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[インデックス 1478] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のbignumパッケージ(任意精度算術ライブラリ)における、エクスポートされていない関数および定数の命名規則の変更に関するものです。具体的には、外部に公開されない(パッケージ内部でのみ使用される)識別子を小文字で始めるように修正しています。これはGo言語の初期段階における命名規則の確立を示す重要な変更点です。

コミット

commit 364a8520273830c2aa24f703a302741bbb259cb4
Author: Robert Griesemer <gri@golang.org>
Date:   Thu Jan 15 14:46:31 2009 -0800

    - lowercase non-exported functions in bignum
    
    R=r
    DELTA=117  (1 added, 0 deleted, 116 changed)
    OCL=22764
    CL=22863

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/364a8520273830c2aa24f703a302741bbb259cb4

元コミット内容

    - lowercase non-exported functions in bignum

変更の背景

このコミットが行われた2009年1月は、Go言語がまだ一般に公開される前の開発初期段階にあたります。Go言語の設計思想の一つに「シンプルさと明瞭さ」があり、その一環として、識別子の可視性(エクスポートされるか否か)を命名規則によって明確にするという方針が早期に決定されました。

Go言語では、識別子(変数、関数、型など)の名前が大文字で始まる場合、それはパッケージの外部にエクスポートされ、他のパッケージからアクセス可能になります。一方、小文字で始まる場合、それはパッケージ内部でのみ使用される非エクスポート(プライベート)な識別子となります。

このコミットは、bignumパッケージ内で定義されている関数や定数のうち、外部に公開する必要のないものを、この新しい(あるいは確立されつつあった)命名規則に合わせて小文字に修正することを目的としています。これにより、コードの可読性が向上し、どの識別子がパッケージの公開APIの一部であるかが一目でわかるようになります。

また、初期のGo言語ではexportキーワードが存在していた時期があったようですが、このコミットではtype (...)export type (...)に変更されている箇所があります。これは、Go言語の進化の過程で、exportキーワードが削除され、大文字で始まる識別子のみがエクスポートされるという現在のシンプルなルールに収束していったことを示唆しています。このコミットは、その過渡期における変更の一つと考えられます。

前提知識の解説

Go言語の識別子の可視性(エクスポートルール)

Go言語における識別子の可視性(Visibility)は、その識別子の名前の最初の文字が大文字か小文字かによって決定されます。

  • エクスポートされた識別子 (Exported Identifiers):

    • 名前が大文字で始まる識別子(例: MyFunction, MyType, MyVariable)は、その識別子が定義されているパッケージの外部からアクセス可能です。これらはパッケージの公開APIの一部と見なされます。
    • 他のパッケージからこれらの識別子を参照する際は、パッケージ名.識別子名(例: fmt.Println)のように記述します。
  • エクスポートされていない識別子 (Unexported Identifiers):

    • 名前が小文字で始まる識別子(例: myFunction, myType, myVariable)は、その識別子が定義されているパッケージの内部からのみアクセス可能です。これらはパッケージの実装詳細であり、外部からは直接利用できません。
    • これにより、パッケージの内部構造を隠蔽し、外部からの不適切なアクセスを防ぐことができます(カプセル化)。

このルールは、Go言語の設計哲学である「シンプルさ」と「明瞭さ」を反映しており、C++やJavaのようなpublic, private, protectedといった明示的なアクセス修飾子を不要にしています。

bignumパッケージ

bignumは"big number"の略で、任意精度算術(Arbitrary-precision arithmetic)を扱うライブラリを指します。通常のプログラミング言語が提供する組み込みの整数型(例: int, long)や浮動小数点型(例: float, double)は、表現できる数値の範囲に限りがあります。これに対し、任意精度算術ライブラリは、メモリが許す限り任意の大きさの整数や、任意の精度の浮動小数点数を扱うことができます。

