[インデックス 14667] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の標準ライブラリ net/http/pprof
パッケージ内のドキュメントの修正に関するものです。具体的には、/debug/pprof/
エンドポイントに関する説明が、go tool pprof
コマンドの使用例から、ブラウザで直接アクセスする方法を推奨する形に変更されています。これは、利用可能なすべてのプロファイルを一覧表示する際に、より直感的で一般的なアクセス方法をユーザーに提示することを目的としています。
コミット
commit a89aaad195a186c5946edb9eb953c1d87f1c7d59
Author: Shenghou Ma <minux.ma@gmail.com>
Date: Mon Dec 17 23:32:08 2012 +0800
net/http/pprof: fix doc for /debug/pprof/
Fixes #4548.
R=golang-dev, rsc
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/6944053
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/a89aaad195a186c5946edb9eb953c1d87f1c7d59
元コミット内容
このコミットは、src/pkg/net/http/pprof/pprof.go
ファイル内のコメントを修正しています。
変更前のコメントは以下の通りでした。
// Or to view all available profiles:
//
// go tool pprof http://localhost:6060/debug/pprof/
このコメントは、利用可能なすべてのプロファイルを表示するために go tool pprof
コマンドを使用する方法を示していました。
変更の背景
この変更の背景には、Go言語のプロファイリングツール pprof
の利用方法に関するドキュメントの明確化があります。元のドキュメントでは、/debug/pprof/
エンドポイントにアクセスして利用可能なすべてのプロファイルを表示する際に、go tool pprof
コマンドを使用する例が示されていました。しかし、このエンドポイントは実際にはHTMLページを返し、ブラウザで直接開くことで、より視覚的にプロファイルの一覧を確認できます。
Issue #4548("net/http/pprof: /debug/pprof/ should be opened in browser")では、このドキュメントの記述が誤解を招く可能性があると指摘されていました。go tool pprof
は通常、特定のプロファイルデータ(例: CPUプロファイル、ヒーププロファイル)をダウンロードして解析するために使用されるツールであり、/debug/pprof/
のようなHTMLインデックスページを直接解析するようには設計されていません。そのため、ユーザーがすべてのプロファイルの一覧を確認したい場合には、ブラウザでURLを開くのが正しい、かつより便利な方法でした。
このコミットは、この誤解を解消し、ユーザーが最も適切で直感的な方法でプロファイルインデックスにアクセスできるように、ドキュメントを修正することを目的としています。
前提知識の解説
Go言語のプロファイリングと pprof
Go言語には、プログラムのパフォーマンスを分析するための強力なプロファイリングツールが組み込まれています。このツールは pprof
と呼ばれ、CPU使用率、メモリ割り当て、ゴルーチン、ブロックされた操作、ミューテックス競合などのプロファイルデータを収集し、視覚化することができます。
net/http/pprof
パッケージ
net/http/pprof
パッケージは、GoアプリケーションにHTTPエンドポイントを介してプロファイリングデータを提供する機能を追加します。このパッケージをインポートすると、デフォルトのHTTPサーバーに /debug/pprof/
というパスが登録され、以下のようなサブパスを通じて様々なプロファイルデータにアクセスできるようになります。
/debug/pprof/
: 利用可能なすべてのプロファイルのインデックスページ。ブラウザで開くと、各プロファイルへのリンクが表示されます。/debug/pprof/profile
: CPUプロファイル。指定された期間(デフォルトは30秒)のCPU使用率を記録します。/debug/pprof/heap
: ヒーププロファイル。現在のメモリ割り当て状況を記録します。/debug/pprof/goroutine
: ゴルーチンプロファイル。すべてのゴルーチンのスタックトレースを記録します。/debug/pprof/block
: ブロックプロファイル。同期プリミティブによってブロックされたゴルーチンのスタックトレースを記録します。/debug/pprof/mutex
: ミューテックスプロファイル。ミューテックスの競合状況を記録します。/debug/pprof/trace
: 実行トレース。プログラムの実行フローを詳細に記録します。
これらのエンドポイントは、通常、アプリケーションがHTTPサーバーとして動作している場合に利用されます。
go tool pprof
コマンド
go tool pprof
は、収集されたプロファイルデータを解析し、視覚化するためのコマンドラインツールです。このツールは、プロファイルデータをファイルから読み込むことも、HTTPエンドポイントから直接ダウンロードして解析することもできます。
例えば、CPUプロファイルを解析するには以下のように使用します。
go tool pprof http://localhost:6060/debug/pprof/profile?seconds=30
