[インデックス 14644] ファイルの概要
このコミットは、Go言語のテストスイートにおける変更であり、特定のバグ修正テストファイル test/fixedbugs/issue4535.go
を削除し、その中の nil
マップからの delete
操作に関するテストコードを、より汎用的な nil
関連のテストを扱う test/nil.go
へ移動したものです。この変更の主な理由は、「このための個別のテストは不要」という判断に基づいています。これは、nil
マップに対する delete
操作がGo言語の仕様上、パニックを起こさずに安全に実行できる(何もしない)ため、特定のバグとして扱う必要がないことを示唆しています。
コミット
- コミットハッシュ:
9509cbf203dbdf39008c238c96563c11b942d7ba
- 作者: Ian Lance Taylor iant@golang.org
- コミット日時: 2012年12月13日 木曜日 12:11:24 -0800
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/9509cbf203dbdf39008c238c96563c11b942d7ba
元コミット内容
test: move map delete test to nil.go
No need for a separate test for this.
R=golang-dev, minux.ma, rsc
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/6941045
変更の背景
Go言語のテストスイートには、過去に発見されたバグの修正を検証するための test/fixedbugs
ディレクトリが存在します。issue4535.go
は、おそらくGo Issue 4535に関連するバグを修正した際に作成されたテストファイルであり、nil
マップに対して delete
関数を呼び出した際の挙動を検証していました。
しかし、Go言語の仕様では、nil
マップに対する delete
操作はパニックを起こさず、単に何もしないことが保証されています。これは、nil
スライスに対する len
や cap
の呼び出し、nil
チャネルに対する送受信操作と同様に、nil
値に対する安全な操作の一つです。
このコミットの背景には、nil
マップからの delete
がバグではなく、言語仕様で定義された正常な挙動であることが再確認されたため、これを特定のバグ修正テストとして fixedbugs
ディレクトリに保持する必要がないという判断があります。代わりに、nil
値の一般的な挙動をテストする test/nil.go
に統合することで、テストコードの整理と冗長性の排除が図られました。
前提知識の解説
Go言語のマップ (map)
Go言語の map
は、キーと値のペアを格納するハッシュテーブルの実装です。map
は参照型であり、宣言時に初期化されない場合、そのゼロ値は nil
となります。nil
マップは、キーと値のペアを保持するためのメモリが割り当てられていない状態を指します。
delete
関数
Go言語の組み込み関数 delete(m, key)
は、マップ m
から指定された key
に対応するエントリを削除するために使用されます。もし key
がマップに存在しない場合、delete
は何もしません。
nil
マップに対する操作
Go言語では、nil
マップに対して特定の操作を行うことができます。
len(nilMap)
: 0 を返します。nilMap[key]
: キーが存在しないため、値型のゼロ値を返します。delete(nilMap, key)
: 何もしません。パニックは発生しません。
ただし、nil
マップに要素を追加しようとすると(例: nilMap[key] = value
)、ランタイムパニックが発生します。これは、nil
マップがメモリを割り当てていないため、要素を格納する場所がないためです。
Go言語のテスト構造
Go言語の標準ライブラリやツールには、広範なテストスイートが含まれています。
test/
: Go言語のランタイム、コンパイラ、標準ライブラリなどの様々な側面をテストするファイルが含まれています。test/fixedbugs/
: 特定のバグが修正されたことを確認するためのテストファイルが格納されます。バグが修正された後も、回帰テストとしてこれらのテストが実行されます。test/nil.go
:nil
値に関連する様々な挙動(nil
スライス、nil
マップ、nil
インターフェースなど)をテストするためのファイルです。
技術的詳細
このコミットの技術的詳細は、Go言語における nil
マップの delete
操作のセマンティクスと、テストコードの整理原則に集約されます。
Go言語の仕様では、delete
関数は nil
マップに対して呼び出された場合でもパニックを起こさないことが明確に定義されています。これは、delete
がマップの内部状態を変更しようとする前に、マップが nil
であるかどうかをチェックし、nil
であれば単に処理をスキップするように実装されているためです。この挙動は、プログラマが map
を使用する際に、nil
チェックを頻繁に行う必要がないようにするための設計上の決定です。例えば、関数が map
を受け取り、その map
が nil
である可能性がある場合でも、安全に delete
を呼び出すことができます。
issue4535.go
は、この nil
マップに対する delete
操作がパニックを起こさないことを確認するためのテストでした。しかし、この挙動が言語仕様によって保証されており、もはや「バグ」ではないと判断されたため、fixedbugs
ディレクトリに置く必要がなくなりました。
テストコードの整理という観点では、関連するテストを一つのファイルにまとめることは、コードの可読性と保守性を向上させます。test/nil.go
は、Go言語における nil
の様々な側面をテストするための場所として適切であり、nil
マップに対する delete
操作のテストもそこに含めるのが自然です。これにより、テストスイート全体の構造がより論理的になり、将来的に nil
関連の挙動に変更があった場合でも、関連するテストを一つの場所で確認できるようになります。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/test/fixedbugs/issue4535.go
+++ /dev/null
@@ -1,12 +0,0 @@
-// run
-
-// Copyright 2012 The Go Authors. All rights reserved.