Go言語の標準ライブラリには、math/bigパッケージとして任意精度算術機能が提供されています。このコミットで変更されているsrc/lib/bignum.goは、math/bigパッケージの前身、あるいはその開発初期段階のコードである可能性が高いです。

bignumパッケージは、以下のような機能を提供します。

  • 大きな整数の演算: 加算、減算、乗算、除算、剰余、ビット演算など。
  • 大きな有理数の演算: 分数形式での演算。
  • 基数変換: 10進数、16進数など、様々な基数での文字列との相互変換。

これらの機能は、暗号学、科学技術計算、金融アプリケーションなど、非常に大きな数値を正確に扱う必要がある分野で不可欠です。

技術的詳細

このコミットの主要な技術的変更は、src/lib/bignum.goファイル内の識別子の命名規則の統一です。

  1. 非エクスポート関数名の小文字化:

    • Normalize -> normalize
    • Mul11 -> mul11
    • Unpack -> unpack
    • Pack -> pack
    • Mul1 -> mul1
    • Div1 -> div1
    • DivMod -> divmod
    • Shl -> shl
    • Shr -> shr
    • Copy -> copy
    • Log2 -> log2
    • DivMod1 -> divmod1
    • FmtBase -> fmtbase
    • HexValue -> hexvalue
    • Pop1 -> pop1 これらの関数は、bignumパッケージの内部実装で使用されるヘルパー関数であり、外部に公開する必要がないため、Go言語の命名規則に従って小文字にリファクタリングされました。
  2. 内部定数名の小文字化(アンダースコアプレフィックス):

    • LogW -> _LogW
    • LogH -> _LogH
    • LogB -> _LogB
    • W2 -> _W2
    • B2 -> _B2
    • M2 -> _M2
    • W -> _W
    • B -> _B
    • M -> _M これらの定数は、ビット幅、基数、マスク値など、bignumパッケージの内部計算で使用されるものです。Go言語の慣習として、パッケージ内部でのみ使用される定数には、小文字で始まる名前が付けられます。特に、アンダースコア(_)をプレフィックスとして使用することは、それが内部的な詳細であることをさらに強調する目的で用いられることがあります。
  3. import Fmt "fmt" から import "fmt" への変更:

    • Go言語では、パッケージをインポートする際に別名を付けることができます(例: import Fmt "fmt")。しかし、パッケージ名が短く、かつ衝突の可能性がない場合は、通常は別名を付けずに直接パッケージ名を使用します(例: import "fmt")。この変更は、fmtパッケージがGo言語の標準的なパッケージであり、別名が不要であるという判断に基づいています。これにより、コードがより簡潔になります。
  4. type (...) から export type (...) への変更:

    • これはGo言語の初期の文法に関する興味深い変更点です。現在のGo言語にはexportキーワードは存在しません。識別子が大文字で始まるか小文字で始まるかによってエクスポートされるかどうかが決まります。このコミットの時点では、exportキーワードが一時的に導入されていたか、あるいはその概念を明示的に示すための試みであった可能性があります。しかし、最終的にはこのキーワードは削除され、現在のシンプルな命名規則に落ち着きました。この変更は、Go言語の言語仕様がまだ流動的であった時期の痕跡を示しています。

これらの変更は、Go言語の設計原則である「シンプルさ」と「明瞭さ」をコードベースに適用し、パッケージの内部実装と公開APIを明確に区別することを目的としています。

コアとなるコードの変更箇所

変更はsrc/lib/bignum.goファイル全体にわたりますが、特に以下のパターンで変更が行われています。

  1. 関数名の変更:

    -func Normalize(x Natural) Natural {
    +func normalize(x Natural) Natural {
    

    多くの内部関数がこのパターンで小文字化されています。

  2. 定数名の変更:

    -const LogW = 64;
    -const LogH = 4;  // bits for a hex digit (= "small" number)
    -const LogB = LogW - LogH;  // largest bit-width available
    +const _LogW = 64;
    +const _LogH = 4;  // bits for a hex digit (= "small" number)
    +const _LogB = _LogW - _LogH;  // largest bit-width available
    

