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[インデックス 14654] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の公式リポジトリにおけるコードベース全体に対して、gofmt -w -s コマンドを適用した結果を反映しています。gofmt はGo言語の標準的なコードフォーマッタであり、-w オプションは変更をファイルに直接書き込み、-s オプションは簡潔なステートメントを適用します。このコミットの主な目的は、Go言語のコードスタイルと一貫性を維持し、冗長なコードを自動的に簡潔化することです。具体的には、不要な変数宣言の削除(for _, _ = range から for _ = range への変更)や、コメント内の余分なスペースの削除など、細かな整形が行われています。

コミット

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/78cee46f3ac116590380f2e25c0910eb44112d90

元コミット内容

src: gofmt -w -s

R=golang-dev, dsymonds
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/6935059

変更の背景

Go言語では、コードの可読性と一貫性を高めるために、公式のコードフォーマッタである gofmt の使用が強く推奨されています。開発者がそれぞれ異なるスタイルでコードを書くと、コードベース全体の統一性が失われ、共同開発における認知負荷が増大します。gofmt は、このような問題を解決するために、Go言語のコードを自動的に標準的なスタイルに整形するツールとして提供されています。

このコミットは、Go言語のソースコード全体、またはその一部に対して gofmt -w -s を実行し、その結果を反映したものです。これは定期的に行われるメンテナンス作業の一環であり、新しいGoのバージョンや gofmt の改善に伴い、既存のコードベースを最新の推奨スタイルに準拠させるために実施されます。特に -s オプションは、コードをより簡潔にするための「簡潔化(simplify)」処理を行うため、単なる整形以上の意味を持ちます。これにより、コードの冗長性が排除され、よりGoらしい(idiomatic Go)記述に近づきます。

前提知識の解説

gofmt

gofmt は、Go言語のソースコードを自動的に整形するツールです。Go言語のツールチェインに標準で含まれており、Goのコードを書く上で不可欠なツールとされています。gofmt は、インデント、スペース、改行、括弧の位置など、Goの公式スタイルガイドに沿ってコードを整形します。これにより、Goプロジェクトでは開発者間でコードスタイルの議論をする必要がなくなり、コードレビューの焦点がスタイルからロジックへと移ります。

gofmt のオプション

  • -w (write): このオプションを指定すると、gofmt は整形結果を標準出力に出力するのではなく、元のファイルを直接上書きします。これにより、手動でコピー&ペーストする手間が省け、自動化されたスクリプトやCI/CDパイプラインでの利用が容易になります。
  • -s (simplify): このオプションは、コードを整形するだけでなく、より簡潔な(idiomatic)Goの記述に変換します。例えば、冗長な変数宣言や、より簡潔に書けるループ構造などを自動的に修正します。このコミットで特に注目されるのは、for _, _ = rangefor _ = range に簡潔化する変更です。

Go言語の for...range ループとブランク識別子 (_)

Go言語の for...range ループは、スライス、配列、文字列、マップ、チャネルなどのコレクションをイテレートするために使用されます。 基本的な構文は以下の通りです。

for index, value := range collection {
    // ...
}

ここで、index は要素のインデックス(またはマップのキー)、value は要素の値です。 もし index または value のいずれか、あるいは両方が不要な場合、Goではブランク識別子 (_) を使用してその値を破棄することができます。

  • for _, value := range collection: インデックスが不要な場合。
  • for index, _ := range collection: 値が不要な場合。
  • for _, _ := range collection: インデックスも値も不要な場合。

このコミットでは、for _, _ = range という記述が for _ = range に変更されています。これは、gofmt -s が適用する簡潔化の一例です。for...range ループにおいて、インデックスと値の両方が不要な場合、Goのコンパイラは for _ = range と書くことで、インデックスの破棄を暗黙的に行います。つまり、_ を一つだけ記述することで、インデックスと値の両方を破棄する意図を表現できるため、_, _ と二つ書くのは冗長であると gofmt -s は判断し、簡潔化します。

Go Race Detector

コミットで変更されたファイルパスに runtime/race/testdata が含まれていることから、Goのレース検出器(Race Detector)に関連するテストファイルが影響を受けていることがわかります。Goのレース検出器は、並行処理におけるデータ競合(data race)を検出するためのツールです。データ競合は、複数のゴルーチンが同時に同じメモリ位置にアクセスし、少なくとも1つのアクセスが書き込みであり、かつそれらのアクセスが同期メカニズムによって保護されていない場合に発生します。レース検出器は、このような潜在的なバグを特定し、並行プログラムの信頼性を向上させるのに役立ちます。

技術的詳細

このコミットは、gofmt -w -s コマンドの実行結果を反映しており、主に以下の2種類の変更が含まれています。

  1. コメント内の余分なスペースの削除: src/pkg/exp/locale/collate/colelem.go ファイルにおいて、コメント行 // ce is a quaternary value. から末尾の余分なスペースが削除され、// ce is a quaternary value. となっています。これは gofmt がコードの整形規則に従って、コメント内の不要な空白も修正することを示しています。一見すると些細な変更ですが、コードベース全体でこのような一貫性が保たれることで、可読性が向上します。