これにより、30秒間のCPUプロファイルデータがダウンロードされ、pprof
ツールがインタラクティブなシェルまたはWebインターフェースで解析結果を表示します。
Issue #4548
このコミットが修正するIssue #4548は、net/http/pprof
のドキュメントにおける /debug/pprof/
エンドポイントの記述に関するものでした。元のドキュメントでは、このインデックスページを go tool pprof
で開くように指示していましたが、これは誤りであり、ブラウザで直接開くのが正しい利用方法であるという指摘がありました。
技術的詳細
このコミットの技術的詳細は、主にドキュメンテーションの正確性に関するものです。
net/http/pprof
パッケージは、Goアプリケーションにプロファイリングエンドポイントを公開する際に、/debug/pprof/
パスにHTML形式のインデックスページを提供します。このページは、利用可能なプロファイルの種類(CPU、ヒープ、ゴルーチンなど)と、それぞれのプロファイルデータにアクセスするためのリンクを一覧表示します。
go tool pprof
コマンドは、プロファイルデータを解析するためのツールであり、通常はバイナリ形式のプロファイルデータ(例: profile
、heap
)を引数として受け取ります。/debug/pprof/
エンドポイントが返すのはHTMLページであり、これは go tool pprof
が直接解析することを意図したものではありません。
したがって、元のドキュメントの記述は、ユーザーが /debug/pprof/
を go tool pprof
で開こうとすると、期待通りの結果が得られないという問題を引き起こしていました。このコミットは、この点を修正し、ユーザーがブラウザで /debug/pprof/
を開くことで、プロファイルインデックスを正しく閲覧できることを明確にしています。
この変更は、コードの動作自体には影響を与えず、ユーザーが net/http/pprof
を利用する際の体験を向上させるためのドキュメンテーションの改善に焦点を当てています。
コアとなるコードの変更箇所
変更は src/pkg/net/http/pprof/pprof.go
ファイルのコメント部分にあります。
--- a/src/pkg/net/http/pprof/pprof.go
+++ b/src/pkg/net/http/pprof/pprof.go
@@ -34,9 +34,8 @@
//
// go tool pprof http://localhost:6060/debug/pprof/block
//
-// Or to view all available profiles:
-//
-// go tool pprof http://localhost:6060/debug/pprof/
+// To view all available profiles, open http://localhost:6060/debug/pprof/
+// in your browser.
//
// For a study of the facility in action, visit
//
具体的には、以下の3行が削除され、
// Or to view all available profiles:
//
// go tool pprof http://localhost:6060/debug/pprof/
以下の2行が追加されました。
// To view all available profiles, open http://localhost:6060/debug/pprof/
// in your browser.
コアとなるコードの解説
このコミットは、Go言語の net/http/pprof
パッケージ内の pprof.go
ファイルにあるコメントブロックを修正しています。このコメントブロックは、pprof
エンドポイントの利用方法を説明するドキュメンテーションの一部です。
変更前は、すべての利用可能なプロファイルを表示する方法として、go tool pprof http://localhost:6060/debug/pprof/
というコマンドが例示されていました。しかし、前述の通り、/debug/pprof/
はHTMLページを返すため、go tool pprof
で直接開くのは適切ではありませんでした。
変更後は、この説明が To view all available profiles, open http://localhost:6060/debug/pprof/ in your browser.
となり、ユーザーがブラウザで直接URLを開くべきであることが明確に示されています。これにより、ユーザーはプロファイルインデックスを正しく、かつ意図された方法で閲覧できるようになります。
この修正は、コードの機能的な振る舞いには一切影響を与えません。純粋に、ユーザーが net/http/pprof
パッケージをより効果的に利用できるようにするための、ドキュメンテーションの正確性とユーザビリティの向上を目的とした変更です。
関連リンク
- Go言語のプロファイリングに関する公式ドキュメント: https://pkg.go.dev/net/http/pprof
go tool pprof
の詳細: https://pkg.go.dev/cmd/pprof- Go言語のIssue #4548: https://github.com/golang/go/issues/4548
参考にした情報源リンク
- Go言語の公式ドキュメント
- GitHubのGoリポジトリのIssueトラッカー
go tool pprof
の使用例に関する一般的な情報源 (例: 各種ブログ記事、チュートリアル)- Go言語のコミット履歴と関連するコードレビュー (Gerrit CL 6944053)