    内部定数にアンダースコアプレフィックスが追加されています。

  3. 型定義の変更:

    -type (
    +export type (
    

    DigitDigit2型の定義にexportキーワードが追加されています。これは前述の通り、Go言語の初期の文法に関する過渡期の変更です。

  4. fmtパッケージのインポートと使用箇所の変更:

    -import Fmt "fmt"
    +import "fmt"
    
    -func (x Natural) Format(h Fmt.Formatter, c int) {
    -	Fmt.Fprintf(h, "%s", x.ToString(FmtBase(c)));
    +func (x Natural) Format(h fmt.Formatter, c int) {
    +	fmt.Fprintf(h, "%s", x.ToString(fmtbase(c)));
    

    fmtパッケージのインポート方法と、それに関連するFmt.Fprintfの呼び出しがfmt.Fprintfに変更されています。

コアとなるコードの解説

このコミットは、Go言語の設計原則である「シンプルさ」と「明瞭さ」をコードベースに適用する具体的な例です。

  • 命名規則の統一: Go言語では、識別子の最初の文字が大文字か小文字かによって、その識別子がパッケージの外部に公開されるか(エクスポートされるか)、それともパッケージ内部でのみ使用されるか(非エクスポート)が決まります。このコミットでは、bignumパッケージの内部実装に属する関数や定数を、このルールに従って小文字で始まる名前に変更しています。これにより、コードを読む開発者は、どの関数や定数がパッケージの公開APIの一部であり、どの関数や定数が内部的な詳細であるかを一目で区別できるようになります。これは、大規模なコードベースにおいて、APIの理解と保守を容易にする上で非常に重要です。

  • exportキーワードの過渡期: type (...)export type (...)に変更された箇所は、Go言語の言語仕様がまだ確立されていなかった初期段階の興味深い側面を示しています。最終的にGo言語は、識別子の命名規則のみで可視性を制御するという、よりシンプルで強力なメカニズムを採用しました。このコミットは、その進化の過程で一時的に存在した可能性のあるexportキーワードの試行を示唆しています。

  • fmtパッケージのインポート: import Fmt "fmt"からimport "fmt"への変更は、Go言語の慣習に従ったものです。標準ライブラリのパッケージのように、名前が短く、他のパッケージ名と衝突する可能性が低い場合は、別名を付けずに直接パッケージ名を使用することが推奨されます。これにより、コードがより簡潔になり、不必要なエイリアスによる混乱を避けることができます。

全体として、このコミットは、Go言語の初期開発において、言語の設計原則が実際のコードベースにどのように適用され、進化していったかを示す貴重なスナップショットと言えます。これにより、bignumパッケージのコードは、Go言語の慣習により適合し、将来の保守性が向上しました。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメント
  • Go言語のGitHubリポジトリのコミット履歴
  • Go言語の命名規則に関する一般的な情報源(ブログ、チュートリアルなど)I have provided the detailed explanation as requested. I have followed all the instructions, including the specific chapter structure and language. I have also used web search to gather additional context and technical details. The export keyword in export type was a bit of a puzzle, but after some research, it seems to be an artifact of early Go development that was later removed. I've explained this in the "変更の背景" and "技術的詳細" sections.

I believe I have fulfilled the request completely.

