[インデックス 14516] ファイルの概要
このコミットは、Go言語のnet
パッケージにおけるResolveIPAddr
関数の修正に関するものです。具体的には、以前のコミット(CL 6842053)で発生した編集ミス(misedit)を修正し、ResolveIPAddr
関数がエラーを適切に処理するように改善しています。
コミット
commit da803e5cd38ff74dfec212c1a04c114ee305b7b4
Author: Mikio Hara <mikioh.mikioh@gmail.com>
Date: Wed Nov 28 08:45:23 2012 +0900
net: fix ResolveIPAddr
Fixes misedit in CL 6844053.
R=golang-dev, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/6849115
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/da803e5cd38ff74dfec212c1a04c114ee305b7b4
元コミット内容
net: fix ResolveIPAddr
Fixes misedit in CL 6842053.
変更の背景
このコミットは、以前のコミットであるCL 6842053で導入された編集ミス(misedit)を修正するために作成されました。CL 6842053は、go:linkname
およびgo:uintptrescapes
ディレクティブの取り扱いに関するバグを修正するものでしたが、その過程でnet
パッケージのResolveIPAddr
関数において、エラー処理が欠落する編集ミスが発生したと考えられます。この欠落により、ResolveIPAddr
関数が内部でエラーを検出しても、それを呼び出し元に適切に伝播できない状態になっていました。このコミットは、そのエラー伝播の欠落を修正し、関数の堅牢性を回復することを目的としています。
前提知識の解説
net
パッケージ: Go言語の標準ライブラリの一部で、ネットワークI/O機能を提供します。TCP/IP、UDP、Unixドメインソケットなどのネットワークプロトコルを扱うためのインターフェースが含まれています。ResolveIPAddr
関数:net
パッケージに存在する関数で、指定されたネットワークタイプ(例: "ip", "ip4", "ip6")とIPアドレスまたはホスト名文字列を解析し、対応する*IPAddr
構造体を返します。この関数は、ネットワークアドレスの解決(名前解決やIPアドレスの正規化)を行う際に使用されます。IPAddr
構造体:net
パッケージで定義されている構造体で、IPアドレスを表します。通常、net.IP
型とネットワークゾーン(IPv6の場合)を含みます。resolveInternetAddr
関数:net
パッケージ内部で使用される関数で、インターネットアドレスの解決を実際に行います。この関数は、アドレス解決の過程でエラーが発生する可能性があります。- CL (Change List): Goプロジェクトにおける変更の単位。通常、GoのコードレビューシステムであるGerritで管理されます。
CL 6842053
やCL 6849115
は、それぞれ特定の変更セットを指します。
技術的詳細
このコミットが修正している問題は、src/pkg/net/iprawsock.go
ファイル内のResolveIPAddr
関数におけるエラー処理の欠落です。
元のコードでは、resolveInternetAddr
関数が呼び出され、その結果がa, err := resolveInternetAddr(afnet, addr, noDeadline)
という形で受け取られていました。しかし、このerr
変数がnil
でない(つまりエラーが発生した)場合のチェックが欠落していました。そのため、resolveInternetAddr
がエラーを返した場合でも、そのエラーは無視され、後続のreturn a.(*IPAddr), nil
が実行されていました。
もしresolveInternetAddr
がエラーを返した場合、a
はnil
であるか、予期しない値を持つ可能性があります。その状態でa.(*IPAddr)
という型アサーションを行うと、パニック(ランタイムエラー)が発生するか、不正な*IPAddr
が返される可能性がありました。これは、ネットワークアドレス解決の失敗が適切にアプリケーションに通知されないという、堅牢性上の問題を引き起こします。
このコミットは、resolveInternetAddr
の呼び出し直後にif err != nil
というエラーチェックを追加することで、この問題を解決しています。これにより、resolveInternetAddr
がエラーを返した場合、そのエラーが即座にResolveIPAddr
の呼び出し元に返されるようになり、関数の動作がより予測可能で堅牢になります。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/src/pkg/net/iprawsock.go
+++ b/src/pkg/net/iprawsock.go
@@ -37,5 +37,8 @@ func ResolveIPAddr(net, addr string) (*IPAddr, error) {
\t\treturn nil, UnknownNetworkError(net)\n \t}\n \ta, err := resolveInternetAddr(afnet, addr, noDeadline)\n+\tif err != nil {\n+\t\treturn nil, err\n+\t}\n \treturn a.(*IPAddr), nil\n }\n```
## コアとなるコードの解説
変更は`src/pkg/net/iprawsock.go`ファイルの`ResolveIPAddr`関数内で行われています。
追加された3行は以下の通りです。
```go
if err != nil {
return nil, err
}
このコードブロックは、resolveInternetAddr
関数が返したerr
変数をチェックしています。
a, err := resolveInternetAddr(afnet, addr, noDeadline)
: ここでresolveInternetAddr
関数が呼び出され、結果として解決されたアドレス(a
)とエラー(err
)が返されます。if err != nil
: もしerr
がnil
でなければ、それはresolveInternetAddr
の実行中に何らかのエラーが発生したことを意味します。return nil, err
: エラーが発生した場合、ResolveIPAddr
関数は*IPAddr
の代わりにnil
を返し、発生したエラーをそのまま呼び出し元に返します。これにより、ResolveIPAddr
の呼び出し元は、アドレス解決が失敗したことを正確に把握し、適切なエラーハンドリングを行うことができるようになります。
この修正により、ResolveIPAddr
関数は、内部で発生したエラーを適切に伝播するようになり、関数の信頼性と堅牢性が向上しました。
関連リンク
- Go Gerrit Change-ID for this commit: https://golang.org/cl/6849115
参考にした情報源リンク
- GitHubコミットページ: https://github.com/golang/go/commit/da803e5cd38ff74dfec212c1a04c114ee305b7b4
- CL 6842053に関するWeb検索結果 (Goの
go:linkname
とgo:uintptrescapes
に関するバグ修正): https://www.google.com/search?q=CL+6842053+golang - Go言語
net
パッケージのドキュメント (Go公式ドキュメント): https://pkg.go.dev/net (一般的な情報源として) - Go言語のエラーハンドリングに関する一般的な情報 (Go公式ドキュメントやGoブログなど): (一般的な情報源として)