-// Use of this source code is governed by a BSD-style
-// license that can be found in the LICENSE file.
-
-package main
-
-func main() {
- var m map[int]int
- delete(m, 0)
-}
diff --git a/test/nil.go b/test/nil.go
index 6d90f5053a..44ca79e88a 100644
--- a/test/nil.go
+++ b/test/nil.go
@@ -147,6 +147,9 @@ func maptest() {
panic(v)
}
+ // can delete (non-existent) entries
+ delete(m, 2)
+
// but cannot be written to
shouldPanic(func() {
m[2] = 3
コアとなるコードの解説
test/fixedbugs/issue4535.go
の削除
このファイルは完全に削除されました。元のファイルの内容は以下の通りです。
// run
// Copyright 2012 The Go Authors. All rights reserved.
// Use of this source code is governed by a BSD-style
// license that can be found in the LICENSE file.
package main
func main() {
var m map[int]int
delete(m, 0)
}
このテストは、main
関数内で nil
マップ m
を宣言し、その m
に対して delete(m, 0)
を呼び出しています。このテストの目的は、この操作がパニックを起こさないことを確認することでした。ファイルが // run
コメントで始まっていることから、このテストは実行時にエラーが発生しないことを期待していました。このファイルの削除は、このテストがもはや fixedbugs
ディレクトリに属する「バグ修正」のテストではないという判断を反映しています。
test/nil.go
への追加
test/nil.go
ファイルには、以下の3行が追加されました。
@@ -147,6 +147,9 @@ func maptest() {
panic(v)
}
+ // can delete (non-existent) entries
+ delete(m, 2)
+
// but cannot be written to
shouldPanic(func() {
m[2] = 3
この変更は、maptest()
関数内で行われています。maptest()
関数は、nil
マップ m
を含む様々なマップ操作をテストしている部分です。
追加された行 delete(m, 2)
は、nil
マップ m
からキー 2
を削除しようとする操作です。その上のコメント // can delete (non-existent) entries
が示すように、この操作は nil
マップに対して安全であり、パニックを起こさずに実行できることをテストしています。
このコードは、既存の maptest()
関数内の他の nil
マップ関連のテスト(例えば、nil
マップへの書き込みがパニックを起こすことをテストする shouldPanic
ブロック)と並んで配置されており、nil
マップの挙動に関する包括的なテストの一部として機能します。これにより、nil
マップに対する delete
操作のテストが、より適切なコンテキストに移動され、テストスイート全体の整合性が向上しました。
関連リンク
- Go CL 6941045: https://golang.org/cl/6941045
参考にした情報源リンク
- Go言語の仕様 (The Go Programming Language Specification):
- Go言語のIssueトラッカー (Go Issue 4535に関連する可能性):
- https://github.com/golang/go/issues/4535 (このコミットの直接のIssueではない可能性もありますが、
issue4535.go
の命名規則から関連が推測されます)
- https://github.com/golang/go/issues/4535 (このコミットの直接のIssueではない可能性もありますが、
- Go言語のソースコード (test/nil.go, test/fixedbugs/issue4535.go):
- Go言語における
nil
マップの挙動に関する一般的な情報源 (例: Go by Example - Maps):- https://gobyexample.com/maps
- (Web検索: "go delete nil map behavior")```markdown
[インデックス 14644] ファイルの概要
このコミットは、Go言語のテストスイートにおける変更であり、特定のバグ修正テストファイル test/fixedbugs/issue4535.go
を削除し、その中の nil
マップからの delete
操作に関するテストコードを、より汎用的な nil
関連のテストを扱う test/nil.go
へ移動したものです。この変更の主な理由は、「このための個別のテストは不要」という判断に基づいています。これは、nil
マップに対する delete
操作がGo言語の仕様上、パニックを起こさずに安全に実行できる(何もしない)ため、特定のバグとして扱う必要がないことを示唆しています。
コミット
- コミットハッシュ:
9509cbf203dbdf39008c238c96563c11b942d7ba
- 作者: Ian Lance Taylor iant@golang.org
- コミット日時: 2012年12月13日 木曜日 12:11:24 -0800
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/9509cbf203dbdf39008c238c96563c11b942d7ba
元コミット内容
test: move map delete test to nil.go
No need for a separate test for this.