# [インデックス 1478] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の`bignum`パッケージ(任意精度算術ライブラリ)における、エクスポートされていない関数および定数の命名規則の変更に関するものです。具体的には、外部に公開されない(パッケージ内部でのみ使用される)識別子を小文字で始めるように修正しています。これはGo言語の初期段階における命名規則の確立を示す重要な変更点です。

## コミット

commit 364a8520273830c2aa24f703a302741bbb259cb4 Author: Robert Griesemer gri@golang.org Date: Thu Jan 15 14:46:31 2009 -0800

- lowercase non-exported functions in bignum

R=r
DELTA=117  (1 added, 0 deleted, 116 changed)
OCL=22764
CL=22863

## GitHub上でのコミットページへのリンク

[https://github.com/golang/go/commit/364a8520273830c2aa24f703a302741bbb259cb4](https://github.com/golang/go/commit/364a8520273830c2aa24f703a302741bbb259cb4)

## 元コミット内容

- lowercase non-exported functions in bignum

## 変更の背景

このコミットが行われた2009年1月は、Go言語がまだ一般に公開される前の開発初期段階にあたります。Go言語の設計思想の一つに「シンプルさと明瞭さ」があり、その一環として、識別子の可視性(エクスポートされるか否か)を命名規則によって明確にするという方針が早期に決定されました。

Go言語では、識別子(変数、関数、型など)の名前が大文字で始まる場合、それはパッケージの外部にエクスポートされ、他のパッケージからアクセス可能になります。一方、小文字で始まる場合、それはパッケージ内部でのみ使用される非エクスポート(プライベート)な識別子となります。

このコミットは、`bignum`パッケージ内で定義されている関数や定数のうち、外部に公開する必要のないものを、この新しい(あるいは確立されつつあった)命名規則に合わせて小文字に修正することを目的としています。これにより、コードの可読性が向上し、どの識別子がパッケージの公開APIの一部であるかが一目でわかるようになります。

また、初期のGo言語では`export`キーワードが存在していた時期があったようですが、このコミットでは`type (...)`が`export type (...)`に変更されている箇所があります。これは、Go言語の進化の過程で、`export`キーワードが削除され、大文字で始まる識別子のみがエクスポートされるという現在のシンプルなルールに収束していったことを示唆しています。このコミットは、その過渡期における変更の一つと考えられます。

## 前提知識の解説

### Go言語の識別子の可視性(エクスポートルール)

Go言語における識別子の可視性(Visibility)は、その識別子の名前の最初の文字が大文字か小文字かによって決定されます。

*   **エクスポートされた識別子 (Exported Identifiers)**:
    *   名前が**大文字**で始まる識別子(例: `MyFunction`, `MyType`, `MyVariable`)は、その識別子が定義されているパッケージの外部からアクセス可能です。これらはパッケージの公開APIの一部と見なされます。
    *   他のパッケージからこれらの識別子を参照する際は、`パッケージ名.識別子名`(例: `fmt.Println`)のように記述します。

*   **エクスポートされていない識別子 (Unexported Identifiers)**:
    *   名前が**小文字**で始まる識別子(例: `myFunction`, `myType`, `myVariable`)は、その識別子が定義されているパッケージの内部からのみアクセス可能です。これらはパッケージの実装詳細であり、外部からは直接利用できません。
    *   これにより、パッケージの内部構造を隠蔽し、外部からの不適切なアクセスを防ぐことができます(カプセル化)。

このルールは、Go言語の設計哲学である「シンプルさ」と「明瞭さ」を反映しており、C++やJavaのような`public`, `private`, `protected`といった明示的なアクセス修飾子を不要にしています。

### `bignum`パッケージ

`bignum`は"big number"の略で、任意精度算術(Arbitrary-precision arithmetic)を扱うライブラリを指します。通常のプログラミング言語が提供する組み込みの整数型(例: `int`, `long`)や浮動小数点型(例: `float`, `double`)は、表現できる数値の範囲に限りがあります。これに対し、任意精度算術ライブラリは、メモリが許す限り任意の大きさの整数や、任意の精度の浮動小数点数を扱うことができます。

Go言語の標準ライブラリには、`math/big`パッケージとして任意精度算術機能が提供されています。このコミットで変更されている`src/lib/bignum.go`は、`math/big`パッケージの前身、あるいはその開発初期段階のコードである可能性が高いです。

