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[インデックス 14581] ファイルの概要

このコミットは、src/pkg/exp/gotype/gotype_test.go ファイルに対する変更です。このファイルは、Go言語の実験的な型チェッカーであるgotypeパッケージのテストコードの一部です。

コミット

  • コミットハッシュ: 9088d17afb9fffd292cc94a40b78d8fa14eefabd
  • 作者: Robert Griesemer gri@golang.org
  • 日付: 2012年12月6日 木曜日 09:47:12 -0800
  • コミットメッセージ: fix build: remove a flaky test for now

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/9088d17afb9fffd292cc94a40b78d8fa14eefabd

元コミット内容

fix build: remove a flaky test for now

R=rsc
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/6889052

変更の背景

このコミットの主な背景は、Go言語のビルドプロセスにおいて、特定のテストが不安定(flaky)であったため、一時的にそのテストを無効化することです。

「flaky test(フレイキーテスト)」とは、同じコードに対して実行するたびに、成功したり失敗したりする予測不可能なテストを指します。これは、テスト環境の非一貫性、並行処理の競合状態、外部依存関係の不安定性、あるいはテスト自体の設計上の欠陥など、様々な要因によって引き起こされます。フレイキーテストは、CI/CDパイプラインの信頼性を損ない、開発者が本当に問題があるのか、それとも単にテストが不安定なだけなのかを判断するのを困難にします。結果として、開発の生産性を低下させ、重要なバグが見過ごされるリスクを高めます。

このコミットでは、ビルドの安定性を確保するため、問題の原因を特定して修正するまでの間、一時的な措置として該当するテスト(crypto/rsa関連のテスト)をコメントアウトすることで、ビルドが常に成功するようにしています。コミットメッセージの「investigate (GOARCH=386)」というコメントから、特にGOARCH=386(32ビットx86アーキテクチャ)環境で問題が発生していた可能性が示唆されています。

前提知識の解説

  1. Go言語のexpパッケージ: exp(experimental)パッケージは、Go言語の標準ライブラリの一部として、将来的にGoのコアに組み込まれる可能性のある、実験的なAPIや機能を含むパッケージ群です。これらのパッケージは、まだ安定版ではなく、APIが変更される可能性があります。src/pkg/exp/gotypeもその一つで、Goの型システムに関する実験的な機能を提供していました。

  2. gotypeパッケージ: gotypeは、Go言語のソースコードを解析し、型情報を抽出するための実験的なツールまたはライブラリでした。これは、Goのコンパイラやツールチェーンの内部で利用される型システムを外部に公開し、開発者がGoのコードベースをプログラム的に分析できるようにすることを目的としていました。テストファイルであるgotype_test.goは、このgotypeパッケージがGoの標準ライブラリの様々なパッケージを正しく解析できるかを検証していました。

  3. crypto/rsaパッケージ: crypto/rsaは、Go言語の標準ライブラリに含まれる暗号パッケージの一つで、RSA暗号アルゴリズムの実装を提供します。RSAは公開鍵暗号方式の一つで、データの暗号化、デジタル署名、鍵交換などに広く用いられます。このパッケージは、鍵の生成、暗号化、復号、署名、検証などの機能を提供します。テストが不安定であったということは、このRSA暗号の実装またはそのテスト方法に、特定の環境(特にGOARCH=386)で問題があったことを示唆しています。

  4. GOARCH=386: GOARCHはGo言語の環境変数の一つで、ビルドターゲットのアーキテクチャを指定します。386はIntel 80386プロセッサを指し、一般的には32ビットx86アーキテクチャのシステムを意味します。特定のアーキテクチャでのみテストが不安定になる場合、それはアセンブリコードのバグ、特定のCPU命令の挙動、メモリ配置、またはコンパイラの最適化に関する問題など、低レベルな要因に起因することがあります。暗号関連のコードは、パフォーマンスのためにアセンブリ最適化が施されていることが多く、アーキテクチャ固有のバグが発生しやすい領域です。