R=golang-dev, minux.ma, rsc
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/6941045
変更の背景
Go言語のテストスイートには、過去に発見されたバグの修正を検証するための test/fixedbugs
ディレクトリが存在します。issue4535.go
は、おそらくGo Issue 4535に関連するバグを修正した際に作成されたテストファイルであり、nil
マップに対して delete
関数を呼び出した際の挙動を検証していました。
しかし、Go言語の仕様では、nil
マップに対する delete
操作はパニックを起こさず、単に何もしないことが保証されています。これは、nil
スライスに対する len
や cap
の呼び出し、nil
チャネルに対する送受信操作と同様に、nil
値に対する安全な操作の一つです。
このコミットの背景には、nil
マップからの delete
がバグではなく、言語仕様で定義された正常な挙動であることが再確認されたため、これを特定のバグ修正テストとして fixedbugs
ディレクトリに保持する必要がないという判断があります。代わりに、nil
値の一般的な挙動をテストする test/nil.go
に統合することで、テストコードの整理と冗長性の排除が図られました。
前提知識の解説
Go言語のマップ (map)
Go言語の map
は、キーと値のペアを格納するハッシュテーブルの実装です。map
は参照型であり、宣言時に初期化されない場合、そのゼロ値は nil
となります。nil
マップは、キーと値のペアを保持するためのメモリが割り当てられていない状態を指します。
delete
関数
Go言語の組み込み関数 delete(m, key)
は、マップ m
から指定された key
に対応するエントリを削除するために使用されます。もし key
がマップに存在しない場合、delete
は何もしません。
nil
マップに対する操作
Go言語では、nil
マップに対して特定の操作を行うことができます。
len(nilMap)
: 0 を返します。nilMap[key]
: キーが存在しないため、値型のゼロ値を返します。delete(nilMap, key)
: 何もしません。パニックは発生しません。
ただし、nil
マップに要素を追加しようとすると(例: nilMap[key] = value
)、ランタイムパニックが発生します。これは、nil
マップがメモリを割り当てていないため、要素を格納する場所がないためです。
Go言語のテスト構造
Go言語の標準ライブラリやツールには、広範なテストスイートが含まれています。
test/
: Go言語のランタイム、コンパイラ、標準ライブラリなどの様々な側面をテストするファイルが含まれています。test/fixedbugs/
: 特定のバグが修正されたことを確認するためのテストファイルが格納されます。バグが修正された後も、回帰テストとしてこれらのテストが実行されます。test/nil.go
:nil
値に関連する様々な挙動(nil
スライス、nil
マップ、nil
インターフェースなど)をテストするためのファイルです。
技術的詳細
このコミットの技術的詳細は、Go言語における nil
マップの delete
操作のセマンティクスと、テストコードの整理原則に集約されます。
Go言語の仕様では、delete
関数は nil
マップに対して呼び出された場合でもパニックを起こさないことが明確に定義されています。これは、delete
がマップの内部状態を変更しようとする前に、マップが nil
であるかどうかをチェックし、nil
であれば単に処理をスキップするように実装されているためです。この挙動は、プログラマが map
を使用する際に、nil
チェックを頻繁に行う必要がないようにするための設計上の決定です。例えば、関数が map
を受け取り、その map
が nil
である可能性がある場合でも、安全に delete
を呼び出すことができます。
issue4535.go
は、この nil
マップに対する delete
操作がパニックを起こさないことを確認するためのテストでした。しかし、この挙動が言語仕様によって保証されており、もはや「バグ」ではないと判断されたため、fixedbugs
ディレクトリに置く必要がなくなりました。
テストコードの整理という観点では、関連するテストを一つのファイルにまとめることは、コードの可読性と保守性を向上させます。test/nil.go
は、Go言語における nil
の様々な側面をテストするための場所として適切であり、nil
マップに対する delete
操作のテストもそこに含めるのが自然です。これにより、テストスイート全体の構造がより論理的になり、将来的に nil
関連の挙動に変更があった場合でも、関連するテストを一つの場所で確認できるようになります。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/test/fixedbugs/issue4535.go
+++ /dev/null
@@ -1,12 +0,0 @@
-// run
-
-// Copyright 2012 The Go Authors. All rights reserved.