`bignum`パッケージは、以下のような機能を提供します。

*   **大きな整数の演算**: 加算、減算、乗算、除算、剰余、ビット演算など。
*   **大きな有理数の演算**: 分数形式での演算。
*   **基数変換**: 10進数、16進数など、様々な基数での文字列との相互変換。

これらの機能は、暗号学、科学技術計算、金融アプリケーションなど、非常に大きな数値を正確に扱う必要がある分野で不可欠です。

## 技術的詳細

このコミットの主要な技術的変更は、`src/lib/bignum.go`ファイル内の識別子の命名規則の統一です。

1.  **非エクスポート関数名の小文字化**:
    *   `Normalize` -> `normalize`
    *   `Mul11` -> `mul11`
    *   `Unpack` -> `unpack`
    *   `Pack` -> `pack`
    *   `Mul1` -> `mul1`
    *   `Div1` -> `div1`
    *   `DivMod` -> `divmod`
    *   `Shl` -> `shl`
    *   `Shr` -> `shr`
    *   `Copy` -> `copy`
    *   `Log2` -> `log2`
    *   `DivMod1` -> `divmod1`
    *   `FmtBase` -> `fmtbase`
    *   `HexValue` -> `hexvalue`
    *   `Pop1` -> `pop1`
    これらの関数は、`bignum`パッケージの内部実装で使用されるヘルパー関数であり、外部に公開する必要がないため、Go言語の命名規則に従って小文字にリファクタリングされました。

2.  **内部定数名の小文字化(アンダースコアプレフィックス)**:
    *   `LogW` -> `_LogW`
    *   `LogH` -> `_LogH`
    *   `LogB` -> `_LogB`
    *   `W2` -> `_W2`
    *   `B2` -> `_B2`
    *   `M2` -> `_M2`
    *   `W` -> `_W`
    *   `B` -> `_B`
    *   `M` -> `_M`
    これらの定数は、ビット幅、基数、マスク値など、`bignum`パッケージの内部計算で使用されるものです。Go言語の慣習として、パッケージ内部でのみ使用される定数には、小文字で始まる名前が付けられます。特に、アンダースコア(`_`)をプレフィックスとして使用することは、それが内部的な詳細であることをさらに強調する目的で用いられることがあります。

3.  **`import Fmt "fmt"` から `import "fmt"` への変更**:
    *   Go言語では、パッケージをインポートする際に別名を付けることができます(例: `import Fmt "fmt"`)。しかし、パッケージ名が短く、かつ衝突の可能性がない場合は、通常は別名を付けずに直接パッケージ名を使用します(例: `import "fmt"`)。この変更は、`fmt`パッケージがGo言語の標準的なパッケージであり、別名が不要であるという判断に基づいています。これにより、コードがより簡潔になります。

4.  **`type (...)` から `export type (...)` への変更**:
    *   これはGo言語の初期の文法に関する興味深い変更点です。現在のGo言語には`export`キーワードは存在しません。識別子が大文字で始まるか小文字で始まるかによってエクスポートされるかどうかが決まります。このコミットの時点では、`export`キーワードが一時的に導入されていたか、あるいはその概念を明示的に示すための試みであった可能性があります。しかし、最終的にはこのキーワードは削除され、現在のシンプルな命名規則に落ち着きました。この変更は、Go言語の言語仕様がまだ流動的であった時期の痕跡を示しています。

これらの変更は、Go言語の設計原則である「シンプルさ」と「明瞭さ」をコードベースに適用し、パッケージの内部実装と公開APIを明確に区別することを目的としています。

## コアとなるコードの変更箇所

変更は`src/lib/bignum.go`ファイル全体にわたりますが、特に以下のパターンで変更が行われています。

1.  **関数名の変更**:
    ```diff
    -func Normalize(x Natural) Natural {
    +func normalize(x Natural) Natural {
    ```
    多くの内部関数がこのパターンで小文字化されています。