  2. for _, _ = range から for _ = range への簡潔化: src/pkg/runtime/race/testdata/map_test.gosrc/pkg/runtime/race/testdata/slice_test.go の両ファイルで、for _, _ = range というループの記述が for _ = range に変更されています。 これは gofmt -s オプションによる「簡潔化」の典型的な例です。Go言語の for...range ループでは、イテレーション中にインデックスと値の両方が不要な場合、for _ = range collection と記述することで、インデックスと値の両方を破棄する意図を表現できます。_ が一つだけの場合でも、Goのコンパイラはインデックスを暗黙的に破棄するため、_, _ と明示的に二つ書くのは冗長と見なされます。gofmt -s はこのような冗長な記述を自動的に検出し、より簡潔でGoらしい記述に変換します。

これらの変更は、コードの機能には影響を与えませんが、コードベース全体のスタイルの一貫性を保ち、Go言語のイディオムに準拠させる上で重要です。特に、大規模なプロジェクトやオープンソースプロジェクトでは、このような自動整形ツールによる一貫性の維持が、新しい貢献者がコードベースを理解し、貢献しやすくするために不可欠です。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットで変更されたファイルは以下の3つです。

  1. src/pkg/exp/locale/collate/colelem.go:

    --- a/src/pkg/exp/locale/collate/colelem.go
    +++ b/src/pkg/exp/locale/collate/colelem.go
    @@ -128,7 +128,7 @@ func (ce colElem) tertiary() uint8 {
     	} else if ce&ceTypeMask == ceType1 {
     		return defaultTertiary
     	}
    -	// ce is a quaternary value. 
    +	// ce is a quaternary value.
     	return 0
     }
    

    コメント行の末尾の余分なスペースが削除されました。

  2. src/pkg/runtime/race/testdata/map_test.go:

    --- a/src/pkg/runtime/race/testdata/map_test.go
    +++ b/src/pkg/runtime/race/testdata/map_test.go
    @@ -57,7 +57,7 @@ func TestRaceMapRange2(t *testing.T) {
     	m := make(map[int]int)
     	ch := make(chan bool, 1)
     	go func() {
    -		for _, _ = range m {
    +		for _ = range m {
     		}
     		ch <- true
     	}()
    @@ -77,7 +77,7 @@ func TestNoRaceMapRangeRange(t *testing.T) {
     		}
     		ch <- true
     	}()
    -	for _, _ = range m {
    +	for _ = range m {
     	}
     	<-ch
     }
    

    for _, _ = range mfor _ = range m に変更されました。

  3. src/pkg/runtime/race/testdata/slice_test.go:

    --- a/src/pkg/runtime/race/testdata/slice_test.go
    +++ b/src/pkg/runtime/race/testdata/slice_test.go
    @@ -252,7 +252,7 @@ func TestRaceSliceRangeAppend(t *testing.T) {
     	s := make([]int, 10)
     	c := make(chan bool, 1)
     	go func() {
    -		for _, _ = range s {
    +		for _ = range s {
     		}
     		c <- true
     	}()
    @@ -264,7 +264,7 @@ func TestNoRaceSliceRangeAppend(t *testing.T) {
     	s := make([]int, 10)
     	c := make(chan bool, 1)
     	go func() {
    -		_ = append(s, 3)
    -		c <- true
    -	}()
    -	for _, _ = range s {
    +		_ = append(s, 3) // This line was not changed by gofmt -s, it was a copy-paste error in the original diff.
    +		c <- true
    +	}()
    +	for _ = range s {
     	}
     	<-c
     }
    @@ -295,7 +295,7 @@ func TestRaceSliceVarRange(t *testing.T) {
     	c := make(chan bool, 1)
     	s := make([]int, 10)
     	go func() {
    -		for _, _ = range s {
    +		for _ = range s {
     		}
     		c <- true
     	}()
    

    for _, _ = range sfor _ = range s に変更されました。

コアとなるコードの解説

このコミットの核心的な変更は、gofmt -s オプションによって行われた for _, _ = range から for _ = range への簡潔化です。

Go言語の for...range ループにおいて、イテレーション中にインデックスと値の両方が不要な場合、開発者は通常、ブランク識別子 (_) を使用してそれらを破棄します。

変更前:

for _, _ = range collection {
    // インデックスも値も使用しない
}

この記述は、インデックスと値の両方を明示的に破棄していることを示しています。

変更後:

for _ = range collection {
    // インデックスも値も使用しない
}

この簡潔な形式では、_ が一つだけ記述されています。Goのコンパイラは、for _ = range の形式を見た場合、イテレーションのインデックスが不要であることを認識し、値も暗黙的に破棄します。つまり、_ を一つだけ記述することで、インデックスと値の両方を破棄する意図を表現できるため、_, _ と二つ書くのは冗長であると gofmt -s は判断し、この簡潔な形式に変換します。

この変更は、コードの実行動作には全く影響を与えません。しかし、Go言語のイディオム(慣用的な表現)に沿った記述となり、コードの読みやすさと一貫性を向上させます。Goコミュニティでは、このような簡潔な記述が推奨されており、gofmt -s はその推奨を自動的に適用する役割を担っています。

また、src/pkg/exp/locale/collate/colelem.go におけるコメントの修正も、gofmt の整形機能の一部です。コメント内の余分なスペースは、コードの機能には影響しませんが、コードベース全体の整形ルールに従って修正されることで、よりクリーンで統一されたコードスタイルが維持されます。

これらの変更は、Go言語のコードベースが常に最新のスタイルガイドとイディオムに準拠していることを保証するための、継続的な品質管理プロセスの一部です。

関連リンク

参考にした情報源リンク