-// Use of this source code is governed by a BSD-style
-// license that can be found in the LICENSE file.
-
-package main
-
-func main() {
- var m map[int]int
- delete(m, 0)
-}
diff --git a/test/nil.go b/test/nil.go
index 6d90f5053a..44ca79e88a 100644
--- a/test/nil.go
+++ b/test/nil.go
@@ -147,6 +147,9 @@ func maptest() {
panic(v)
}
+ // can delete (non-existent) entries
+ delete(m, 2)
+
// but cannot be written to
shouldPanic(func() {
m[2] = 3
コアとなるコードの解説
test/fixedbugs/issue4535.go
の削除
このファイルは完全に削除されました。元のファイルの内容は以下の通りです。
// run
// Copyright 2012 The Go Authors. All rights reserved.
// Use of this source code is governed by a BSD-style
// license that can be found in the LICENSE file.
package main
func main() {
var m map[int]int
delete(m, 0)
}
このテストは、main
関数内で nil
マップ m
を宣言し、その m
に対して delete(m, 0)
を呼び出しています。このテストの目的は、この操作がパニックを起こさないことを確認することでした。ファイルが // run
コメントで始まっていることから、このテストは実行時にエラーが発生しないことを期待していました。このファイルの削除は、このテストがもはや fixedbugs
ディレクトリに属する「バグ修正」のテストではないという判断を反映しています。
test/nil.go
への追加
test/nil.go
ファイルには、以下の3行が追加されました。
@@ -147,6 +147,9 @@ func maptest() {
panic(v)
}
+ // can delete (non-existent) entries
+ delete(m, 2)
+
// but cannot be written to
shouldPanic(func() {
m[2] = 3
この変更は、maptest()
関数内で行われています。maptest()
関数は、nil
マップ m
を含む様々なマップ操作をテストしている部分です。
追加された行 delete(m, 2)
は、nil
マップ m
からキー 2
を削除しようとする操作です。その上のコメント // can delete (non-existent) entries
が示すように、この操作は nil
マップに対して安全であり、パニックを起こさずに実行できることをテストしています。
このコードは、既存の maptest()
関数内の他の nil
マップ関連のテスト(例えば、nil
マップへの書き込みがパニックを起こすことをテストする shouldPanic
ブロック)と並んで配置されており、nil
マップの挙動に関する包括的なテストの一部として機能します。これにより、nil
マップに対する delete
操作のテストが、より適切なコンテキストに移動され、テストスイート全体の整合性が向上しました。
関連リンク
- Go CL 6941045: https://golang.org/cl/6941045
参考にした情報源リンク
- Go言語の仕様 (The Go Programming Language Specification):
- Go言語のIssueトラッカー (Go Issue 4535に関連する可能性):
- https://github.com/golang/go/issues/4535 (このコミットの直接のIssueではない可能性もありますが、
issue4535.go
の命名規則から関連が推測されます)
- https://github.com/golang/go/issues/4535 (このコミットの直接のIssueではない可能性もありますが、
- Go言語のソースコード (test/nil.go, test/fixedbugs/issue4535.go):
- Go言語における
nil
マップの挙動に関する一般的な情報源 (例: Go by Example - Maps):- https://gobyexample.com/maps
- (Web検索: "go delete nil map behavior")