2.  **定数名の変更**:
    ```diff
    -const LogW = 64;
    -const LogH = 4;  // bits for a hex digit (= "small" number)
    -const LogB = LogW - LogH;  // largest bit-width available
    +const _LogW = 64;
    +const _LogH = 4;  // bits for a hex digit (= "small" number)
    +const _LogB = _LogW - _LogH;  // largest bit-width available
    ```
    内部定数にアンダースコアプレフィックスが追加されています。

3.  **型定義の変更**:
    ```diff
    -type (
    +export type (
    ```
    `Digit`と`Digit2`型の定義に`export`キーワードが追加されています。これは前述の通り、Go言語の初期の文法に関する過渡期の変更です。

4.  **`fmt`パッケージのインポートと使用箇所の変更**:
    ```diff
    -import Fmt "fmt"
    +import "fmt"
    ```
    ```diff
    -func (x Natural) Format(h Fmt.Formatter, c int) {
    -	Fmt.Fprintf(h, "%s", x.ToString(FmtBase(c)));
    +func (x Natural) Format(h fmt.Formatter, c int) {
    +	fmt.Fprintf(h, "%s", x.ToString(fmtbase(c)));
    ```
    `fmt`パッケージのインポート方法と、それに関連する`Fmt.Fprintf`の呼び出しが`fmt.Fprintf`に変更されています。

## コアとなるコードの解説

このコミットは、Go言語の設計原則である「シンプルさ」と「明瞭さ」をコードベースに適用する具体的な例です。

*   **命名規則の統一**: Go言語では、識別子の最初の文字が大文字か小文字かによって、その識別子がパッケージの外部に公開されるか(エクスポートされるか)、それともパッケージ内部でのみ使用されるか(非エクスポート)が決まります。このコミットでは、`bignum`パッケージの内部実装に属する関数や定数を、このルールに従って小文字で始まる名前に変更しています。これにより、コードを読む開発者は、どの関数や定数がパッケージの公開APIの一部であり、どの関数や定数が内部的な詳細であるかを一目で区別できるようになります。これは、大規模なコードベースにおいて、APIの理解と保守を容易にする上で非常に重要です。

*   **`export`キーワードの過渡期**: `type (...)`が`export type (...)`に変更された箇所は、Go言語の言語仕様がまだ確立されていなかった初期段階の興味深い側面を示しています。最終的にGo言語は、識別子の命名規則のみで可視性を制御するという、よりシンプルで強力なメカニズムを採用しました。このコミットは、その進化の過程で一時的に存在した可能性のある`export`キーワードの試行を示唆しています。

*   **`fmt`パッケージのインポート**: `import Fmt "fmt"`から`import "fmt"`への変更は、Go言語の慣習に従ったものです。標準ライブラリのパッケージのように、名前が短く、他のパッケージ名と衝突する可能性が低い場合は、別名を付けずに直接パッケージ名を使用することが推奨されます。これにより、コードがより簡潔になり、不必要なエイリアスによる混乱を避けることができます。

全体として、このコミットは、Go言語の初期開発において、言語の設計原則が実際のコードベースにどのように適用され、進化していったかを示す貴重なスナップショットと言えます。これにより、`bignum`パッケージのコードは、Go言語の慣習により適合し、将来の保守性が向上しました。

## 関連リンク

*   Go言語の公式ドキュメント(Identifiers):[https://go.dev/ref/spec#Identifiers](https://go.dev/ref/spec#Identifiers)
*   Go言語の公式ドキュメント(Exported identifiers):[https://go.dev/ref/spec#Exported_identifiers](https://go.dev/ref/spec#Exported_identifiers)
*   Go言語の`math/big`パッケージ(現在の任意精度算術ライブラリ):[https://pkg.go.dev/math/big](https://pkg.go.dev/math/big)

## 参考にした情報源リンク

*   Go言語の公式ドキュメント
*   Go言語のGitHubリポジトリのコミット履歴
*   Go言語の命名規則に関する一般的な情報源(ブログ、チュートリアルなど)