  5. Gerrit Change-ID (golang.org/cl/6889052): Goプロジェクトでは、コードレビューシステムとしてGerritを使用しています。golang.org/cl/に続く番号は、Gerrit上の特定の変更セット(Change List)を指すIDです。このリンクを辿ることで、このコミットに至るまでの議論、レビューコメント、および関連する変更履歴を詳細に確認できます。これは、Goコミュニティにおける開発プロセスの透明性を示すものです。

技術的詳細

このコミットは、src/pkg/exp/gotype/gotype_test.goファイル内のtestsという文字列スライスから、"crypto/rsa"というエントリをコメントアウトすることで、crypto/rsaパッケージに対するgotypeのテストを一時的に無効化しています。

gotype_test.goファイルには、gotypeが正しく解析できるべきGo標準ライブラリのパッケージパスのリストがtests変数として定義されています。このリストに含まれる各パッケージに対して、gotypeは型情報を抽出し、その正確性を検証するテストを実行します。

変更前は、testsスライスに"crypto/rsa"が含まれており、gotypecrypto/rsaパッケージの解析テストを実行していました。しかし、このテストが不安定であったため、変更後は該当行がコメントアウトされ、テスト対象から一時的に除外されました。

コメントアウトされた行には、// "crypto/rsa", // investigate (GOARCH=386)というコメントが追加されています。これは、このテストが無効化された理由がcrypto/rsaパッケージに関連しており、特にGOARCH=386環境で調査が必要であることを示しています。このコメントは、将来的にこの問題が解決された際に、テストを再度有効化するための手がかりとなります。

この変更は、問題の根本的な解決ではなく、ビルドの安定性を優先した一時的な回避策です。不安定なテストを無効化することで、CI/CDパイプラインが常にグリーン(成功)の状態を保ち、他の開発者が不安定なテストによって誤ったアラートを受け取らないようにします。これにより、開発チームはより重要な問題に集中し、後でこのフレイキーテストの根本原因を調査・修正する時間を確保できます。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/pkg/exp/gotype/gotype_test.go
+++ b/src/pkg/exp/gotype/gotype_test.go
@@ -77,7 +77,7 @@ var tests = []string{
 	"crypto/md5",
 	"crypto/rand",
 	"crypto/rc4",
-\t"crypto/rsa",
+\t// "crypto/rsa", // investigate (GOARCH=386)\n
 	"crypto/sha1",
 	"crypto/sha256",
 	"crypto/sha512",

コアとなるコードの解説

このdiffは、src/pkg/exp/gotype/gotype_test.goファイル内のtestsというGoの文字列スライスから、"crypto/rsa"という要素を削除し、代わりにコメントアウトされた行を追加していることを示しています。

  • - "crypto/rsa", この行は、元のコードでtestsスライスに含まれていた"crypto/rsa"という文字列リテラルです。これは、gotypeパッケージがcrypto/rsaパッケージを解析するテストを実行することを示していました。ハイフン(-)は、この行が削除されたことを意味します。

  • + // "crypto/rsa", // investigate (GOARCH=386) この行は、新しく追加された行です。スラッシュ2つ(//)はGo言語における単一行コメントを示します。これにより、"crypto/rsa"という文字列はコードの一部としてではなく、単なるコメントとして扱われるようになります。つまり、gotypeのテストスイートは、もはやcrypto/rsaパッケージをテスト対象としなくなります。 コメントの後半にある// investigate (GOARCH=386)は、このテストが一時的に無効化された理由と、特にGOARCH=386環境での調査が必要であるという開発者へのメモです。プラス(+)は、この行が追加されたことを意味します。

この変更により、gotypeのテスト実行時にcrypto/rsaパッケージの解析テストがスキップされるようになり、ビルドの不安定性が解消されます。これは、問題の根本原因を特定し修正するまでの間、CI/CDパイプラインの健全性を維持するための実用的なアプローチです。

関連リンク

参考にした情報源リンク