位置に対して意味があるかどうかに関わらず、処理が続行されていました。
  • 変更後: (if (and cs (>= (car cs) (point))) ...)

    • この新しい条件式は、論理AND演算子andを使用しています。これは、andの引数がすべて真である場合にのみ、and式全体が真となり、if文の本体が実行されます。
    • cs: 最初の条件は、csnilでないことを確認します。これは変更前と同じですが、次の条件と組み合わされることで意味を持ちます。
    • (>= (car cs) (point)): 2番目の条件は、csリストの最初の要素(car cs)が、現在のカーソル位置(point)以上であることを確認します。
      • car csは、go-mode-cs関数が返す、次にハイライトすべきコメントや文字列の開始位置のバッファインデックスです。
      • pointは、現在のカーソル位置のバッファインデックスです。
      • この条件は、「次にハイライトすべき位置が、現在のカーソル位置よりも後、または現在のカーソル位置と等しい」ことを保証します。

この修正により、ハイライト処理は、有効なコメント/文字列情報が存在し、かつその情報が現在の処理範囲内または未来の範囲を指している場合にのみ実行されるようになります。これにより、過去の無効な位置を参照することによる無限ループや非効率な処理が回避され、Emacsのハングアップが解消されます。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語のGitHubリポジトリ: https://github.com/golang/go
  • Emacs Lisp Manual: https://www.gnu.org/software/emacs/manual/html_node/elisp/
  • Emacs Lispの基本的な関数に関する情報 (例: car, point, and, >=): Emacs Lispの公式ドキュメントやチュートリアル。
  • Emacsのgo-modeにおける一般的なハングアップ問題に関する情報源(Issue #4445とは直接関係しないが、一般的な原因の理解に役立つ情報):
    • Stack Exchange: golangci-lintのようなGoリンターの古いバージョンがクラッシュを引き起こす可能性。
    • GitHub: 大規模なプロジェクトやクリーンアップされていないGoモジュールキャッシュを扱う際のLanguage Server Protocol (LSP) クライアント(例: eglot)の問題。